2012年07月17日

ケインズ対保守派

ポール・クルーグマン(1995)『経済政策を売り歩く人々―エコノミストのセンスとナンセンス (ちくま学芸文庫)』日経新聞社では,ケインズ派,新しいケインズ派,保守派の考えを詳細に説明していたので,わかりやすく整理してみました。

(1)ケインズ経済学のポイントは、不況は貨幣保有によるもの(有効需要不足)と考える。対策は金融緩和だが、家計がさらに貨幣を保有する場合(流動性の罠)、公共事業という財政政策を発動する。

(2)フリードマンに代表されるマネタリストは、不況は貨幣保有を増やそうとしたのではなく、貨幣流通量が減少したと考える。貨幣流通量を安定的に供給すること、財政政策は民間投資を国債購入に変えてしまう(クラウディングアウト)ので無効という。

(3)結局、両者の違いは金融政策は有効か、価格・賃金は伸縮的かに集約される。貨幣流通量は物価に影響を与えるだけで実質経済には影響を与えないのか、それとも貨幣流通量によって不況や好況を引き起こすのか。

(4)また、景気循環は市場システムの調整過程としてみるか、市場の失敗としてみるか、である。価格や賃金が硬直的であれば、ケインズ的な政府の経済介入政策は有効になる。そうでなければ、介入は無効どころか有害である。

(5)新しいケインズ派も,市場は不完全競争(寡占的)で、価格を付け替える費用(メニューコスト)がかかるので価格や賃金は硬直的と考えていて,ケインズのように貨幣保有(有効需要不足)が不況の原因だとすると、価格が下落しないので貨幣を手放す動機が存在しない。だから財政,金融政策は有効とする。


この基本的考えにそって,阪大の小野善康先生の政策を考えてみましょう(小野2012)。

(1) 成熟社会では不況を長期的な現象として捉えなければならない。不況の原因は生産性と低さではなく需要不足である。

(2)発展途上社会と成熟社会との違いは、前者は生産力や技術力の不足、後者は新たな消費への創造力不足である。したがって成熟社会の需要不足は貨幣の保有に向かう。

そこで,不況下の財政支出には以下の特徴があるとします。

@政府が財政資金を配っても同額の取り立てがあるからお金の総量は増えない。
A消費性向の高い家計への再分配は総需要を増やす。
B財政支出によってこれまでなかった役に立つものやサービスが提供できれば便益分が国民経済への貢献。(登山設備右矢印1登山する高齢者の増加。)

したがって,財政を高齢者介護、子どもの保育などに公共事業・サービスに向けることによって,雇用を増やし,デフレと雇用不安を取り除くことが可能となり,最終的に消費を刺激する,となります。

現在のケインズ政策の考え方の参考になるかと思います。

<参考文献>
小野善康(2012)『成熟社会の経済学-長期不況をどう克服するか』岩波新書
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育研究活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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