2014年09月16日

日本におけるTOEICの位置づけ

TOEICを調べてみると日本ではずいぶんとメジャーな英語試験になっていることがわかりました。

(1)増加する人数

TOEICの受験者数って250万人超えています。英検が230万人ぐらいなので2012年からすでに英検を超えて日本最大の英語試験に成長しています。

正確には,一般のTOEICは236万人,TOEIC-SW,TOEIC-Bridge等を合わせて258万人(2013年度)になっています。リスニングとリーディングというInput手段としての英語能力を図るだけですが,受験料が安いこと,受験機会が多いこと,点数で実力が図れること,勉強がしやすいこと,内容がビジネスの現場で使われそうな英語に特化していること,など等の理由からメジャーな試験に成長しています。

とくに2011年から急速に受験者数が増加しました。2010年は楽天が社内公用語として英語を用いることを宣言した年です。多くの会社で英語が重要視されるようになり,また英語運用能力を図る手段としてTOEICを用いるようになったのがきっかけかもしれません。

TOEIC受験者数.jpg

(2)企業への影響

実際に,ETS(Educational Testing Service,TOEICテストの作成機関)が実施した日本の上場企業におけるTOEIC活用試験の結果をみてみると,その使いやすさから急速に普及しています。

上場企業の約75%が英語を使用する環境があり,企業としてもグローバル人材育成のため8割の企業が英語研修を実施しているようです。

海外出張者や海外赴任者の選抜には約3割の企業がTOEICを利用しているようで,その点数としては675から695が1つの基準になっています。国際部門での業務としては約7割の企業がTOEICの点数として700点以上のスコアを期待しているようです。

約6割の企業でTOEICの結果を利用しているようです。企業規模が大きいほどその傾向が強く,従業員数5000人以上になるとその比率は8割を越えます。

新卒採用でも約7割の企業がTOEICの点数を参考にしているようです。(でもこれは企業が就職活動する学生にTOEIC必須としている意味ではない。)


(3)大学教育への影響

大学教育でもTOEICは利用されてきています。やはり勉強の成果がスコアであらわれるので学校現場でも利用しやすいです。

本学でも,外国語学部英語学科,国際関係学部ではTOEICのスコアアップで単位が認定されています。

ETSの調査によれば,調査対象の751大学のうち,入学試験に利用している大学数は336校,単位認定に利用している大学数は360校になっています。約半数近い大学がTOEICを何かしら利用しています。

企業で利用されることが増えれば,大学としても無視することはできません。グローバル人材育成という文科省の方針も考え合わせると何かしらの英語教育充実が必要になってきます。この意味でTOEICは大学という教育現場でも利用されていくことになるでしょう。


(4)TOEICテストの問題点と今後

企業や大学がTOEICに「侵食」されてくると,TOEIC批判も多くなってきます。

リスニングとリーディングに偏っているので,実践的ではないとか,世界の受験者700万人のうち日本と韓国で500万人を超えるという非常に偏った試験,とかです。

批判はその通りですが,私は以下の理由から積極的にTOEICの存在を認めています。

1)インプットが大事
英語を使えるようにするには,アウトプットの前にインプットが必要です。話す書くのはもちろん必要ですが,聞く読むができてはじめて可能になるものです。TOEIC900点あるけど,しゃべれないというのはありうるとしても,900点取れるだけのインプットある人が海外赴任や海外出張の経験を増やせばすぐに話せるようになると思います。

2)成果が目に見える
英語にかぎらず語学の勉強は継続が大事です。TOEICはスコアという形で結果が目に見えますし,勉強すれば確実にスコアが伸びる試験なので,勉強を続ける動機付けになるでしょう(応用行動分析でいう強化子になっている)。

3)実務に役立つ英語
TOEICの出題範囲は,ビジネス英語です。シチュエーションも海外で仕事すれば体験する可能性の多いものなので,実用的だと思います。

4)受験料が最も安い
TOEFLや英検などに比べて受験料が安いです。私としてはここを最も強調したいです(笑)英語の勉強成果を確認するにはもっとも利用しやすい値段だといえるでしょう。それでも5000円強というのは学生にとって安くないので,英語勉強の継続のためには公開試験ではなく学校や企業など団体で行われるTOEIC-IPで十分だと思います。

TOEICの課題はスピーキングとライティングの能力を図るTOEIC-SWがどこまで普及するかでしょう。企業は英語4能力(リスニング,リーディング,スピーキング,ライティング)の中でスピーキングをもっとも重要視しているにもかかわらず,TOEIC-SWを評価の対象として利用している企業は非常に少ないようです。TOEIC-SWがマイナーだから企業が利用しないのか,企業が利用しないからTOEIC-SWがマイナーなのかわかりませんが,話す,書くという能力を計測するという意味では英検も捨てがたい試験かもしれません。


<参考>
ETS(2013)「上場企業における英語活用実態調査 2013年」報告書
http://www.toeic.or.jp/library/toeic_data/toeic/pdf/data/katsuyo_2013.pdf
ETS(2013)「TOEICテスト 入学試験・単位認定における活用状況 -大学・短期大学・高等専門学校-」
http://www.toeic.or.jp/toeic/about/data/search.html
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育研究活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする