2013年03月28日

『都市の原理』

やっぱりジェイコブズです。都市を考える上で、彼女の本は欠かせません。

『都市の原理』が新装されて入手しやすくなりました。



以前紹介した『都市の経済学』(エントリはここ)と重なる部分がありますが、『都市の経済学』が発展している地域と発展していない地域との関係に重点が置かれていましたが,本書は都市の形成に焦点をあてているのが特徴です。

本書の主張は,

都市は新しい仕事が追加される場所である。分業が増加し仕事が多様化する。輸入していたものを都市内部で置換し輸出していくことで都市は成長する。

というものです。

ジェイコブズは,ニュー・オブシディアンという黒曜石(オブシディアン)がとれる場所を設定します。農耕が発達するまで,狩猟民たちが黒曜石を求め,また黒曜石が売れることを知った狩猟民は交易品としてニュー・オブシディアンに定着します。

定着した狩猟民はニュー・オブシディアンを集落として形成していきます。食糧を他地域から輸入するとともに食糧を管理する仕事が増えます。穀物や家畜を管理,屠殺する仕事が増えます。生活の間に偶然あるいは意図的に育てやすい穀物や植物の種や苗を発明し,あるいは新鮮な肉を供給するために集落内で家畜を飼うようになります。輸入食料から自給食料に変化していきます。

集落の人口が増加していくと,集落の周辺に放牧地や穀物や植物の栽培が行われるようになります。農耕文化の発達と定着です。

ニュー・オブシディアンは交易都市として発展していきます。黒曜石を運搬する入れ物や普段の食糧を管理する入れ物などを輸入していましたが,交易の増加とともに入れ物の管理をする人々が入れ物を自分たちで作るようになります。大量に作り始めると,質が向上し,これがまたニュー・オブシディアンの重要な輸出品に変わっていきます。

このように,都市の発展とは,輸入置換の過程です。輸入したものを都市で蓄積しておき,地元の産業がそれらを製造することが可能になり,そして輸出していく,この一連の過程が都市の発展となります。

ところで,ジェイコブズは,都市が農村をつくったのであり,農村から都市がつくられたのではないと主張します。例えばアダム・スミスもマルクスも農業がさきにあっってそれから工業や商業が起こったと考えているが,これは間違いだと強く批判します。工業や商業が栄えている地域は農業地域の農業よりも発展している,都市が農業を創造する,と。


都市・地域経済学をやる人の必読文献です。


ところで『都市の経済学』はタイトルを変え、出版社も移って新しく文庫になって提供されています。






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2013年03月19日

けんかつオープンカレッジ 「中国で、何が起きているのか」

埼玉県県民活動総合センターのオープンカレッジで,「中国で,何が起きているのか」というタイトルで五回の講座を開催します。

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以下の話をする予定です。

第1回 5/11 あふれる中国製品の秘密
Made in Chinaがあふれる私たちの生活。なぜ中国製が世界中で氾濫するのか、ファブレス化する(工場をもたない)多国籍企業と中国について考えます。

第2回 5/25 環境問題とその対応
2013年1月に北京で外出規制が出るほどの大気汚染が発生しました。大気や水汚染と政府の対策について紹介します。

第3回 6/1 ニセモノと知的財産権
中国といえば、ニセモノというイメージがあります。しかし国家的な知的財産権戦略を展開し、訴訟件数はアメリカを超えています。最新の知財の状況について解説します。

第4回 6/8 一人っ子政策と戸籍
一人っ子政策、農村と都市を分ける戸籍制度。これらは日本人が理解し難い中国独自の制度です。なぜ制度が存在するのか、その理由を説明します。

第5回 6/15 日中友好は可能か?
昨夏の尖閣諸島国有化と中国で発生した大規模デモ。今年は交戦論も出てきています。日中友好はありうるのか、ゲーム理論から考えていきます。


講座案内はこちら

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2013年03月16日

誰が環境汚染の費用を払うのか?<岡本式中国経済論50>

1.はじめに

1月半ばから北京の大気汚染が話題になりました。北京のみならず多くの都市で汚染を示すPM2.5が上昇したといいます。

私も2月下旬に北京に行きました。やはりスモッグというか霧で500mぐらいしか先を見通せない感じです。

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北京オリンピック前後から、大気は改善したように思いましたが、中国の大気汚染は深刻なものだったことがわかります。


