2013年11月05日

2013年10月読書ノート

2013年10月読書ノート



今月の一冊は『影響力の武器』です。私が読んだのは第1版ですが,非常に勉強になりました。

経済学では合理的な人間を前提としています。合理的な人間は人の意見や周りの環境に左右されることなく,損得を考えて意志決定をしていると考えます。

でも私たちは他人の影響を何かしら受けています。むしろ周りの状況に依存して常に意思決定しているといっても過言ではありません。どのようにして私たちは意思決定しているのか,わたしたちはどのように周囲から影響を受けているのか,本書はそれが整理されてよくわかる一冊です。


<経済>

スタンレー・ミルグラム(山形浩生)(2008)『服従の心理 (河出文庫)』河出書房新社 実験者に指示されると道徳的矛盾を感じながらも多くの人が残虐な行為をとる。権威に服従してしまうのは人がヒエラルキーの中で機能しているから。自律的な判断よりも調和のためにヒエラルキーの命令を守る方がよい。

ロバート・B・チャルディーニ(社会行動研究会)(1991)『影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか』誠信書房 承諾を誘導する信頼性の高い方法は、コミットメント、返報性の原理、類似した他者への承諾反応、好意あるいは友愛の感情、権威からの命令、希少性に関する情報である。

A.M.オーカン(新開陽一)(1976)『平等か効率か』日経新書 社会の権利は原理の上で平等を重視。市場経済は効率が優先され大きな不平等が許容されている。所得の再分配にはバケツの漏れ(誘因の低下など)があるが、所得階層の下の5分の1に援助を与え、豊かな社会の主流に入らせるべき。

ヨハイ・ベンクラー(山形浩生)(2013)『協力がつくる社会―ペンギンとリヴァイアサン』NTT出版 ピラミッド型組織、利己的利益に基づく市場。ともに人は協力しないものととらえるが、人は協力したがるもの。コミュニケーション、仲間意識、規範・道徳、公平性、評判、処罰・報酬などが重要。

シルヴィア・ナサー(徳川家広)(2013)『大いなる探求(上)-経済学を創造した天才たち』新潮社 社会の仕組みを分析する装置や道具を探していた経済学者たち。労働賃金は上昇しないとしたマルクス、企業競争が賃金を上げると考えたマーシャル、ナショナル・ミニマムを主張したウェッブなど。

シルヴィア・ナサー(徳川家広)(2013)『大いなる探求(下)-人類は経済を制御できるか』新潮社 「全体に関する経済学」を考えはじめたケインズ。フィッシャー、ケインズ、ハイエクは経済を制御する道具立ては存在すると信じた。戦時経済はケインズ主義の有効性を証明。


<中国>

園田茂人編(2013)『はじめて出会う中国 (有斐閣アルマ)』有斐閣アルマ 中国がどのように統治され、市場経済化でどのように変化し、中国は世界から尊敬される国になるか、という問いから中国の社会と政治を解説。共産党、地方政府、少数民族、戸籍、格差、学歴社会、華僑、ナショナリズム、外交、日中関係。

富坂聰(2013)『習近平と中国の終焉』角川SSC新書 薄煕来が残した人民の平等への支持という爆弾を抱えながら、上層部のストレスの少ない人物として選ばれた習近平。格差と民主化という課題に向かう習近平政権は胡耀邦からの歴史の影響を受けている。

加藤隆則・竹内誠一郎(2013)『習近平の密約』文春新書 ソ連の経験から毛沢東批判を抑え、軍は党の支配下におき、中国独自の民主を求める習近平。急進的改革を求めていない庶民、南方週末事件は言論封鎖というより体制内の紛争。安定のために,より集権化していく。

<自己啓発>

長谷部誠(2011)『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』幻冬舎 就寝前に心を鎮める30分間を持つ、負の言葉は現状をとらえる力を鈍らせる、恨みを貯金せずボールを蹴るなど建設的に、1人温泉でリフレッシュ、苦しい練習が自信になる、監督の行間を読む、などサッカー日本代表長谷部のこだわり。

甲斐祐樹(2013)『スマホ&タブレット“二刀流”仕事術』インプレスジャパン スマホをシンプルな作業に、多少複雑な作業にタブレットを活用。メール、カレンダー、連絡先はGoogleで同期、データはEvernoteとDropboxをメインに利用。テキスト入力とエディタを工夫。


<その他>

丸山里美(2013)『女性ホームレスとして生きる-貧困と排除の社会学』世界思想社 女性ホームレスが見えにくいのは労働市場や社会保障政策が近代家族をモデルにしているので、あてはまらない女性世帯が形成されにくいから。女性野宿生活者の意思はパートナーや回りとの関係と切り離せない。

天野郁雄(2013)『大学改革を問い直す』慶應義塾大学出版会 大学はエリートから、マス化、ユニバーサル化(トロウ)の段階に。80年代から多様化、個性化が叫ばれ、一般教養が廃止、新名称学部の設置、入学試験の多様化へ。近年は機能別分化。私大は「幅広い職業人育成」の意識を持つ。

田中智志・橋本美保(2012)『プロジェクト活動-知と生を結ぶ学び』東京大学出版会 教育は自己創出への支援であり、子どもを意図的に操作することではない。プロジェクト活動は有用性だけでは語り得ない。現代社会の機能的分化は有用性志向をもち、プロジェクト活動を構造的に阻んでいる。

ケン・ベイン(2008)『ベストプロフェッサー』玉川大学出版部 最優秀教師は、担当教科を深く理解し、学生の学習目標を明確にし、学生へ多くを期待、深く信頼。自然で批判的な学習環境を提供し、常にティーチングを自己評価する。最優秀教師でも失敗することはあるが、学生を非難することはない。

今野浩(2011)『工学部ヒラノ教授』新潮社 筑波、東工大、中大と歩んできた工学部の教授が語る工学部風土。工学部の教え7ヶ条は、納期を守り、信頼を勝ち取る、専門以外は口出ししない、仲間の頼みは引き受ける、他人の話は最後まで聞く、学生や仲間をけなさない、拙速を旨とする、である。

今野浩(2012)『工学部ヒラノ教授と4人の秘書たち』技術評論社 ORの「秘書選び問題」は1人目の候補はパスするに限る、である。ミセスKは口が堅く、正義感が強い。学群主任業務、シンポや学会運営に力を発揮。ヒラノ教授の中大転出に伴い一旦は「離縁」するも数年後退職まで仕事を支える。

今野浩(2013)『工学部ヒラノ教授と七人の天才』青土社 哲学・論理学、物理学・数学もこなす文理両道の吉田教授、30年近くの助手生活から学長にまで登りつめた藤川教授、巡回セールスマン問題に取り組んだ冨田教授など、個性的な東工大の教授陣。

今野浩(2013)『工学部ヒラノ教授のアメリカ武者修行』新潮社 修士修了で研究所勤務になったヒラノ青年に降ってきた幸運はスタンフォード大への留学。一日14時間勉強してPhD取得。しかしウィスコンシンで敗者の辛さを実感。パデュー大学での客員時代に講義を経験し、論文の量産法を学ぶ。

上山隆大(2010)『アカデミック・キャピタリズムを超えて-アメリカの大学と科学研究の現在』NTT出版 大学が生産する知識の性格がパテント化や私企業からの資金提供によって、公的なものから私的なものへと変貌。知の市場取引化は社会に必要な知識の進歩,質の保証になるが,知の性格とは?

伊豆見元(2013)『北朝鮮で何が起きているのか-金正恩体制の実相』ちくま新書 金正日の死後半年でトップになった金正恩。国内権威の確立と米国を交渉のテーブルにつかせるため強硬路線に。2012年の衛生打ち上げは金正日の遺訓、13年2月の核実験で米国に「懲罰」など。

平岩俊司(2013)『北朝鮮――変貌を続ける独裁国家 (中公新書)』中公新書 中国、ソ連(ロシア)、アメリカの中で北朝鮮の「主体」を確立するために自らの外交空間を確保する。92年中韓国交正常化、98年金正日体制が始めたミサイル発射問題。南北融和、六者協議の不調。金正恩は「遺訓政治」を行う。

オープロジェクト(2008)『軍艦島全景』三才ブックス 長崎の沖にある端島。明治23年に三菱に買収され本格的炭鉱施設として発展。昭和30年代は五千人以上の人が住み、昭和49年の閉山まで、国内初の鉄筋コンクリートアパート、海底水道、屋上庭園などが設けられ近未来都市の様相を持つ。

松下明弘(2013)『ロジカルな田んぼ』日経新聞出版社 青年海外協力隊でエチオピアに。手をかけなくても植物は強く育つ農業を知る。帰国後専業農家に。そこから実験の日々。有機肥料は可能か、どれだけまくか、どう耕すか、農業では人間の欲を押しつけず、どれだけ自分を抑制できるかが重要。

パオロ・マッツァリーノ(2013)『ザ・世の中力-そのうち身になる読書案内』春秋社 地球温暖化はホント、住宅賃貸は老人相手に、お金持ちはオーナー社長、おいしくない公務員、統計でスカウトする米球団、文書書くのに演劇入門を、科学者かどう人をだますか、など会話形式の書評。

田岡大介(2013)『「空き巣」なう-プロの空き巣がこの道半世紀を語る』第三書館 空き巣の心構えは人様に危害を加えないこと。得た金額を服役した日数で割ると稼ぎは少ない。それでも空き巣をするのは誰にも発見されることなく屋内に侵入した時の陶酔感である。実際の空き巣体験を語る。

レイチェル・シュタイア(黒川由美)(2012)『万引きの文化史』太田出版 万引きは歴史上なくなったことはなく、罰則など社会の取り組みは文化を反映。万引きの理由は精神的な障害、育ち、性、人種などが議論。小売業の万引き防止対策が高額化し価格に反映、客は万引き容疑者として扱われている

金子雅臣(2006)『壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか (岩波新書)』岩波新書 セクハラは男性問題。女性に「なぜその気にさせた」と説明を求めるのではなく、なぜ行為をしたのかを男性側が説明するべき。セクハラをする人しない人の違いは男の性はだらしないものと受け入れられるかどうか。

永井孝尚(2011)『100円のコーラを1000円で売る方法』中経出版 製品志向ではなく市場・顧客志向で。顧客の期待より大きい部分が価値であり、顧客が望み他者が提供できず自社が提供できるものを。プロダクトを売るのではなくバリューを売るから価格勝負にならない。

永井孝尚(2012)『100円のコーラを1000円で売る方法2』中経出版 全部の問題を考える網羅思考をやめ、仮説・論点思考にする、すべてやるのではなくやらないことを決断、成功体験にとらわれない多様な集団で。企業経営に関わるメソッドを簡単に。

恒川光太郎(2005)『夜市 (角川ホラー文庫)』角川書店 子供の頃に弟と迷い込んだ不思議な夜市。何かを買わなければ夜市から出られない。弟を売って野球の能力を買った裕司は10年後弟を買い戻すために夜市に戻る。弟はどうなっているのか。第12回日本ホラー小説大賞作品。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする