前と同じく都市化について考えてみたいと思います。やはりきっかけは前回と同じ以下のニュースです。
中国・珠江デルタに世界一の巨大都市が誕生か…専門家は否定的
サーチナ 1月27日(木)15時48分配信
中国経済網などは26日、英米豪などのメディアを引用して、「中国は世界最大の巨大都市(メガ・シティー)を建設する計画がある」との観測を紹介した。珠江デルタの9市を統合し、面積はロンドンの26倍、人口は世界一になるという。中国の専門家は「不可能ではないが、広すぎて管理コストがかかりすぎる」と否定的な見方を示した。
珠江デルタにある広州、深セン、仏山、東莞、中山、珠海、江門、恵州、肇慶のを統合して「メガ・シティー」化して、中国の製造業と輸出加工業の中心地する計画。6年以内に完成し、面積は1万6000平方メートルでロンドンの26個分、人口は4000万人以上で世界一になるという。
投資総額は2兆人民元以上(約24兆9700億円)で、エネルギーや情報など150項目以上の大型インフラ・プロジェクトを実施する。計画を提唱した広東省都市農村計画設計研究院の馬向明氏は「珠江デルタの工業発展に役立ち、住民が域内各市の公共サービスを自由に受けられるようなる」と説明した。
一方で、中国社会科学院都市発展・環境研究所の牛鳳瑞研究員は、「9市の統合は不可能ではないが、行政区画が広すぎる。管理コストが過大で、経済効率が悪くなる」と、行政区画の変更には否定的な見方を示した。(編集担当:阪本佳代)
そもそも4000万という規模は有りうるのでしょうか。
1.都市システム
世の中にある都市はどのように存在しているのでしょうか。ある一定の空間において都市は,一つの大都市が中心的な役割を果たし,それに引き続いて周辺に中都市が存在します。そしてその中都市の周辺にはいくつかの小都市が存在するとされます。これをクリスタラーの中心地理論といいます。
このような階層構造が成立するには,地表がまったくの平面でモノの供給需要には一定の範囲があるという仮定です。これを商圏といいます。小都市から周辺にモノを供給する範囲は円状になります。その商圏が重なるところに中都市が存在し,モノが集まりります。中都市の商圏が重なり合うところに大都市が存在するということになります。
直線の2次元でイメージすると以下のようになります。
都市システム
大都市の周辺に中都市が存在します。その外側に小都市があります。都市は規模に従って,階層的にシステムを形成すると考えられています。
2.ランクサイズルール
このような考えを背景に,都市にはランクサイズルール(順位・規模法則)というのがあると考えられています。これは
都市の規模(人口)×都市の順位=一定
という式で示されます。これは経験則であり,ジップ法則とも呼ばれます。
中国の都市人口で上位30都市をあげて(総務省HP世界の統計第二章人口http://www.stat.go.jp/data/sekai/02.htm),この法則が成り立つかどうか考えてみましょう。
図 都市人口
図 都市の人口規模と順位
これを見てみると,上位の都市規模が小さいことがわかります。第10位以降ぐらいになると規模が大体安定してくるといえます。
もう少し詳細に見てみたいと思います。上の式をちょっと変形すると
都市の順位=定数÷都市の規模(人口)
となり,対数をとると
Log(順位)=定数−αLog(人口)
となります。このαが1(係数としては−1)になれば,ランクサイズルールが成立していることになります。
図 ランクサイズルール
図を見ると,係数は-0.65ですので,厳密にはランクサーズルールが成り立っていません。係数が-1になるように,つまりランクサイズルールが成り立つように中国の都市規模を推計してみると
第1位 5050万人
第2位 2525万人
第3位 1683万人
第4位 1263万人
となります。ランクサイズルールに従った,中国におけるもっとも人口の多い都市は5050万人となります。二番目の都市は2525万人です。現実は上海が1500万人程度,北京が1100万人程度になっています。中国の都市規模は上位都市が過少になっていると判断できます。
3.結論
以上の簡単な分析から何がいえるでしょうか。
中国は土地が広いため,一極に集中するよりは,分散する傾向があるのではないかということです。実際,北は北京,東は上海,南は広州,真ん中は武漢,西は重慶というふうに分散しています。もし,各地域ごとに(例えば,華北地域とか華東地域などのように)見てみると,そこの地域の大都市,中都市,小都市というように順位と規模にきれいなランクサイズルールが成立するかもしれません。
もう一つは,中国の上位都市は思ったよりも小さいということです。従って,ニュースにあるような広州で4000万人規模の都市を作ることは可能かもしれません。しかしその場合,通勤圏として4000万人が移動しあえる都市でないとなりません。東京首都圏は行政区では埼玉,千葉,東京,神奈川を含んで首都圏となり3700万人規模の人口を持ちます。もちろん東京首都圏が世界一の規模の都市になっています。
あるいは統計の問題があって上位都市が過少推計されているかもしれません。農民工など外地から都市に来た住民は戸籍を持っていません。人口統計が常住人口を中心として取られていることを考えると,一時定住(暫住)人口が過少にカウントされている可能性もあります。大都市の周りに巨大なスラム街ができる可能性もあるのでないかと思われます。大卒で低所得層である蟻族(エントリはここ)は北京の郊外に住み,2時間かけて通勤しているといいます。郊外の低所得者層の住民をカウントするともしかしたら統計よりも上海や北京は充分大きいことも考えられます。







