2014年02月27日

『しらずしらず』

私たちの普段の行動を決めるのは無意識だった。



私たちがいかに無意識の力によって行動を決めているかということがよくわかる一冊です。顕在意識とか潜在意識とかいうとどうしてもフロイトやユングの非科学っぽいイメージがわきますが,行動経済学でもあきらかになってきているように(以前のエントリ「行動経済学の基礎」),私たちは無意識や潜在意識によって行動が決められているようです。

この本ではさまざまな実験紹介を通して,

(1)人間が知覚する世界は自分の無意識が構築したもの
(2)社会的な無意識は共鳴する。
(2)前向きな錯覚の存在で人は生きていける

ということが学べます。

(1)無意識が現実をつくる

例えば,意識的にはコカコーラが美味しいと思っている人でも,ペプシとコカコーラで美味しい方を選ばされると多くの人がペプシを選んでしまうという結果になってしまうそうですし,10$のワインを高級ボトルに入れて90$で売るとおいしさは倍増するそうですし,ただのキュウリというよりも「しゃきしゃきキュウリ」とするだけで美味しく感じるそうです。またアメリカでは同姓での結婚割合が有意に高いようで,無意識に同姓の人に親しみを感じるようです。

このように私たちは無意識が構築したフレームワークで行動しているようです。

(2)無意識の社会的共鳴

社会的にも,コピーの割り込み実験では,急いでいる理由を付け足すとその理由が矛盾していても人はゆずってくれる確率があがるそうです。女の子をデートに誘うときに,(さりげなくですが)タッチするかしないかでも成功確率は違うそうです。学生がマウスに実験を行うときにマウスが優秀だと思っているチームは実際にマウスの成績はよくなるそうですし,学校でも教師が生徒への期待が高いと生徒の成績もあがるようです。

つまり私たちの無意識で思っていることは社会にも影響を与えています。

(3)人は本来楽観的

人の記憶はあいまいだそうです。実験によれば人は記憶を要点として記録しているだけで,細部になると無意識に記憶の間を埋めていくそうです。大学生に高校時代の成績を聞く実験をすると,Aの数を正確に答えられる人は多いのですが,Dになると多くの人が思い出せないそうです。それに加えて,高校3年生に実施した実験では自分を平均以上だと思っているのは100%,大学教員であっても94%はそう思っているようです。

したがって,人は自分の都合の悪いことを忘れて前向きに生きられるようです。

このように本書は無意識の働き,あるいは行動経済学でいう不合理性について理解が進む良書です。
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2014年02月25日

アジア経済圏研究部会研究合宿

中央大学経済研究所のアジア経済圏研究会の研究合宿が2月22日,23日と湯河原で行われました。

馬田先生(杏林大学)による「APECの将来:TPPとの気になる関係」という報告を聞いたので,備忘録として。

現在,APEC(環太平洋経済連携協定)の存在が薄くなっています。どうしてもTPPに注意が向きがちですが,馬田先生は,APECをFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を生み出す孵化器として位置づけられ,TPPはその前段階にあるものとしてあるようです。

APECの非拘束原則,緩やかな協力という体制のもとで1997年のバンクーバー会議で早期自主的分野別自由化交渉が決裂,これをきっかけにアメリカ,オーストラリア,ニュージーランド,チリ,シンガポールの出した結論がAPECの外にFTAを立ち上げることでした。これがTPPの発足につながります。

とはいえAPECは今でも毎年会議を開いていますし,2009年のシンガポール会議ではFTAAPの実現が目標であることが確認され,2010年にはAPEC横浜ビジョンの中で,APECは,ASEAN+3,ASEAN+6,TPPを基礎として更に発展させた包括的FTAとしてFTAAPを位置づけることとなりました。

今年は10月に北京でAPEC会議が開催される予定です。しかし11月に中間選挙を控えているアメリカは時期の調整を申し出ており,このあたりですでに米中のつばぜりあいが行われているそうです。
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2014年02月20日

中国統計年鑑のCD-ROMが開けなくなった場合の対処法

ついこの間まで利用できていた中国統計年鑑のCD-ROMが使えなくなりました。正確にはブラウザに表示されるのですが,目次から各データに入ることができないという現象です。

原因は,Windows7のアップデートではないかと思われますが,いずれにせよ統計年鑑推奨のWindows XP(あるいはWindows7)とInternet Explorer8がほぼ使われなくなった現在,過去の統計年鑑のCD-ROMが使えなくなっています。

