2012年05月17日

『危うい超大国』

中国の国際関係を考える上で、参考になる本を読みました。スーザン・シャークの『中国 危うい超大国』です。訳者の解説によれば「合理的選択」という手法による政治、外交の分析で、内容と主張がわかりやすくて非常にためになりました。



主張をまとめてみます。

中国の指導者は国内における権力基盤の安定性に不安を覚えている。そのため強くなった国力を矛盾した二つの方向で使う。一つは平和的に紛争をさけるように振る舞い、もう一つは危険な行動をとったりする。

彼女のスタンスは、中国の行動を理解するには中国の意図を分析することが重要だという立場をとっており、そのため自らが外交の現場に身をおいた経験やさまざまな文献から中国の意図を明らかにしようとしています。

まず、中国指導部の権力基盤を「支配カルテル」で説明します。それは解放軍や武装警察(銃口)、中央組織部や中央宣伝部(ペン)によって政権がなりなっていること、そして指導部では一枚岩ではなく意見は対立しているが、それは外にわからないようにしていることが述べられます。

中国指導部の権力基盤を守るために、ナショナリズムを利用します。ナショナリズムを制御できれば社会の不安定を防ぐことができるとともに、共産党への支持拡大につながります。

でもこのナショナリズムは両刃の剣です。もしナショナリズムを背景に外国との対抗がうまくいかず、国民から弱腰として見られれば、自らの権力基盤を転覆される可能性まで出てきます。

例えば、中国の経済発展にとって中米関係の安定は必要不可欠です。しかし対米交渉において一般世論が現政権を弱腰ととらえると、共産党にとって不利になります。このような時には一般的な民衆の不満を対日関係に向かわせるということがおきます。つまり中国の対日関係は中米外交のはけ口として使われる側面があります。

しかし、このようなナショナリズムを利用して権力基盤を強化しながら、対外行動を決定することには危険も伴います。共産党指導部が外国を威嚇することによって国民の支持を得るようになると、威嚇が引っ込められなくなり、最悪は軍事行動に迫られることになります。しかし指導部にとって国内経済の安定は共産党権力基盤の中でももっとも重要なものでもあります。ここナショナリズム外交の大きな矛盾点があるようです。

ところで、中国の外交を分析するしているものに佐藤賢(2011)があります(これも非常にためになりました。)

そこでは、外交政策の最高決定機関は,政治局常務会議下の中央外事工作領導小組であることが述べられています。ところがシャークはこれに触れていません。中央外事工作領導小組の取材などがあれば,もっと中国の外交がわかりそうです。この辺は他書を参考にする必要があります。

<参考文献>
佐藤賢(2011)『習近平時代の中国』日経新聞社
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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