2.原因と対策

このような大気汚染は何が原因になっているのでしょうか。中国科学院大気物理研究所のモニタリング調査によると、北京の微小粒子状物質「PM2.5」の最大の発生源は、自動車で、その比率は約4分の1。その次は石炭業と輸送業で、それぞれ5分の1を占める、といいます。これで全体の65%となります。

石家荘(河北省)では、燃料7割、工業生産2割、交通運輸1割という数値も出ています(ただしネットで出回っている情報で、その根拠は見つかりませんでした)。

数値はさておき原因は

自動車 と 工場 と 石炭(暖房燃料)

であると言えそうです。

まず、工場への罰則が低いということが問題です。

WSJの記事から

===
中国で排出ガスに関するデータの報告を拒否した場合の法令に基づく罰則金の最高額はわずか5万元(約75万円)で、排出基準を上回った場合の罰則金も最高でこの2倍の10万元にとどまる。罰則金に関しても透明性を欠いているが、国営メディアによると中国の環境保護省は2011年に、監視装置を停止させたり、データを操作したり、ガス排出量が基準を上回ったりした11の発電所に罰則金を科したという。

違反企業には中国電力投資集団公司、中国国電集団公司、中国華電集団公司、中国大唐集団なども含まれている。米経済誌フォーチュンの「グローバル500」にも選ばれている中国大唐集団は国有企業であり、所有する3つの発電所が違反を犯していた。それぞれの施設の罰則金の合計が15万元を超えたことはない。

規制の執行にあまり透明性がないとはいえ、工場がなぜ不正を行うかは容易に理解できる。すでに設置が義務付けられている排出ガス制御装置を使うよりも、基準を上回る排出量に対する罰則金を支払う方が安上がりなのだ。
===

次に、中国では自動車の排出基準と燃料であるガソリンの質が議論されています。

新車(自動車)の排ガス基準は、国家1級排出基準(国I)、国家2級排出基準(国II)と分けられており、もっとも厳しい基準は国家4級(国IV)です。国IIIは2004年から導入され、国IVは北京(08年)、上海(09年)の大都市が先行して導入していますが、国III以上の自動車は全体の4分の1以下です。したがって、大部分の自動車の排ガス基準は古いままですので、実際の排ガス基準が効果を示すにはまだ時間がかかるでしょう。(排ガス基準はあくまで新車だけですので、中古車市場には基準が適用されるようになるかどうかはなんとも言えません。)

もう一方で、中国の自動車燃料(ガソリン)の質についても議論になっています。

現在、中国ではヨーロッパ基準を導入しています。硫黄含有量の低い燃料を供給することが求められています。国Vは欧州規制「ユーロV」に相当しますが、国Vでは硫黄含有量の上限が10ppmに抑えられます。

実際の中国では、2010年5月に国III基準(硫黄含有量の上限が150ppm)が導入されているのが現状です。広東、上海では2010年8月に国IVが導入され、2012年6月に北京では国Vが導入されました。

2月に発表された新規制によると国Vは2014年までに中国全土に導入するとしています。

問題は、国IV、国Vであっても現実には「過渡期」ということで中国石化(国有大企業)は国III基準のガソリンを供給している疑いがあることです。実際、硫黄含有量を減らすには脱硫装置をガソリン精製工場に設置しなければなりませんが、企業のコストが増加することでもあるので、全面的な導入が遅れています。中国石化は世論の流れを受けて、今年の2月1日に自己のグループに属する9つの企業に対して来年から全面的に国IV基準のガソリンを供給するように指示しました。

また北京市内のガソリンスタンドでも国Vの基準を満たすガソリンは少ないのではないかという報道もあります。


3.経済学がいう環境対策

経済学では、環境問題を外部性の問題として捉えています。経済取引以外の側面で他の経済主体に影響を与えるものが外部性です。

ガソリンの売買を考えてみると、ガソリンを購入して自動車に乗る、のは経済取引ですが、それによって排出される有害ガスは外部性の問題になります。

そこで経済学では、外部性を内部化する、すなわちガソリンの取引において排ガス分を含めた価格で取引するようにしようとします。例えばガソリンが100円で取引されるときに、排ガス対策を政府が行うための費用などとして環境税を10円徴収するようにします。

そうすると、ガソリン価格が110円になるので、今までよりも高くなり、ガソリンの使用料は減ります。消費者が自動車運転を控えることによって、環境にやさしい経済活動が可能になります。

もう一つの解決方法は所有権をはっきりさせるということです。

大気というのは誰のものかわかりません。そこで大気を汚せる量(排ガスを排出できる量)を各企業に割り当て、節約できたらその枠を売り、枠をオーバーしたら他から買うというシステムを導入します。いわゆる排出権取引です。でも企業に排出権取引を課すことはできても個人には不可能です。

ですから現状としては環境税を導入することによって、環境に悪い物質の取引を抑えることが理想となります。


4.誰が負担するのか?(谁来买单?)

さて問題は環境税のような環境保護の費用を、「誰が負担するのか」という問題があります。

上海で国IV基準が採用された時には、1リットルあたり0.3元、北京で国V基準が採用されるようになった時には0.2元、ガソリン価格は上昇したといいます。つまりガソリンの精製工場の脱硫装置コストは消費者に価格転嫁されました。今回の中国石化の決定、全燃料を国IV以上にするコストは誰が負担するのか話題になっています。

中国石化は国有企業であり利潤率も大きい企業です。一般庶民としては中国石化に利潤を圧縮してコストを負担してほしいという願いもあります。

一方で、大きな声では言ってませんが、政府・国有企業も国民のガソリン消費を減らしてもらいたいという気持ちもあります。3月に開かれた全人代でも環境保護は企業と家計の意識改善が必要であると主張されています。家計自身も環境保護に責任を負ってもらいたいという意図の表れでしょう。

1972年OECDは環境費用の負担については「汚染者負担の原則」(PPP: Polluter-Pays Principle)を打ち出しています。生産工程で出た有害ガスを排出する工場については、環境を汚した費用を汚染を排出した工場が持つべきだという考えです。

汚染者負担の原則から考えると、自動車利用による大気汚染の費用は誰がもつべきでしょうか。自動車メーカーか、ガソリン精製工場か、はたまた消費者でしょうか。

自動車メーカーやガソリンメーカーが環境保護の費用を消費者に負担させるのも問題ですし、すべて自動車メーカーやガソリンメーカーが負担するのも問題です。

社会システムとして3者による費用負担の分担が理想ですが、「どれだけ」負担するのかは、環境保護にどれだけ費用がかかるか、費用を明確にする必要があります。また「どれだけ」の汚染に関する費用を、3者がそれぞれ負うべきか、決定するのは難しいです。

経済学の教科書としては、環境汚染費用の内部化を説くわけですが、実際にその汚染に関する社会費用を計算することは技術的に難しいのが現状です。

<参考>
「北京の大気汚染、自動車の排気ガスが最大の汚染源に―中国科学院調査」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130206-00000004-xinhua-cn、2013年2月28日アクセス)
「【オピニオン】中国の大気汚染減らすには本物の透明性と罰則強化が不可欠」『ウォール・ストリート・ジャーナル』
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324406204578288792798576094.html?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesFirst
「中国大気汚染の絶望的な排出源構成と規制遅れ」『Blog vs. Media 時評』
http://blog.dandoweb.com/?eid=157231
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2013年03月14日

『中国−奇跡的発展の「原則」』

新刊が発売されました。

岡本信広(2013)『中国−奇跡的発展の「原則」』アジア経済研究所
(*クリックするとアジ研の出版物コーナーに飛びます。)

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これは,さまざまな側面をもつ(多面性の)中国のうち,ある側面を取り出してモデルとして分析します。分析のキーポイントは「政府の退出」です。多面的な中国モデルを「政府の退出」で説明します。

取り上げた中国のモデルは
 社会主義市場経済モデル
 経済発展モデル
 移行経済モデル
 開放経済モデル
 持続的成長モデル
 中国独自のモデル
です。最終章で,よく取り上げられる「中国モデル」についても論じています。

ネット書店でも扱われるようになってきました。(Amazonはまだなようですが。。。)

よろしければお手にとっていただけるとうれしいです。

政府刊行物全国官報販売協同組合ではこちら

楽天ブックスではこちら

紀伊国屋BookWebではこちら

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2013年03月12日

関東教育サロン

3月8日(金)に「関東教育サロン」が大東文化大学で開催されました。関東の大学を中心に教育を語り合う、比較的ざっくばらんな会議です。

名古屋や大阪からも参加者があり、本学の参加者も合わせて40名ほどの大学関係者が参加してくださいました。

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目白大学の佐藤先生より、国語表現(書く力、話す力、読む力)という授業でライティングワークショップを行なっている報告がありました。これはびっくりしました。学生がいきいきと上手に発表しています。

