2014年04月29日

就職が難しくなった理由

ずっと疑問に思っていることがあります。それは

1.なぜ就職活動が難しくなってきたのか?
2.なぜ企業は主体性,コミュニケーション能力を求めるのか?
3.これらは大学の問題なのか,それとも社会の変化なのか?

といったことです。少なくとも私が大学にいた時代は,(大学の)勉強をしなくてもそこそこ就職可能でした。それでも社会に必要な主体性やコミュニケーションは身についてきたように思います。

最近は就職活動も大変ですし,企業は即戦力を求めます。いろんな議論をみてみると,大学進学率があがって大学生数が増加したとか,もともと大学になじまない学生も大学に進学しているとか,「ゆとり」で大学生の質が下がったとか,大学などの教育機関の問題としてとらえることも多いです。

でも,極端な話,優秀な大学を卒業する学生数が増えたわけではないので,私としては大学よりも社会が変化してきているからではないか,と感じるようになりました。

そのきっかけが『機械との競争』(ブリニョルフソン&マカフィー)という本です(エントリはここ)。IT化や情報化によって労働の質が変わり,どうも今まで普通に必要とされていた大卒レベルの人材像が変わってきたようです。IT技術の進歩や情報の発達で,多くの職業から普通の労働力が阻害されてきたようです。

そして,就職が難しくなってきた社会の変化をわかりやすく書いていたのが高橋(2013)でした。高橋(2013)はタイトル(『ホワイト企業』)と違い,職業のサービス業化,そしてそれに必要な人材育成とはどういうものか論じています。

とくにおもしろかったのが職業のサービス業化,そして産業構造自体がより製造業からサービス業にシフトしてきて,必要な人材像が変わってきているということです。

サービス業は仕事の個別性、専門性の二軸によって位置づけられます。個別性が低く,専門性が低いのは普通のコンビニやレストラン,ショップでの商品販売などです。ある意味マニュアル化が可能で,とくに必要な技能がなくてもできる仕事です。そして個別性が高くなると顧客接点サービス業務になります。介護,看護,高級宿泊施設や高級レストランなど,対応する顧客の多様性にあった適切なサービスの提供が必要になってきます。この意味で介護職員,看護師,ホテル業などは個別性の高いサービス業です。

ついでにいえば,これらは以前は専門学校でも提供できたものですが,専門性が向上しているために大学教育に移行しています。

そして個別性と専門性が高くなると医師や弁護士など個別に対応しながら他がもたない専門的知識でサービスを提供します。

IT技術の革新で,多くのサービス業がただのオペレーション業務,単純労働化しているようです。本書では鉄道乗務員の例をだし,鉄道運行のIT化が進むことによって,電車の運転士の仕事はオペレーション業務になりつつあり,専門性をどんどん習熟させていく必要がなくなってきているといいます。

またタクシー業界でも,長距離客をつかむのは運転手さんの経験とカンではなく,タクシーを電話で予約する客層だそうです。データにもとづいてそれらの客層にアプローチし,会社として営業することで収益があがります。運転手さんの業務は会社の方針に即したマニュアル化された単純的業務に変化していっているそうです。予約する客層の管理,丁寧な接客が可能なシステムの構築を考えると,このような仕事は専門性が高くなります。

このように社会の仕事はますます個別化,専門化していき,大学などで高等教育を受けた人材は,「個別」の顧客が必要としているものを,「コミュニケーション」を取りながら,専門性の高い(満足度の高い)解決策を「主体性」をもって考えなければならないという状況になっています。

製造業の時代は,機械が労働の代わりになって,人は機械を開発,オペレーションできる技術をもつ必要がありました。サービス業の時代も同じようにIT技術が人のできる職業を奪い,人はIT技術をマネージする能力や人と相対するコミュニケーション中心の業務に追いやられているのかもしれません。

<参考文献>
高橋俊介(2013)『ホワイト企業 サービス業化する日本の人材育成戦略 (PHP新書)』PHP新書
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2014年04月26日

中国の国有企業改革は終わったのか?

