2017年05月30日

中国人留学生の発言

メリーランド大学での一留学生のスピーチが波紋をよんでいる。



流れはこうだ。

彼女がアメリカに来て新鮮な空気を感じた、表現の自由は素晴らしいなどと発言。この発言について、中国国内、アメリカの中国人留学生から叩かれるととともに、中国政府も各個人は発言に気をつけてもらいたいと注文をつけた。

スピーチした本人は、祖国を貶める意図はなかったと謝罪。しかし国内、国外からの彼女への非難は続きそうだ。

スピーチ自体は一学生の感想に過ぎないと思うのだが、感じたことは二つ。

一つは、中国政府の発言の自由に対するコントロールは「国境を超えている」。これはインターネットの発展という要因もあるけど、海外に出て行っても中国人の発言は中国政府の耳に入ることになる。政府と違う意見を持っても、やはりそれは尊重されるべきだろう。でもこの一件で海外にいる中国人は政府と違う見解を持ちにくくなるかもしれない。

そもそも多くの中国人は在外大使館の意向を気にしているふしもある。当該国でデモを行う際にも、当該国の当局に申請するのはもちろんだが、大使館にも連絡しているようだ。とくに大学が招へいする台湾、チベットの要人に対しての反対抗議活動などは大使館が後押ししているようにも見える。

もう一つは、社会の同調圧力はアジアの共通点だ。個人の気持ちよりも社会の考えが優先されることがある。とくに愛国はそれに使われやすい。アジアは列強から支配された経験があり、どうしても西洋列強諸国に対してコンプレックスがある。中国も日本も西洋人が自国文化を褒め称えることがあると、ことさらそれを強調して報道することがあるし、日本でも日本人が海外で自国を貶めるような発言をしたら、同じように日本好きな人たち(愛国者)からなじられることになるだろう。愛国は同調に使われやすい。

それに加えて中国にとって「愛国」というのは政府支持を示す政治的にも重要な態度だ。この記事にもあるように中国国内国外の中国人コミュニティはまるで文化大革命時の「紅衛兵」にも見える。大陸出身の中国人はつねに中国人社会において政治的忠誠心を互いに監視することになっているようにも思える。つまり政治的忠誠心は社会同調圧力の主要な原動力になっている。

個人の自由な感想を持つことを、政府ではなく社会が許さないのである。政府だけでなく社会まで個人の発言を監視するようになったら、これは生きづらいと思う。

The new Red Guards: China's angry student patriots
http://www.bbc.com/news/world-asia-39996940
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2017年05月18日

一帯一路サミット

北京で「一帯一路」サミットが終了して,どのような成果があったのか,South China Morning Postの報道が簡潔にまとめてくれていたので,簡単に紹介。

1.次回の一帯一路サミットを2019年に開催する。次回の開催までに協議委員会と連絡事務所を準備していくという。

2.国際貿易推進として,国際輸入博覧会を来年開催し,海外製品の中国市場参入を促進する。北京は一帯一路国から次の5年間で1000億USドル分の輸入をするという。

3.習近平は新シルクロードのための基金に100億元追加すると発表。中国開発銀行や輸出入銀行も250億元,130億元の貸出枠を設定する。また中国は次の3年間沿線各国の貧困削減に60億元を拠出するという。

4.全部で68の国と国際機関が一帯一路に関する契約に調印したという。270以上の協力プロジェクトや契約がこのサミット期間に調印されたという。ただし詳細は習近平のスピーチでは触れられていない。

5.中国は異なる国に対してただよう疑念を払拭する必要がある。アメリカ,日本は一帯一路構想に疑問を投げかけており,インドは中国パキスタンの経済回廊に関する紛争のため代表団の派遣を見送った。またフランスやドイツ,イギリスは貿易に関する宣言に調印していない。これらの国々はこの構想が政府調達や社会・環境基準がどうなっているか不透明だとしている。

<参考>
South China Morning Post, Five things to watch as China’s belt and road plan unfolds, 17 May 2017

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2017年05月09日

現代中国経営者列伝

著者の高口さんよりいただきもの。




中国の本屋では日本人経営者も含めて企業経営者の自伝(本書でいう励志書籍)が大量に並ぶ。起業意識が高いという国民性もあるからだろう。

本書はこの経営者立志伝から中国経済史をも述べてしまおうというなかなか「大胆な試み」だ。

私として面白かったのは、学校購買部を経営権請負という形で始まった娃哈哈、青島電動機廠という小さな町工場の工場長から始まった張瑞敏(ハイアール)など、当時の民営化の流れが具体的にわかるところがよかった。

また、地上げ屋の大連万達が国有企業だったために社員研修旅行が規律違反の警告を受けるという話は政府と国有企業の関係を具体的に理解できる事例だった。

立志伝は「思い出補正」(良い思い出ばかりが残ること)バイアスが働いて書かれるので、どうしても「苦労がんばって克服したよ!」といういいことしかない。その意味では、客観性がかけるような気がするが、それでも、中国の改革開放の流れで経営者が時代にそってどう企業を切り盛りしてきたかが生き生きと書かれているので、読み物として楽しめた。

日本では中国経営者の情報が少ない、あるいは経営者視点からみた中国市場情報は少ないので、楽しく読めて中国経済がわかるという意味ではお得である。

(しかし、今思うと昔活躍した企業が結構消えていることに気づいた。中国の変化は激しい。)
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2017年05月02日

東アジアにおける中国のプレゼンス

最近、北朝鮮問題で東アジアの安全保障が揺らいでいる。

北朝鮮の瀬戸際外交にアメリカの堪忍の緒が切れようとしている。これまではアメリカは北朝鮮に対し静観あるいは無視という方策だった(ブッシュ政権時に「悪の枢軸国」として指摘した以外は)。

トランプ政権に代わってから、シリアへの介入をはじめ、アメリカの態度も変わりつつある。このため、今がおそらく第二次大戦後の時期で、もっとも東アジアの安全保障が不安定になっている時期だろう。

よくも悪くも現在の北朝鮮、米国の緊張を和らげるのは中国しかない。安保理の北朝鮮決議に賛成も示し、エネルギー(石炭)の支援も切り始めた。中国もアメリカと歩調を合わせているかのようにも見える。中国が、圧力と対話で、北朝鮮とアメリカの緊張緩和ができれば中国のアジアにおける安全保障プレゼンスは上昇する。

しかし、基本的に中国の対韓半島への政策は冷戦時代と変わらない。米国支援の統一韓半島よりは核開発で暴れる北朝鮮の方が中国にとっては都合がよい。しかし、一方で経済関係は米国、韓国は欠かせなくなっており、その上北朝鮮の軍事エスカレートは日本の右傾化可能性もあるので、このままの北朝鮮政策を見直す必要に迫られているのは確かだろう。

北朝鮮への圧力はその変化の兆しだろうと思う。

一方で対話も強調しているので、もし中国がこの緊張緩和に成功したら、東アジア安全保障面で中国のプレゼンスは非常に高まる(これが日米が望んでいるかどうかは別にしても)。

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