2017年12月27日

合評会:習近平政権を読む

東大で開催された「合評会:習近平政権を読む」に参加してきた。

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これは今年発売されたジャーナリスト(奇しくも朝日の記者ばかり)による本の評論と議論というもの。

一冊目はこれ。


林さんによると、「2012年中国共産党には、指導者間の分裂可能性(薄煕来)、人民と党の乖離という危機があり」その結果、強い習近平政権ができたという。そして、習近平は農民への理解、中国的民主の自信があると指摘する。

高原明夫さんの評論では、横軸(指導者)縦軸(民衆と党)という観点からの話があり、「胡錦濤政権でさまざまな議論が噴出していた。だからリーダーシップが必要だった」と分析する。

二冊目は吉岡さんのこれ。


吉岡さんは「中国崩壊論に対する対応として、中国経済を描き出すために人民元からアプローチした」という。

評者の梶谷さんは、山形さんの評論を紹介しつつ、人民元の歴史やとっかかりにくい通貨をわかりやすく欠いていると評価する。

最後は、


金さんは「少数民族や人権は外国メディアしかできない。少数派からの視点で中国を語ろう」としたという。

評者として、阿古さんは、内容を紹介しつつ、現地調査の客観性、観察者の社会への影響などの問題が語られた。

私としては、林さんの本は習近平政権を理解するのに欠かせない一冊だと思ったし、吉岡さんは前半の人民元の歴史等はとても面白かった。また金さんは非常に精力的な取材で、かなりきわどい問題(新疆や宗教弾圧)に切り込んでいる。

どれも読んで面白い本だった。



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2017年12月12日

香港の過去・現在・未来

12月2、3日に立教大学で開催された香港返還20周年記念シンポが開催された。

学生時代に香港に留学していた身としては、最近の政治動向について憂慮していた。何が起きているのか知りたくて、参加して聞いてきた。

以下備忘録として。

政治(倉田徹)

香港の自治は衰退している。「全面的統治権」(2014)と香港の急激な政治化というバランスの中にある。
香港市民は政治的な関心が低かったが、ここ10年経済的関心よりも民生、政治的関心に移る。脱植民地化し「デモ文化」の復活、それに加えて若者の価値観は強い香港人意識と弱い愛国心という特徴を持つ。返還20周年式典の習近平の講話から考えると、香港を政治に無関心な経済都市に戻す意思を持つように思える。

経済(曽根康雄)

香港は返還時に大陸の市場化に貢献したが(例、資金調達や経営のやり方等)、中国は予想外に発展が速く立場が逆転した(香港株式市場ではすでに大陸系企業の取引額が半分を超えた)。SARS以降北京がCEPAや大陸の旅行解禁で香港の観光を支援してきた。とはいえ、香港の役割は今だ大きい。例えば、人民元の国際化に貢献した(為替が自由化されていないにもかかわらず2016年に人民元のSDR通貨の認定に貢献)。中国は多くの課題があり、それに対して香港の役割はまだまだ大きい。

司法(廣江倫子)

香港の法治はどうなるか?香港基本法はコモンローの体系を持ったまま中国法の中に取り込まれる。雨傘運動から立法会選挙で本土派が生まれたが宣誓で失職。基本法の解釈権は中国にあり、5回実行されている。一方で基本法はコモンロー体系にあり、国際人権法の点で国際化している。解釈は中央が管轄する業務と中央と地方の関係するものに限られていた。国連自由権規約やヨーロッパ人権条約がそのまま香港の人権規約に入っている。終審法院裁判官は外から来る。基本法は中国法、国際法のせめぎ合いの中にある。

教育(中井智香子)

国民教育(愛国教育)が失敗した後(2012年)、「中国歴史科」の中に近現代史、香港史、基本法教育を入れる方針となり、2017年に2018年9月から必修独立科目にするという政治的決定がなされる。香港の公教育は大部分が公的資金を受けた民間団体による自主運営を行う「資助校」が中心であり、その教員協会(教協)が反共なので、北京はここが問題としている。多元的・学校自主から一元、中央集権化が可能になるのか。

社会(澤田ゆかり)

少子高齢化が進んでいるが政府は何もしていない。流動居民は3%、出生率は急激に減少するが越境出産もその数字に影響する。生産人口が減れば香港の企業は大陸に移動するだけであり、問題は高齢者の問題。介護家政婦はインドネシアから急増、引退した高齢者は広東に移動、ただ広東のホームの価格が上がっているという問題がある。

たった2時間弱で多方面にわたる香港の現状がわかって勉強になった。
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2017年12月05日

安徽大学の研究者との交流

12月1日にERINA(環日本海経済研究所)の研究会に参加した。今回は、安徽大学から2名の研究者が来られたので、一般的な話を聞けるとともに、戦略的新興産業の融資についても意見交換ができた。

以下備忘録として、。

安徽省と他省経済水準比較(李光龍)

南京まで1時間、武漢2時間、上海3時間、北京4時間と重要拠点につながる1234戦略がある。安徽・合肥は北京、上海に次ぐ3番目の科学センターイノベーションセンターに指定されており、中国科学院がある。後発性の優位により全国より成長率は2ポイント高い。ただ、1人あたりGDPは全国よりも低く産業構造もサービス業の発展が遅れてるという現状がある。
今後、一帯一路、長江経済帯一体化、京津翼一体化(非首都機能の受け入れ)のチャンスを活かすことが発展への道となるだろう。

安徽省戦略性新興産業融資若干問題研究(斉美東)

戦略的新興産業を発展させるというのは、グローバル経済への対応、中国の持続的発展という環境的要請がある。新エネルギー、新材料、バイオは重要な発展ポイントである。
資金調達は戦略的新興産業の発展を支える。不確実性に対応する必要もある。
政策的金融、商業的金融、ベンチャーキャピタルとしてのリスク投資の3つが現在行われている。現状として規模の経済、集積の経済(安徽省の国家級開発区の数でいうと全国の4位)は働きつつある。
ただし、直接金融市場の発達が遅れ、商業銀行はリスクを恐れ、銀行の産業に対する理解が足らない、中小企業は資金調達に困難、政策性金融は広東に比べても相当低く、政策的基金が民間の呼び水になっていない、などの問題を抱えている。

ディスカッションをして気になったのは、ゾンビ企業の現状についてである。安徽省では破産等は難しく、社会的安定が優先であり、整理は進んでいないという。背景として、李教授が指摘するには、90年代の国有企業改革では一時帰休者が増えても、社会全体は改革を支持していたし、地方指導者も政策的失敗に対しても中央は寛容であったという。今は、社会全体の関心事は多様化しており、また指導者でも反腐敗運動というのもあり政治的な失敗が許されないという。


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2017年11月21日

中国経済経営学会での報告

11月11日、12日に桃山学院大学で中国経済経営学会全国大会が開催された。

一本論文を報告した。

Spatial and Institutional Urbanisation in China

討論者は藤井大輔先生(大阪経済大学)がしてくださり、とても丁寧なコメントをいただいた。上記でもAcademiaでドラフトを公開するけど、コメントに基づいて修正して、はやめにどこかに投稿したい。

論文概要は以下の通り。

The paper casts new lights on the characteristics of urbanisation in China, which has started as a comprehensive social-economic plan since 2014, from the perspective of ‘spatial urbanisation’ and ‘institutional urbanisation’. The paper argues that urbanisation in China is not only just a ‘spatial urbanisation’, the concentration of population in certain areas, which has been commonly observed in developed countries, but also an ‘institutional urbanisation’ in which the institutional barrier has remained to refrain migrants from being city citizens and to suspend enhancing true urbanisation. The econometric analysis indicates that ‘spatial urbanisation’ will boost manufacturing sectors and the economic growth as a result, and ‘institutional urbanisation’ will cause a structural change towards service industry based economy, which could bring about avoiding so-called ‘middle-income trap’. Nevertheless, the advancement of ‘institutional urbanisation’ is highly costly.

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2017年11月07日

The Northeast Asian Economic Review

昨年、ドイツで報告した学会報告が公刊できた。

OKAMOTO, Nobuhiro.(2017) "What Matters in the Urbanization of China?," The
Northeast Asian Economic Review, Vol. 5, No.2, pp.1-13
(リンク先でPDFファイルが参照可能。)

要約
The paper reveals the characteristics of urbanisation in China, which has started as a comprehensive social-economic plan since 2014. This article examines the current ongoing urbanisation process from the perspective of history, the size of city, village urbanisation and cost-benefits of the settlement of rural migrants in cities. Then the paper argues that urbanisation in China is not only just a "spatial urbanisation", which has been commonly observed in developed countries but also an "institutional urbanisation" in which the institutional barrier is imperative to reform if the government eager to achieve the goal of ideal urbanisation.
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2017年10月31日

