2017年05月18日

一帯一路サミット

北京で「一帯一路」サミットが終了して,どのような成果があったのか,South China Morning Postの報道が簡潔にまとめてくれていたので,簡単に紹介。

1.次回の一帯一路サミットを2019年に開催する。次回の開催までに協議委員会と連絡事務所を準備していくという。

2.国際貿易推進として,国際輸入博覧会を来年開催し,海外製品の中国市場参入を促進する。北京は一帯一路国から次の5年間で1000億USドル分の輸入をするという。

3.習近平は新シルクロードのための基金に100億元追加すると発表。中国開発銀行や輸出入銀行も250億元,130億元の貸出枠を設定する。また中国は次の3年間沿線各国の貧困削減に60億元を拠出するという。

4.全部で68の国と国際機関が一帯一路に関する契約に調印したという。270以上の協力プロジェクトや契約がこのサミット期間に調印されたという。ただし詳細は習近平のスピーチでは触れられていない。

5.中国は異なる国に対してただよう疑念を払拭する必要がある。アメリカ,日本は一帯一路構想に疑問を投げかけており,インドは中国パキスタンの経済回廊に関する紛争のため代表団の派遣を見送った。またフランスやドイツ,イギリスは貿易に関する宣言に調印していない。これらの国々はこの構想が政府調達や社会・環境基準がどうなっているか不透明だとしている。

<参考>
South China Morning Post, Five things to watch as China’s belt and road plan unfolds, 17 May 2017

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2017年05月09日

現代中国経営者列伝

著者の高口さんよりいただきもの。




中国の本屋では日本人経営者も含めて企業経営者の自伝(本書でいう励志書籍)が大量に並ぶ。起業意識が高いという国民性もあるからだろう。

本書はこの経営者立志伝から中国経済史をも述べてしまおうというなかなか「大胆な試み」だ。

私として面白かったのは、学校購買部を経営権請負という形で始まった娃哈哈、青島電動機廠という小さな町工場の工場長から始まった張瑞敏(ハイアール)など、当時の民営化の流れが具体的にわかるところがよかった。

また、地上げ屋の大連万達が国有企業だったために社員研修旅行が規律違反の警告を受けるという話は政府と国有企業の関係を具体的に理解できる事例だった。

立志伝は「思い出補正」(良い思い出ばかりが残ること)バイアスが働いて書かれるので、どうしても「苦労がんばって克服したよ!」といういいことしかない。その意味では、客観性がかけるような気がするが、それでも、中国の改革開放の流れで経営者が時代にそってどう企業を切り盛りしてきたかが生き生きと書かれているので、読み物として楽しめた。

日本では中国経営者の情報が少ない、あるいは経営者視点からみた中国市場情報は少ないので、楽しく読めて中国経済がわかるという意味ではお得である。

(しかし、今思うと昔活躍した企業が結構消えていることに気づいた。中国の変化は激しい。)
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2017年05月02日

東アジアにおける中国のプレゼンス

最近、北朝鮮問題で東アジアの安全保障が揺らいでいる。

北朝鮮の瀬戸際外交にアメリカの堪忍の緒が切れようとしている。これまではアメリカは北朝鮮に対し静観あるいは無視という方策だった(ブッシュ政権時に「悪の枢軸国」として指摘した以外は)。

トランプ政権に代わってから、シリアへの介入をはじめ、アメリカの態度も変わりつつある。このため、今がおそらく第二次大戦後の時期で、もっとも東アジアの安全保障が不安定になっている時期だろう。

よくも悪くも現在の北朝鮮、米国の緊張を和らげるのは中国しかない。安保理の北朝鮮決議に賛成も示し、エネルギー(石炭)の支援も切り始めた。中国もアメリカと歩調を合わせているかのようにも見える。中国が、圧力と対話で、北朝鮮とアメリカの緊張緩和ができれば中国のアジアにおける安全保障プレゼンスは上昇する。

しかし、基本的に中国の対韓半島への政策は冷戦時代と変わらない。米国支援の統一韓半島よりは核開発で暴れる北朝鮮の方が中国にとっては都合がよい。しかし、一方で経済関係は米国、韓国は欠かせなくなっており、その上北朝鮮の軍事エスカレートは日本の右傾化可能性もあるので、このままの北朝鮮政策を見直す必要に迫られているのは確かだろう。

北朝鮮への圧力はその変化の兆しだろうと思う。

一方で対話も強調しているので、もし中国がこの緊張緩和に成功したら、東アジア安全保障面で中国のプレゼンスは非常に高まる(これが日米が望んでいるかどうかは別にしても)。

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2017年04月25日

恵投御礼

執筆者の方々から昨年度以下の本をご恵投いただきました。



本書の特徴は,中国の勃興を追いつつ,「アジア・コンセンサス」というものを提示しようと試みているところです。



本書は,近年指摘されるようになった中国の二重の罠(中所得国の罠と体制移行の罠)の枠組から中国の今後を考えるものです。

執筆者の方々に感謝申し上げます。
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2017年04月11日

2017年度の成果

<論文>

岡本信広(2017)「中国の都市化と経済成長へのインパクト」長谷川聰哲編『アジア太平洋地域のメガ市場の統合』(中央大学経済研究所研究叢書69)中央大学出版部
(クリックすると大学出版部協会の本の案内ページが出ます。)


<報告(査読なし)>

岡本信広(2016)「内陸部の都市化−貴州省を事例に」岡本信広編『中国の「新型都市化」:政策と現状』アジア経済研究所調査研究報告書、pp.20-37


岡本信広(2016)「ジェイン・ジェイコブズと中国の都市化」『別冊『環』22「ジェイン・ジェイコブズの世界」』藤原書店pp.304-312


<書評>
天児 慧・任 哲編『中国の都市化:拡張、不安定と管理メカニズム』(岡本信広)
『中国経済研究』第13巻第1号(通巻23号、2016年3月)pp.96-98
(クリックするとPDFが開きます。)

<学会報告>
Okamoto, Nobuhiro. (2016)"What matters in urbanisation of China?", Draft Paper Presented at the Chinese Economic Association Annual Conference 2016, University of Duisburg-Essen, Germany. 2/Sep/2016
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2017年03月21日

アジア太平洋地域のメガ市場統合

中央大学経済研究所の成果として以下の本が出版。




私は

「第7章  中国の都市化と経済成長へのインパクト」

に寄稿しました。
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2017年03月14日

高福祉国(北欧型)になる条件とは?

デンマーク(コペンハーゲン)、スウェーデン(エルムフルト、ストックホルム)を駆け足で出張して来た。

仕事以外でちょっと感じたことを備忘録として。

北欧は高福祉国として有名だけど、それが成り立つ条件というのがありそうだ。

1)高税金負担
高福祉の財源として、税金、社会保障費の徴収が必要。税金支払いに対して不快感を持たず、高税率に不満を持たない。(なお社会保障は企業負担)

2)国民総背番号制
徴収率を上げて福祉を効率的に分配するためには国民全員の所得等を透明にする必要がある。

3)政府への信頼
税金が無駄なく使われているという安心感、そしてそれが自分に跳ね返ってくるという期待が存在する。それに加えて政治家は清廉であり、少ない給与でも人のために働いていることに喜びを感じている人が選ばれているという信頼。

4)愛国心
徴兵制も含めて国を良くするためには自分も社会に貢献するというボランティア精神が強く、それが高福祉にもかかわらず社会貢献としての勤労意欲につながる。

5)個人と社会の絶妙な関係
働き方が多様であり、個人の都合(嗜好や事情など)を優先しつつ、それを職場や社会と共有する。職場も社会もそれに強く関与せずそれを認める。

感想として日本(もちろん他国も)では難しい。

1)政府に対する信頼はそう簡単に醸成されない。
2)子どもの入学式で休んだ教員が非難される社会で、安心して自分のプライバシーを社会と共有できない。
3)同様に職歴、収入、福祉などを社会に透明にさらすなどは日本にはできない。(北欧では情報がさらされるから高福祉に甘んじて働かないという選択ができないという事情もある。)

高福祉国、つまりある種社会民主主義って個人と社会が情報を強く共有しないと無理なんじゃないかなと思う。いやらしく言うと、相互監視しつつ、個人に干渉しないという絶妙なバランスが必要。卑近な例で言うと、町内の人は各世帯の状況を共有していて、町内会長は清廉な人なので安心してプライバシーを晒し、大好きな町内のためには一生懸命働きつつ、困ったことがあったら助けてもらえるという感じだろうか。

このような社会制度ができるには経済学的には初期条件が大きく効いているような気がする。

北欧という人口が少なく自然環境が厳しい中で、助け合いが必要だったというのもあるかもしれない。例えば、協同組合という考えはイギリスで生まれたけど、デンマークでは早くから農協が発達したらしい。こういうところから相互扶助(逆に言えば相互監視)が発達したのかもしれない。

このような条件がない他の資本主義国で、高税金高福祉をやると企業にとっても消費者にとってもやりにくいと思う。
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2017年03月06日

北アイルランド

中国的には全人代開催中なのですが、関係なく、イギリスネタで(笑)

私が高校、大学生の頃にちょこちょことニュースでアイルランド紛争が報道されていました。その後世界は、天安門事件、ベルリンの壁、アイルランド和平と激動し、その90年代前後を体験できた世代です。

世界で話題になった場所にいっておきたいと思って、2月後半にベルファスト(北アイルランド首都)にいってきました。

ベルファストは、造船、航空機部品等を中心とする重工業都市です。タイタニックもここで作られたようで、タイタニック博物館があり、当時の重工業の発展ぶりが感じられます。

taitanic.jpg

またベルファスト中心部から数マイルいったところの郊外にシャンキル(Shankill)という地域があり、そのあたりが北アイルランド紛争の場所になったようで、たくさんの無実の罪で亡くなった人のを弔うように壁に絵が書かれていました。

Peace Wallというのは、北アイルランド紛争を避けるために、居住地域を分けた形になっています。カソリック(Republican)とプロテスタント(Royalist)を分けていた壁で、ここもたくさんの平和を祈る壁画が描かれていました。

Peace Wall.jpg
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2017年02月14日

議会制民主主義

イギリスが議会制民主主義の発祥の地ということで、Parliament見学に行ってきました。

議会の発祥は、国王が力のある地主たちに相談を始めたということにあるようです(1066年のノルマンディー公の頃)。その後、国王が勝手に権力を悪用して地主たちに課税したりしないように約束させたマグナカルタ(1215年)以降、地主たち(Barons男爵)が政治のことを相談するようになったのが議会という形になってきました。

(その名残が現在の貴族院。ただし貴族院は現在大部分が一代かぎりで、社会に貢献した人(称号をもらった人など)が任命されているようです。でも無給。)

その後、国王の権力は低下していき、イギリス内乱とその後のチャールズ1世の処刑(1649年)で王政が一旦終了し、共和国になります。その後チャールズII世が王政復古を果たし、1688年の革命でウィリアムIII世率いる議会派によって議会制がほぼ完成しました。

現在も、形式は国王(女王)と議会で政治をすすめることになっています。実質は内閣が国王に代わって政治をしています。

parliament.jpg
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2017年01月31日

中国は民主化するのか?

久しぶりにChina Instituteの講演。

Democratizing China: Insights and Lessons from history
Prof. Minxin Pei (Claremont McKenna College, USA)

刺激的なタイトルです。直球で中国の民主化を論じています。

備忘録として。
・どのように民主化が行われるのか。政権崩壊、社会圧力、外部からの影響の3要素がからみあう。一つの要素だけではレジーム交代は説明できない。
・社会圧力は3つ。社会能力の向上(物質的豊かさなど)、社会的な緊張(不平等など)、実行レベルの法律の崩壊(社会不安定、成長の停滞)。
・どのように中国は歴史と比較するべきか。社会の能力、中所得国の罠、政権の寿命の3点からみる。
・(1)社会能力。1人当たりの所得と自由民主国との相関は高い。レジーム転換リスクと所得は逆U字の関係。中所得国のリスクは高い。中国より所得が高くて自由がないのはほとんどが産油国。(産油国は税金を課さなくてもいいので独裁体制を維持しやすい)しかし選挙民主国になった国の年はさまざま。教育レベルからも、転換ゾーンにはある。
・(2)中所得国の罠。罠を抜けでた国は13か国。その中に独裁体制の国はない。スペイン、ギリシャ、ポルトガル、韓国、台湾などは民主化した。
・(3)政権には寿命がある。軍事政権はもっとも短い、一党独裁がもっとも長い(70年ほど)。中国はもうすぐ寿命に来る。
・一党独裁が次の10年まで持つかどうかだ。根拠として(1)2000年以降急激に大学卒業生が増えている。一党システムがこのグループに職を提供できるか。(2)レジーム転換した国の都市化率平均は60%程度。(現在中国は55%程度)(3)クリスチャンの人数が増えている。(4)増加する年金生活者を支えられるか。すでにキャッシュフローとしては支えられなくなってきている。(5)ヘルスケアのGDPシェアも増加している。
・政権崩壊の可能性は3つから観察される。支配層の汚職、権力闘争と団結の喪失、抑圧コストの増加。
・しかし、外部環境をみると、トランプが現れるなど、民主主義への信頼性の低下は中国共産党にとって短中期的な追い風でもある。
・もし政権が変わるとして・・・3つの古典的選択がある。改革(政権側による転換、タイミングが重要。)、革命(軍隊と支配層の分裂)、改革と革命(Refolution-reformとrevolutionの造語)(改革の遅れと革命を引き出す、旧ソ連のケース)。
・政権側が民主的な制度を導入することがなければ、Refolutionになる可能性がある。

感想
これまで共産党に代わる政権担当能力のあるグループが存在しない中で、政権転換があるとは思わなかったけど、中国共産党の中で派閥が現れると、闘争ではなくなにかしらのシステム(選挙等)で民意を問う必要があるかもしれない。

大変面白かったです。

報告者の最近の成果はこちら。

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