この話題提供から、他大学の先生方と学生が主体的に学ぶようにする授業についてDiscussionすることができました。

気づいたことは3点。

学習の枠組みとして、座席指定やグループ形成について教員が介入するのは必要であろうということ。

信じて、見守って、待って、楽しむということが教員に必要なこと。

学習目的と評価をクリアにすることによって学生が何を学ぶのかを明確にすること。

です。非常に有意義な1日を過ごすことができました。

参加していただいた多くの大学関係者の方々、事務をしていただいたラーニング・バリュー社に感謝です。ありがとうございました。
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2013年03月07日

中国企業に関するセミナー

ちょっと時差エントリーですが,2月15日(金)にNNA.ASIA主催の中国企業に関するセミナーに参加しました(参考URLはこちら)。

中国企業の四季報が出版されて,そのお披露目も兼ねているようでした。

第一部は中国会社四季報を編集した杉本りうこ氏の講演でした。

国進民退が言われる中で,改革が必要となっている。財政政策や金融政策などの機会が民間と国有では不平等になっている。大陸,香港を合わせると上場企業は4000ほどになりアジア第1位である。民営企業の多くは増収増益であり,成長率も高い。一方で国有企業には大株主としての国の存在は小さくなりつつあるが,「実質支配者」というものがあり,これが企業ガバナンスに影響を与えている。

という内容でした。

第二部は「注目すべき中国のリーディングカンパニーの取り組みについて」,TNCソリューションズの呉明憲氏の報告です。

小売で有名な蘇寧は,ウォルマートとamazonの良さを併せ持ち,なんでも取り扱う「大蘇寧」を目指している。中国の小売の特徴は,棚においてもらうためにメーカーが支払う費用が大きいため,サプライヤーの負担が大きい。万科という不動産企業は住宅から商業不動産にシフトしつつあるが,在庫の増加,前受金の増加の傾向がある。

というものでした。

おみやげに『中国会社四季報』をもらいましたわーい(嬉しい顔)

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2013年03月05日

2013年2月読書ノート

2013年2月読書ノート

今月の紹介は『文明』です。



発売当初からあまり評判がよくなかったのですが、それでも面白い1冊でした。

似たような本で、バーンスタインの『豊かさの誕生』があります。



この2つの本から西洋が発展した原因を比べてみます。

ファーガソン    @競争 A科学革命 B私的所有を守る法の支配と代議制 C医学の発達 D消費社会 E労働倫理
バーンスタイン  @私有財産権 A科学的合理主義 B効果的な資本市場 C効率的な輸送・通信手段

ファーガソンのDとEは議論を呼ぶところでしょう。実際、キリスト教的労働倫理の良さを挙げるのは過去いろいろありましたが、それを証明するのは難しいように思います。

それでもファーガソンの面白かったところとして、中国が台頭するかどうか、を述べているところがあります。

彼は中国の台頭を否定的に見ます。彼によると、日本と同じように失速するであろうと。社会不安(所得格差と男性が多い)があり、発言を求める中産階級の動きがどうなるか、周辺諸国の間でかなり反中国の気運が高まること、があげられるとしています。


<経済学>

マリル・ハート・マッカーティ(田中浩子)(2002)『ノーベル賞経済学者に学ぶ現代経済思想』日経BP社 データによる科学的手法が発展し、帰納法を使うようになった。利己的な個人のインセンティブシステムと社会の中の取り決め、制度に注目されている。一番ホットな分野は情報の経済学。

ロバート・J・バロー(仁平和夫)(1997)『経済学の正しい使用法―政府は経済に手を出すな』日経新聞社 貧しい国には民主主義よりも、経済体制(財産の保護と自由市場の原理)を整備することが先。経済の自由を根付かせることができれば経済成長は加速し、民主化が進む。

ロバート・J・バロー(中村康治)(2003)『バロー教授の経済学でここまでできる!』東洋経済新報社 身体的魅力も知性と同じく賃金に影響を与える。中絶の合法化は犯罪を減少させる、薬の高価格は開発インセンティブを支えている、反トラスト法は弱い企業を守るだけ、など。

