2012年08月02日

アジ研夏期公開講座

7月31日火曜日にアジ研の夏期公開講座「中国の産業はどのように発展したのか?」に参加してきました。

本講座のねらいは,

中国産業の特徴は,「参入が旺盛」(市場シェアが分散)であり,垂直分裂の状況で重要な部品すらも外から購入して「安い価格」を実現している

ことを示すことにあります。

以下,丁可さんの山塞携帯電話機,渡邉真理子さんのテレビとエアコンを事例に学んだことを,備忘録として。

1)山塞携帯はただのパクリから海外の新興市場の特殊なニーズを満たす製品開発を行なっており,産業として進化しつつある。

2)深センは,IT産業の集積地であり,多くの裾野産業が揃っている。山塞携帯の製造に参入する中小企業は2000社以上にも及び,それらは重要な部品基盤を購入するというスポット取引を行なっており,垂直分裂状態になっている。部品のやり取りについては完全な市場取引が行われている。

3)ベースバンドICを含めてOSやソフトウェアを組み合わせた基盤部品(技術プラットフォーム)は台湾のMTK(MediaTek)が独占的に供給している。新しい製品が出た時にはプリント基板や金型をそのまま使うこともある(「公板公模」)。外から購入することによって参入の固定費用を抑えることができる。

4)深センには華強北市場という部品や販売について3万社が集積している市場が存在する。ここでは新興国市場での製品に対する需要や技術プラットフォームの製品に関する情報交換が行われたりしている(取引プラットフォーム)。これらを活用することによって固定費用を抑えることができる。

5)新製品開発のための部品購入を支え,購入費用も立て替える購入資金プラットフォームも存在する。これらプラットフォームの存在が「安い価格」を支えている。

6)垂直分裂は低価格を実現し,垂直統合の企業(日系企業など)を駆逐する可能性がある一方で,コア技術を外から購入するという垂直分裂企業のイノベーションは可能なのであろうか,という問題もある。

7)テレビではブラウン管とIC機器の組み合わせがテレビメーカーに供給され,中国のテレビメーカーはそれを組み立てるという形で発展してきた。薄型テレビに転換したあともPDPはパナソニックなどが囲い込んでいたために,中国市場では普及しなかった。液晶テレビ(LCD)では,台湾メーカーがコア技術と設計を担当したプラットフォームを提供するようになり,中小企業が多く参入した。

8)エアコンでは,省エネ対応でインバーターが入った製品が主流になってきた。大手は日系企業から技術供与してもらうものの(格力+ダイキンなど),中小企業はコア技術が埋め込まれた部品を購入することによって,参入,低価格を実現した。

9)実際,計量分析では垂直分裂の方が低価格を実現することが確認される(渡邉)。

10)低価格化という点で消費者や生産者の厚生が増加しているのであれば,それはイノベーションとはいえるであろう。とはいえ,アセンブラーとしての中国企業は次の段階へ模索している。

11)例えば,海爾はファブレス化(工場を持たない)を模索している。あるいは他メーカーの受託生産企業に,そして垂直統合しようとする動きがあるようである。


この講座の内容は2010年,2011年の研究会の成果だそうです。そのうち書籍になって出版されるようなので,楽しみです。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育研究活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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