2013年07月30日

丸川知雄『チャイニーズ・ドリーム』

丸川知雄さんより『チャイニーズ・ドリーム』をご恵投いただきました。

この本は,民間企業の旺盛な参入意欲や成長の事例から,中国ではお金も技術もない普通の大衆が資本家になり,それが中国の経済成長の原動力になっている,ということを説明しています。

事例では,温州における民間企業の勃興と集積,携帯産業における小さな資本家たちの起業,アメリカに上場までするようになった太陽電池,電動アシスト自転車を電動自転車にして輸出する,レアアースに参入する資本家たち,などがあげられます。

産業発展について,政府は国有企業が主導になって秩序ある発展を望んでいます。でも規制が空白であったり規制がほころびたりすると,その隙間を狙って大衆資本家が殺到します。

大衆資本家が起業する大衆資本主義というこの現象について,丸川さんは資本主義の勃興期,産業の成長期にはありがちなこととしながらも,中国の特徴は大衆資本家の参入規模が大きく,ライフサイクルが速いことだとしています。




これは下記の本の続編に近い位置づけです。この本では国有企業が市場経済に対応していく様子を明らかにしている良書です。チャイニーズドリームと合わせて読むと中国の企業についての理解がすすみます。


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2013年07月23日

都市が消えるのか?アメリカ・デトロイト

7月19日にびっくりするニュースが流れました。アメリカ第9位の都市・デトロイト市が連邦破産法第9条の適用を申請しました。都市の破産です。日本でも夕張市の破綻がありますが,都市が破綻するのは非常に稀なケースといえるでしょう。

背景には,自動車産業主体の都市デトロイトにおいて,1980年代ごろから自動車産業が衰退していったということがあります。GM,クライスラー,フォードの3社が中心の都市でしたが,2009年にはGM,クライスラーは破綻します。それでも再建支援を受けながら,産業の立て直しをはかっていました。

市も新興産業として映画産業に目をつけます。それでも映画産業で自動車産業から生み出される失業者を吸収しきれるほどではなかったようです。

問題は人口移動です。郊外に人々が移住し,中心部の人口は2000年の90万人から2012年の75万人ほどに減少しました。都市中心地のビルや住宅地はゴーストタウン化します。

人口が減少することにより,財政収入が減少します。そもそも自動車が斜陽産業となり市の税収に大きな影響を与えていました。にも関わらず多くの社会インフラを抱えています。都市を維持するための支出は減りません。

そのうち公共サービス提供にも大きな影響を与えます。警察による問題解決率は1割程度といいますし(全米平均は3割以上),救急車を呼ぶ費用と時間も全米平均よりも高いといいます。

都市にとって公共サービスはとても重要です。公共サービス低下は人口衰退に拍車をかけます。

今回の事件は「都市の衰退」ということを考えさせられました。日本でも多くの都市で人口が高齢化し,「限界集落」という言葉が時々マスコミに登場します。人口が減少すると都市は都市でなくなるという意味で,都市からの撤退をどのようにするのか,成熟社会の新たな課題になるのかもしれません。

<参考>
「惨めな都市1位のデトロイトがかなり世紀末状態だった…」『NAVERまとめ』2013年2月25日(ariamaruhodoさん)
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2013年07月18日

山内太地さんの講演

7月16日火曜日,アジア概論の前期最終授業で大学研究家の山内太地さんを招聘し,「アジアの大学事情と君たちの将来」と称して特別講演を行っていただきました。

アジアの中で,日本は人口,経済成長ともに鈍化し,中国やインドをはじめとする他のアジア諸国の存在が大きくなっていること,そのため日本国内の就職機会は減るとともに,海外の若者と競争することになるだろう,という見通しを示されました。

インドネシアでの大学で学ぶ若者,多元的国家であるシンガポールの大学などを紹介しながら,海外で雄飛する人材になる必要がある,と学生たちに檄を飛ばしていただきました。

写真 (21).JPG

その後の懇談会でも多くの学生が山内さんの周りに集まり,有意義な意見交換ができました。多くの学生のモチベーションがあがったことと思います。

写真 (22).JPG

今年の1年生からも海外で活躍する人材が出てくることを期待したいです。

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2013年07月16日

日本企業の収益の1割は中国!?