ゲーリー・S・ベッカー、ギディ・N・ベッカー(鞍谷雅敏岡田滋行)(1998)『ベッカー教授の経済学ではこう考える―教育・結婚から税金・通貨問題まで』東洋経済新報社 インセンティブに歪みをもたらす政府規制、移住資格の競売化、差別撤廃ブログラムは有効ではない、厳罰化が犯罪を減少、独占には参入の奨励を、など。

ディビッド・フリードマン(上原一男)(1999)『日常生活を経済学する』日経新聞社 人は各選択肢の中で最も得(費用よりも便益が大きい)なものを選択する合理性を仮定する。個人の行動が合理的であっても集団になった時に悪い結果になる。合理性に潜む陰鬱な世界である。

ディビッド・オレル(松浦俊輔)(2011)『なぜ経済予測は間違えるのか?-科学で問い直す経済学』河出書房新社 経済学は人間の行動についての数理モデル。しかし、経済は独立した個人が経済法則に従って動く、合理的で効率的、経済成長は永遠に続く、といった前提は誤解である。

ディヴィッド・R・ヘンダーソン、チャールズ・L・フーバー(高橋由紀子)(2006)『転ばぬ先の経済学』オープンナレッジ 経済学は人生の意思決定に役立つ。増加分を考えるとものを明確に考えられる、価値を判断するには機会コストを考える、誰でももの見方にはバイアスがある、など。

ディヴィッド・オレル(望月衛)(2012)『経済学とおともだちになろう』東洋経済新報社 ピタゴラス、アリストテレスの思想から、近年の金融工学、スウェーデン国立銀行賞まで。ケネーの重農主義、スミス国富論、マルクスへ。ワルラス、パレートなどが新古典派経済学を。ケインズ、フリードマンへ

ジョン・マクミラン(伊藤秀史林田修)(1995)『経営戦略のゲーム理論-交渉・契約・入札の戦略分析』有斐閣 ゲーム理論は、人の行うことが他人の行うことに依存し、誰も結果を1人でコントロールすることはできないような相互作用を考えるための道具。プレイヤーの選択の余地、利得を考える。

中村宗悦(2005)『経済失政はなぜ繰り返すのか―メディアが伝えた昭和恐慌』東洋経済新報社新書 昭和恐慌期の金解禁論争では新平価解禁論者の議論が結果として正しかった。しかし浜口・井上の主張する旧平価解禁こそが昭和恐慌を乗り切る政策と報道した大新聞の責任は大きい。

山崎昭(2010)『ケーススタディ ミクロ経済学入門』日本評論社 主婦の月給から消費者行動を、落語の千両みかんから企業行動を、牛丼の価格下げから企業間競争を、福袋から情報の経済学を、ゴルフのかけから不確実性の意思決定を考え、解答例から筆者が解説。

ジョン・クイギン(山形浩生)(2012)『ゾンビ経済学-死に損ないの5つの経済思想』筑摩書房 ビジネスサイクルは安定したという大中庸時代仮説、株価は全ての情報を含む効率的市場仮説、ミクロ的基礎をもつDSGE、恩恵は周辺に伝わるトリクルダウン仮説、民営化はいい、はすべて破綻。

太田聰一(2010)『若年者就業の経済学』日経新聞出版社 若年失業の特徴は他世代より高く、自発的離職が多くて、失業と就業の行き来が活発。自社内育成を重視する日本企業は企業業績とスキル継承のため若年採用に。中高年が過剰ぎみだと若年採用は抑制される。近年の若年雇用施策は豊富。

エドワード・グレイザー(山形浩生)(2012)『都市は人類最高の発明である』NTT出版 都市は人と企業の距離がない場所であり、人類が持っているお互いから学ぶという能力を活かす。アイデアの交換が都市を成長させ、一国の成長を支え、幸福感をもたらし、環境に優しくなる。

ジェイン・ジェイコブズ(中江利忠加賀谷洋一)(2011)『都市の原理 (SD選書)(新装版)』鹿島出版会 鹿島出版会 都市は新しい仕事が追加される場所。輸出という仕事に対して輸出を助ける仕事が追加される。輸出に必要な輸入財を自分の地域で置き換える輸入置換が都市の成長過程である。