今日は,統計年鑑のCD-ROMを復活させる方法を紹介します。(元の出所は「光盘版统计年鉴目录打不开的解决办法」ですが,ちょっとアレンジしました。)
(なお,試した環境はWindows 7 Home Premium 64 bit,Google Chromeです。Windows10でも同じでした。2015年1月7日追記)

まず問題点の確認。

CD-ROMをパソコンに入れると,自動的に統計年鑑のstart2013.execファイルが動き,「遊覧」をクリックすると統計年鑑の最初のページになります(図1)。

図1 最初の画面
Yearbookface.jpg

この左の部分が目次です。多くの人はこの目次をクリックしても下部フォルダにあるデータに行き着くことができません。

この対処方法は以下の手順で行います。

1.CD-ROMをパソコンのハードディスクに移動する。

「alt+A」でCD-ROM内部のファイルを全て選択し,パソコンのハードディスクに統計年鑑用のフォルダを作ってそこにコピーします。これはあとで述べるように一部のファイルを書き換えるためです。

2.left.htmlをメモ帳で開く。

統計年鑑のフォルダをあけると図2のようになります。

図2 統計年鑑のファイル
Explorer2.jpg

ここでindexch.htmlは最初のスタート画面,left.htmlはそのスタート画面の左の目次の部分です。

3.中の一部の記述を変える(なくす)。

Windowsアクセサリにあるメモ帳というプログラムを起動し,left.htmlファイルを開きます。

「編集」→「置換」コマンドをクリックします。

そして,【style="display:none"】を検索対文字列に入れて,置換後の文字列は空白のままにします(図3)。

図3 文字列の入れ替え
okikae.jpg

「すべて置換」をクリックして,ファイルを上書き保存し,メモ帳を終了します。

なお,Excelファイルを利用する場合は,lefte.htmlファイルも同じ作業を行ないます。(2016年1月7日追記)

4.indexch.htmlをダブルクリックしていつも使っているブラウザで開く。

最後に,indexch.htmlをダブルクリックすれば,以前のように利用することができます。

ただちょっとした問題点があります。それは文字化けです。

メモ帳のコードの問題だと思いますが,中国語の文字の一部が文字化けします。これがいやだという人には英語版の統計年鑑を利用する方法があります。やり方は上記と同じですが,left_.htmlを編集し,indexeh.htmlで開いてください。

一方で,この方法にはちょっとしたメリットがあります。それは,今まで互換性がなかったブラウザ(例えば私が使っているGoogle Chrome)でも利用できるようになるということです。

もちろん作業は自己責任で行って欲しいのですが,CD-ROMをいじらないでオリジナルとしてとっておくためにも,ファイルをハードディスクにコピーしてからファイルの書き換えを行って下さい。何かあってももとに戻れますので。
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2014年02月18日

『自閉症スペクトラムとは何か』

久しぶりに自閉症に関していい本を読んだので,紹介。



本書は自閉症の基礎研究を行う若手研究者が一般向けに最新の研究成果をわかりやすく紹介しています。

自閉症の原因がわかるとか治療法があるとかいったセンセーショナルな書き方をせず、「このような報告がある」という抑えをきかした書き方に,学者としての謙虚さを感じ好感を覚えます。

例えば,自閉症に影響を与える遺伝子は数多く存在するが、自閉症になるかどうかを決める遺伝子は存在しない、とし、決定論は現実から目をそらした理想論だとしています(pp.73~76)。

一方で,自閉症は病気かという問いには答えにくいものの、「「脳」の働きに基づいていることについてはかなりの「自信」を持って「そうだよ」ということができ」るそうです(pp.125~126)。

そして,オキシントンというホルモン吸入によって相手の微妙な表情を読み取ったりすることに敏感になることが報告されているとしながらも、まだ決定的な臨床研究の結果はないとして(pp.131~133),安易なオキシントンによる治療に走ることをいましめています。


では,原因や治療法を提示できない中で,自閉症と関わりのある人たちに本書は何を提供するのでしょうか。それは、「個人と社会の関係あるいは関わり」についていろいろ考えさせられるという点だろうと思います。

例えば著者は言います。「個人が持つ「個性」が「社会」と出会い、そこでの関係性がうまくいかない場合、その個性を持つ方々が社会参加を阻まれる「障害」が生まれ」ます。「だとすれば、個人の育ち、社会の環境にそれぞれ働きかけることで、「個性」が「障害」につながることを防ぐことも可能なはず」だ,と。(p.216)