ジェトロの世界貿易投資白書を読んでいたら面白い記事を見つけたので,ちょっと紹介。

ジェトロの調査によると,日本企業の収益の半分はほぼ海外から来るようになってきているそうです。具体的な統計をみてみると,以下のようになっています。


     営業利益の地域別比率
        国内  海外
                米州  欧州 アジア その他
2006年度    73.5  26.5  9.1   4.1   8.3  5.1
2007年度(866) 67.1  32.9  8.7   6.8  12.2  5.2
2008年度(890) 47.5  52.5  1.9   3.6  39.4  7.6
2009年度(887) 56.5  43.5  9.5   3   23.8  7.1
2010年度(375) 46.9  53.1  14.1   3.4  24.6  11.1
5年間平均   58.3  41.7  8.66  4.18  21.66  7.22

(注)括弧内は企業数,アジアにはオーストラリアなどの太平洋州が含まれている。
(出所)日本貿易振興機構編(2012)『ジェトロ世界貿易投資白書2011』(「I.世界経済・貿易・直接投資の現状」p.36)

ビジネスですので年によって収益のソースは変わります。そこで5年間平均をとってみました。ここからいえることは,日本企業の収益は6割国内,4割海外です。4割の海外のうち2割がアジアになっています。

日本の対外直接投資は北米欧州の方がアジアを上回っているにも関わらず,アジアからの収益が高いということになります。もちろんアジアへの直接投資は増加傾向にありますし,北米欧州への投資は景気の変動にも影響されます。それでもアジアへの投資とその収益の増加は確実に言えます。

アジアへの直接投資の行き先は,中国がトップです(2位はタイ)。日本企業のアジアからの収益は全体の2割ですが,この中で中国の占める割合は過半を超えていると想像されます。つまり日本企業の収益のうち1割は中国であるといえます。これは米州とほぼ同じ数字ですので,アメリカ・カナダにならぶ大きさです。

日中関係が冷え込んでいます。政治関係が緊張しても経済関係が冷え込まないのは,日本企業の収益にとって中国は切っても切り離せない存在になっているから,といえるからかもしれません。
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2013年07月11日

中国はインフラ建設での「民間資金活用」先進国!?

最近,中国の短期金融市場の利子率が急上昇し,それにより明らかになったことがあります。中国のインフラ建設は税金で賄うのではなく,民間資金が活用されているということです。

道路,港湾,空港,鉄道,通信,電力,水道など社会的インフラは民間に任せると供給されない,あるいは供給量が少なくなるので,政府が建設すべきだというのが経済学教科書が教える内容です。つまり公共財は政府が供給しましょう,ということです。

ところが近年では,経済成長の成熟にしたがって税収の伸びの低下,また民間にできるものは民間で,という流れの中でインフラを民間資金で建設(あるいは維持)するのが世界的潮流になってきました。

実は昨今のシャドーバンキング,理財商品関連のニュースで明らかになったのは,中国は昔から民間資金でインフラ建設が進んでいる,「民活」(民間資金活用,PFI:Private Finance Initiative)先進国だったということです。


1.日本の事例

日本は税金でインフラ建設が行われてきました。税金でインフラ投資ができるのは,

インフラ建設→民間企業の成長→税収の増加

という高度成長期の時期,インフラ建設が外部経済を生むときでした。

しかし,税金だけでは限界があります。そこで活用されたのが郵便貯金をはじめとする財政投融資方式のインフラ建設でした。民間が預けた郵便貯金は,政府の会計を通じて特殊法人(道路公団,空港公団,国鉄など)に流れ,インフラが建設されました。これが財政投融資いわゆる財投です。(これが丼勘定で行われていたために,郵貯と特殊法人改革が行われたのは記憶に新しいところです。)

また,政府は財投債(国債)を発行することが可能でした。政府の保障で財投債を発行し,資金を集め,インフラ建設が行われました。しかし政府が特殊法人を通じてインフラ建設を行うと,特殊法人には親方日の丸のため,事業リスクに無頓着になるとともに,インフラのサービス提供の質も低下するという問題が指摘されるようになりました。

2000年に多くの特殊法人が自立した一事業体として経営するようにするため,道路公団などの公団は民営化されていきました。と同時に財投機関債の発行が認められ,民間資本の注入,それにともなってインフラ事業体の経営を効率化することが期待されました。

