2017年11月07日

The Northeast Asian Economic Review

昨年、ドイツで報告した学会報告が公刊できた。

OKAMOTO, Nobuhiro.(2017) "What Matters in the Urbanization of China?," The
Northeast Asian Economic Review, Vol. 5, No.2, pp.1-13
(リンク先でPDFファイルが参照可能。)

要約
The paper reveals the characteristics of urbanisation in China, which has started as a comprehensive social-economic plan since 2014. This article examines the current ongoing urbanisation process from the perspective of history, the size of city, village urbanisation and cost-benefits of the settlement of rural migrants in cities. Then the paper argues that urbanisation in China is not only just a "spatial urbanisation", which has been commonly observed in developed countries but also an "institutional urbanisation" in which the institutional barrier is imperative to reform if the government eager to achieve the goal of ideal urbanisation.
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2017年10月31日

日本地域学会、PAPAIOS

日本に帰国して、いろいろとお声をいただいて、学会討論者をさせていただいた。

日本地域学会(10月8日立命館大学衣笠キャンパス)では以下の二本。

Akune and Anacker Measuring the vulnerability of the regional food system in Japan
石川・中村 地域経済効果の帰着分析:地域間産業連関モデルの拡張

阿久根先生のものはフードサプライチェーンへの影響を分析するためにゴッシュモデルを用いたもの、石川先生のものは消費者の行動を地元の人が地元の人によって消費されるという点で内生化モデルを構築しようとするものだった。どちらもIOの可能性の広がりを感じられるものだった。

環太平洋産業連関分析学会(10月23日立命館大学おおさかいばらきキャンパス)では、猪俣氏の

Development of Analytical Frameworks for Global Value Chains: the Role of Input-Output Analyses

をコメント。これはアジ研・WTOの付加価値貿易プロジェクトの一部。国際経済学の発展、グローバル化の進展という現実を振り返り、IOによる付加価値分析を位置づけようとするもの。

この2つの学会のコメントをさせていただいたおかげで、今やっている研究(都市農村のIO分析)に関するヒントを多くもらった。
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2017年10月24日

第19回党大会

現在、中国では第19回党大会が開かれているけど、それに関して10月19日木曜日に面白いセミナーに参加した。

中国の政治・経済報道をどう読むか』田原真司(フリージャーナリスト、元日経BP北京支局長)

仮説をたてて報道を読む、また報道の裏側にあるものを推測するという点でも大いに役立つ講演だった。

今回、19回党大会に関連した話では、主要4大紙から注目されるテーマは、

・習近平の右腕である王岐山の去就。
・習近平思想の党規約の明記や「党主席」の復活。(権力強化)
・習近平の後継者指名はあるのか、陳敏爾の常務委員入りはあるのか

という。

人事は党大会あとの19期一中全会で決まるので、もう少し先になるけど、党大会の重要な議題である党規約はどうなるかが、私個人の注目だ。

腐敗撲滅、社会安定を目指す習近平が自らの権力基盤を固めるようさらに独裁色を強めることができるか、でもこれは実は社会にとって反発を生む可能性さえある方向でもある。

田原氏は、常務委員会のトップ7で物事を決めるのが慣例になっているので習近平がそこまで強い独裁色を出すことに懐疑的だった。

いずれにせよ今週木曜日ぐらいから人事を含めて党大会の決定があきらかになる。

ちなみにSouth China Morning Postに面白い記事があったのでシェア。
Why China’s Xi Jinping is unlikely to anoint a successor
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2017年10月03日

私たちの経済を作った50の発明



ティム・ハーフォードの本を読んで面白かったので、紹介。

ちなみにティム・ハーフォードは


で有名で、Kindle版では2版から2013年版(実質3版)となっている。

日本語訳は以下が出ているけど、タイトルで『ヤバい経済学』を意識していてちょっと残念。(でもこの日本語本を読んで思ったけど私としては『ヤバい経済学』よりも面白かった。)