つまり,多くの定型発達の人間であっても社会に馴染む,あるいは溶け込むのは難しいです。そのような中で社会的認知に困難がある自閉症の人にとってそのハードルはさらに高くなります。でも,人によっては外部からの介入によってハードルを超えること(あるいはハードルを下げること)が可能になりますし,社会的環境もそれを提供することが可能です。

となると,私たちは自閉症の方々のみならず社会生活を困難をきたす方々に対して,「努力が足らない」とかの言葉では片付けられないでしょう。また偏った思い込みの強い人々がその思い込み(認知の歪み)のゆえ社会生活が困る場合,やはり何かしら彼らの個性を認めていくということ,あるいは受け入れていくことが必要でしょうし,さらには認知療法などの介入も必要になるかもしれません。

いずれにせよ,本書は自閉症と関係ない人も、どのように社会に参加するのか、社会は個人の個別要素(いわゆる個性)をどのように受け入れるべきかを考えるきっかけになると思います。
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2014年02月15日

李克強経済学を新自由主義から考える

李克強は総理に就任以降「小さな政府」を目指す姿勢を見せています。

李克強の考え方を表わす経済学を「李克強経済学」(Likonomics)として表現されることがあります。論者によって李克強経済学の中身はさまざまですが(例えば“李克強経済学”再解読),基本は政府の許認可権限をなくしていき,小さな政府へ転換することです。

今日は小さな政府を考える上で,フリードマンなどを中心とする新自由主義について考えてみたいと思います。(フリードマンの考え方では,例えば根井2009など。)

新自由主義は,市場の見えざる手による資源配分が効率的であると主張し,市場における選択は自由の基礎であり,政府による強制は個人の自由を奪うものとして考えられています(服部2013,p.5)。資源の効率的配分について市場を強く信頼することから市場主義としてもとらえられます。ここでは新自由主義と市場主義を同義として考えていきます。


1.新自由主義の広まり

私が学生の頃(1980年代後半)はケインズ主義的思想が一般的であったように思います。とくに景気に対して何もしないとする新自由主義よりも,有効需要を拡大するというケインズ主義は社会を制御する統治者にとって非常に便利なツールであったといえます。また経済学を学び始めた学生にとっても,経済を動かすことができる,政策志向型な学問は非常に受け入れやすかったといえるでしょう。

一方で当時はマネタリズムや合理的期待形成学派という新自由主義的思想が徐々に日本に広がってくる時代でもあります。中曽根政権が誕生し,国鉄や日本電信電話公社の民営化など市場にゆだねる改革が政策現場で実施されていました。

またイギリスでもサッチャーが,アメリカでもレーガンが市場を信頼する政策が打ち出されていきました。また10年遅れではありますが,中国でも1990年代後半に朱鎔基が小さな政府を目指して政府機構のスリム化,国営企業の徹底した民営化が行われた時代でもありました。

近年でも,日本の小泉首相の掲げた構造改革は新自由主義的ですし,その象徴は郵政民営化でした。中国では市場化によって格差が拡大したために,胡錦濤政権は市場改革を謳いながらも実際には左派的な政策への揺り戻しでした。

それでも最近は新自由主義的思想が広く社会に受け入れられているようですし,中国でも李克強はその思想にそった改革を進めているといえるでしょう。


2.新自由主義の根拠

新自由主義は,市場メカニズムを信頼しています。市場メカニズムは経済学の中でもっとも効率的であることが証明されているからです。

簡単に内容をふり返りましょう。

プレイヤーは,消費者と生産者しかいないと考えます。そして消費者は予算制約の下で効用を最大化させようとする存在です。生産者は費用を最小化し利潤を最大化するように行動します。

市場では完全競争(したがって価格は所与)と考えられています。このような市場で生産者が生産する稀少な商品はどのように消費者に配分されるでしょうか。

結果は,もっとも欲しい人のところに必要な分だけ商品は行き渡ります。もし誰かの商品を取り上げて他の人に配分するとその効用は減ることになってしまいます。この意味で,稀少な商品は必要な人に配分されており,もっとも効率的であるとされます。これがパレート最適です。

ここでは政府の存在はありません。消費者と生産者が市場で取引さえすればよいということです。

例えば,中国でおいしい牛肉面を作れるという人がいるとします。この生産者は政府から許可をもらうのではなくそのまま市場に参入して,牛肉面を供給します。欲しい人は自分の予算制約のもとでどの牛肉面を購入するか決めます。この時,おいしいといわれるこの牛肉面を需要することによって,生産者も消費者ももっとも満足するということになります。

もし政府(工商局など)が牛肉面供給に対して許認可権限を持っていた場合,生産者は許認可をもらわないといけません。もし賄賂でももってこいなんてことになったら,生産者はやる気をなくすか,コストが高くなって生産者は牛肉面を供給しないということになってしまいます。つまり市場での牛肉面での配分がうまくいかないということになります。

このように政府が許認可を与えない方が,自由な経済活動を通じて経済は活性化すると考えられるわけです。これが市場主義の基本的な考え方です。


3.新自由主義への批判

朱鎔基も1990年代後半に政府機関の縮小,行政システムの簡素化,国有企業の改革を通じて,小さな政府の方針をとりました。フリードマンの新自由主義を政策として実施した中国で最初の首相であったといえるでしょう。

しかし,新自由主義については批判もあります。日本での批判をみてみると,金融危機でみられたように金融市場は暴走しバブルを生み出し,そして崩壊するという市場の反乱を指摘するものがあります(中山2013,服部2013)。

またアメリカのサブプライムローン問題などを含めて新自由主義を体現している(とされる)アメリカ経済に追従すると大変なことになるという警鐘をならすものもあります(服部2013,佐和2000)。

でも最も大きな問題は環境のように典型的な市場の失敗を指摘しするとともに,また格差がひろがるというものです(佐和2000)。

環境は,排出権など所有権を明確にすれば市場に技術的に取り込むことが可能であり,市場で解決可能な問題です。

でも,格差の問題は市場メカニズムの最も大きな問題です。社会は原理の上で平等を重視する一方で,平等と規範的に効率を強調する市場主義とは古典的なトレードオフの関係が存在します(オーカン1976)。

4.再分配をどうするか?

李克強経済学で,今後考えなければならないのは,市場経済改革の進展にともなう格差拡大の問題です。北京大学中国社会科学調査センターの調べでは,世帯所得で上位5%の富裕層と下位5%の貧困層の年収格差が、2012年時点の全国平均で234倍に達したそうです。同調査の2年前の2010年段階では129倍だったことを考えると格差が拡大しています(MSN産経ニュース2013年9月29日「「貧富の格差」中国234倍 一段と深刻化 上海支局長・河崎真澄」)。

新自由主義は格差を放置するというものではありません。格差の存在に対し,セーフティネットの整備を主張します。中国も社会保障制度の整備に力を入れています。

李克強が推し進める政策で私が注視するのは,「小さな政府」ではなくて「所得再分配」という面です。中国の場合はやはり政府が関与しすぎて競争が制限され既得権益が守られているという点です。つまり政府の制度が格差を助長している側面があります。

この意味では,所得再分配においても,中国の場合市場化を推し進める政策が有効になります。とくに市場でジャイアントプレーヤーとして振る舞う既得権益層,例えば競争から守られている国有企業など,を競争市場における一プレイヤーにする方策(既得権益をなくす方策)が必要です。

今後の李克強経済学のポイントは,政府の制度が生み出した格差を市場経済化でどのようになくすことが可能かという点,つまり新自由主義による格差解消という壮大な実験ではないかと考えています。

<参考文献>
A.M.オーカン(新開陽一)(1976)『平等か効率か』日経新書
佐和隆光(2000)『市場主義の終焉』岩波新書
中山智香子(2013)『経済ジェノサイド-フリードマンと世界経済の半世紀』平凡社新書
根井雅弘(2009)『市場経済のたそがれ』中公新書
服部茂幸(2013)『新自由主義の帰結-なぜ世界経済は停滞するのか』岩波新書









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2014年02月11日

2014年1月読書ノート

2014年1月読書ノート



ちょっと難をいえば,学術的な根拠を示さずに論じているのですが,新書ということでまあしょうがないかなと。

でも人の生き方で示唆に富むものがありました。ヒトの脳は,10〜20代に入力,30代は失敗などで経験を選別し(不要な信号を削除),40代で成功体験になぞった生き方になるので楽になるそうです。

50代になると連想記憶力(経験によった知識をつかい素早く的確な出力をする)のピークを迎えるそうです。この説が正しいとすれば,人生40代50代を輝かせたいものです。

共感した文章を紹介。

「他者に依存して生きてきた人は「愚痴と堂々巡り」の達人になり,無難に生きてきた人は「心配と依存」の達人となり,自分の足で歩いてきた人は「発見と発想」の達人となり,エリート街道を順調に歩いてきた人は「知識の踏襲と選別」の達人となる。」(p.192)


<経済>

山本健兒(2005)『経済地理学入門 新版』原書房 経済地理学は格差の理由に迫り、場所、領域、地域が抱える課題を明らかにする。場所による差異を、経済学的に解明するだけでなく、自然条件などの環境や価値観、技術体系、社会組織の3要素とも関係する。

富田和暁(2006)『地域と産業 新版』原書房 古典的産業立地論、チューネンの農業立地論は農業のみならず土地利用を理解する原理として、ウェーバーの工業立地論は工業の集積や分散現象を、クリスタラーの中心地論は都市の商業集積,オフィスの立地を理解するのに役立つ。

矢田俊文・松原宏編(2000)『現代経済地理学-その潮流と地域構造論』ミネルヴァ書房 主要な経済地理学理論を、世界経済は世界システム論(ウォーラーステイン)、情報経済は都市システム論(プレッド)、地域経済は新産業空間論(スコット)プロフィットサイクルモデル(マークセン)に整理。

水岡不二雄編(2002)『経済・社会の地理学―グローバルに、ローカルに、考えそして行動しよう (有斐閣アルマ)』有斐閣アルマ 経済・社会の主体は空間という容器を必要とする。無限の広がりを有界化し権力と富の領域を設定。グローバル化という空間統合は集積が存在し不完全であり、距離は残る。

黒田辰朗・田渕隆敏・中村良平(2008)『都市と地域の経済学 新版 (有斐閣ブックス)』有斐閣 都市、都市の集積、都市の適性規模、都市システムの解説。住宅、工業立地の理論、土地とバブル、地域の開放性、格差、人口移動と空間経済学。交通、公害、地方公共財も。旧版を大幅改訂。


<中国>

内藤二郎(2004)『中国の政府間財政関係の実態と対応-1980~90年代の総括』日本図書センター 中国の改革は政府から企業へ中央から地方への分権という二重のプロセス。政府間関係も中央の財政一元管理から財政請負制へ。分税制、下級政府への補助、積極財政政策によって中央が強くなる。

岡本隆司編(2013)『中国経済史』名古屋大学出版会 中原の開発と経済力の伸張と開発の遅れた江南。人口希薄で未開地の広がる江南の開発と経済力の増進が歴史の主旋律。江南の水田稲作の普及、傭兵の保持の財力、農業技術と内陸水運の開発が人口の増加をもたらした。

福島香織(2013)『現代中国悪女列伝 (文春新書 946)』文春新書 薄熙来の妻・谷開来、温家宝の妻・張培莉、習近平の妻・彭麗媛から江青まで。悪女は単体で存在せず、権力を持つ男を軸にして初めて存在。男尊女卑という風土の中で、一部に権力・富の集中がある社会では金と権力のある男に取りいるのが一番。

吉岡桂子(2013)『問答有用――中国改革派19人に聞く』岩波書店 改革派の重鎮・呉敬lなどの経済学者、郭樹清(現山東省長)など政府要職者、馬軍(NGO)など民間の改革派たちが、中国に必要な経済、社会、政治の改革を主張する。

吉岡桂子(2008)『愛国経済-中国の全球化』朝日新聞出版 「経済の相互依存が「国家」を侵食する一方で、中国のカネは時に剥き出しの「国家」を意識させる」。人民元、資源を求める中国の援助、技術の自主創新と愛国、環境問題と戦うNGO、中産階級の就職、安い労働力、反日デモなど。

加藤弘之編(2012)『中国長江デルタの都市化と産業集積 (神戸大学経済学叢書)』勁草書房 都市農村一体化政策を評価し、地方政府、企業、農村幹部の役割を明らかに。産業集積の実態を統計的に整理。労働力と土地の流動化の実態、農村の変化を検討。

小林弘二(1974)『中国革命と都市の解放:新中国初期の政治過程』有斐閣 1949年3月の共産党第七期二中全会において1927年井崗山で革命根拠地創設以来の農村主導型革命を放棄、都市主導型革命へ移行した。


<自己啓発>

矢作直樹(2011)『人は死なない-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索』バジリコ出版 「人間の知識は微々たるものであること、摂理と霊魂は存在するのではないかということ、人間は摂理によって生かされ霊魂は永遠である、そのように考えれば日々の生活思想や社会の捉え方も変わるのでは」。

野口嘉則(2012)『人生は「引き算」で輝く 本当の自分に目覚める話』サンマーク出版 人やモノ、地位、名誉は所有できず、コントロールできない。人は命ひとつで生まれ、生き、去っていく。失うことによって、命の喜びと愛する力に耳を傾ける。


<社会>

正井泰夫監修(2013)『今がわかる時代がわかる世界地図 2013年版 特集:70億人の地球 日本経済の立ち位置 (SEIBIDO MOOK)』成美堂出版 70億人口の食とエネルギー、都市を特集。国際政治、社会、産業経済、資源・エネルギー、環境・自然、文化・スポーツのテーマで世界で起きていることを地図で整理。見ているだけで楽しい。

石川幸一・清水一史・助川成也編(2013)『ASEAN経済共同体と日本-巨大統合市場の誕生』文眞堂 2007年ASEAN経済共同体創設行動計画のブループリントが発表。実施状況はスコアカードで評価。単一輸送市場、エネルギー相互供給、インフラ建設、格差是正などの壮大なプロジェクト。

斎藤貴男(2010)『消費税のカラクリ (講談社現代新書)』講談社現代新書 消費税は負担対象は広いように見えて自営業者や零細事業者を圧迫し、大企業は仕入れ税額控除を利用し、非正規雇用を拡大する動機となる。滞納額はワーストワンであり無理な取り立てが犠牲者を生み出す。


<その他>

浅見康司・福井秀夫・山口幹幸編(2012)『マンション建替え-老朽化にどう備えるか』日本評論社 区分所有法の建替え決議要件が過大、売り渡し請求の補償が反対インセンティブを持つ、土地と保留床の売却ができないマンションの金融融資のハードルが高い、などの問題がある。

村上佳史(2006)『マンション建替え奮闘記』岩波書店 兵庫県南部地震で被災した渦森団地17号館。建替え決議後も買取り請求や売渡し請求のリスクがある。建替え決定後も業者の選定、一時居住地域でもマンションコミュニティの維持が必要。新居住者と旧居住者との折り合いなど。

中野雅至(2013)『テレビコメンテーター - 「批判だけするエラい人」の正体 (中公新書ラクレ)』中公新書ラクレ コメンテーターの仕事は多様な意見・見方を示すこと。ギャラは55550円で売込みは通じない。歯切れの良さを求めて個性化するとブレイク可能性は高まるが公共放送という枠内のバランス感覚も必要。

吉田たかよし(2012)『元素周期表で世界はすべて読み解ける』光文社新書 元素は最も外側の電子の数で性質が決まり、その性質がよく似たものが縦一列に並んでいるのが周期表。性質が似ていると体が取り込みやすい。左上の元素が宇宙に最も存在。レアアースは中国の鉱床が安価で採取しやすい。

南川高志(2013)『新・ローマ帝国衰亡史』岩波新書 ローマ帝国はローマ人であるというアイデンティティによる国家統合。ローマ人以外の外部部族も重用されるようになり、辺境ではローマ人たらんとする生き方は薄れていった。地方はローマ軍ではなく地方の有力者によって統治されるようになった。

青木薫(2013)『宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)』講談社現代新書 広大な宇宙を描くビッグバン+インフレーションモデル。ミクロの物理学として登場したひも理論。共に多宇宙ヴィジョンを生み出す。私たちの宇宙はたまたまこうだということになりかねない。

黒川伊保子(2012)『キレる女 懲りない男-男と女の脳科学』ちくま新書 女性脳は左右脳の連携がよい。お互いの脳の良さを互いに補うことが必要。女性脳は「察する」脳。男性が察する能力を得るとうまくいく。男性脳は目の前のことに頓着しない。女性が男性に思いやりや愛を測らないこと。

井上昌次郎(2012)『ヒトはなぜ眠るのか (講談社学術文庫)』講談社学術文庫 睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠がありそれぞれ大脳の発達過程でできたもの。睡眠調節のメカニズムは一日を単位とするリズム、大脳の状況に対応して眠りの量と質を決める。

柳下記子(2013)『発達障害がある人のための みるみる会話力がつくノート (こころライブラリー)』講談社 自分について20項目用意して自己紹介。相手を見て自分の話を入れず体を少し前に傾け時々うなずく聞く姿勢。相手の情報から5W1Hで質問を。上手なお願い、報告・連絡・相談。会話テーマカードでロールプレイ。