中国の国有企業改革はちょっと落ち着いた感があります。むしろ世界企業ランキングに入るのは国有企業ばかりなので,なんとなく国有企業改革は終わったのではないか,過去のことではないかという感じを持つ人も少なくないでしょう。

でも中国が社会主義市場経済を標榜し,公有制を建前とする以上,国有企業はずっと存在することになります。国有企業は経営がうまくいっているのかどうか,常に注目される存在であることには変わりはありません。

中国の国有企業改革の究極の問題は,ずばりこれからも民営化が必要かどうかです。つまり企業経営の効率化に必要なものは民営化なのかそれ以外なのかという議論につきます。

国有企業が不振に陥った90年代、国有企業再建には大きな論争がありました。国有企業が不振なのは所有権が曖昧なためだ,そのため民営化が必要だという意見(張維迎)VS国有企業は学校,住宅などの政策性負担が大きいので競争が不利だ,だから政策性負担を減少させるべきという意見(林毅夫),です(関2007)。

結局,1997年から実施された国有企業の戦略性改組は両方の主張を取り込み,戦略的産業以外の競争性産業部門にある国有企業は全て民営化し、一方で年金や学校などの政策性負担を減らすことになりました。

2003年に国有資産管理委員会が設立され,その元で中央国有企業を管轄する形をとって以降,民営化の流れは止まりました。(とはいえ,2003年からの東北振興によって東北地域の国有企業改革は本格化しますが。)

その後は,国有企業が大型化(優良資産の集中,株式市場への上場)していき,1997年の四兆元財政支出により国有企業の存在がクローズアップされ,国有企業の存在が大きくなる国進民退(いわゆる民業圧迫)という現象が注目されました。

現在の問題は,

国有企業の利潤は拡大したもののその利潤は「所有者」である国民に分配されていないし、そもそも利潤は不公平な競争環境が生み出したもの

という見方があります。

政府が土地や税金、社会保障を肩代わりするがゆえの高利潤であり、一部産業では民営企業との競争がなく独占状態ゆえの儲けです。国有企業の現在の躍進は企業経営が効率化したのではなく,その不公平な競争環境が90年代とは逆に保護されている結果だという意見です。この保護がなくなれば国有企業は効率が悪いままであり、やはり企業経営の効率化には民営化は避けられないとする改革派の意見もあります(周其仁)。

民営化に反対する意見でもっとも影響力をもつものは,民営化は外国資本と経営に関与した一部の富裕層が企業を私物化することであり(権貴主義),ラテンアメリカ化していまうという意見(郎咸平)です。国有企業の身売りは権力に近い者やその企業経営に関わったもののみが手に入れることができ、その利益は政治家に流れ権力者や富裕者を作る,国有資産の私物化になるだけだ、と主張されています。

その他,民営化に反対する意見は以下の2つです。

(1)社会主義市場経済は公有制を建前とする。
国有企業は公有制の実現形式であり,共産党執政の基礎であり,国家マクロコントロールの保障になっているという点です。とくに前半は2002と2004の党憲章、憲法改正に「公有制が主体」であることが記載されました。また、2011年に中央指導部は私有制は行わないと明言しています。

(2)マクロ経済コントロールの中心。
もう1つは,国有企業は(規模の面でも)国際競争に打ち勝つ拠り所であり,産業技術革新の希望である点です。国有企業こそが国家発展戦略の柱であり、民営企業では技術革新や産業構造高度化はなし得ないとしています。

しかし,これらの民営化に反対する意見は,すべて国有企業の経営は効率化しているのかどうかという問いに答えていません。政府の保護があって経営がうまくいっているだけなら,国民の負担で国有企業を儲けさせているだけなので,民間から国有部門への強制的資源配分が行われていることになります。