日本地域学会、PAPAIOS

日本に帰国して、いろいろとお声をいただいて、学会討論者をさせていただいた。

日本地域学会(10月8日立命館大学衣笠キャンパス)では以下の二本。

Akune and Anacker Measuring the vulnerability of the regional food system in Japan
石川・中村 地域経済効果の帰着分析:地域間産業連関モデルの拡張

阿久根先生のものはフードサプライチェーンへの影響を分析するためにゴッシュモデルを用いたもの、石川先生のものは消費者の行動を地元の人が地元の人によって消費されるという点で内生化モデルを構築しようとするものだった。どちらもIOの可能性の広がりを感じられるものだった。

環太平洋産業連関分析学会(10月23日立命館大学おおさかいばらきキャンパス)では、猪俣氏の

Development of Analytical Frameworks for Global Value Chains: the Role of Input-Output Analyses

をコメント。これはアジ研・WTOの付加価値貿易プロジェクトの一部。国際経済学の発展、グローバル化の進展という現実を振り返り、IOによる付加価値分析を位置づけようとするもの。

この2つの学会のコメントをさせていただいたおかげで、今やっている研究(都市農村のIO分析)に関するヒントを多くもらった。
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2017年10月24日

第19回党大会

現在、中国では第19回党大会が開かれているけど、それに関して10月19日木曜日に面白いセミナーに参加した。

中国の政治・経済報道をどう読むか』田原真司(フリージャーナリスト、元日経BP北京支局長)

仮説をたてて報道を読む、また報道の裏側にあるものを推測するという点でも大いに役立つ講演だった。

今回、19回党大会に関連した話では、主要4大紙から注目されるテーマは、

・習近平の右腕である王岐山の去就。
・習近平思想の党規約の明記や「党主席」の復活。(権力強化)
・習近平の後継者指名はあるのか、陳敏爾の常務委員入りはあるのか

という。

人事は党大会あとの19期一中全会で決まるので、もう少し先になるけど、党大会の重要な議題である党規約はどうなるかが、私個人の注目だ。

腐敗撲滅、社会安定を目指す習近平が自らの権力基盤を固めるようさらに独裁色を強めることができるか、でもこれは実は社会にとって反発を生む可能性さえある方向でもある。

田原氏は、常務委員会のトップ7で物事を決めるのが慣例になっているので習近平がそこまで強い独裁色を出すことに懐疑的だった。

いずれにせよ今週木曜日ぐらいから人事を含めて党大会の決定があきらかになる。

ちなみにSouth China Morning Postに面白い記事があったのでシェア。
Why China’s Xi Jinping is unlikely to anoint a successor
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2017年10月03日

私たちの経済を作った50の発明



ティム・ハーフォードの本を読んで面白かったので、紹介。

ちなみにティム・ハーフォードは


で有名で、Kindle版では2版から2013年版(実質3版)となっている。

日本語訳は以下が出ているけど、タイトルで『ヤバい経済学』を意識していてちょっと残念。(でもこの日本語本を読んで思ったけど私としては『ヤバい経済学』よりも面白かった。)




さて、この50の発明というかイノベーションで今の経済がどう影響しているのか、あるいはどう便利になっているのか、あるいはどう形作られたかが述べられている。

「鍬」によって農業生産、定住社会が作られてきた話をして、「有刺鉄線」によって所有権が明確になり、「パスポート」が人の移動を妨げ、「福祉国家」が誕生する、など(ずいぶんと端折ったけど)、50の人の発明品(ものでないことも多い)が私たちの生活を形作っていることがよくわかる。

個人的には、パスポートの歴史が浅いこと、貨幣のはしりとして、取引可能な負債とタリースティック(符丁のあう棒)などが面白かった。

ちなみにこれはBBCの放送で過去のものはポッドキャストで公開されている。

50 Things That Made the Modern Economy
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2017年09月05日

深圳のメイカーズ

弾丸だけど、サクッと深圳に出張してきた。

深圳で起きている新しい物作りのムーブメントを実際に知りたかったからだ。

最初は、伊藤亜聖氏(東京大学)が滞在しているSeg Makersを見学した。ここは日本の物作りのギークたちが情報交換する場所として機能しているようだ。

日本から新しいものを作りたいという人たちが集まるとともに、中国はもちろんのこと世界から来ている人たちと交流することが可能となっている。設備はパソコンだけだが、物作りに必要な3Dプリンターなども置かれている。そもそもこの建物は中国の秋葉原ともいうべき電子電気部品の卸売市場でもあり、試作品をすぐに深圳のサプライチェーンを使って生産することが可能である。

