2014年11月25日

公共資源の市場経済化

中国でおもしろそう,と思った場所があります。最近出張行くたびにどの都市でもみかけるようになったものです。

それは「公共資源交易中心(公共資源取引センター)」です。

管理中心四川省公共資源.jpg
四川省人民政府の報道から

参観はしたことないのですが,百度などネットで調べてみると

主に「政府調達」「プロジェクト建設」「国土資源」「産権交易」「国有企業調達」などの分類にわかれています。取引の8割は政府調達とプロジェクト建設が中心のようで,政府が税金で物品を調達する際の入札情報を提供したり,公共事業の入札条件などが公開されているようです。

日本でいう内閣官報みたいなものですが,「公共資源交易網」(2013年8月開始)では全国4500もの各地の交易中心の情報を扱っているのが特徴です。一般の企業が中国全土の入札情報にアクセスできるわけです。

日本の地方自治体も公共の健康センター,体育館,保育園などを民間の運営にまかせています。その際の公募情報などは個別に提供されているのが実情で,このような情報を日本全土で共有できれば,日本の公共施設などの公共資源を有効に活用できるのではと思いました。

国有企業改革で国有企業資産の取引を目的として2000年代に各地に産権取引所ができましたが,現在では都市化で土地のさまざまな権利を取引できる産権交易所も各地にできてきています。

権利売買のシステム,プラットフォームをつくるというのは中国の得意なところといえるでしょう。これで各種土地や資本が有効に活用でき、かつ取引が透明になって腐敗が減少するのであれば,これはいいシステムだと思っています。


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2014年11月20日

環太平洋産業連関学会第25回年次大会

11月15日,16日と岡山大学で環太平洋産業連関分析学会(PAPAIOS)の年次大会が開催され,私は2日目の「地域経済IIセッション」の座長と討論者をつとめました。

討論者では,陳・山田・井原 「愛知県経済の空間的相互依存に関する研究−中部圏地域間産業連関表に準拠して」 へのコメント を行ないました。

この報告は,私が『中国の地域経済−空間構造と相互依存』で行なった乗数分解法に基づいて,愛知県の中部圏における空間構造をあきらかにしたものです。私は,@推計手法,Aモデル,B結論の読み取り,についてコメントをしました。

セッションを通じて感じたことは,地域経済を分析・政策提言するとなるとどうしても自給率に目が行きがちだということです。地域経済の雇用と発展を考えれば,他地域からの財を移入するよりは自地域で生産できる方がいいです。でもだからといって,農林水産業やら製造業やらを振興支援するような結果になるのはどうかなと感じています。なぜなら経済は成長とともに産業構造は変わるもので,その変化の流れに関係なく現存産業の振興は必ずしも長期的な地域経済の発展にいいとは限らないからです。

このあたりの議論は国際経済学でもいう保護主義と幼稚産業保護論に似通ってきます。国際経済的には自由貿易や経済統合を論じていても,地域経済では保護主義的な議論を展開しやすい,というグローバルとローカルの衝突を改めて認識しました。
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2014年11月18日

『都市と消費とディズニーの夢』

1997年に北京に赴任したときに,IKEAやカルフールに接して,その商品陳列があまりにも中国らしくなくてある意味感動したことを覚えています。帰国後,日本にも船橋にIKEAができ,そして幕張にカルフールができたわけですが(撤退して今はイオン幕張),国境を越えて,消費スタイルが似てきたことを感じました。



さて,本書は,都市の変容をショッピングモール化(筆者はそれをショッピングモーライゼイションと呼ぶ)として説明しています。(ディズニーの夢というのは,ウォルトディズニーの理想にショッピングモールがあったことによります。)

経済効率性の追求や消費の社会化によって公共機能が私的ビジネスの場になってきているとします。スタバは公共の病院の中に入り,役所に進出しています。駅や高速道路のSAも公共の場所ですが,多くのショップがテナントとして入り,ショッピングモール化しています。放送機関でも,お台場,赤坂サカスなど公共放送にもかかわらず私的なショッピングモールを設置し,オリジナルグッズを販売しています。