国有企業は経営が効率化しているのかどうか,この問いに答えられる説得的な民営化反対意見がでない限り,私は民営化するべきだと思っています。

<参考文献リスト>
関志雄(2007)『中国を動かす経済学者たち―改革開放の水先案内人』東洋経済新報社
「国企産権改革争議20年」『南方週末』2014年4月11日
http://www.infzm.com/content/99700,2014年4月15日アクセス))
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2014年04月22日

「グローバル人材」の画一化を憂う

グローバル化とかグローバル人材という言葉が画一化していくことを最近心配しています。

日本社会のグローバル化対応にともなって,英語教育は重要ですし,英語で他国の人と渡り合っていく人間的強さも必要で,そのための教育は重要です。

大学業界では多くの大学で英語だけのコースや学部が作られるようになってきています。

上智大 総合グローバル
創価大 国際教養
関西外国語大 英語国際

が平成26年度から開設されましたし,学習院大学も来年度開設予定のようです。

どこも世界で渡り合えるグローバル人材育成というのが目標ですし,どうしても,英語での教養教育なのでカリキュラムが似通ってきます。その意味で,グローバル人材が画一化するんじゃないかと心配します。

また大学内での「留学生」に対する対応も画一的になっています。留学生を増加させる方策は海外事務所の展開であったり,奨学金の充実だったりします。また留学生の就職支援も留学生セミナーの開催など,これも似たり寄ったりです。

もっとも問題なのは「留学生」という括りです。実際には来日時期がさまざまなわけで,私たちが「留学生」と聞くと,「高校まで現地で暮らしていて,日本の大学に来る」という学生です。でも現実の大学入学者の中には,アジア(フィリピン,中国,南アジアなど)出身のご両親(あるいはどちらか一方)を持つ学生さんも増加しています。日本で出生した人もいますし,来日時期が小学校から高校までさまざまです(したがって日本文化理解のバックグラウンドはずいぶんと違う)。

「留学生」という言葉の捉え方が画一的なために,その対応も画一化するように思います。

山内太地さんのブログで知ったのですが,都立高校生対象の留学支援「次世代リーダー育成道場」の小論文のテーマにびっくりしました。

「現在、経済・社会のグローバル化が急速に進んでいます。その中で、日本人としての自覚と誇りを身に付け、多様な文化を尊重できる態度や資質を有する人材が求められています。こうした人材が求められる背景や理由について説明しなさい。」

山内太地さんも指摘していますが,来日時期がさまざまで,国籍は外国だけど日本で育った人は応募しにくいテーマだな,と思いました。

現実のグローバル化への対応は多文化に対する免疫力を作ることではないかと思っています。

例えば,日本の国内をみても,埼玉県蕨市(わらびし)にはクルド人社会があったり,三郷市にはパキスタン人が集まっていたりしています。そして宗教的にもイスラム教の人々が日本の各地に点在しています。この意味では日本の地域社会もグローバル化しています。

このような現実にすすむ多様化されたグローバル化を意識しなければ,ただ単純に英語ができてアメリカとわたりあえる程度のグローバル化とグローバル人材になりかねません。

現在のグローバル人材という言葉は,現実社会で進行している多様化に対応することを意識できているのかどうか,大学業界に身を置く者として肝にめいじておきたいと思います。
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2014年04月19日

シンガポールの政治制度から中国政治を考える

中国の政治制度を考えるにあたって,参照になるのが中国以外の華人地域や国家の政治制度です。

香港は1997年にイギリスの植民地から中国に返還され,民意を繁栄させる独自の政治制度が模索されています。台湾は完全に民主化され選挙によって議員や総統が選ばれ,民意によって政治が行われるようになりました。