現在のところ,日本政策投資銀行・公営企業金融公庫・首都高速道路公団・水資源開発公団・中小企業金融公団・国際協力銀行などの独立行政法人が財投債を発行しています。

民間資本のインフラ建設への活用のメリットは以下があげられます。

インフラ事業へのリスクの意識が高まり,運営や維持における経営が真剣になる(効率化する)こと。
財投債や財投機関債などのインフラ関連債権市場が充実してくるにつれて,インフラ事業を市場が評価すること。


2.中国では・・・

中国では1980年代から民間資金がインフラ建設に流れ込んでいました。インフラ建設を担当する地方政府は税収が少なく,また地方債権を発行することも不可能でした。そのためにできたのが広東国際信託投資公司(GITIC)に代表される各地方の信託投資会社です。銀行制度や金融市場が整っていない中国ではインフラ事業を債権にして外国資本に買ってもらって資金調達するというのがもっとも便利な方法だったのです。

近年では,融資平台(プラットフォーム)というのが開発されました。地方政府のインフラ建設(不動産建設も含む)のための資金調達方式です。融資平台が銀行から融資を受けたり,債権を発行して民間からお金を集めて,インフラ・不動産開発会社に投入されていきました。

2011年ごろから理財商品や影の銀行(シャドーバンキング)が注目されるようになります。融資平台への銀行融資が制限されるようになると,信託投資会社が復活してきます。信託投資会社は融資平台の債権を購入し,小口化し理財商品として民間に販売するようになります。結果,民間資本が信託投資会社,融資平台を通じてインフラ事業へ投資されていきます。

<日本と中国のインフラ建設資金の流れ>

Infrastructure Money.jpg

このように中国では改革開放から民間資金が活用されてインフラ事業の建設や運営が進められてきました。この意味で中国は「民活」(PFI)先進国といえます。


3.問題

もちろん手放しでよろこんでいられません。信託融資方式によるインフラ建設にもリスクがあります。それは@事業評価の質,A債権市場の成熟度,です。

インフラ建設の事業評価やリスクがきちんと勘案されて債権が発行されているかどうかということです。根拠もなく「○○新区電力事業は完成後毎年○億元の収益を生みます!」と謳って,適当に債権を発行すると,購入する側は情報の真偽を検討する術をもたないのが一般的です。いわんやそのようなさまざまな事業体が発行する債権を合わせて小口化した理財商品のリスクを評価することは大変難しくなります。さまざまな債権がゴッタ混ぜにされそれが小口化されるという手口はサブプライムローンと似ています。そのため建設した工場団地に誰も入ってくれないというようなことになったら不良債権化します。これがバブル崩壊につながるのでは,というように心配されているわけです(黄・常・楊2012)。

もう一つは債権市場が機能しているかどうかです。実は民間資本がインフラに流れ込むのは政府が規制している金融抑制という状況から脱出するために生み出された金融イノベーションという見方があります(巴2013)。中国の銀行が低金利に人為的に抑えられているために,資金の貸し手である家計は銀行に預けるインセンティブがありません。インフラ建設をした地方政府は資金需要があります。しかし地方政府は債権を発行することもできず銀行から融資を受けることも不可能です。このような閉塞的な状況から自生的に発生した資金市場がシャドーバンキングの背景にあります。市場が発生したばかりの時には多少の混乱があるでしょう。とくに資金の需給市場,債権の取引がきちんとした情報のもとで行われているかというと疑問があります。

政府もこのシャドーバンキングを抑制するあるいは管理する方向です。この管理を誤れば実体経済へ悪影響をおよぼすことになるでしょう。

でも,シャドーバンキングが市場として成熟すれば,中国はPFI先進国になるかもしれません。

<参考文献>
『日経新聞』2012年12月15日,2013年6月19日
黄益平・常健・楊霊修(2012)「シャドーバンキングは中国版サブプライムローン問題を引き起こすか」『季刊中国資本市場研究』2012Summer
巴曙松(2013)「金融構造の進化からみる現在の「シャドーバンキング」『季刊中国資本市場研究』2013Summer
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2013年07月09日

2013年6月読書ノート

2013年6月読書ノート

今月の一冊はこれ。



私たちの人間関係は,親子関係を引きずっています。それは親から子へ,「心理的な脅迫」(ブラックメール)が発信されているからです。

心理的脅迫をする人は無意識に恐怖心、義務感、罪悪感という武器を組み合わせて人を屈伏させています。このような人と接していると,脅迫を受ける側は,失う恐れ、やらなければならない、私が悪い、という感情が先に立ち、自分の健全な自我、統合性を失ってしまうそうです。

本書はそのためにどうしたらいいのか,一歩下がって冷静に相手のメッセージを解析することを勧めています。そうすることによって自我を守ることができます。

筆者のスーザン・フォーワードの書籍では下記もオススメです。




<経済>

マイケル・テーラー(松原望)(1995)『協力の可能性―協力,国家,アナーキー』木鐸社 国家が存在するのは国内の治安を守り外敵から国民を守ること。これは一種の公共財供給問題であり、集合行為問題である。囚人のジレンマから人々の協力可能性を探る。これはホッブズ、ヒュームの政治理論にも通じる。

飯田泰之(2012)『飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)』光文社新書 価値判断から一歩身を引いて個人の選択が積み重なって社会ができると考える(方法論的個人主義)。社会的に望ましいことはより多くの個人がより満足な状態にあること。これが経済学の思考の基礎。

西内啓(2013)『統計学が最強の学問である』ダイヤモンド社 統計学はデータを集めて分析することによって最速最善の答えを出すことが可能。教育、医療、心理、経済など多くの学問がエビデンスを求めて統計学を使わざるを得ない。

本川裕(2012)『統計データはためになる!』技術評論社 大きさなど数量を直感的に示す棒グラフ。時系列推移、ランキングなど数字を「実感」するのに力を発揮。日本の公務員数、犯罪などの世界比較、都道府県別の自給率、大企業への就職率、就職者数、人口ピラミッド、避妊などを棒グラフで実感。

J.M.ブキャナン、G.タロック、加藤寛(1998)『行きづまる民主主義 (公共選択の主張)』勁草書房 民主主義は再分配手段として利用される。全員一致よりも費用がかからない不安定な結論を導く多数決を採用するために利益誘導をもたらし、政府を肥大化させる。(中村まづる「解題:ブキャナン、タロック〜」)

マンサー・オルソン(加藤寛)(1991)『国家興亡論―「集合行為論」からみた盛衰の科学』PHP研究所 安定的な社会は集団行動の組織を増やしていく、特殊利益組織や共謀は社会的効率や総所得を減少。分配結託は意思決定に時間がかかり、排他的になる。分配結託が増えると社会発展の方向が変化。

岩田規久男(2012)『インフレとデフレ (講談社学術文庫)』講談社学術文庫 デフレ予想は貨幣の資産需要を増加させ、貨幣が取引に使われないが、インフレ予想は株式購入や外貨預金の購入など貨幣が取引に向かい総需要の増加をもたらす。日銀による政策レジームの転換が人々の期待を変化させる。

岩田規久男(2012)『日本銀行 デフレの番人』日経プレミアシリーズ 日銀がインフレ目標にコミットし、マネタリー・ベースを増やすと予想インフレ率を上昇させ、円安、株高、予想実質金利の低下をもたらし、総需要を拡大させ、デフレに終止符が打たれる。

片岡剛士(2013)『アベノミクスのゆくえ-過去・現在・未来の視点から考える』光文社新書 長期停滞の主因はデフレと円高という貨幣的現象。アベノミクスは実は一本の矢であり、それは大胆な金融政策。これにより機動的な財政政策や民間投資を喚起する成長戦略につながる。所得再分配視点はない。

<中国>

津上俊哉(2013)『中国台頭の終焉 (日経プレミアシリーズ)』日経プレミアシリーズ 成長の富は様々な形で官に留保されてきた。国家資本主義を打破し、成長の富を民間へ還元し、都市農村の二元化を解決していくのが新政権の課題。長期的には生産年齢人口が減少していく中、中国がGDPで米国を抜くことはない。

興梠一郎(2013)『中国 目覚めた民衆 習近平体制と日中関係のゆくえ』NHK出版新書 無数の社会問題は党・政府を悩ましている。出稼ぎ農民による反日デモ、城管への反感、土地収用、環境破壊への集団抗議などが新政権の課題。尖閣問題への意識の違い、政治体制への不信などが日中対立へ。

<自己啓発>

南壮一郎(2010)『絶対ブレない「軸」のつくり方』ダイヤモンド社 金融機関をやめてスポーツビジネスへ。アメリカのスポーツエージェント事務所に飛び込み、楽天イーグルスの立ち上げに関わる。やりたいことを書き出しそれを軸にする。本当にできないのかを検証し、小さな一歩を踏み出す。