新しい物作りにHAXというアクセラレーターが深圳に来ている。元はサンフランシスコのベンチャーキャピタルである。世界中の物作りに興味あるグリークたちが競ってアイデアを出し、3%という狭き門をくぐりぬければ10万ドルを株式と引き換えに手に入れることができる。

二件目は、Luke Hendersonが開設しているラボ、STEAM HEADである。3Dプリンターを含めて物作りに必要な道具が所狭しと置かれており、またベッドも用意して世界の物作りグリークたちの居場所となっている。彼は主に教育面でのワークショップを開催しており、道具の使い方を近所のインターナショナルスクールの先生方に教えている。Lukeによると、今深圳には多くのメイカーズ空間があり、コアメンバーは20人ぐらいだという。またメイカーズには2種類あるという。一つは中国政府が資金力で持って開設するメイカーズ。これらには人が集まらず、機械のメンテナンスもあまりよくないという。もう一つは個人のホビーとしてはじめるメイカーズ。こちらの方が活気があると言う。彼のラボはインターナショナルスクールからファンドをもらって毎月5000元の家賃を賄っている。また知り合いからの依頼で物作りに関わりその報酬で生活している。

結局重要なのは人の出入りと活気あるコミュニティの存在である。

三件目に訪問したのはアメリカン・インターナショナル・スクールである。ここでは学校の中にメイカーズスペースを作り、PBL教育が行われている。子供たちが、社会の不便さをモノを使って解決しようとするものであり、物を作るだけでなく、損益計算をしてどう販売するかを考えたりする。総合型のプロジェクトである。教員、保護者の理解を得て、ほとんどの授業をこれでやっており、数学、理科、社会、英語(国語)を一体化させて社会と関連づけて行なっている。

これまで深圳で起きていることは、メイカーズというコミュニティと空間でアイデアが事業になるという単純な利益追求のスタートアップ支援というイメージだったが、今回の訪問で、もっと深いもの、単純に物作りが好きという人たちが集まり、コミュニティーを形成しているということだ。

まだ目に見えて何か世界を変えるようなモノが生まれているわけではないが、何かが起こりそうという意味で大変面白いムーブメントである。
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2017年08月29日

中国の情報化社会

先日「情報化する中国の個人 働き方生活は、どう変わるか(8/24)イブニングセミナー」に参加してきた。 最近のIT化の中国を直接体験されている人の話を聞きたいと思ったからだ。

講師、セミナー概要は

田中信彦「「信用」が中国人を変えるスマホ時代の中国版信用情報システムの「凄み」」Wisdom


とほぼ同じ内容であるが、最近の情報が聞けて大変勉強になった。

概要は、

1)中国のアプリが進み、タクシー、出前、出会い、などなどさまざまな場面でIT化している。

2)このIT化によってアリババの子会社「芝麻信用」(アントフィナンシャル)の信用点数付け(支払い履歴、タクシー運転手による顧客評価など)が中国人の行動に影響を与えつつある。人々は自分の信用をあげようとして、支払いはきちんとするし、借りたものはきちんと返す行為を促している。

3)最近、この情報を政府と共有化する動きがある。つまり個人情報が政府によって管理されてきている。これはいい悪いの問題ではなく、人々の社会に対する行動が反社会的なものから社会に協力的な方向へ動いている。

4)このような動きを支える中国社会の特徴について、@中国は社会問題は統治者が行うべきもの、A档案にみられるように情報を政府が扱うことに慣れていること、B安全感の方がプライバシーよりも優先されていること、C個人中心の社会であり、競争社会と親和性が高いこと、が指摘されている。

というものだ。

この動きについてさまざまな議論が行われたけど、先進国では社会が成熟していること、個人情報に敏感なことがあるので、このようなシステムを社会にいれることは難しいかもしれないこと、でも途上国ではインドも含めてITによる信用管理は社会をよりよいものにする傾向があるので、導入がすすんでいることなどが指摘されていた。

その一方で、AIによる情報一元化と党運営が衝突してくる可能性もあるかもしれないし、世界的にも情報管理と不管理といった新たな対立軸がでてくるかもしれない、といった意見も出た。

非常に刺激的な議論だった。
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