2017年12月05日

安徽大学の研究者との交流

12月1日にERINA(環日本海経済研究所)の研究会に参加した。今回は、安徽大学から2名の研究者が来られたので、一般的な話を聞けるとともに、戦略的新興産業の融資についても意見交換ができた。

以下備忘録として、。

安徽省と他省経済水準比較(李光龍)

南京まで1時間、武漢2時間、上海3時間、北京4時間と重要拠点につながる1234戦略がある。安徽・合肥は北京、上海に次ぐ3番目の科学センターイノベーションセンターに指定されており、中国科学院がある。後発性の優位により全国より成長率は2ポイント高い。ただ、1人あたりGDPは全国よりも低く産業構造もサービス業の発展が遅れてるという現状がある。
今後、一帯一路、長江経済帯一体化、京津翼一体化(非首都機能の受け入れ)のチャンスを活かすことが発展への道となるだろう。

安徽省戦略性新興産業融資若干問題研究(斉美東)

戦略的新興産業を発展させるというのは、グローバル経済への対応、中国の持続的発展という環境的要請がある。新エネルギー、新材料、バイオは重要な発展ポイントである。
資金調達は戦略的新興産業の発展を支える。不確実性に対応する必要もある。
政策的金融、商業的金融、ベンチャーキャピタルとしてのリスク投資の3つが現在行われている。現状として規模の経済、集積の経済(安徽省の国家級開発区の数でいうと全国の4位)は働きつつある。
ただし、直接金融市場の発達が遅れ、商業銀行はリスクを恐れ、銀行の産業に対する理解が足らない、中小企業は資金調達に困難、政策性金融は広東に比べても相当低く、政策的基金が民間の呼び水になっていない、などの問題を抱えている。

ディスカッションをして気になったのは、ゾンビ企業の現状についてである。安徽省では破産等は難しく、社会的安定が優先であり、整理は進んでいないという。背景として、李教授が指摘するには、90年代の国有企業改革では一時帰休者が増えても、社会全体は改革を支持していたし、地方指導者も政策的失敗に対しても中央は寛容であったという。今は、社会全体の関心事は多様化しており、また指導者でも反腐敗運動というのもあり政治的な失敗が許されないという。


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2017年11月21日

中国経済経営学会での報告

11月11日、12日に桃山学院大学で中国経済経営学会全国大会が開催された。

一本論文を報告した。

Spatial and Institutional Urbanisation in China

討論者は藤井大輔先生(大阪経済大学)がしてくださり、とても丁寧なコメントをいただいた。上記でもAcademiaでドラフトを公開するけど、コメントに基づいて修正して、はやめにどこかに投稿したい。

論文概要は以下の通り。

The paper casts new lights on the characteristics of urbanisation in China, which has started as a comprehensive social-economic plan since 2014, from the perspective of ‘spatial urbanisation’ and ‘institutional urbanisation’. The paper argues that urbanisation in China is not only just a ‘spatial urbanisation’, the concentration of population in certain areas, which has been commonly observed in developed countries, but also an ‘institutional urbanisation’ in which the institutional barrier has remained to refrain migrants from being city citizens and to suspend enhancing true urbanisation. The econometric analysis indicates that ‘spatial urbanisation’ will boost manufacturing sectors and the economic growth as a result, and ‘institutional urbanisation’ will cause a structural change towards service industry based economy, which could bring about avoiding so-called ‘middle-income trap’. Nevertheless, the advancement of ‘institutional urbanisation’ is highly costly.