柴田昌治(2010)『なぜ社員はやる気をなくしているのか(日経ビジネス人文庫)』日経ビジネス人文庫 対話を繰り返しながら知恵を生み出していく創造的な時間が働く喜びを取り戻し組織に活力をもたらしていく。黒子的な役割をするスポンサーシップで問題意識を持つ社員の孤立を防ぐ。

<社会問題>

橘玲(2012)『不愉快なことには理由がある』集英社 進化心理学は,幸福よりも不安や絶望をより多く感じるようになっている,という。貧困や失業などは人の不合理な行動や遺伝によって生み出されている。問題解決には市場、価値観の多様化、進化に則した制度設計が必要だ。

マネー・ヘッタ・チャン(2012)『ヘッテルとフエーテル-本当に残酷なマネー版グリム童話』幻冬舎文庫 自己啓発系はセミナーを続け、本を書き続けないと儲からない、人が逆らいにくい寄付援助のサギ、無料や偶然を装いカモにするビジネス、国家側にたてばインチキ情報で儲け放題。

デヴィッド・ハーヴェイ(森田大屋中村新井)(2013)『反乱する都市-資本のアーバナイゼーションと都市の再創造』作品社 資本主義は剰余生産物を吸収し続ける都市空間の形成を必要とする。労働者は略奪と搾取を受けている。都市コモンズを奪回し都市形成過程の集団的管理が課題となる。

引頭麻実(2013)『JAL再生』日経新聞社 衆目にさらされた再生への圧力、稲盛氏によるリーダーシップとリーダー教育、リーダーの価値観と考え方を変えるとともに、JAL企業理念、フィロソフィー共有の活動を行う。現場での採算制度を導入するとともに、社員一人一人が自ら考えて動く。

<その他>

坂口菊恵(2009)『ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略』東京書籍 ナンパによくあう女性は短期的配偶戦略への指向が高く、そのような人は周囲の期待に合わせて感情表出を調整するセルフモニタリングの傾向が強い。短期的配偶戦略は男性的であり、テストステロン濃度の高さとも比例する。

デヴィッド・M・バス(三浦彊子)(2001)『一度なら許してしまう女 一度でも許せない男 嫉妬と性行動の進化論』PHP研究所 嫉妬は配偶関係の脅威に対する適応的シグナル。嫉妬の感情を隠すのは配偶市場において相対的価値が低いことを悟られないようにするためである。

ヘレン・フィッシャー(大野晶子)(2005)『人はなぜ恋に落ちるのか?恋と愛情と性欲の脳科学』ソニー・マガジンズ 恋愛感情は脳内の動機システムであり、人間の根本的な交配衝動。恋愛は性的衝動を刺激。恋愛、性欲、愛着は男女の安定的関係維持と別の交配機会との間で進化。

ランディ・ソーンヒル、クレイグ・パーマー(望月弘子)(2006)『人はなぜレイプするのか―進化生物学が解き明かす』青灯社 雄雌の性淘汰の働き方は養育投資の違いによって決まる。男性は養育投資が小さいので性淘汰では多数にアプローチする。進化理論はレイプの至近要因を解明するのに有効。

鈴木鎮一(1966)『愛に生きる』講談社現代新書 すべての子どもはよく育つと信じ、「才能教育」という落伍者を出さない教育運動を展開。子どもは環境の中で言語を身につけるのと同じように、成長するもの。教えるのではなく育てる、育つ生命を基本に教える教育から育てる教育へ。

貫井徳郎(2010)『灰色の虹』新潮社 あいまいな目撃証言のみで殺人犯にしたてあげられた江上雅史。証言を強要する刑事、適当な目撃者、曖昧な弁護士、警察の事件をそのまま処理する検察、様々な要因が重なり最高裁でも冤罪は晴れなかった。家族と婚約者を失った江上が出所後とった行動は…

伊賀泰代(2012)『採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの』ダイヤモンド社 リーダーシップとは、成果を求めるもの。リーダーシップはスキルであり、マッキンゼーでは、バリューを出す、ポジションをとる、自分の仕事のリーダーは自分、ホワイトボードの前に立つ、で学ぶ。

