2015年12月29日

ERINA REPORTに寄稿

ERINA REPORTに寄稿しました。

岡本信広(2015)「一帯一路は内陸部を発展させられるか?-重慶を事例に」『ERINA REPORT』環日本海経済研究所,No.127, pp.46-52 (リンク先からPDFでみられます。)

結論として,「「一帯一路」による物流業の発展は中国国内の都市化の推進,さらなる経済発展をも期待できる。重慶はまさに「一帯一路」を活用しつつ,産業集積と物流業の発展が期待できる都市である。シルクロード経済帯にある渝新欧鉄道は重慶の経済発展をもたらす可能性を持っている。通関制度の共通化,運行時刻の改善や便数の増加,そしてコストの低下が進めば,内陸部であるにもかかわらず重慶は中国のさらなる物流拠点,産業集積拠点として発展が見込めるかも知れない。」としています。

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2015年12月22日

地方が消滅してもいい!?

アゴラから

地方創生を考えるには,地方消滅も考慮しないといけないだろうということで,ややあおり(笑)を入れて議論してみました。

さて,前回のエントリーで地方創生のためには、「地方と都市がつながること」と主張しました。

地方を創生するためにやるべきことは何か? --- 岡本 信広

今日は、地方の消滅について考えてみます。結論として、日本という一国全体でみると、地方消滅(その反義としての東京の一極集中)は、感情的には寂しいことですがメリットがあります。


1.地方は都市に吸い込まれる?

地方が東京圏とつながると,地方は恩恵を受けて豊かになりますが,たしかに消滅する可能性もあります。

都市経済圏との一体化は、地方を消滅させる、あるいは地方と都市の格差を拡大する(あるいは固定化しうる)という見方も経済学者にはあります。代表的なものでは,ウォーラーステインの世界システム論,ミュルダールの累積的因果関係,ハーシュマンの分極効果などです。

簡単にまとめると,

1)地方は産業基盤が弱いので常に都市からの財やサービスを購入しつづける。
2)地方の優秀な人材が都市の大学に進学する,就職して帰ってこない。
3)人が移動する→産業が衰退する→町に活気がない→さらに人が来ないという因果関係が累積的に繰り返される。

ということがあげられます。具体的には,東京湾にアクアラインができて木更津がさびれた,つくばエクスプレスができて秋葉原ばかりが得をした,という現象です。「ストロー効果」といわれたりします。


2.長期的にはメリットがある

都市と地方がつながるメリットは以下のメカニズムで働きます。

1)都市部の住民が地方の特産品や農業製品を購入する。
2)都市部の人たちが地方に観光にいく,あるいは混雑をきらって地方に移住する。
3)都市では競争が激しく利益が得られないので,地方に企業が投資をする。

などです。具体的には,木更津に有名アウトレットパークができたとか,つくば市の人口が増えているとか,です。

都市と地方が「つながる」ことによって地方は得をします。中国の事例ですが,私の研究でも地方都市化間の格差を固定化する効果よりも都市の恩恵が地方にいく効果の方が大きいと出ています(岡本2012)。


3.地方が消滅することは悪いことか?

すべての地方が都市とつながったとして、すべての地方にメリットがあるとは考えにくいのは確かです。日本の人口が減少傾向にあるために、地方に行くのが便利になった、都市の混雑がいやで地方に住みたいという需要が出てきますが、すべての地方を潤すほどの労働者と消費者がいるわけではありません。

となると、やはり一部地方には、消滅するリスクが存在します。

しかし、ミクロ的な個人の感情を除いて、マクロ的な経済全体としては地方消滅にはメリットがあります。

都市化は災害、環境、エネルギー、そして経済の生産性向上に力を発揮します(グレイザー2012)。

都市の方が災害の被害が少なく、環境にもやさしく、エネルギーを節約することが可能です。

自宅で各部屋に家族が散らばってエアコンを各部屋ガンガンかけるよりも、リビングに集まっているほうが、環境とエネルギーに優しいのと同じです。

それに加えて、多くの多様な人々が都市に集まるため、新しいアイデアが生み出され、生産性が向上する可能性も増します。生産性が向上すれば、その都市が経済発展を牽引します。この意味でも都市は「人類最大の発明」であるのです。(この意味では、東京はさておき大阪は頑張ってほしい。)