現在の中国のように政党主導型権威主義体制を採用しているのはシンガポールです。シンガポールは人民行動党(PAP)による事実上の一党支配体制(一般に選挙を通じているので独裁ではなく支配という言葉を用いる)です。野党政治家,労働組合,NGOの活動は監視され,マスメディアの報道は制限されています。つまり言論,集会の自由はありません。民主化の程度を示すPOLITY IVプロジェクトの数値(もっとも民主的な体制が10,もっとも独裁的なのが-10)は一貫して-2であり,東南アジア諸国の中ではもっとも民主化が遅れた地域です(中村編2012,p.19)。

共通点を見てみましょう。まず政党の成り立ちとして,第二次大戦以前から植民地あるいは半植民地状態にあった自国を独立させるという大義のもとで大衆を指導し,支持を受けてきたという点です。中国共産党は日本をはじめとする侵略国家から中国を守るというものでしたし,人民行動党も宗主国イギリスから独立するという点で国民の支持を得てきました。

相違点は,政治体制です。シンガポールは議院内閣制を採用し,議会(シンガポールは一院制)で多数をとった政党が,内閣を構成し,政治を行います。1987年まで人民行動党は選挙で議会の全議席を占めていましたので,結局は選挙という形で国民の信任を得て,一党独裁,あるいは一党優位を保っています。

中国では党国家体制を採用します。党の下に国務院(行政),人民代表大会(議会),人民法院(司法)があり,それぞれの権力が相互に牽制しあうことはなく,党が国家の体制を指導する立場をとります。

したがって,シンガポールが事実上の一党独裁であっても「選挙」という形で国民の信任を得ているために,中国ほど批判されることはありません。

でも人民行動党もなかなかえぐいことをやっています。議会の選挙で野党が議席をとったことをきっかけに,選挙制度を変更します。小選挙区制中心だったのですが,グループ代表選挙制というものを導入します。そもそも小選挙区は政党支持が少なくても議席を圧倒的に取りやすい,死票の発生する選挙ですが,それに加えてグループ代表制では,野党が強い選挙区で立候補者複数(グループ)に対して集めた票数が多いと,選挙区の全議席を総取りするという,得票数が少なくても議席数が伸ばせる制度です。

選挙という形を取りながらも与党が勝利する仕組みが与党によって作られています。

また当然中国と同じように憲法の改正はよく行われますし,最高裁判所による違憲審査はあまり行われません。

シンガポールのメリットは,「法の支配」が徹底しているということかもしれません。とくに経済関係,所有権,公平な手続きなどは国際的にも評価が高いです。中国で行われる「関係(グワンシ)」が働かないという点が,企業関係者にとって将来に対する予測が立てやすいということになります。法律がコロコロ変わる,解釈も政府によって変わる,人と人の関係が存在しないと事業が動かないということになると,企業は長期的な経営予測を立てにくくなります。この意味で恣意的な法の運用がなく,透明な法律によって経済活動が保護されているのはシンガポールの大きなメリットといえます。

こうして考えるとシンガポールは一応選挙を通じて,国民統治の正当性を持っていますが,中国にはそれがありません。習近平,李克強政権を国民が信託したという事実や手続きは存在していないのです。

しかしシンガポールも中国も一党支配というところは共通点です。経済発展という面では民主化よりも透明な法制度が存在することが重要なようです。

<参考文献>
中村正志編(2012)『東南アジアの比較政治学 (アジ研選書)』アジア経済研究所

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2014年04月17日

書評を書きました。

『中国経済研究』(中国経済学会)に書評を書きました。

岡本信広(2014)「【書評】渡邉真理子編『中国の産業はどのように発展してきたか』勁草書房」『中国経済研究』第11巻第1号,pp.63-66

本書評は,ブログ記事(ここ)を基本に,内容を詳細に紹介しながら,私の中国産業の見方を付け加えました。

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2014年04月15日

『東亜』COMPASSへの連載第2回目

霞山会の月刊誌『東亜』1月号から,3ヶ月に1回のペースで時評を担当しています。

第二回は
「中国大都市化の抑制:背景と手段」
です。

リードより。

「中国は新型都市化を推進しながらも,北京,上海,広州などの大都市については都市化を抑制する方針である。なぜ都市化の抑制を行うのか。それは流入する人口を都市が支えきれなかったという過去のトラウマがあるからだ。社会主義市場経済の下で現在市場メカニズムにもとづいた都市化の抑制政策を試行錯誤している。」
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2014年04月10日