スーザン・フォワード(亀井よし子)(2012)『となりの脅迫者 (フェニックスシリーズ)』パンローリング 人に心理的恐喝を与える「ブラックメール」。発信者は恐怖心、義務感、罪悪感という武器を組み合わせて人を屈伏。受信者は自分の健全な自我、統合性を失ってしまう。

ジョー・ナヴァロ、マーヴィン・カーリンズ(西田美緒子)(2012)『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』河出文庫 大脳辺縁系が感じる快適、不快がノン・バーバル行動に現れる。いやなこと、驚異を感じたあとはなだめの行動,顔、首を触る,がでる。足は体の中で最も正直な部分。

A.R.ホックシールド(石川准室伏亜希)(2000)『管理される心―感情が商品になるとき』世界思想社 客室乗務員は自己の感情を管理し笑顔を売るという感情労働である。資本主義社会とサービス産業の発展により人々は感情から疎外される。感情管理が私的生活で自然な感情を失わせる可能性も。

池谷裕二(2012)『脳には妙なクセがある』扶桑社 笑顔をつくるとドーパミン系の神経活動が活発化し楽しくなる。睡眠は記憶力を改善。瞑想は脳を効率化する。私たちは自分の意志で決めていると思っても環境による反射にすぎない、だからよい経験がよい反射を生む。

中村うさぎ(2008)『私という病』新潮社文庫 目の前の女が自分の欲望を刺激する存在であろうとなかろうと、その女を断罪したり罰したりする権利は男にはない。女の存在や肉体はその女自身のものである。女は性的客体ではなく売春という行為で性的主体性をもつことができるのではないか。

山崎朋子(2008)『サンダカン八番娼館』文春文庫 明治初期から始まった東南アジアの日本人娼館とからゆきさん。天草のおサキさんが高浜の女衒田中太郎造に売られたのは10歳の時だった。ボルネオ島サンダンカンで娼売させられる。借金返済と故郷への送金で身をすり減らす。
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2013年07月04日

エビデンスにもとづいた自己啓発本

自分を変えようとして失敗することはよくあります。語学の勉強を続けようとしても続かないとか,ダイエットを決意しても3日で終わるとか,部屋をキレイにすると決意しても3日も経てば汚くなっているとか,決意しても決意倒れすることはみなさん経験があると思います。

自分を変えるための本は,一般に自己啓発本と呼ばれます。自己啓発本は気合いを注入するもの,出来もしないけどなんかできるようになった気にならせるもの,さまざまです。

自己啓発も科学的なエビデンスにもとづいた時代になったな〜と思わせる本が

『スタンフォードの自分を変える教室』



です。この本は心理学や行動経済学などの実験結果にもとづいて,自分をどのようにコントロールするか,人間がもつ行動の癖を科学的に把握し,それを理解してコントロールしようとするものです。

人の意思決定は,本能で行うもの,意志力で行うものがあります。カーネマンの『ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?』でいうヒューマン(ファスト)とエコン(スロー)の二つです。

私たちは,何を決めて行動に移す時に,深く考えて判断する時と反射的に判断する時があります。一般に深く考えて行動する場合いい結果をもたらす(合理的な行動をもたらす)のですが,反射的に反応する場合は大体不合理な結果に陥ってしまいます。

しかし私たちはほとんどの行動を無意識で反射的に行なっているところがあります。

例えば,私たちは野菜を食べると体にいい感じがするので,その分肉を食べ過ぎてしまいます。ステーキ専門店でサラダが無料なのは,体にいいサラダを食べているのだから,今日は肉を一杯食べてもいいだろうと思わすためです。この判断は反射的・本能的に行なっているため,私たちは意識していません。

いいことをしたあと,多少悪いことしてもいいだろうと本能が考えることをモラル・ライセンシングといいます。このモラル・ライセンシングは私たちが何かを決めてやろうとした時に大きな障害になります。いいことを3日続けたらすぐにご褒美と称してダイエットを台無しにする行動(お菓子やケーキの食べ過ぎとか)をとるように仕向けられてしまうからです。

いいことをやっていなくても,想像するだけで人は次の悪いことを行う準備ができるようです。例えば,ボランティアをやっていないけど,参加する,と決めた時に人はすでに自分への褒美を考えてしまいます。つまり決意した瞬間からもうその決意を覆すための準備がされていることになります。