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2017年11月07日

The Northeast Asian Economic Review

昨年、ドイツで報告した学会報告が公刊できた。

OKAMOTO, Nobuhiro.(2017) "What Matters in the Urbanization of China?," The
Northeast Asian Economic Review, Vol. 5, No.2, pp.1-13
(リンク先でPDFファイルが参照可能。)

要約
The paper reveals the characteristics of urbanisation in China, which has started as a comprehensive social-economic plan since 2014. This article examines the current ongoing urbanisation process from the perspective of history, the size of city, village urbanisation and cost-benefits of the settlement of rural migrants in cities. Then the paper argues that urbanisation in China is not only just a "spatial urbanisation", which has been commonly observed in developed countries but also an "institutional urbanisation" in which the institutional barrier is imperative to reform if the government eager to achieve the goal of ideal urbanisation.
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2017年10月31日

日本地域学会、PAPAIOS

日本に帰国して、いろいろとお声をいただいて、学会討論者をさせていただいた。

日本地域学会(10月8日立命館大学衣笠キャンパス)では以下の二本。

Akune and Anacker Measuring the vulnerability of the regional food system in Japan
石川・中村 地域経済効果の帰着分析:地域間産業連関モデルの拡張

阿久根先生のものはフードサプライチェーンへの影響を分析するためにゴッシュモデルを用いたもの、石川先生のものは消費者の行動を地元の人が地元の人によって消費されるという点で内生化モデルを構築しようとするものだった。どちらもIOの可能性の広がりを感じられるものだった。

環太平洋産業連関分析学会(10月23日立命館大学おおさかいばらきキャンパス)では、猪俣氏の

Development of Analytical Frameworks for Global Value Chains: the Role of Input-Output Analyses

をコメント。これはアジ研・WTOの付加価値貿易プロジェクトの一部。国際経済学の発展、グローバル化の進展という現実を振り返り、IOによる付加価値分析を位置づけようとするもの。

この2つの学会のコメントをさせていただいたおかげで、今やっている研究(都市農村のIO分析)に関するヒントを多くもらった。
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2017年10月24日

第19回党大会

現在、中国では第19回党大会が開かれているけど、それに関して10月19日木曜日に面白いセミナーに参加した。

中国の政治・経済報道をどう読むか』田原真司(フリージャーナリスト、元日経BP北京支局長)

仮説をたてて報道を読む、また報道の裏側にあるものを推測するという点でも大いに役立つ講演だった。

今回、19回党大会に関連した話では、主要4大紙から注目されるテーマは、

・習近平の右腕である王岐山の去就。
・習近平思想の党規約の明記や「党主席」の復活。(権力強化)
・習近平の後継者指名はあるのか、陳敏爾の常務委員入りはあるのか

という。

人事は党大会あとの19期一中全会で決まるので、もう少し先になるけど、党大会の重要な議題である党規約はどうなるかが、私個人の注目だ。

腐敗撲滅、社会安定を目指す習近平が自らの権力基盤を固めるようさらに独裁色を強めることができるか、でもこれは実は社会にとって反発を生む可能性さえある方向でもある。

田原氏は、常務委員会のトップ7で物事を決めるのが慣例になっているので習近平がそこまで強い独裁色を出すことに懐疑的だった。

いずれにせよ今週木曜日ぐらいから人事を含めて党大会の決定があきらかになる。

ちなみにSouth China Morning Postに面白い記事があったのでシェア。
Why China’s Xi Jinping is unlikely to anoint a successor
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2017年10月03日

私たちの経済を作った50の発明



ティム・ハーフォードの本を読んで面白かったので、紹介。

ちなみにティム・ハーフォードは


で有名で、Kindle版では2版から2013年版(実質3版)となっている。

日本語訳は以下が出ているけど、タイトルで『ヤバい経済学』を意識していてちょっと残念。(でもこの日本語本を読んで思ったけど私としては『ヤバい経済学』よりも面白かった。)




さて、この50の発明というかイノベーションで今の経済がどう影響しているのか、あるいはどう便利になっているのか、あるいはどう形作られたかが述べられている。

「鍬」によって農業生産、定住社会が作られてきた話をして、「有刺鉄線」によって所有権が明確になり、「パスポート」が人の移動を妨げ、「福祉国家」が誕生する、など(ずいぶんと端折ったけど)、50の人の発明品(ものでないことも多い)が私たちの生活を形作っていることがよくわかる。

個人的には、パスポートの歴史が浅いこと、貨幣のはしりとして、取引可能な負債とタリースティック(符丁のあう棒)などが面白かった。

ちなみにこれはBBCの放送で過去のものはポッドキャストで公開されている。

50 Things That Made the Modern Economy
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2017年09月05日

深圳のメイカーズ

弾丸だけど、サクッと深圳に出張してきた。

深圳で起きている新しい物作りのムーブメントを実際に知りたかったからだ。

最初は、伊藤亜聖氏(東京大学)が滞在しているSeg Makersを見学した。ここは日本の物作りのギークたちが情報交換する場所として機能しているようだ。

日本から新しいものを作りたいという人たちが集まるとともに、中国はもちろんのこと世界から来ている人たちと交流することが可能となっている。設備はパソコンだけだが、物作りに必要な3Dプリンターなども置かれている。そもそもこの建物は中国の秋葉原ともいうべき電子電気部品の卸売市場でもあり、試作品をすぐに深圳のサプライチェーンを使って生産することが可能である。

新しい物作りにHAXというアクセラレーターが深圳に来ている。元はサンフランシスコのベンチャーキャピタルである。世界中の物作りに興味あるグリークたちが競ってアイデアを出し、3%という狭き門をくぐりぬければ10万ドルを株式と引き換えに手に入れることができる。

二件目は、Luke Hendersonが開設しているラボ、STEAM HEADである。3Dプリンターを含めて物作りに必要な道具が所狭しと置かれており、またベッドも用意して世界の物作りグリークたちの居場所となっている。彼は主に教育面でのワークショップを開催しており、道具の使い方を近所のインターナショナルスクールの先生方に教えている。Lukeによると、今深圳には多くのメイカーズ空間があり、コアメンバーは20人ぐらいだという。またメイカーズには2種類あるという。一つは中国政府が資金力で持って開設するメイカーズ。これらには人が集まらず、機械のメンテナンスもあまりよくないという。もう一つは個人のホビーとしてはじめるメイカーズ。こちらの方が活気があると言う。彼のラボはインターナショナルスクールからファンドをもらって毎月5000元の家賃を賄っている。また知り合いからの依頼で物作りに関わりその報酬で生活している。

結局重要なのは人の出入りと活気あるコミュニティの存在である。

三件目に訪問したのはアメリカン・インターナショナル・スクールである。ここでは学校の中にメイカーズスペースを作り、PBL教育が行われている。子供たちが、社会の不便さをモノを使って解決しようとするものであり、物を作るだけでなく、損益計算をしてどう販売するかを考えたりする。総合型のプロジェクトである。教員、保護者の理解を得て、ほとんどの授業をこれでやっており、数学、理科、社会、英語(国語)を一体化させて社会と関連づけて行なっている。

これまで深圳で起きていることは、メイカーズというコミュニティと空間でアイデアが事業になるという単純な利益追求のスタートアップ支援というイメージだったが、今回の訪問で、もっと深いもの、単純に物作りが好きという人たちが集まり、コミュニティーを形成しているということだ。

まだ目に見えて何か世界を変えるようなモノが生まれているわけではないが、何かが起こりそうという意味で大変面白いムーブメントである。
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2017年08月29日

中国の情報化社会

先日「情報化する中国の個人 働き方生活は、どう変わるか(8/24)イブニングセミナー」に参加してきた。 最近のIT化の中国を直接体験されている人の話を聞きたいと思ったからだ。

講師、セミナー概要は

田中信彦「「信用」が中国人を変えるスマホ時代の中国版信用情報システムの「凄み」」Wisdom


とほぼ同じ内容であるが、最近の情報が聞けて大変勉強になった。

概要は、

1)中国のアプリが進み、タクシー、出前、出会い、などなどさまざまな場面でIT化している。

2)このIT化によってアリババの子会社「芝麻信用」(アントフィナンシャル)の信用点数付け(支払い履歴、タクシー運転手による顧客評価など)が中国人の行動に影響を与えつつある。人々は自分の信用をあげようとして、支払いはきちんとするし、借りたものはきちんと返す行為を促している。