さて、この50の発明というかイノベーションで今の経済がどう影響しているのか、あるいはどう便利になっているのか、あるいはどう形作られたかが述べられている。

「鍬」によって農業生産、定住社会が作られてきた話をして、「有刺鉄線」によって所有権が明確になり、「パスポート」が人の移動を妨げ、「福祉国家」が誕生する、など(ずいぶんと端折ったけど)、50の人の発明品(ものでないことも多い)が私たちの生活を形作っていることがよくわかる。

個人的には、パスポートの歴史が浅いこと、貨幣のはしりとして、取引可能な負債とタリースティック(符丁のあう棒)などが面白かった。

ちなみにこれはBBCの放送で過去のものはポッドキャストで公開されている。

50 Things That Made the Modern Economy
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2017年09月05日

深圳のメイカーズ

弾丸だけど、サクッと深圳に出張してきた。

深圳で起きている新しい物作りのムーブメントを実際に知りたかったからだ。

最初は、伊藤亜聖氏(東京大学)が滞在しているSeg Makersを見学した。ここは日本の物作りのギークたちが情報交換する場所として機能しているようだ。

日本から新しいものを作りたいという人たちが集まるとともに、中国はもちろんのこと世界から来ている人たちと交流することが可能となっている。設備はパソコンだけだが、物作りに必要な3Dプリンターなども置かれている。そもそもこの建物は中国の秋葉原ともいうべき電子電気部品の卸売市場でもあり、試作品をすぐに深圳のサプライチェーンを使って生産することが可能である。

新しい物作りにHAXというアクセラレーターが深圳に来ている。元はサンフランシスコのベンチャーキャピタルである。世界中の物作りに興味あるグリークたちが競ってアイデアを出し、3%という狭き門をくぐりぬければ10万ドルを株式と引き換えに手に入れることができる。

二件目は、Luke Hendersonが開設しているラボ、STEAM HEADである。3Dプリンターを含めて物作りに必要な道具が所狭しと置かれており、またベッドも用意して世界の物作りグリークたちの居場所となっている。彼は主に教育面でのワークショップを開催しており、道具の使い方を近所のインターナショナルスクールの先生方に教えている。Lukeによると、今深圳には多くのメイカーズ空間があり、コアメンバーは20人ぐらいだという。またメイカーズには2種類あるという。一つは中国政府が資金力で持って開設するメイカーズ。これらには人が集まらず、機械のメンテナンスもあまりよくないという。もう一つは個人のホビーとしてはじめるメイカーズ。こちらの方が活気があると言う。彼のラボはインターナショナルスクールからファンドをもらって毎月5000元の家賃を賄っている。また知り合いからの依頼で物作りに関わりその報酬で生活している。

結局重要なのは人の出入りと活気あるコミュニティの存在である。

三件目に訪問したのはアメリカン・インターナショナル・スクールである。ここでは学校の中にメイカーズスペースを作り、PBL教育が行われている。子供たちが、社会の不便さをモノを使って解決しようとするものであり、物を作るだけでなく、損益計算をしてどう販売するかを考えたりする。総合型のプロジェクトである。教員、保護者の理解を得て、ほとんどの授業をこれでやっており、数学、理科、社会、英語(国語)を一体化させて社会と関連づけて行なっている。

これまで深圳で起きていることは、メイカーズというコミュニティと空間でアイデアが事業になるという単純な利益追求のスタートアップ支援というイメージだったが、今回の訪問で、もっと深いもの、単純に物作りが好きという人たちが集まり、コミュニティーを形成しているということだ。

まだ目に見えて何か世界を変えるようなモノが生まれているわけではないが、何かが起こりそうという意味で大変面白いムーブメントである。
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2017年08月29日

中国の情報化社会

先日「情報化する中国の個人 働き方生活は、どう変わるか(8/24)イブニングセミナー」に参加してきた。 最近のIT化の中国を直接体験されている人の話を聞きたいと思ったからだ。

講師、セミナー概要は

田中信彦「「信用」が中国人を変えるスマホ時代の中国版信用情報システムの「凄み」」Wisdom


とほぼ同じ内容であるが、最近の情報が聞けて大変勉強になった。

概要は、

1)中国のアプリが進み、タクシー、出前、出会い、などなどさまざまな場面でIT化している。

2)このIT化によってアリババの子会社「芝麻信用」(アントフィナンシャル)の信用点数付け(支払い履歴、タクシー運転手による顧客評価など)が中国人の行動に影響を与えつつある。人々は自分の信用をあげようとして、支払いはきちんとするし、借りたものはきちんと返す行為を促している。

3)最近、この情報を政府と共有化する動きがある。つまり個人情報が政府によって管理されてきている。これはいい悪いの問題ではなく、人々の社会に対する行動が反社会的なものから社会に協力的な方向へ動いている。

4)このような動きを支える中国社会の特徴について、@中国は社会問題は統治者が行うべきもの、A档案にみられるように情報を政府が扱うことに慣れていること、B安全感の方がプライバシーよりも優先されていること、C個人中心の社会であり、競争社会と親和性が高いこと、が指摘されている。

というものだ。

この動きについてさまざまな議論が行われたけど、先進国では社会が成熟していること、個人情報に敏感なことがあるので、このようなシステムを社会にいれることは難しいかもしれないこと、でも途上国ではインドも含めてITによる信用管理は社会をよりよいものにする傾向があるので、導入がすすんでいることなどが指摘されていた。

その一方で、AIによる情報一元化と党運営が衝突してくる可能性もあるかもしれないし、世界的にも情報管理と不管理といった新たな対立軸がでてくるかもしれない、といった意見も出た。

非常に刺激的な議論だった。
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2017年08月22日

問題の設定

前回、六甲フォーラムで報告した時に院生から指摘された、「−−の何が問題なのか?」という質問が頭をついて離れない。

社会科学ではたかだかの「事実」を「問題」として扱う傾向があるかもしれない。

例えば、中国では「都市化が工業化に比べて遅れている」という事実がある。これは、世界の工業化率(製造業比率)や都市化率と比較すれば中国の都市化率は低いということ、また時間軸でみても、中国の製造業比率が上昇していたにもかかわらず都市化率は上昇していないということからいえる「事実」がある。

中国政府はこの事実を指摘して、「都市化」の推進が必要とする。つまり、たかだかの「事実」が「好ましくない」ものとして捉えられ、それが解決すべき「政策課題」になっているということだ。客観的な事実に主観的な価値判断が含まれていることになる。

我々中国経済の研究者も「都市化が工業化に比べて遅れている」ということを疑問を持たずきわめて普通に「問題」としてとらえて、研究しているところがあった。

社会科学は客観的な科学であるべきで、事実と意見(仮説)を立て分けなければならない。ところが、

「都市化が工業化に比べて遅れている」という事実を

「都市化が工業化に比べて遅れている」のは問題である、という価値観が含まれた意見にすり替えているのだ。

これは私にとって大きな発見だった。

中国で「都市化が工業化に比べて遅れている」おかげで、農村工業化が進んだわけであり、郷鎮企業が中国経済をけん引していたという事実がある。「都市化が工業化に比べて遅れている」は問題でない。

何かを研究するとき、つねに問いを立てる必要があるが、問いの立て方にあらためて注意を払おうと思った次第。
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2017年08月15日

六甲フォーラムでの報告

8月8日に六甲フォーラムで「空間的都市化と制度的都市化」について報告。

内容的には、去年中国経済学会(UK/Europe)で発表したもののうち、都市化の概念をさらに整理し、それをなんとなく実証したいと思って、過去のシミュレーションをくっつけたというもの。実証分析については新しいデータを集めて、シミュレーションもブラッシュアップする必要はあるが、とりあえずペーパーを完成させて発表させてもらった。

今後のブラッシュアップのために、議論を備忘録として。

1)概念としては、制度的都市化と中国国内で議論される「人口都市化」の違いが明確でない。
2)都市化のコストとして社会保障や教育投資も考慮する必要があるだろうけど、教育投資は便益でもあるのでたてわけが必要。
3)制度的都市化が遅れていることの何が問題が明確でない。

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2017年08月08日

アジア経済研究所の夏期公開講座

更新が遅れたけど、7月24日に行われたジェトロ・アジア経済研究所の夏期公開講座に参加してきた。

今年のタイトルは「中国経済『新常態』の行方」だった。

講師陣とそのタイトル及び概要を備忘録として。

大西康雄「二期目の習政権と経済の『新常態』」

これまでの習政権の成果としては、一定の成長速度を維持し、構造改革を優先させ、行財政改革に取り組んだこと、新型都市化、貧困撲滅、一人っ子政策の緩和を打ち出したこと、対外経済としては、自由貿易試験区、人民元のSDR化、一帯一路、AIIBの設立などがある。

2015年12月の中央経済工作会議から言われるようになったサプライサイド改革はまだ目に見える成果はない。ただし民間の起業意欲と就業は順調。

見通しとしては、過剰生産能力の解消にはまだ時間がかかる、企業、政府財政は持ちこたえられそうであり、民間企業の起業意欲とイノベーションは持続する見込みである。


大橋英夫「対外経済政策の新展開」

これまでは外貨獲得・技術取得、輸出・直接投資を柱にした蛙飛び型の対外開放1.0であったが、近年産業調整、対外投資を中心として雁行形態的な対外開放2.0に移行している。

2013年に上海に自由貿易試験区が設置され、2017年には第三陣の自貿区が発足した。役割は外商投資に対するネガティブリスト、参入前の内国民待遇である。

2013年より「一帯一路」が提唱され、国境を越えた産業移転(国際産能合作)が進みつつある。


丁可「中国におけるイノベーションシステムの展開方向」

中国の起業意欲は高く、衆創空間(インキュベーター、アクセラレーター、メーカースペースなど各種起業支援組織)が爆発的に増加し、ユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上で非上場のベンチャー企業)もアメリカに追いつく勢い。

中国イノベーションの特徴は、@プラットフォーム企業とプラットフォームユーザーによってエコシステムが形成されている(人口が多いためネットワーク効果も大きい)、A十分な資金力(投資ファンドからタクシーアプリ普及のための補助金合戦)、B後発の利益(弱い抵抗勢力、不十分な法整備)、C産業連関効果、である。

問題点は、@インターネットの基づいたビジネスモデルのイノベーション、Aコア技術の先進国依存、などが指摘される。

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2017年07月25日

北京首都機能の移転

中国での都市化は、政府が主導して行われている。

典型的なのが特区、開発区、新区だ。

今年も首都北京の近郊に新都市を建設する国家計画が動き出している。北京の南西約100キロメートルにある河北省の農村に新都市「雄安新区」をつくる。

それだけでなく、北京の首都機能(政府機関)を東郊外の通州区に移すという。

1)過密化

移転の動機は北京の過密化だ。人口が2300万人を超え、地下鉄、バスなどの公共交通機関はほぼ限界にきている。

古都・北京の特徴的な建物や胡同(細い路地)は取り壊されて高速道路や商業施設、オフィスビル、国有銀行・企業に変わった。


2)人口対策

そもそも過密化とは人口増加現象だ。北京市と周辺の衛星都市にはほぼ2200万人が住む。1950年の人口は400万人、80年は900万人だった。現在の市長は建設用の土地利用を減らし、北京市の人口を2300万人に抑えるとしちえる。

再開発でも、農民工の移住を減らそうとしている。城中村の再開発もさることながら、北京市内では、移住労働者を雇用する町の商店や卸売市場を取り壊す動きが進んでいる。このような施策等により北京市への新規移住者数は15年に半減したという。


3)環境対策

過密化で大きな問題は、環境問題である。北京の大気汚染は有名だが、北京市の拡大に伴って地下帯水層の枯渇が危険域に達しているともみられている。

また同時に再開発時には、新たに建物はつくらず、緑地や公共スペースにするともいう。

つまり都市開発を通じて、人口抑制と環境保全を同時に目指そうとしており、すべてが公共事業につながるという意味で、中国らしい過密化対策ともいえる。

<参考>
「FT北京市、人口抑制で都市機能を一部移転へ」『日経新聞』2017年2月8日
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO12665990Y7A200C1000000/
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