2015年08月25日

日本の戦争謝罪について

8月15日に安倍首相が談話を発表しました。もっとも注目されたのは謝罪をどこまで盛り込むかという点だったわけですが,村山談話で一歩踏み込んだ謝罪がされて以来,各内閣は謝罪を入れています。

さて問題は,なぜ日本は謝罪を続けるのかという点です。謝罪を繰り返すというのは,謝罪が受け入れられていないということです。

BBCは,なぜ日本の謝罪は近隣から忘れられるのか,について日本のテンプル大学Dujarric教授の考察を紹介しています。すべて賛同できるわけではありませんが,参考になるのでポイントだけ紹介。

日本の謝罪が忘れられるのは3つの要因があるといいます。

一つは,謝罪が一進一退していること。閣僚による靖国神社参拝,従軍慰安婦問題,南京大虐殺はない,などの発言が与党から出ていることです。つまりメッセージ性がかけています。

二つめは,謝罪回数がかなり多いこと。しかしよく比較対象とされるドイツのケースと比べて,償いの対象(過去の行いの範囲,金銭的なものなど)が不足しているそうです。

三つめは,歴史認識についての国際政治の複雑性。北京は日米同盟に敵対し,日本を非難することで党の正統性を得ます。米国の朝鮮半島への影響力を下げるには韓国の対日批判を維持させたいと考えますし,また韓国も日本との連携を掲げたくても,それは国内政治での立場を悪くするのでできないという事情があります。

この記事は絶妙にバランスがとれています。

1つめは左の人,2つめは中道の人,3つめは右の人から支持されやすそうです。

一方で,国際情勢理解という意味では3つめがおもしろかったです。


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2015年08月18日

一路一帯

一路一帯に関する政府文件が2015年3月28日に発表されました。発展改革委員会,外交部,商務部連合の文件です。地域開発的ビジョンにもかかわらず国際的な政策ということで外交部が入っているのが珍しいといえます。

以下,参考資料としてその文件の要約を紹介しておきます。

「シルクロード経済帯と21世紀の海のシルクロードを共同で推進するビジョンと行動」

前言で,この構想が2013年9月と10月に習近平が中央アジア及び東南アジア諸国を訪問した時に出てきたこと,2013年の中国ASEAN博覧会において李克強が強調したものである,が触れられ,その目的はシルクロード沿線の各国の経済発展と地域経済協力であることが指摘されています。

1.時代背景

各国が抱える問題は大きいものの,一帯一路は世界の多極化,グローバル化,文化の多様化,社会の情報化という流れの中で,開放的な地域協力こそが,グローバルな自由貿易体系と開放的な世界経済に必要という認識が述べられます。

また,中国は一環して対外開放政策を基本国策としており,対外開放の深化および世界各国との協力強化のために中国は責任を果たし,人類の平和的発展に貢献すると宣言しています。

2.共同原則

国連憲章,平等互恵の原則に基づくこと,一帯一路は過去のシルクロードの範囲に限ることなく,多くの国,国際組織,地域組織が参加して成果を広く共有すること,市場ルール,国際通用ルールに従い,市場が資源配分において決定的作用を及ぼすこと,を確認しています。


3.構想のフレームワーク

一帯一路は,経済が活発な東アジア圏と,一方で発展しているヨーロッパ経済圏,そして中間には経済発展の潜在力の高い国々があることを確認し,シルクロード経済帯の重点は,中国から中央アジア,ロシア,ヨーロッパにつながるルート,中国から中央アジア,西アジア,地中海へのルート,中国から東南アジア,南アジア,インド洋へのルートである,としています。一方,21世紀の海のシルクロードの重点方向として,中国沿海の港から南シナ海を経て,インド洋を越え,ヨーロッパに伸びるルート,そして中国の沿海各港から南シナ海,南太平洋へのルートである,としています。

一路一帯の方向は,陸上の国際ルートでは沿線の中心都市を柱として経済貿易産業団地を協力のプラットフォームとし,新しいアジアヨーロッパランドブリッジ,中国ー中央アジアー西ヨーロッパ,をつくるとし,海上ルートでは港湾を結節点として,安全で効率のいい輸送ルートを建設することを提起しています。