2014年担当業務

今年度の業務予定です。

実質,学部授業6コマ,院(研究生)授業2コマ,合計8コマが教育業務の中心です。

≪学部授業≫
チュートリアル      火曜日1限
国際関係各論11(国際経済論A)    火曜日3限(前期)
国際関係各論12(国際経済論B)    火曜日3限(後期)
国際関係各論31(アジア理解の経済学)水曜日2限(前期)
国際関係各論32(国境を超える経済学)水曜日2限(後期)
東アジア地域研究3(現代中国経済論A)木曜日1限(前期)
東アジア地域研究4(現代中国経済論B)木曜日1限(後期)
卒論演習          木曜日3限
演習II           木曜日4限
(オムニバス形式のアジア概論では2回担当予定)

≪大学院授業≫
○修士課程
経済研究2         水曜日1限
経済研究演習        水曜日5限

○博士課程(履修者なし)
経済研究演習I,II
経済研究論文作成指導

≪担当委員会等≫
教務委員会(学部) 2008年度〜
地域研究学会(学部)2006年度〜 2011年度〜委員長(引き続き)
入試(北京)担当委員(大学院)2011年度〜
国際交流センター管理委員会(全学)2009年度〜
北京事務所運営委員会(全学)2010年度〜
学校法人大東文化学園情報化推進委員会(全学) 2012年度〜

≪学外≫
日本私立大学協会大学教務研究委員会委員(2012年度〜2015年度)

≪研究≫
研究代表者
基盤研究(C)「中国の新区や都市圏による内陸開発は有効か?−小地域産業連関モデルからのアプローチ」(最終年度)

≪その他≫
2011年4月〜2015年3月(5年目)
中央大学経済研究所客員研究員

2011年4月〜2014年9月(4年目)
創価大学経済学部非常勤講師(中国経済論)
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2014年04月08日

2014年3月読書ノート

2014年3月の読書ノートです。



本書は「売春」について考えさせられる名著です。売春が成立するための条件は男性が支配的な社会であり,みだらな女性を求める一方で妻には貞淑さを求めるという二重規範が売春を強化することが述べられています。

二重規範の社会は,女性に純潔を求め期待に背けば制裁を与えます。支配下の女性に貞操を守らせながらも婚外交渉を求めるならばニーズに応える女性のサービスに市場価格がつきます。これが売春ですし,そして売春は社会から制裁を加えられてきました。

その一方で,貧困によって金持ちの愛人になることや、売春身受けは社会階層の移動であったという事実も指摘されます。

結局,売春が減る条件は,女性が性にオープンになり二重規範社会が崩れた場合だとしています。


<経済>

坂井豊貴(2013)『社会的選択理論への招待』日本評論社 コンドルセの二つの選択肢比較という方法に対し,多数決という意志集約で選択肢を順位付けして加点し和をとる意見集約の方法、ボルダルール。アローの不可能性定理ではコンドルセ方法は意志集約できない程度に解釈すべき。

船木由喜彦・石川竜一郎編(2013)『制度と認識の経済学』NTT出版 正義などの社会的目標を明確にし制度設計とメカニズムなどの規範的側面、限定合理的な主体がどのように意思決定し結果どうなるか事実解明的側面を明らかに。

朝倉啓一郎(2006)『産業連関計算の新しい展開』九州大学出版会 産業連関表の構成と分析手法が有効需要政策という歴史的に特殊な経済事象に方向づけられた。部門統合は投入構造異質化が平均化してしまうこと、質的分析は投入産出の構造解析が可能。環境モデルや産業連関分析の動向など。

河野稠果(2007)『人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか』中公新書 人口問題は少子化、高齢化、人口減少。人口学は出生、死亡、移動の三要素を社会経済政治現象との関係を研究。人口転換理論は多産多死から少産少死を説明。死亡は生命表から、出生は結婚、受胎確率などから人口動態を推測。

加藤久和(2007)『人口経済学』日経文庫 マルサスの人口論から新古典派へ。新古典派は限界生産力から適度人口を議論、出生行動を夫婦の効用最大化として考え、成長モデルは人口増加と所得の豊かさを説明。労働市場と社会保障制度の役割など。

ルチル・シャルマ(鈴木立哉)(2013)『ブレイクアウト・ネーションズ-大停滞を打ち破る新興国』早川書房 新興国はこの10年成長の範囲とスピードが異例だったために不合理なほど期待値が世界中で高まった。ただしすべての新興国がブレイクアウト・ネーションズになれるわけではない。

ケネス・ポメランツ、スティーヴン・トピック(福田吉田訳)(2013)『グローバル経済の誕生-貿易が作り変えたこの世界』筑摩書房 貿易は何千年にも渡って行われてきており、ヨーロッパは貿易を拡大。カカオ豆、コーヒー、砂糖は世界を廻り、時にして暴力的な奴隷貿易が行われた。

ポール・シーブライト(山形浩生森本正史)(2014)『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?―― ヒトの進化からみた経済学』みすず書房 個人が視野狭窄で行動しているにもかかわらず社会はうまく行く。うまくいくのは協力することによるメリットと強い返報性。集団内での協調は集団外では戦闘的に。

ポール・J・ザック(柴田裕之)(2013)『経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学』ダイヤモンド社 オキシトシンが共感を生み道徳的行動をもたらす。取引の効率性と収益性を高め、繁栄がストレスを減らして信頼を高める。これがオキシトシンの繁栄サイクルだ。長期的な繁栄には公正な取引の規則が必要。

大村平(2006)『統計解析のはなし-データに語らせるテクニック[改訂版]』日科技連出版社 少ないデータから得られたものの信頼性を調べる推定、まぐれか実際の因果のものかを決める検定。ばらつきを列、行、誤差の情報に分ける分散分析、相関と回帰、多変量解析へ。

大村平(2002)『統計のはなし-基礎・応用・娯楽[改訂版]』日科技連出版社 代表値を求め、正規分布であれば見本から全体を推定可能。たまたまうまく行ったので仮説を棄却するのがあわてもの(第一種過誤)、うまくいっているのに仮説を採用してしまうぼんやり(第二種過誤)ものの誤り。

レナード・ムロディナウ(田中三彦)(2009)『たまたま-日常に潜む「偶然」を科学する』ダイヤモンド社 物事は偶然の状況から発生していることが多い(ランダムネス)。私たちは並外れた出来事でも因果で解釈しようとする。

吉本佳生(2013)『データ分析ってこうやるんだ!実況講義』ダイヤモンド社 人のデータを使う時には偏りについて慎重にチェック。期間、変化率、グラフの錯覚に注意し多くの試行錯誤で経験を積むことがコツをつかむ近道。凝った計算で得られるジニ係数などは欠点が多いので注意。

ネイト・シルバー(川添節子)(2013)『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』日経BP社 情報量が急増してノイズも増え予測に必要なシグナルは減ってきている。ベイズ的に予測と確率を考える。最初の推定から情報を得て修正していく。

藤澤陽介(2014)『すべては統計にまかせなさい』PHP研究所 統計ツールでリスクを計量化し、リスクを引き受けて生み出される価値、その評価を行うアクチュアリー。計算にはリスクの金額と確率が必要。確率はポアソン分布や正規分布でモデル化。保険金額は大数の法則と収支相等の原則で決定。

<中国>

橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司(2013)『おどろきの中国』講談社現代新書 トップは有能であるべきという公理で支配される中国。天が毛沢東に権力を丸投げし彼に欠陥があってもこれを承認するという。日本は何のために中国と戦争したか、理解できていないので何を謝罪すべきかわからない。

加藤嘉一(2012)『いま中国人は何を考えているのか』日経プレミアシリーズ 腐敗への民衆の不満を、地方政府の役人、サッカー、デモなどへ転化させ、共産党は民衆の味方を誇示。政府への不満をすべて消し去ることは不可能であり、ガス抜きのツールとして「反腐敗」。

若林敬子編(筒井紀美訳)(2006)『中国人口問題のいま-中国人研究者の視点から』ミネルヴァ書房 人口現状と展望(田雪原),一人っ子政策の成果(于学軍),計画出産改革(顧宝昌),人口転換(蔡ム),後期高齢者のニーズ(桂世勲)など。「城中村」も。

黄文雄(2010)『日本支配を狙って自滅する中国』徳間書店 中国の尖閣などの強硬姿勢の裏には国内に抱える問題に関係する。人口圧力と資源不足が強硬に向かわせるが最大の通商国家になり世界の中国に対する反感が増加。

エドワード・ルトワック(奥山真司監訳)(2013)『自滅する中国-なぜ世界帝国になれないのか』芙蓉書房 急速な経済発展と軍事力の増強は周辺諸国の敵対的反応を引き起こす。これが中国政府の威信と影響力を奪う。対抗手段は地経学的なもの、輸出をさせず、天然資源を中国に輸出しないこと。

国分良成・添谷芳秀・高原明生・川島真(2013)『日中関係史 (有斐閣アルマ)』有斐閣アロマ 戦前期の歴史は日中関係の前提。戦後二つの中国との三角関係、貿易面ではLT貿易。70年代に日中国交正常化、天安門事件までおおむね良好。06年に戦略的互恵関係が始まるも歴史、台湾、領土をめぐって摩擦は激化。

<自己啓発>

山崎雅保(2012)『「マイナスの自己暗示」からあなたの心を救い出す本』柏書房 生きる心地は主観次第。主観はそう感じる心のくせ。心のくせを治す自己暗示。「嫌だ」は自分の積極的に拒む感情を明確にし、「大丈夫」は安心と肯定感を培ってくれる最強の自己暗示。

エミール・クーエ(林泰監修)(2009)『暗示で心と体を癒しなさい!』かんき出版 無意識のうちに習慣を作り人生を形作る。意識的に無意識に自己暗示をかける。「私は毎日あらゆる面でますますよくなっている」という暗示が効果的。

リンダ・ローズ(2001)『あなたの人生を変える催眠療法―リンダ・ローズ博士の「潜在意識」活用マニュアル』雷韻出版 顕在意識と潜在意識。潜在意識に体験の痕跡が蓄積され信念になり、行動パターンや世界観に影響を与える。潜在意識を守るクリティカルファクターはボーッとしたり感傷的、感情的な時、ショック時になくなる(非意図的催眠状態)。

前田大輔(2006)『プロカウンセラーの心理の達人マニュアル』秀和システム 心を理解するとは欲求を理解すること。交流分析で自我状態を確認し、現代催眠(NLP)で気持ちを読む。私たちは常識という催眠にかかっている。思い込みという暗示を外せば生きるのが楽になる。

<社会>

大原ケイ(2010)『ルポ電子書籍大国アメリカ』アスキー新書 本が売れるならどんなフォーマットでもどんなルートでもどんな店でも売るというのが米国出版業界。訴訟は起きながらもルールが決まっていくという考え方。日本は出版文化を守るといいながら既得権益を守るだけではないか。

バーン・ブーロー、ボニー・ブーロー(1991)『売春の社会史―古代オリエントから現代まで』筑摩書房 女性に貞淑を求め自由な性を謳歌する男性の二重基準が売春を許容し、処罰対象となる。過去宗教は売春行為には敵意を抱いても売春婦には寛大であった。私生児と性病の蔓延を防ぐため国家管理に。

藤目ゆき(1998)『性の歴史学』不二出版 軍隊による公娼制度,明治期の出産奨励や戦後の産児調節,日本女性の性は政府の都合,女性人権運動の波に翻弄される。

熊本県庁チームくまモン(2013)『くまモンの秘密 地方公務員集団が起こしたサプライズ (幻冬舎新書)』幻冬舎新書 財政難、九州新幹線の逆境の中で生まれた熊本PR作戦。くまモンを関西に神出鬼没させ、ブログとツイッターを開設。失踪事件を演出し、非常勤職員から営業部長に昇格。職員の奮闘記録。

森永卓郎(2003)『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社 小泉政権の構造改革はデフレを生み失業者とフリーターを増加。不良債権処理により勝ち組に資産が集中する新階級社会に。年収が減る中、副業したり、ライフスタイルの見直しを。

茂木誠(2014)『経済は世界史から学べ』ダイヤモンド社 紙幣の発行、国際通貨は銀貨、金貨からドルへ。保護貿易の失敗でナポレオンは没落、金融の歴史は被迫害者の歴史、世界初のバブルはチューリップの球根、借金まみれの藩を立て直した山田方谷の改革など、金融、貿易、財政の解説。


<その他>

中川淳一郎(2009)『ウェブはバカと暇人のもの』光文社新書 ネットに過度な幻想を持つな。企業にとってネットは告知スペースでネットユーザーの嗜好に合わせたB級なことをやる場であり、一般の人にとってネットは便利なツールであり暇つぶしの場である。
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2014年04月01日

2013年度の研究成果

2013年度の成果です。

<論文(査読あり)>

岡本信広(2013)「中核地域の成長は周辺地域に波及しているか?−中国地域間産業連関分析」『地域学研究』第42巻第4号,pp.871-884(ISSN 0287-6256)

<論文(査読なし)>

岡本信広(2013)「中国の地域(省市自治区)産業連関モデルと移輸入」『中央大学経済研究所年報』第44号,pp.201-222

岡本信広(2014)「中国はなぜ都市化を推進するのか?−地域開発から都市化へ」『ERINA REPORT』No.115 環日本海経済研究所,pp.4-12 (リンク先で読めます。)

<その他>
時評
岡本信広(2014)「中国が目指す「新型都市化」とは何か?」『東亜』No.559(2014年1月号),pp.4-5

<学会発表>

6月2日 「中国とアジアの経済統合:国際産業連関モデルからのアプローチ」比較経済体制学会第53回全国大会(新潟大学)

6月23日(日) 「中国の地域経済:空間構造と相互依存」中国経済学会第12回全国大会(京都大学)

10月14日(月) 「FLQによる全国産業連関表の地域化−中国の事例」日本地域学会第50回年次大会(徳島大学)

12月14日(日) 「中国の都市化は経済成長を支えるか?」応用地域学会(ARSC)第27回研究発表大会(京都大学)

<講演等>

5月8日 「中国の経済 - 中国経済は崩壊するのか?」東松山市きらめき市民大学

5月11日,25日,6月1日,8日,15日 「中国で何が起きているのか?」埼玉県県民活動総合センターけんかつオープンカレッジ

11月4日 「The Regional Economy in China - Core, Periphery and Overseas」中日全球価値鏈研討会,西安交通大学

11月7日 「中国の都市化とその課題」「台頭する中国とアジアの新秩序」大東文化大学国際関係学部,大学院アジア地域研究科,現代アジア研究所

<受賞>

10月13日(日)日本地域学会学会賞(著作賞)
10月26日(土)環太平洋産業連関分析学会学会賞(学術賞)
ともに『中国の地域経済: 空間構造と相互依存』(日本評論社)に対して。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | プロフィール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする