2015年11月24日

美麗郷村(貴州省の新型都市化の取り組み)

11月16日から20日まで貴州省で,新型都市化の調査を行ないました。とくに安順市は国家新型都市化の試点(実験地域)として,農村の小城鎮化に積極的に取り組んでいます。

貴安新区が昨年国家級新区に昇格し,国家による投資が大量につぎ込まれています。これは,2020年までの全面的小康状態への達成に向けて,国家が一番貧しい貴州省の貧困脱出に力を入れているからです。

とくに農村の貧困問題は深刻ですので,安順市でも農村開発の方向は,観光業,生態環境を活かした農業,小城鎮化というように,都市化を一つのキーワードとして,開発に取り組んでいます。

今回は農村でも「美麗郷村」の試点(示範点)をいくつか回りました。国家がお金を投入し,農村の城鎮化を行ない,産業としては観光に力をいれるというものです。

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(今回,一番気に入ったのは龍宮鎮桃子村。とてもきれいです。時間があったらパソコンだけ持って,ここでゆっくり原稿でも書きたい。)

ただ問題もあります。私が感じたのは以下の点です。

(1)極端に政府投入が多い。5千万元から8千万元が政府から投資されています。この政府投資によって建築業雇用を増やしており,これが1人当たりの平均収入を一時的に上昇させている可能性があります。ほとんどの村で1人あたり収入が1万元に到達しています。
(2)観光業が発展するほど観光資源は豊かなのかという問題です。上の写真にもあるような,龍宮鎮には国家級の景点がありますが,観光資源がなければ永続的に観光農村として永続するのは難しいように思います。また観光地は工夫を凝らし続けないとリピーターは生まれません。一回きりになっては永続的な観光農村としては難しいです。
(3)観光業による村づくりを各地が展開すると、似たようなものになります。また市場での競争は激しく、市場から見放されれば、村はまた貧困に陥る可能性があります。

それでも農村が豊かになってきているのは確かなので,これもまた将来的に再度訪問してみたいと思います。
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2015年11月10日

浙江工商大学学報に

昨年神戸大学で開催された都市化に関する会議でコメントした内容が発展して,以下の成果になりました。

冈本信广(2015)「城乡一体化的艰难前行」『浙江工商大学学报』(2015 年9 月)第4 期(总第134 期),pp.112-117(招待論文)DOI:10.14134/j.cnki.cn33-1337/c.2015.05.014

都市農村一体化の難しい点は,都市農村二元制度と農民の利益調整であることを主張しています。

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2015年11月03日

産業連関分析手法の動向

10月10日には日本地域学会第52回年次大会(岡山大学)で,10月31日には環太平洋産業連関学会(通称PAPAIOS)第26回大会(明治大学)で,討論者として参加しました。どちらも産業連関分析に関するものです。

藤岡明房 「産業連関表の単位構造分析 についての一考察 」 へのコメント
陳・申・山田 「中部地域における生産構造の経年変化に関する一考察」 へのコメント

です。上記は単位構造(故尾崎厳先生)について,後者はAPL(平均世代波及数,平均波及長)の分析手法を使っています。

1)産業連関分析の動向

産業連関分析には時代的な波があります。レオンチェフが産業連関分析を発明後、その経済予測の正確性から経済モデルとして世界的に普及、統計的にはSNAの発展につながるとともに、経済の実証分析としてはレオンチェフ・パラドックスなどで貢献しました。

これらの貢献でレオンチェフは1973年にノーベル経済学賞を受賞。この辺りが産業連関分析のピークとなります。しかし,その線形性,作表の困難さ,モデルの柔軟性のなさ,などから,1980年代、1990年代に衰退します。

復活のきっかけは,空間経済学の勃興です。空間分析のツールとして1990年代後半より実証用データとして使われるようになりました。最近ではサプライチェーンの広がりによって付加価値貿易の分析など、新たな活用が広がり、Koopmanらの論文がAERに採用されるなど、経済学的に大きく貢献しています。また環境、資源、道路計画など工学分野でも活用されています。

2)単位構造は復活可能か

慶応大学の故尾崎先生が提唱した単位構造分析(Unit Structure Analysis)というのがあります。これは最終需要一単位を生産するのに必要な中間財投入構造(すなわち単位構造)を明らかにするというものでした。そしれ彼の実証結果は,単位構造は時系列的に見ても安定しているというものです。

これは産業連関表の前提である投入構造の安定性を示しているともいえます。分析手法がシンプル,導かれるファインディングスも結構頑健性のあるものであるため,最近では誰もつかっていないのが現状です。

もしこれを復活させるとするならば,やはり空間的な使い方が必要でしょう。つまり非競争型(輸入と国産財は別ものとして扱う)の表での単位構造の位置づけができる,あるいは国産率(藤川先生,長谷部先生)に関連した展開があれば,何かしらの使い方は可能かもしれません。でも単位構造は安定しているという尾崎仮説を覆す発見ができるか,できたとして,その理由は何かを考える必要がでてきます。

3)APL(Average Propagation Length)

最近の注目手法はAPLです。産業連関が前方連関,後方連関の強さを表わすというところから,産業間のつながりの「長さ」を分析することに成功した手法です(Ditzenbacherなど2005)。猪俣(アジ研)はこれらを図解する方法を考え出し,見方によっては新たな産業連関の発見につながってきたといえます。

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