4.協力の重点

各国が協力する重点として以下の5つをあげています。

1)政策対話。内容はそのまま。

2)インフラの接続。インフラを通信や交通面で規格を標準化しつつ,ネットワークを結ぶ。

3)スムーズな貿易。国境貿易,税関制度などを標準化して透明度を高めつつ,貿易,投資障壁を除いて自由貿易地域にしていく。

4)資金融通。沿線国家はともに兌換範囲を拡大するともに,債権市場を整備,AIIBをともに発展させるとともに,シルクロード基金などさまざまな資金協力を行なう。

5)民間交流。留学生,観光業,伝染病などの情報共有などの推進。



5.協力のメカニズム


各国がメモランダム(備忘録)の形式などで協定を結び,一帯一路の行動計画を共同で研究していくとともに,現在ある上海協力機構(SCO),ASEAN+1,APEC,ASEMなどの現有の組織を活用していく,としています。


6.中国各地で開放態勢

ここは国内政策の部分です。

西北,東北地域は西側の国に向けた窓口となる,西南地域は東南アジアと接するという地理的優位を活かす,沿海と香港マカオ地域は開放型経済の優位性を発揮する,内陸部は長江上中流域の都市群を発展させ,ヴォルガ河沿岸地域(ロシア)と協力していく,などが述べられます。


7.中国の積極的な行動

国家のトップレベルによる外交・通商対話,メモランダム(備忘録)レベルへのサイン,共通プロジェクトの推進,が述べられるとともに,中国は各種資源を総動員して政策強化に力を入れるとしています。シルクロード基金を設立させ,中国ー欧州アジア経済協力基金の投資機能を強化なども述べられます。


8.共にすばらしい未来を作りあげる

まぁここはキレイゴトなので省略。


あまり具体的な代表的プロジェクトがあるわけではありませんが,いずれにせよ,シルクロード沿線の各国とともに経済協力を推進するという強い意志が表れており,経済のみならず外交面でも中国の発言力が高まっているのは間違いないでしょう。
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2015年08月04日

ジェトロ中国経済

『ジェトロ中国経済』8月号に寄稿しました。

岡本信広(2015)「中国の都市化とビジネスチャンス」『ジェトロ中国経済』No.595(8月号),pp.48-67

Web発行のみでしかもジェトロメンバーズ限定ですが,要旨だけ紹介。

□ 現政権が経済政策の一つとして実施しているのが「新型都市化」である。中国では戸籍・土地制度の下、都市と農村が分断している。労働移動、土地売買などさまざまな面において都市と農村が二分化しており、この制度的分断が都市化の障害になっている。
□ 歴史的にみると、都市化の抑制から推進へと政策方針が変更されてきた。従来、都市と農村を二元化することによって都市化を抑制させてきたが、市場経済化により現実的な都市化が進み、2000 年代以降、都市化が本格的に推進されるようになった。そのガイドラインとなるのが 2014 年の「国家新型都市化計画」(以下、「新型都市計画」)である。
□ 都市化にはメリットがある。一つは経済構造の転換である。都市化は輸出、投資主導型から消費型に構造を転換し、サービス産業を発展させることができる。もう一つは産業構造の高度化である。都市化は生産性を向上させ、中国独自の技術開発による「中国製造」を可能にする。
□ 「新型都市化計画」の特徴は、「人の都市化」である。都市に住む農民の農業戸籍を都市戸籍に転換し、農民を消費の主体としてサービス産業の発展に期待する。また、制度による都市と農村の分断を乗り越える制度改革が実施される予定である。
□ 中国の「新型都市化計画」の推進は、日本にもメリットをもたらす。農民工(農村出身の出稼ぎ労働者)は新たな中間層(ボリュームゾーン)の予備群であり、インフラ建設、社会サービスをはじめ中国市場の活発化が期待される。

JETRO中国経済.jpg
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