ニコラス・ワプショット(久保恵美子)(2012)『ケインズかハイエクか: 資本主義を動かした世紀の対決』新潮社 ケインズの雇用には政府が介入すべきという主張に真っ向から反対したハイエク。ケインズ主義は私たちの生活に浸透したが1970年代半ばよりハイエクが再評価されるようになった。


<中国>

ニューズウィーク日本版編集部(2012)『中国超入門-これだけは知っておきたい中国社会の基礎知識』阪急コミュニケーション 地理・民族、経済、政治、社会・歴史を簡単に。10都市を紹介し、言論で注目を浴びる中国国内のキーパーソンを詳しく。

毛里和子・園田茂人編(2012)『中国問題: キ−ワードで読み解く』東大出版会 統治の安定を分析する共産党、社会安定、農民工、土地と戸籍、人民解放軍、日中関係、海洋権益、対外援助、経済全球化、中国モデル、歴史観から中国を読み解く。

真家陽一編(2012)『中国経済の実像とゆくえ』日本貿易振興機構 4兆元の負の遺産、内需への転換、人民元、エネルギー環境が中国経済展望の視点。自動車、流通、水、金型、産業ロボット、介護産業の動向。日系企業の課題とリスク。

波多野淳彦(2012)『中国経済の基礎知識(改訂新版)-世界第二位の経済大国を支える制度と政策』日本貿易振興機構 第11次五カ年計画は規劃になり、第12次五カ年規劃(ビジョン)は環境と公共サービスを拘束性の目標とし、他は予期性目標に。行政制度と企業管理の法律を解説。

久保亨編(2012)『中国経済史入門』東大出版会 近年の中国経急成長を可能にした歴史的背景、近現代の経済発展が立ち遅れた理由、中国経済の構造的特質に関する見方を検討すること、の3つが経済史を学ぶ課題。19世紀末から現在までのアウトラインと先行研究の案内。

柴田聡(2010)『チャイナ・インパクト』中央公論新社 2008年9月のリーマン・ショックにより中国は歴史的危機に。国務院主体で内需拡大、増値税の還付率引き上げ、利下げなど政策を総動員。09年後半にはV字回復。規模拡大路線の副作用として土地依存、農民工賃金の上昇、国進民退など。


<社会>

ニーアル・ファーガソン(仙名紀)(2012)『文明-西洋が覇権をとれた6つの要因』勁草書房 西洋が覇権をとれたのは、競争、科学革命、私的所有を守る法の支配と代議制、医学の発達、消費社会、労働倫理である。アジアはこれらのキーアプリを導入することにより発展してきた。

ニーアル・ファーガソン(仙名紀)(2009)『マネーの進化史』早川書房 銀行、債券、株式、保険や不動産というマネーの制度的イノベーションは、資源を有効に活用できるが、熱狂と暴落を繰り返してきた。理由は未来は不確実、人の認知バイアス、突然変異と自然淘汰の繰り返し、である。


<その他>

ウィリアム・パウンドストーン(松浦俊輔)(2004)『パラドックス大全-世にも不思議な逆説パズル』青土社 我々が物事を理解するとは何か。「スペイン国王は牛である」は間違えているようだが、可能性として正しい。「すべての牛は紫である」がつながると逆説がありそうなので正しさが揺らぐ。

百田尚樹(2010)『モンスター (幻冬舎文庫)』幻冬舎 人から容姿をけなされ続けていた和子は、働いていた工場での出来事をきっかけに整形美容に力を入れる。容姿が変わることによって得たもの失ったものは何か。高校時代の憧れの人との恋は本物だったのか。

辻井正次、NPO法人アスペ・エルデの会編(2012)『楽しい毎日を送るためのスキル-発達障害ある子のステップアップ・トレーニング』日本評論社 アスペ・エルデの会が実施してきた療育方法。自分の感情に気がつくためのワーク、人とコミュニケーションをとる練習など、行われてきた合宿などの紹介。

清水一行(1994)『虚構大学 (光文社文庫)』集英社文庫 神官養成で実績をあげる伊勢大学の教務課長、学生課長の理想的な大学論から、元公認会計士、高校開設に実績のある千田孝志に大学設立の依頼がくる。文科省、銀行とのやりとり、財界政界を巻き込んでの大学開設に突き進む。さまざまな人間模様。
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