「偽りの希望シンドローム」というのがあるそうです。それは何かいいことをする,自分を変えるために何か新しい行動をとると決めると,それを想像して自分の気持ちが良くなります。でも実際に行動を始めるとつらくなってやめたくなります。先にいい気持ちになったために実際の行動の時にツライ気持ちが増幅されてしまい,続けることができないという結果に陥ります。

さて,ダイエットとか部屋掃除とか何かを決めてとりあえず続くようになったとしましょう。でもそれを妨げることが発生します。

それが「どうにでもなれ効果」というものです。一度ハメを外してしまうと,そのあと落ち込んでしまいます。でもその後まあいいかとなってしまいさらにハメを外してしまうということが人間にはあります。

この場合,自分を「許す」ということが重要だそうです。試験勉強をサボった学生への実験では,前回試験勉強にまじめに取り組まなかった学生の中で,そういう自分を受け入れた人とそうでない人では次の試験での取り組みが違うそうです。反省という自己嫌悪感に浸るのではなく,自分はさぼるときもあるんだなと受け入れることによって,次の試験は頑張れるという効果があるようです。

私たちの脳や心理は,決意が続かない,ように仕組まれているようです。ですので,反射的に行動するのではなく一呼吸おいてから行動することが重要なようです。

 
『やる気の科学』は,人の行動の問題を把握した上で,続ける工夫を紹介しています。



私たちはそもそも将来のことよりも現在の問題が大きく感じてしまいます。将来的な体重50kgよりも現在のケーキの方が重要に思えます。このように現在のことを将来のことよりも大事に思う心理を行動経済学では双極割引としてとらえます。現在の方が価値があるように感じ時間が未来になるにつれて価値を感じなくなってくる現象です。

将来の目標達成のために現在の行動をどのように管理するか,それを経済学用語ではコミットメントといいます。簡単に言うと,自分の現在の選択に制限をかけてしまうということです。インターネットを立ち上げるとすぐにネットサーフィンををはじめて時間を無駄にしてしまう場合,パソコンの立ち上げと同時に一定の時間インターネットに接続できないソフトを活用する方法があります。このように自分の選択を狭める工夫がコミットメントです。

(ちなみにインセンティブは値付けによって行動を誘導することです。インセンティブがアメだとするとコミットメントはムチの側面を持ちます。)

ダイエットしているというのを公言するのも,後に引けなくとなる(周囲から監視を受ける)という意味でコミットメントですし,毎週決まった時間に体重計に乗る(定期的にモニタリングする)というのもコミットメントです。このように自分の選択を縛ることで私たちは決めたことを続けることが可能になります。

でも,自分の選択を狭めて頑張っていると,先ほどみたように人は自分を甘やかそうとする誘惑が働きます。急に自制心を発揮しようとするとがんばっている自分に酔ってしまい,「どうにでもなれ」になりかねません。

エアーズは,自制心というリソース(資源)には制限があるといっています。私たちの自制心は制限された量しかないので,がんばって使いすぎると枯渇してしまい,自制心がなくなってしまいます。ですから頑張りすぎるのも考えものです。実験によると,好きなもの(クッキーや映画)を我慢した学生にある作業を行わせると効率は低下するようです。我慢したり自制心を発揮したりするのは必ずしもいい結果にはなりません。日本語的には「自我蕩尽(じがとうじん)」(自分を使い果たしてしまうこと)になってしまうのです。


以上の2冊もいい本でした。さらにその上を行くのが

『WILLPOWER 意志力の科学』です。



心理学で有名なマシュマロの実験で我慢ができた,できなかった5歳児を追跡調査した結果,我慢ができた自己コントロールの強い子供は大きくなっても成績がよかったり,高収入な職業についていることが判明したそうです。つまり成功の鍵は自分をコントロールする自己抑制力であり,意志力です。

実際に意志力は時間の関数的なところがあります。先にもみたように,現在をがまんして将来的に得する行動を今行うという性質があります。あるいは時間をかけて行動を完成させていく気持ちが意志力です。

この本でも意志力は消耗することが示されています。保釈申請をした囚人の保釈を認めるかどうかという判事の実験では,意志力が消耗している時(仕事で難しい判断をたくさんしたあと)は安易に保釈を認めない方向に判断しがちだそうです。

意志力を取り戻すにはグルコース(糖分)を補給する方がいいです。判事の実験でも昼食やおやつのあとは保釈の確率があがるそうです。だからといって糖分のとりすぎはダイエットにはよくないので,果物や野菜,GI値を急激にあげないものを口にするのがいいでしょう。

さて,意志力は将来的な目標を成し遂げる力です。そのためには現在やりたいことを我慢してやるべきことをやらないといけません。その時に効果があるのが「計画」です。児童や生徒を対象にした実験では,長期であっても短期であっても「計画」をたてると成績がよくなる結果があります。

計画のメリットは,頭の中に引っかかっていることを追い出すことです。ザイルガルニック効果というものがあります。やらなければならないことを漫然と頭に抱えていると,脳みそがそれを考えることに使われてしまいます。つまり何もやっていないのに意志力が消耗するわけです。それなら,計画にしてしまって紙に書いてしまえばそれが消えてしまうので,逆に効果があるようです。

また「書く」という点では,記録を残すのはいいようです。書くと自分を客観的に認識できるとともに,やったことを書くことによって自尊心が高まります。自己認識の重要性は,鏡で自分が写っている人と,写っていない人では,鏡に写っている人の方が誘惑に勝つ傾向があるという実験もあります。

とはいえ,私たちは今やらなければならないことを先延ばしにする傾向があります。ダイエットの時には,食べることを先延ばしにするのは効果があるのですが,勉強やトレーニングでは先延ばしはあまり良くありません。実際に,大学での実験では「先送り」する傾向のある学生は論文や試験の評価が低いそうです。(ただし先送りする学生は健康であるという結果も。)

対処方法は二つあります。一つは書き出した目標が対立しないように優先順位をつけてしまうこと,二つ目はやらなければならないことの代わりをしない,ということです。一つ目は今日やろうとしたTO DOリストの中で心が葛藤するリストがあったりすると,意志力は消耗してしまいます。この場合,今日やることを決めれば,その葛藤から逃れることができ,意志力も消耗しません。もう一つは,パソコンで原稿を書かないといけないのに,メールを返信してしまうという場合,原稿以外は書かないと決めることです。つまり代替行動を断ち切ります。人はやることがなくなると何かをやろうとするので,他の行動をシャットダウンすることにより目的の行動に向かわせることができます。

もっといろいろあるのですが,ぜひ手にとって見て下さい。この3冊はオススメです。
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2013年07月02日

「中国でスマートフォンは使えますか?」

学生さんから,中国でiPhoneやAndroidスマートフォンを使うことできますか,という質問が多いので,この機会にここでまとめておきたいと思います。

1.スマートフォンを直接利用する。

スマートフォンを海外で使うと1日1980円〜2980円(ダブル定額)の費用がかかります。ただし対称事業者でない通信会社に自動接続され,その状態で通話やネットをすると膨大な費用がかかります。そのためソフトバンクでは「海外パケットし放題アプリ」,auは「GLOBAL PASSPORTアプリ」があるようです。(docomoはどの通信事業者でもいいようです。)どのキャリアに接続するかは携帯ショップ等で確認する必要があります。(ソフトバンクはChina Unicom(中国聯通)。)

お金がもったいない人は,「モバイルデータ通信」の設定をOFFにして,Wi-Fiがあるところで利用を限定することもできます。中国でも,大学やレストランなどWi-Fi利用可能な場所は多いです。

2.Wi-Fiルーター

今はLINEをはじめとして,Wi-Fiを利用した無料通話が可能です。手元にWi-Fiルーターがあれば,どこでもスマートフォンが利用可能になります。

海外で利用できるWi-Fiルーターを成田空港で借りることが可能です。例えば,「グローバルデータ」は680円/日で,「テレコムスクエア」でも700円/日でWi-Fiルーターを借りることができます(2013年7月2日現在)。

3.注意点

スマートフォンを利用する人は,TwitterやFacebook,GoogleやYoutubeを使いたいと思うでしょう。でも中国では国家の規制により以上のサービスは利用できません。

どうしても利用したい場合は,中国の外のVPN(仮想ネットワーク)に入ることによって日本と同じようにネットを使うことが可能です。

大東文化大学では,大学の外からのVPNに対応しています。(学内関係者への接続の案内はこちら。)

また,筑波大学が学術実験として,無料でVPN接続を提供しています(こちら)。これはボランティアで成り立っているのでサポートはありませんが,便利そうです。(私はまだ利用したことはありません。)
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