2014年04月26日

中国の国有企業改革は終わったのか?

中国の国有企業改革はちょっと落ち着いた感があります。むしろ世界企業ランキングに入るのは国有企業ばかりなので,なんとなく国有企業改革は終わったのではないか,過去のことではないかという感じを持つ人も少なくないでしょう。

でも中国が社会主義市場経済を標榜し,公有制を建前とする以上,国有企業はずっと存在することになります。国有企業は経営がうまくいっているのかどうか,常に注目される存在であることには変わりはありません。

中国の国有企業改革の究極の問題は,ずばりこれからも民営化が必要かどうかです。つまり企業経営の効率化に必要なものは民営化なのかそれ以外なのかという議論につきます。

国有企業が不振に陥った90年代、国有企業再建には大きな論争がありました。国有企業が不振なのは所有権が曖昧なためだ,そのため民営化が必要だという意見(張維迎)VS国有企業は学校,住宅などの政策性負担が大きいので競争が不利だ,だから政策性負担を減少させるべきという意見(林毅夫),です(関2007)。

結局,1997年から実施された国有企業の戦略性改組は両方の主張を取り込み,戦略的産業以外の競争性産業部門にある国有企業は全て民営化し、一方で年金や学校などの政策性負担を減らすことになりました。

2003年に国有資産管理委員会が設立され,その元で中央国有企業を管轄する形をとって以降,民営化の流れは止まりました。(とはいえ,2003年からの東北振興によって東北地域の国有企業改革は本格化しますが。)

その後は,国有企業が大型化(優良資産の集中,株式市場への上場)していき,1997年の四兆元財政支出により国有企業の存在がクローズアップされ,国有企業の存在が大きくなる国進民退(いわゆる民業圧迫)という現象が注目されました。

現在の問題は,

国有企業の利潤は拡大したもののその利潤は「所有者」である国民に分配されていないし、そもそも利潤は不公平な競争環境が生み出したもの

という見方があります。

政府が土地や税金、社会保障を肩代わりするがゆえの高利潤であり、一部産業では民営企業との競争がなく独占状態ゆえの儲けです。国有企業の現在の躍進は企業経営が効率化したのではなく,その不公平な競争環境が90年代とは逆に保護されている結果だという意見です。この保護がなくなれば国有企業は効率が悪いままであり、やはり企業経営の効率化には民営化は避けられないとする改革派の意見もあります(周其仁)。

民営化に反対する意見でもっとも影響力をもつものは,民営化は外国資本と経営に関与した一部の富裕層が企業を私物化することであり(権貴主義),ラテンアメリカ化していまうという意見(郎咸平)です。国有企業の身売りは権力に近い者やその企業経営に関わったもののみが手に入れることができ、その利益は政治家に流れ権力者や富裕者を作る,国有資産の私物化になるだけだ、と主張されています。

その他,民営化に反対する意見は以下の2つです。

(1)社会主義市場経済は公有制を建前とする。
国有企業は公有制の実現形式であり,共産党執政の基礎であり,国家マクロコントロールの保障になっているという点です。とくに前半は2002と2004の党憲章、憲法改正に「公有制が主体」であることが記載されました。また、2011年に中央指導部は私有制は行わないと明言しています。

(2)マクロ経済コントロールの中心。
もう1つは,国有企業は(規模の面でも)国際競争に打ち勝つ拠り所であり,産業技術革新の希望である点です。国有企業こそが国家発展戦略の柱であり、民営企業では技術革新や産業構造高度化はなし得ないとしています。

しかし,これらの民営化に反対する意見は,すべて国有企業の経営は効率化しているのかどうかという問いに答えていません。政府の保護があって経営がうまくいっているだけなら,国民の負担で国有企業を儲けさせているだけなので,民間から国有部門への強制的資源配分が行われていることになります。

国有企業は経営が効率化しているのかどうか,この問いに答えられる説得的な民営化反対意見がでない限り,私は民営化するべきだと思っています。

<参考文献リスト>
関志雄(2007)『中国を動かす経済学者たち―改革開放の水先案内人』東洋経済新報社
「国企産権改革争議20年」『南方週末』2014年4月11日
http://www.infzm.com/content/99700,2014年4月15日アクセス))
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする