2016年09月27日

日本の大学はどこに向かうのか

この間の中国経済学会では、もちろんヨーロッパ・イギリスが中心ですが、中国から参加している学者も多く、なんでこんなに多いのかなと不思議に思いました。

さまざまな学者と話した結果、わかったことは

行政当局、大学当局のランキングに対する思い入れが強く、現場では国際学会での発表(口頭発表、査読誌での発表含む)への圧力が大変らしい

ということです。多くの大学で査読誌への投稿、競争的外部資金の導入が義務付けられているようで、大変だと言ってました。

日本でも科研費の申請を義務付ける大学は少なくないとは思いますが、投稿までは何も言われていないと思います。しかも基本的にインパクト・ファクターの高い査読誌に投稿されることが進められます。

日本の話をしたら、やはり一様にみな長期的な研究ができないというデメリットを強調していました。日本では時間的制約は各教員に任されているので、積極的に成果を出してもいいし、ゆっくり練って時間をかけて発表してもかまいません。この意味で、日本の大学では、研究は教員の裁量にありますが、海外では研究は大学の裁量にあると言ってもいいでしょう。

日本では、ランキングに対する懐疑的な意見が多いです。日本に不利だというのもありますが、そのランキングですでに他のアジア諸国は勝負をしています。

9月23日に発表されたTimes Higher Educationの大学ランキングでは、オックスフォード大学が北米の大学を抑えて初の1位、そしてアジアからはシンガポール国立大学が24位にランクインしました。中国の北京大学が29位、精華大学が35位、日本の東大は39位、香港大学が43位と続きます。

このランキングでは教育、研究、引用、資金、国際化を指標にしています。国別でみてみると面白いことがわかります。日本はアジアの中で各指標の順位がそれぞれ7位、7位、14位、11位、15位となっています。つまり研究の引用が少なく、国際化も遅れているようです。

国際化は言語面でのハードルが高いです。それでも中国の有名大学はどんどん授業の英語化を進めているので、その差も出てきたのかもしれません。

知の手法(Discipline)の共通化、知(knowledge)の公共財としての共有化を考えると、英語言語による成果の共有とそれに基づく教育は時代の流れのように思えます。
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2016年09月13日

Chinese Economic Association Annual Conference 2016(3)

9月1日から3日にドイツ・デュイスブルグで開催された中国経済学会(ヨーロッパ/UK)に参加、報告してきました。

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私の報告を紹介。

Okamoto, N.(2016)"What matters in urbanisation of China?"(PDFバージョン), Draft Paper Presented at the Chinese Economic Association Annual Conference 2016, University of Duisburg-Essen, Germany. 2/Sep/2016

The paper reveals the characteristics of urbanisation in China, which has started as a comprehensive social-economic plan since 2014. The current ongoing urbanisation process is examined from the perspective of history, the size of city, village urbanisation and cost-benefits of settlement of rural migrants in cities, then the paper argues that urbanisation in China is not only just a "spatial urbanisation", which has been commonly observed in developed countries, but also a "institutional urbanisation" in which the institutional barrier would be needed to reform if the government wants it to be successful.

発表したとき、フロアからの反応があまりにも薄すぎて、まったく面白くないんだろうな(新規性がないんだろうな)と反省し、現在、鋭意修正中。

Academia.eduでみれる人はドラフト(ここ)として公開しているので、コメント等大歓迎します。

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2016年09月08日

Chinese Economic Association Annual Conference 2016(2)

9月1日から3日にドイツ・デュイスブルグで開催された中国経済学会(ヨーロッパ/UK)に参加、報告してきました。

前回の続きで、面白かったSusan Sirkの内容を紹介。

ちなみに彼女の本はこちら


私の書評はこちら。
危うい超大国

Susan Sirk, U.S. Policy Toward China: A Reassessment and Future Directions

・国際政治では、現存の大国に新しい大国が出てくる時には、価値観や制度の違いから摩擦が生じやすい。

・アメリカは一貫して中国を国際社会に入ることを支援してきた。具体的にはWTO、G7への参加、兵器の不拡散条約などであり、この中国の国際社会へのコミットメントという姿勢は変わらない。しかし基本的人権の側面では、アメリカは有効なツールを持ち得ていない。しかし、社会の進歩に従い、インターネットの浸透によって基本的人権は改善してきた。

・中国はこれまで海外には友好的であり安心させることを主眼としてきた(reassurance policy)。実際に、これによって周辺諸国との国境画定交渉は順調に進んできたといえる。

・中国の姿勢が大きく変わってきたのは2009年である。世界的金融危機によるアメリカ経済への打撃、一方中国の経済的回復の速さは中国をして中国の自信を強めた。この頃から南シナ海での領土拡張を図るようになる。中国の価値観を前面に押し出すようになり、中国は国際的に潜在的なリスクテイカ―になったようだ。

・近年の習近平政権をみていると、状況は以前に逆戻りしているようである。ただこれは将来的に揺り戻しがあるかもしれず、逆に習近平政権のリスクになるかもしれない。

・アメリカのアジアでの姿勢は基本的に変わっておらず、世界が平和的であってほしいと思っている。日中関係が安定的であれば、USは安心できる。ただ漁船衝突などで情勢が不安的になることは憂慮している。(ただ、第二次世界大戦前のドイツ、日本のような感じもしていると付け加えていた。)

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2016年09月06日

Chinese Economic Association Annual Conference 2016(1)

9月1日から3日にドイツ・デュイスブルグで開催された中国経済学会(ヨーロッパ/UK)に参加、報告してきました。

目玉のキーノートスピーチを備忘録としてまとめておきたいと思います。

Justin Yifu Lin(林毅夫), Demystifiying the Chinese Economy
中国経済の今後も当分は経済発展が続けられる。その根拠はマディソンによる長期推計によれば2008年時点で中国の1人当たりGDPは米国の21%であり、後発性の利益を活かす余地がまだ十分ある。これは1951年の日本、1967年のシンガポール、73年の台湾、77年の韓国と同レベルであり、これらの国々が高度経済成長を続けたことを考えればまだ生産性向上の余地があるだろう。また需要面でみても近年輸出が落ち込み、投資が過多になり、消費が伸びていないが、投資の側面でいえば、資本集約産業ではなく技術集約型産業への投資、内陸部のインフラ建設需要、グリーンエネルギー等収益性のある投資空間はまだまだ多い。

Fabrizio Zilibotti, The Economic Growth of China: Past, Present and Future
投資型経済からイノベーション型経済への転換が必要である。統計的分析によれば、新規産業の参入障壁が低く、腐敗が少なくて、R&D投資の多い国々は投資型経済からイノベーション型経済への転換を図り、中進国の罠を抜け出てきた。
中国が短期的な経済成長目標にこだわればこの転換が遅れる。

Guido Tabellini, The Clan and the Corporation: Sustining Cooperation in China and Europe
経済史の観点から、中国がなぜ遅れたかを社会組織(Social Organization)から説明しようと試みる。は中国はClan型であり、ヨーロッパはCorporation型であることが指摘される。Clan型とは血族を大事にし、関係が基本で、Clanへのモラル忠誠が中心で、Corporation型は利害(interest)中心にコミュニティーが形成され、一般化された規範に沿う。どちらが優れているというのはないが、経済発展という点では、法の下の平等、社会的セーフティーネットの整備、個人企業への融資などの観点から経済発展に有利だったといえる。

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