つまり都市の公共空間はすべてショッピングモールになっています。そして私たちの休日はショッピングモールに行って映画をみてご飯を食べ,買い物をして帰るといった消費中心の生活スタイルになっています。

外国からの観光客も同じです。本書によると外国からの観光客はショッピングモールに行くことを楽しみにしているそうで,ショッピングモールは消費の世界共通プラットフォームになってきています。

つまり世界の都市はショッピングモール化しているというのが本書の主張になっています。(ちなみに本書の著者はショッピングモール化について肯定的,否定的どちらの態度もとっていない。)

都市建築や都市計画の専門家からはショッピングモールは批判されています。それは画一化を嫌っているからです。都市がその魅力をもつためには独自性が必要で,どこもかしこもショッピングモールの風景になると都市の魅力がなくなってきます。(観光自体が都市の風景を楽しむもの。)

中国では都市化によって,旧市街地から新市街地が開発されていっています。新市街地とは経済開発区やハイテク開発区として設置され企業を誘致し,人が住むようになって開発されてきたところです。この新市街地の街のつくりは非常に似通っていて,整備された広い縦横の道路と新しいビルとショッピングセンターです。先進的になっていくのは発展の象徴かもしれませんが,旧市街地の良さは保存してもらいたいものです。

錦里古街(成都)街の独自性を活かした観光資源化とスターバックス
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(2014/11/1撮影)
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2014年11月13日

中国は都市化の費用をまかなえるのか?

『東亜』に投稿した原稿が掲載されたので,その紹介。

岡本信広(2014)「新型都市化政策の評価−中国は都市化の費用をまかなえるのか?」『東亜』No.569 ,2014年11月号,pp.32-53

【要約】
 中国の新型都市化政策の推進には,都市インフラ建設ための費用のみならず,農村都市一体化のための制度改革費用がかかる。世界銀行と国務院発展研究センターは政府によって都市化の費用はまかなえるとするが,筆者のシミュレーションによれば都市化によって期待される税収は政府負担の三分の一しかない。新型都市化政策の推進には,どのように財源を調達するかが鍵となる。

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2014年11月11日

2014年10月読書ノート

2014年10月読書ノート



末廣先生が新しく出したこの本は,アジア全体の経済を学ぶのにぴったりの本です。生産,消費,老い,疲弊という観点からアジアを統一的にみようとしています。生産,消費についてはとくに目新しい議論はありませんが,押えておくべきポイントです。本書の特徴は高齢化が進んでいること,社会発展とともに人々のストレスも増大していることにも触れている点でしょう。

末廣先生は文章も読みやすい(わかりやすい)ので,アジアを学ぶ学生にはオススメ。

<経済>

多田洋介(2014)『行動経済学入門 (日経文庫)』日経文庫 標準的経済学が想定する超合理的、自制的、利己的人間像に対し現実は近道を選び、不確実性の中で生き、現在を重視し、他人の目を気にする。非合理な人間は市場の効率をも狂わす可能性がある。

アラン・ダブニー(山形浩生)(2014)『この世で一番おもしろい統計学――誰も「データ」でダマされなくなるかもしれない16講+α』ダイヤモンド社 統計を使うと限られた情報で自信を持って決断できる。標本分布がステキな理由は母集団の平均を教えてくれること、それを使って母集団について確率が計算できること。

<中国>

トシ・ヨシハラ,ジェイムズ・R・ホームズ(山形浩生)(2014)『太平洋の赤い星-中国の台頭と海洋覇権への野望』バジリコ 中国の海洋戦略はマハンの影響を受けている。貿易,商業,資源へのアクセスをどう確保するか,海軍を通じて確保し,制海権を持つ。

<自己啓発>

長嶺義宣・外山聖子編(2014)『世界の現場で僕たちが学んだ「仕事の基本」』阪急コミュニケーション 海外でも日本でも社会を生き抜くために必要な要素は似ている、リーダーになる素質は誰でも持っている。今直面している問題に真面目に真摯に取り組むこと。

與良昌浩(2014)『他人の思考の9割は変えられる』マイナビ新書 仕事への思考のクセは会社の風土や上司・同僚との人間関係などの影響を受ける。今の自分の状態に戻ろうとする相手を「本当にそうなのか」という問題意識を持たせる。その環境には肯定という過程が必要。伴走型リーダーに。

<社会>

ダニ・ロドリック(柴山桂太大川良文)(2014)『グローバリゼーション・パラドクス-世界経済の未来を決める道』白水社 グローバリゼーション、民主主義、国民国家は世界経済の政治的トリレンマであり、二つしか実現不可能だ。民主主義と国民国家をグローバリゼーションに優先すべき。

末廣昭(2014)『新興アジア経済論――キャッチアップを超えて (シリーズ 現代経済の展望)』岩波書店 90年代以降のアジアの経済発展は域内貿易投資の拡大、生産するアジア、消費するアジアであった。老いてゆくアジアは要素投入型成長の限界を示し、人々の将来への不安とストレスを惹起する疲弊するアジアでもある。

飯田泰之(2014)『NHKラジオビジネス塾 思考をみがく経済学』NHK出版 仮定部分と現実に多少のズレがあっても大まかな傾向として成り立っている理論を重視するとビジネスの戦略でも役に立つことが多い。
行動する人とリスクを負う人が分断。計画担当者と現場。

荻上チキ・飯田泰之(2013)『夜の経済学』扶桑社 経済水準が高いとフーゾク価格は高いがワリキリはさらに地域格差が反映。10歳年上になるとワリキリ価格は2000円前後下落。技術系の職業、事務管理職系はフーゾクに通う可能性は2倍以上。

荻上チキ(2012)『彼女たちの売春(ワリキリ)』扶桑社 孤立、借金、教育からの排除などの社会的斥力が高収入、値段交渉、自由出勤などが引力となって女性をワリキリに向かわせる。

荻上チキ(2011)『セックスメディア30年史-欲望の革命児たち』ちくま新書 出会い系、オカズ系、性サービス系のメディアはテレクラからサイト系に、エロ本は動画サイトに、TENGA、オリエント工業の技術を生み、サービス系は店舗型から派遣型へ。性欲がある限り制約があっても変化は続く。

<その他>

蒲原聖可(2005)『ベジタリアンの医学』平凡社新書 植物性食品を多く摂取すると生活習慣病になるリスクが低減。植物性食品に含まれる抗酸化成分・ファイトケミカルが大きな役割を果たす。動物性食品はタンパク質、ミネラルを効率良く吸収できるが飽和脂肪酸、コレステロールの摂取が多くなる。

鶴田静(2002)『ベジタリアンの文化誌』中公文庫 ベジタリズムは単なる食事法ではなく思想と行動にもとづいた生き方、地球を健康に保ち平和に生きるための方法。肉食を攻撃することが目的ではない。

蒲原聖可(2011)『ときどきベジタリアン食のすすめ』日本評論社 最新の米国政府の食生活方針や米国栄養士会の報告書はベジタリアン食は栄養学的に適切と是認。ビーガンの場合はビタミンB12とDの不足が懸念。食糧事情が改善した現代はエコロジーの観点からも植物性食品の摂取を支持。

ジャン=ポール・ネリエール、ディビッド・ホン(2011)『世界のグロービッシュ』東洋経済新報社 非ネイティブ同士の英会話が74%。非ネイティブ同士の効率的な言葉がグロービッシュの始まり。英語をツールとして単語数、長さ、能動態を使うなどの制約をかける。
関口雄一(2011)『多忙社員こそグロービッシュ-完璧を求めない英語再入門』中公新書ラクレ 英語は意思疎通の手段。必要なのは手軽で大衆的な「ファストイングリッシュ」。1500語だけ、1年以内に取得、年齢不問で身につくというグロービッシュは凝縮した英語。これで十分というレベルで。

ニコラス・ディフォンツォ(江口泰子)(2011)『うわさとデマ 口コミの科学
』講談社 人は社会的存在であり、世界を理解したいという欲求を持っている。噂は共同で世界を理解し、脅威を取り除く手段でもあるが、人はとんでもないものを信じることがある。

G.W.オルポート、L.ポストマン(南博)(2008)『デマの心理学』岩波書店 デマは重要さと曖昧さとの積に比例する。デマは受け継がれているうちに平均的に5つの要素になり(平均化)、一部が強調され、聞き手の関心に同化する。
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2014年11月04日

『うわさとデマ 口コミの科学』

中国経済をやっていると,よくもまあこれだけ中国の否定的な情報が流れるなと感じることがあります。もちろん否定的情報の方がニュース価値として高いのはよくわかっているのですが。

中国情報がデマとかうわさだとかまではいいません。でも一つの現象を見たときにどうして人は中国を否定的にみて,それを人に伝えるのか,「中国バイアス」の存在を理解する上で役に立つ本がこの本でした。

ちなみに「中国バイアス」とは,中国の各地域のGDP成長率が一国のGDP成長率よりも高いと,統計がおかしいとか(もちろんそれは問題),地方政府の盲目的投資拡大とか(もちろんその要素もある)などどうしても否定的にとらえることです。アメリカの経済成長率が州ごとに違ってもそんなにマイナス的な判断にはならないでしょうし,そもそもニュースにもならないかもしれません。中国だからこそネガティブにとらえられ,そしてネガティブに情報が提供されることが多いです。私はこれを「中国バイアス」と呼んでいます。



さて,本書の主張を簡単にまとめると

人は社会的存在であり、世界を理解したいという欲求を持っている。噂は共同で世界を理解し、脅威を取り除く手段でもあるが、人はとんでもないものを信じることがある。たいていの噂は確認されないが、噂が真実になるためには、集団に事実を探そうとする動機があり、事情通が存在し、意見の多様性、活発な議論が必要である。

といったところです。

人間は頭に浮かんだ考えで物事を解釈する傾向があります。これを認識構造活性化の法則というそうです。例えば,東北に旅行して美人をみたら,やっぱり東北美人だなと思うわけですが,これは人から東北美人という言葉を聞き,すでに東北に対して思考のフレームワークを持っています。この時,本当に体験すると,東北美人という思考と現実が一致し,そして人に伝えることになります。この意味で噂は思考のフレームワークを活性化させます。

ところで,噂とは、話し手と聞き手にとって重要か関心が高いとみなされ、真実と証明されずに世間に流布している情報です。中にはもちろん真実はありますが,その真偽を確かめることができていないのが噂です。

噂は,曖昧な状況や脅威に直面しているか,将来の脅威が予想される状況で生じます。災害などがその典型ですが,災害が発生すると曖昧な状況になり,人は情報を必要とします。現在こうであると確定できない状態です。あるいは脅威にさらされているときです。これも災害でよく起こることですが,津波がくる,火事が発生するなどさまざまな脅威が人をして噂を発生させます。

噂は、曖昧な状況の情報の空白を埋め状況を理解する、脅威をとりのぞくためにあります。災害では,必要な情報が足りません。そうなるとその空白を埋めようとして,人々の口に上がっているものを信じやすい状況になります。でもそのような情報を得ることによって,現在の状況を理解して安心することができます。

噂とどのようにつきあうべきでしょうか。ある噂が広まっている社会集団の中で,社会を構成するさまざまな人が自分のもっている情報を提供して、多くの人がその新しい情報を手に入れます。真摯に情報を求め、提供する姿勢がその社会にあると,その社会集団の中で噂は振るいにかけられ、理にかなった説明だけが残り,社会を正しく理解することになります。

この意味で,私も中国情報をできるだけ客観的に説明していき,否定的な情報だけでない,別の中国説明を試みていきたいと思っています。
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