ただ、個人的あるいはミクロ的には、地方消滅には物悲しいものがあることは否定できません。自分の育った村が、朽ち果てていくのをみるのはつらいことでしょう。

しかし、それでも郷愁という感情を我慢すれば,自然淘汰としての地方消滅、そしてその反対の現象としての東京一極集中は、国全体としては便益の方が大きいのです。

<参考>
岡本信広(2012)『中国の地域経済: 空間構造と相互依存』日本評論社
エドワード・グレイザー(山形浩生)(2012)『都市は人類最高の発明である』NTT出版
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2015年12月15日

地方を発展させるためには

アゴラでの元ネタ

地方創生VS地方消滅という面白い議論が展開されていたので,遅ればせながら参戦(笑)

まあ何事も結論から単刀直入に言う方が人に伝わりやすいので,結論を先に行っておきますね。

経済活動は一部地域に集積するけど,距離とか移動の妨げがなくなって経済圏が一体化すると,消費と所得は平準化するというのが経済学の知見です。その法則(仮説)からすると,地方創生のためには都市とつながろう,というのが私の意見。


1.経済学の知見

世界銀行は『世界開発報告2009-変わりつつある世界経済地理』を発表しました。(日本語の概要版がこちらでダウンロード可能になっています。)

これは,地域,都市経済学(あるいは空間経済学)のこれまでの研究成果にもとづいてまとめられたものです。ざっくりこの本の主張をまとめると「経済活動は一部地域に集積するけど,距離とか移動の妨げがなくなって経済圏が一体化すると,消費と所得は平準化する」といいます。これが現在の経済学のスタンダードな見方です。これにもとづいて考えていきたいと思います。


2.都市化は進行する

まず,日本でみても,世界でみても都市化は上昇の傾向にあり,それがひっくりかえることはないです。

それは長坂さんのデータが示すとおり。

東京のみなさん、まだイケダハヤトで消耗してるの?


世界の都市化率についても同じことがいえます(UN-HABITATの統計もそれを示している)。

つまり,一部地域、都市に人々が集まり経済活動が行われるという集積の傾向は変わりません。なぜそうなるかは一言で言ってしまうと,企業はコストが減少し,消費者は便益が増すからです。市場経済が発達し,人々の意思決定が自由であるならば,都市の方が地方よりも経済活動は行いやすいのです。


3.都市ががんばれば地方も豊かに

経済活動が一部都市に集積すると地方はどうなるんだと思われるでしょう。でも、安心してください。都市の発展は都市以外の地域、過疎地域も含めて所得を引き上げます。

高知県が貧しいということはなく,人口の集積具合に比べれば,東京都と許せないぐらいの格差があるわけではないです。

平成24年度の統計(人口と1人当たり県民総生産)をみてみましょう。東京の人口は1324万人です。日本の総人口10%以上の人が東京に集まっています。一方高知県は75万人,日本総人口の0.6%です。圧倒的に東京という大都市に人が集まっています。(近隣の神奈川,埼玉,千葉を入れると3000万人を越える!)

1人当たり県民総生産では,1位の東京が442万円であり,2位愛知344万円,3位静岡320万円と続いていきます。高知県は225万円(45位),沖縄県204万円(47位)です。東京が圧倒的に経済活動が集積しているので当然としても,3位の静岡は高知県の1.5倍程度です。

つまり経済活動の集積具合に比べて,所得の差は小さいです。また,お隣中国の上海と貴州の差が約4倍あることを考えれば,所得水準は平準化しているといえるでしょう。(ちなみに10年前は10倍開いていた。)

世界的にみても、先進国は都市化が進んでもそれ以外の地域は貧しくなったかというとそんなことはなく、やっぱり豊かになっています。

経済活動はなくなってきて、地方は閑散としてきたという実感があったとしても,高知県の人の所得と消費が東京に劣っているということはあまり感じられません。

つまり集積して東京が発展すると,地方にもかならず恩恵があります。これが経済の波及効果といわれます(経済学者ハーシュマンは浸透効果と名付けた)。

東京が発展すると,フィリピンの辺鄙な島にはなんの効果はありませんが、高知県、はては沖縄県にも恩恵は波及しているのです。この違いはつながりです。東京と高知,沖縄はつながっていますが,東京とフィリピンのつながりは薄いです。

経済は相互につながっています。一部地域の都市化のみ,あるいはその反対に一部地域の過疎化に焦点をあてても,本質を見落とします。


4.地方は何をすべきか

地方は何をすべきでしょうか。水谷さんが,地方の観光化とかゆるキャラ戦略に金を使うなと,提案されましたが,まさしくこの通りだと思います。これは得策ではなく,確かに無駄な可能性が高いです。以上でも述べたように,人は都市に集まっていくからです。

では何をすべきか?

東京,愛知(名古屋),大阪といった都市圏と「つながる」ことです。高速道路,鉄道,空港,物流センターなどなど,都市とつながることです。情報でいえば,インターネットを普及させることです。財・サービス,人,お金,情報が常に都市とつながっている状態にすることを考えるべきです。

財・サービス,人の移動に関わるコストを下げる方が有益です。

もし,公共事業がきらいなら,iPadのようなガジェットを県民に配り,使い方の講習を行うべきです。そうすれば地方は都市という経済活動の恩恵を受けることが可能です。

イケダさんが高知県に住むことを可能にしているのはまさに現在の日本の各地方が都市との強い「つながり」を確保しているからだといえます。東京への移動に1週間もかかるとか,ネットがないとかになれば,高知県はもっと貧しくなっていたかもしれず,そうすると東京の人がそこに住むという選択肢もなくなります。

世界をみると先進国と途上国に分かれています。途上国の特徴は,先進国との垣根が高い,国境による封鎖度(手続きが煩瑣だとかVISAが発給されにくいとか),世界市場へのアクセス悪い(内陸部だとか,空港がないとか)といった問題があります(世界銀行の報告書)。

中国も地方と都市部(上海,北京,天津など)との格差は開いていましたが,高速道路,高速鉄道,空港の整備などによって一国の時間距離は大幅に改善しました。また戸籍など人の移動を妨げる制度もありましたが徐々に改善し,地方と都市部とのアクセスは改善してきています。これが近年の中国国内の格差縮小,地方発展につながっています。

日本も地方創生を考えるのであれば,都市とのアクセスをさらによくすることです。それにより,都市の発展の恩恵を地方に分配することが可能になるでしょう。
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2015年12月08日

物流や交通インフラ

中国でも日本でも国内市場の統一には物流センターや道路、鉄道、港湾の整備がなされます。物や人の集散地を設けることにより、効率的に物や人が市場の隅々にまで行き渡ることが可能になります。

問題はどこに物流・交通インフラを設置するかです。これは市場が決定するというよりも政府が決定します。

まず大都市間で物流・交通ネットワークを構築することが考えられます。大都市は財・サービスや労働を必要とするために、そこへのネットワークを構築することは利便性を高めることになります。

次は中都市を巻き込んだネットワーク、そして小都市を巻き込んだネットワークでしょう。これにより市場の隅々にまでネットワークが張り巡らされ、財・サービス、労働の取引が可能になります。

問題はこの次です。物流・交通インフラの整備が終わり、ネットワークの改善が行われたとします(鉄道の高速化、道路の拡張、港湾、空港の整備、物流センターの効率化など)。

そうすると各都市に作られた物流・交通インフラは競争を始めます。空港を例に挙げてみると、日本でも各地に空港が建設され、県によっては2つの空港が建設されます。路線によっては採算の度合いが違ってくるでしょうし、場合によっては行き先の乗り換えが便利という、ハブになる空港が出てきます。空港が競争淘汰の段階に入ります。

物流センターも同じで各地でコンテナ輸送の乗り換えや集散が行われます。そうすると、空港も物流センターも多層化します。つまり一部の物流・交通インフラは大広域を範囲とするハブとして、そして一部は中広域を範囲とする地域性のハブとして、そして残りは小地域を対象とするセンターになっていく、というように、カバーする範囲の違う役割を持ったインフラになります。

この競争によって、もしかしたらネットワークの中に必要のない物流・交通インフラが出てくるかもしれません。いわゆる無駄な交通インフラがあぶり出される可能性がでてきます。

国鉄がJRに変換した時に、不採算路線の閉鎖などが話題になりましたが、まさに物流でも交通でも使われなくなったインフラをどうするかという問題が発生します。

公共財として政府が補助金を出し続け維持していくのか、それとも市場淘汰に任せるのか、対象地域の持続的成長にもかかわる大きな選択が、政府と地域住民に迫られることになります。
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