3)最近、この情報を政府と共有化する動きがある。つまり個人情報が政府によって管理されてきている。これはいい悪いの問題ではなく、人々の社会に対する行動が反社会的なものから社会に協力的な方向へ動いている。

4)このような動きを支える中国社会の特徴について、@中国は社会問題は統治者が行うべきもの、A档案にみられるように情報を政府が扱うことに慣れていること、B安全感の方がプライバシーよりも優先されていること、C個人中心の社会であり、競争社会と親和性が高いこと、が指摘されている。

というものだ。

この動きについてさまざまな議論が行われたけど、先進国では社会が成熟していること、個人情報に敏感なことがあるので、このようなシステムを社会にいれることは難しいかもしれないこと、でも途上国ではインドも含めてITによる信用管理は社会をよりよいものにする傾向があるので、導入がすすんでいることなどが指摘されていた。

その一方で、AIによる情報一元化と党運営が衝突してくる可能性もあるかもしれないし、世界的にも情報管理と不管理といった新たな対立軸がでてくるかもしれない、といった意見も出た。

非常に刺激的な議論だった。
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2017年08月22日

問題の設定

前回、六甲フォーラムで報告した時に院生から指摘された、「−−の何が問題なのか?」という質問が頭をついて離れない。

社会科学ではたかだかの「事実」を「問題」として扱う傾向があるかもしれない。

例えば、中国では「都市化が工業化に比べて遅れている」という事実がある。これは、世界の工業化率(製造業比率)や都市化率と比較すれば中国の都市化率は低いということ、また時間軸でみても、中国の製造業比率が上昇していたにもかかわらず都市化率は上昇していないということからいえる「事実」がある。

中国政府はこの事実を指摘して、「都市化」の推進が必要とする。つまり、たかだかの「事実」が「好ましくない」ものとして捉えられ、それが解決すべき「政策課題」になっているということだ。客観的な事実に主観的な価値判断が含まれていることになる。

我々中国経済の研究者も「都市化が工業化に比べて遅れている」ということを疑問を持たずきわめて普通に「問題」としてとらえて、研究しているところがあった。

社会科学は客観的な科学であるべきで、事実と意見(仮説)を立て分けなければならない。ところが、

「都市化が工業化に比べて遅れている」という事実を

「都市化が工業化に比べて遅れている」のは問題である、という価値観が含まれた意見にすり替えているのだ。

これは私にとって大きな発見だった。

中国で「都市化が工業化に比べて遅れている」おかげで、農村工業化が進んだわけであり、郷鎮企業が中国経済をけん引していたという事実がある。「都市化が工業化に比べて遅れている」は問題でない。

何かを研究するとき、つねに問いを立てる必要があるが、問いの立て方にあらためて注意を払おうと思った次第。
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2017年08月15日

六甲フォーラムでの報告

8月8日に六甲フォーラムで「空間的都市化と制度的都市化」について報告。

内容的には、去年中国経済学会(UK/Europe)で発表したもののうち、都市化の概念をさらに整理し、それをなんとなく実証したいと思って、過去のシミュレーションをくっつけたというもの。実証分析については新しいデータを集めて、シミュレーションもブラッシュアップする必要はあるが、とりあえずペーパーを完成させて発表させてもらった。

今後のブラッシュアップのために、議論を備忘録として。

1)概念としては、制度的都市化と中国国内で議論される「人口都市化」の違いが明確でない。
2)都市化のコストとして社会保障や教育投資も考慮する必要があるだろうけど、教育投資は便益でもあるのでたてわけが必要。
3)制度的都市化が遅れていることの何が問題が明確でない。

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