平澤紀子(2010)『子ども観察力&支援力養成ガイド』学研 その場で求められる適切な行動をとることができないのが行動問題。これは未学習、不足学習、誤学習からもたらされる。理由はその行動をとることによって注目や欲しいモノが得られる。先行条件、行動、結果を記録し適切な支援をする。

吉崎静夫編(1997)『子ども主体の授業をつくる-授業づくりの視点と方法』ぎょうせい 新しい授業づくりの特徴とは「ひらく」「つなぐ」「あらわす」である。自由な空間で人と関わり物を利用して学ぶ。教室と外の世界をつなぎ、表現活動の機会を与える。

岡本裕一朗(2013)『思考実験-世界と哲学をつなぐ75問』中公新書 思考実験とは「もし?だったら?どうなるか」という仮定的推論であり、今までとは違う発想のためのマップ。自己、他者、倫理、社会、人間、生きることを思考実験から考える。

竹内薫(2007)『もしもあなたが猫だったら-「思考実験」が判断力を磨く』中公新書 脳内シミュレーションである思考実験。「もしも?だったら」と考えることによって個人の見方、宇宙は多様化。思考実験からモノは曖昧で最終的にはコトになることがわかる。
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2014年02月04日

退学と就職

毎日新聞に「大学中退:文科省が全国調査へ 年6万人以上、防止策検討」とありました。

学校教育基本調査によれば大学生の数は256万人です(平成25年)ので,記事にある中退者数約7万人で大まかに計算すると,中退率は2.8%です。記事にもあるように私立大学の中退率は3%程度と言われています(ちなみに本学の中退率は3.6%)。

3%の退学率から簡単に大学の現状を考えてみたいと思います。

3%の中退率とは,入学者数100人の学科では,毎年3人ずつ退学していき,4年後には12%,12人が退学していくということになります。留学や休学等を入れると4年で卒業する学生は8割程度ぐらいになるでしょう。

就職に話を移すと,この4年間で卒業する学生のうち9割が就職を希望し,1割が進学(大学院や専門学校)としたとすると,約80人が就職希望になります。これが分母となって就職率が出ます。就職希望者の就職率が9割だとすると,正規の就職者数は72人になります。

中退した学生はどうなるでしょうか?

記事によれば,退学した学生の半分は非正規雇用に,14%が無職になるといいます。ということは,上記のシミュレーションでいうと,12人の退学者のうち6人は非正規雇用になり,2人は無職になる可能性があるということです。

まとめると

100人私立大学に入学して,

4年後正規就職を果たすのは70人程度です。(実際には6割強だという話も業界内ではあります。)

退学するのは,12人程度です。(うち雇用に不安が残るのは8人です。)

というのが現状です。

これを高いとみるか,低いとみるかはなんとも。。。。続きを読む
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2014年02月01日

都市化のトラウマとジレンマ

中国の都市化では,農村と都市の二重構造を打破するというのが,もっとも大きな課題です。

日本では人の移動が自由であったために,都市化における人の移動の制限を加えてきたことはありませんでした。しかし,中国では戸籍制度を基本として人の自由な移動に制限が存在します。

農村と都市の二重構造,とくに人の移動をなぜ制限するのか,それを考えてみたいと思います。


1.第1次五カ年計画における都市化

新中国の成立前まで,共産党は農村を中心とする革命を行ってきました。共産党の革命重点が農村から都市に転換したのは,1949年の中共第7期二中総会(中央委員会第二回総会)による毛沢東報告です(小林1974)。毛沢東が「都市の生産を回復し発展させ,消費的な都市を生産的な都市にかえたとき,人民の権利は,初めて強固なものになる」と報告しました。これをきっかけに「消費都市から生産都市へ」の基本的な流れができます(小島1978)。

そこで,第一次五カ年計画では重工業化と都市化の方針で経済建設が開始されました。

解放当時の都市建設の目標は都市公共施設の修復・建設と環境衛生(上下水道,ごみ処理など)の改善でした(以下,主に越沢1978)。とくに大きな問題は,住宅でした。日中戦争時大量の農民が離村し都市へ流入してスラムを形成していたからです。また解放後多くの農民が都市に流入するとともに(都市人口増加の2/3は農村からの流入),家族を呼び寄せるため,一人当たりの住宅面積は減少,住む場所のない労働者も増加していました。(都市に行けば住宅が分配されるという期待も農民が都市に移動したインセンティブになったらしい。)

重工業化にともなって,都市近郊の農地が収用されました。肥沃な土地が荒地と化し,農業生産に支障をもたらすとともに,さらに農民の転業問題を引き起こしました。1956年国務院は土地収用に関する浪費の防止について通達も出しています。

工業化を支える商品化食糧の供給にも問題が発生します。副食品(野菜,肉,卵など)の供給は不足しがちで,北京,上海,天津などの11都市の野菜の供給率は7−8割程度でした。野菜は長距離輸送に向かないため,近郊農業を発展させる必要がありますが,土地収用でそれもままならないという状況でした。

この住宅供給,土地収用,食糧供給の3つが都市化のネックとなり,大躍進期より都市化の方針に大きな転換がおきます。

1つが工業分布の「大分散,小集中」です。大都市の発展を抑制し,中小都市の工業化に力を入れることとなりました。

2つ目が農村人民公社の設立と農村工業化政策です。1958年から急速に人民公社化が進められ,農民の集団化と農村における工業化が進められることとなりました。

3つ目が下放政策です。都市技術者や青年を農村に下放するとういうことです。

実際の人口移動をみてみると,第1次五カ年計画が終了する1957年まで毎年200万人から300万人程度の労働が農村から都市に移動しました。その後大躍進期(1958〜1961)に地方各都市で工業化が進められ,2000万人が地方都市に移動しました。でも増大する人口が都市で抱えきれずに1961年にほぼ同数の労働が農村に帰されました。その後文革期を通じて青少年の農村下放政策が制度化され,1080万人が農村に送られたと見られます(以上,数値は小島1978,pp.19−21)。

この第1次五カ年計画では,増加した人口を都市で解決できなかったのです。これが中国の「都市化のトラウマ」になっています。

2.現在の都市化

このように過去の都市化を振り返ってみると,現在の都市化政策と似た部分が非常に多くあります。

共通点にもとづいて現在の都市化政策の状況をみてみると

(1)都市化のための土地収用が行われていること。
(2)食料供給維持のため,18億ムーという耕地保護の方針を打ち出していること。
(3)「新農村建設」という名目で農村の都市化が進められていること。(ついでに言えば大学生「村官」,大学生を数年間村の幹部として現場を経験させることが実施されている。)
(4)大都市の抑制と中小都市の発展を目指していること。

です。

大都市広州では,2020年の人口総量規制は1500万人(定住人口)ですが,2012年ですでに1600万人になっています。一日に1.4万トンのごみ処理を行い,465万トンの汚水を処理する必要があります。副食品に至っては,一日に1.5万頭の豚を屠殺しないと豚肉の供給が間に合わなし,1500万斤(1斤500g程度)の野菜を供給しないと市場需要に追いつかないとされます(『羊城日報』2014年1月19日)。

当然,北京,上海などの大都市でも同じように都市環境維持の公共設備の拡大は必要ですし,必要な安定した副食品の確保は重要です。

都市の公共サービスの提供と食糧の確保は重要な課題になっています。

3.都市化のジレンマ

先にも述べたように中国には都市化のトラウマがあります。それは,第1次五カ年計画期において,増加する人口を都市で吸収しきれなかったというものです。

都市における人口増加,そして増加した人口に住宅や社会保障を提供するというのは,財政の問題もあって非常に難しい問題です。

都市が拡大することによって農地が都市用地に転換されていくと,農業生産の減少につながります。中国の膨大な人口を養うには最低限の耕地確保は必要です。

都市の容量と必要な農業の確保,このバランスの中で人口をどのように都市,農村に配分するか,これが中国政府の政策担当者が抱える問題であり,中国都市化のジレンマです。

増加する人口が都市部に流入すると農業や公共サービスに影響を与えます。だからといって人口を農村に貼り付けておくことは,サービス産業化,消費型産業のさらなる経済発展の足かせになってしまいます。

以上のように,過去の都市化で失敗したトラウマを抱えて中国政府は,人口の都市農村配分という問題に直面しています。そのジレンマは過去から何も変わっていません。

都市化を過剰人口の都市農村配分という角度からみて,どのような有効な政策を打ち出すことが可能なのか,もうすぐ発表されるとする『国家新型都市化計画』が楽しみです(『サーチナ』)。


<参考文献>
小林弘二(1974)『中国革命と都市の解放:新中国初期の政治過程』有斐閣
小島麗逸(1978)「社会主義建設と都市化」(小島麗逸編『中国の都市化と農村建設』龍渓書舎)
越沢明(1978)「都市政策の変遷と都市計画」(小島麗逸編『中国の都市化と農村建設』龍渓書舎)
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする