2013年06月13日

成都の土地改革

重慶の「地票」で重慶の都市化が注目されていますが,就業,戸籍改革については成都の方が進んでいますし,土地取引においても成都の改革はもっと注目されてもいいように思います。葉裕民(中国人民大学城市規画与管理系)も早くから成都の改革に注目し,重慶よりも評価すべきと語っている一人です(例えばここ)。

成都は2003年より都市農村一体化改革を始めました。2004年には農業戸籍と非農業戸籍の二元化を一本化し,居民戸籍化を進めてきました。2008年には成都市農民が個人の借家に入っている場合は居民戸籍がもらえるとともに,2010年の『成都全域都市農村の統一戸籍を実現して居民の自由な移動を認めることに関する意見』が出て,2012年には戸籍の統一管理ができるようになりました。これにより住んでいるところで戸籍をもらうことが可能になります。

公共サービスについても都市農村の統一化が行われています。2003年以来成都市の農村では新型の農村合作医療と農民年金を徐々に普及させました。このシステムを基礎に2008年成都は『都市農村居民基本医療保険暫行弁法』を試行するとともに,2010年『成都市都市農村養老保険暫行弁法』を実施。全市住民の基本医療保険,年金の政策と待遇を一致させました。

社会保障を先行させながら,成都は土地改革を行います。農村財産権(産権)制度改革です。

成都の特徴は土地の財産権を取引するガチな市場経済化です。

2007年に都市農村一体化総合改革試験区に指定されるとともに土地改革が本格化します。まず,2008年の年初,都江堰柳街鎮鶴鳴村が全国でも最初の財産権を確定する村となりました。請負地の面積,宅地の面積を図り,それを土地財産権確定証明書として発行し,農民が受け取ります。これまでは家庭生産請負制による農民の生産に対する積極性を引き出してきました。さらなる積極性を引き出すために土地の財産権を確定するという段階まで進んだことになります。国有企業が80年代請負制を導入し,90年代は所有権の改革を行いましたが,農村では国有企業に遅れること10〜20年で所有権(正確には財産権)の改革が始まったことになります。

2008年4月より都江堰,大邑,温江,双龍の4区県を試験地域として財産権確定運動に宣伝員が導入されます。しかし大きな問題が発生します。家族構成の変化,結婚離婚,請負権の賃貸などによりどこまでが自分の土地でどこまでが他人の土地か財産権を確定することは非常に困難を極めます。この調整が始まった当初農村の村書記は大声で農民間の調整を行うので声が枯れたといいます。結局,郷鎮政府が関与することはやめ,村民小組による群衆解決方式を採用します。具体的には村民議事会を設置して,利害関係のある農民同士が話し合いをするという方法をとりました。ただ財産権確定の過程で一部の農民は土地を小さく申請しており,今まで税金を過少深刻していたことが発覚したりしたそうです。いずれにせよ2012年7月末で成都市の5割弱の土地の財産権が確定したようです。

次は流通です。大邑県韓場鎮は農業産業化が進展している地域でした。1万8千ムーの土地のうち1万ムーが流通しました。村の土地の50%以上が流通し,これにより農業の大規模化を行うことができました。農民には賃貸料が入るとともに出稼ぎに出ることによって収入が増加しました。

流通の場は,2010年7月に設けられた農村財産権取引所(産権交易所)です(HPはここ)。

ここでは土地請負経営権,林権,農村家屋所有権,集団建設用地使用権,農村集団組織株式権利,農業知財などさまざまな財産権が取引されます。2012年の時点で15万回以上,370億元以上の取引が実施されました。

問題は,18億ムーという国家の農地保護最低ラインをどのように守るのかということです。

成都では「耕地保護基金」を40億元準備しました。例えば,双龍県興隆鎮のある農民の事例です。彼は請負地を7ムー持っていました。政府と耕地保護契約を交わすことによって2331元のお金が入ることになります。そのお金で農村養老保険(年金)を買うことにより耕地を守りながら老後の保証を得る形になっています。

耕地保護の補助金基準は,一般農田400元/ムー/年,一般耕地300元/ムー/年となっています。農地を保護することによって毎年補助金が得られることになります。ただし補助金は現金で手元に入るわけではありません。直接養老保険に回されます。農地保護と社会保障を掛けあわせている形です。


さて,重慶との違いを考えてみましょう。

重慶では,開発権の取引であり,成都は財産権の取引です。どちらかといえば重慶は土地開発が主眼であり,成都は農民の土地権利の確定という目的があります。成都の方が「公有制」を建前とする中国において土地の資本化につながる動きになっています。

ちなみに,推計によると全国の土地を資本化させると土地価値はGDPの3倍,A株市場の6倍にもなるようです。このように土地が「宝」を生むのは間違いなく,これからも土地をめぐってさまざまな経済主体による利益衝突が起こることでしょう。


<参考文献>
易小光等(2013)『統城郷発展的就業,戸籍与土地利用制度聯動研究』中国経済出版社
http://finance.cnr.cn/txcj/201211/t20121105_511302096.shtml
「[深水闯关]土地改革:成都,从确权到流转(上)」中国広播網2012年11月5日,2013年6月7日アクセス
http://finance.cnr.cn/txcj/201211/t20121106_511310051.shtml
「[深水闯关]土地改革:成都,从确权到流转(下)」中国広播網2012年11月6日,2013年6月7日アクセス
http://finance.people.com.cn/nc/GB/8389800.html
「成都市创新耕地保护机制 农民保护耕地可得实惠」人民網2008年11月23日,2013年6月7日アクセス
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする