2013年02月19日

『都市は人類最高の発明である』

都市経済学者が書いた都市の本です。きちんとした研究成果とジェイコブズと同じように具体的な事例で都市を論じています。



先進国では、都市は混雑するもの、リタイヤ後は田舎で暮らす、などのイメージがあり、どうしても都市は嫌われているところがあります。本書は、原著題名『都市の勝利(Triumph of the City)』となっており、都市の良さを主張しています。

主張をまとめると

都市は人類のお互いが学び合うという能力を発揮する場所であり、その人類の強みが拡大してきた場所である。

です。都市はなぜ成長するのか、その原因は、人的資本が互いに触発しあうことであるとしています。アイデアの交換こそが都市を発展させる原動力なのです。

内容をピックアップしてみましょう。

都市は、人と企業の間に距離を持たない場所です。ニューヨークが没落の危機から再興した事例をあげ、輸送費が下がったために人と企業間の近接性が高まり、アイデアが交換され、都市成長のダイナミクスが働いたとしています。

ただ輸送費が下がると、近接性は重要でないように思われます。遠くからでもアクセスが可能になるわけですが、グレイザーは逆に近接性が重要にになるといいます。

ジュボンズの相補性原理(*)を指摘しながら、人的資本にとって対面コンタクトは情報技術の発展に不可欠になったといいます。

また、研究によると、特許は地理的に近い特許を引用しながら登録されるそうです。もし輸送費が低下して遠くの情報にもアクセス可能になっているならば,特許という情報は地理的に関係のない発明になるはずです。しかし実際には特許も、地理的距離に影響を受けています。

そのため都市の近接性は、都市の発展に重要となってきたのです。

都市は生産性も上昇させます。都市人口比率が1割増加すれば大卒の生産性や1人当たりのGDPは3割上昇するという研究もあります。

都市は環境にも優しいです。公共交通機関を使うことによって車の排気ガスやCO2の排出が減らすことができます。

また都市は災害にも強いといいます。都市部での災害における被害率は田舎より低いそうです。

グレイザーは、ジェイコブズが批判した高層ビルを擁護します。ビルは少量の土地に大量の人を収用できる都市において合理的な存在だと主張します。

都市はどうなると衰退するのでしょうか。

デトロイトの例を上げながら、インフラが経済の強さを上回る、すなわち過剰なインフラ建設が都市を衰退させるといいます。そこから導かれる都市政策は、税金や規制に対しては穏健であること、学校や安全、アメニティなどの公共サービスを充実させることだ、と。

都市政府の仕事はインフラ建設ではなく、都市住民の面倒を見ること、人的資本としての教育サービスを提供すること、になります。

大変おもしろい本でした。

*相補性原理:蒸気機関の発明により、エネルギー効率があがるために石炭消費が減ると期待されるが、実際には石炭消費は増加すること。
posted by okmtnbhr at 07:44| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする