2013年02月26日

「大武漢」は可能か?

重慶に続いて武漢ネタです。

武漢は,漢江と長江が合流するところで,武昌,漢陽,漢口が合併して出来ています。

      漢口
漢江−−−−−−−−−
    漢陽 | 武昌
      長江

湖北省は昔の楚の国にあたるところでした。三国志好きな人はご存知の通り,武漢は新参都市で,むしろ漢水(漢江)沿いの荊州,襄樊(襄陽)の方が有名です。秦漢の時代に武漢を含む地域が江夏郡として設置され,南朝あたりから夏口(今の武昌)が江夏郡の中心都市となり,戦争時の重要拠点,交通の要衝として栄えるようになりました。武昌と漢陽に城がありました。

武漢が有名になるのは,アヘン戦争あとの1861年漢口開放です。漢口が列強諸国の租界地となるとともに西洋から技術を導入し近代工業化が開始されます。そして国民党政府の一時期の首都となるとともに,実は1949年に新中国が成立した時には最初の直轄市になった経験もあります。

今では,この武昌,漢陽,漢口が武漢を形成しています。漢口は商業・金融の街,漢陽は工業の街,武昌は政治・文化・教育の街というようにそれぞれの特徴を残しています。

現在,武漢は武漢城市圏として新たな都市建設を行なっています。これは武漢を中心に,周辺8市を巻き込んで「大武漢」として都市競争力をつけようとするものです。

ちなみに都市を拡大することによって都市の存在や,国際的な都市競争力を高めるという考え方は一般的です。大阪でも歴史的には周辺市を取り込む形で「大」大阪が議論されてきましたし,現状では橋下知事の都構想がその現代版といえそうです(砂原2012)。ちなみに大阪は市の外に千里ニュータウンなど郊外ベッドタウンができる形で発展しました。ただし大阪市と吹田市というように行政をまたぐことによって,行政サービスに差異が存在し,市をまたいだ都市計画が立てにくくなるというデメリットがあります。

武漢城市圏の目的も,異なった市同士で,市場参入,人材流動,子女入学などの制度を共通化することにあります。そして都市圏として交通インフラを整えることにより移動コストを下げ,都市中心部へのアクセスを容易にすること(城際鉄道などの建設)が目的となっています。アクセスが容易になると通勤圏が拡大し,就業機会や投資機会の拡大がもたらされます。都市の拡大は「規模の経済」が期待され,雇用と消費を生み出すことができます。

武漢城市圏は武漢を中心に100km圏内となります。交通網の発展によって1時間交通圏も不可能ではありません。もし可能となれば湖北省の土地面積3割を占め,人口は5割,GDPは6割程度になります。内陸部に北京,上海などと同じくらいの人口規模の都市ができることとなります。

しかし,「大武漢」には課題が多いようです。

都市インフラを整えるとともに行政地域間の縦割りをなくさなければなりません。例えば交通インフラですと,武漢では現在まだ2本しか地下鉄がありませんし,長江の橋とトンネルが出来てきているとはいえ,漢口ー武昌間の混雑解消はまだまだです。現在,武漢と周辺都市への高速道路網,市間(城際)鉄道専用線を建設中です。

あとは各市ともに自分のノルマ達成に汲々としてしまうために,現実の連携が難しいということです。各市の成長率,誘致企業の数,就業者数などの目標は個別に存在するために各市の行政幹部にとっては自分の目標達成の方が重要となります。そうなると大武漢を目指すために連携するというよりは自分の市の都市化,都市インフラ建設などの方が重要となってしまいます。

中部の経済発展を目指す「中部崛起」では,武漢城市圏をはじめ,湖南省の長沙(長株潭城市群),江西省の南昌(環鄱陽湖城市群)とともに「中三角」(中部デルタ)構想まであります。ともに各省の中心都市同士があたかもひとつの経済圏になって,長江デルタ,珠江デルタ,環渤海地域に対抗した中国経済の第4極になろうとするものです。

この構想が実態を持つものになるかどうかはわかりません。むしろそこまで規模の大きな話ではなく,現実として武漢は中部地域でもっとも規模の大きい都市です。武昌,漢陽,漢口が今の武漢となったように,武漢城市圏が「大武漢」となって,上海,広州,北京,天津に匹敵するものになるかどうかが,都市発展の今後のカギになりそうです。


<参考文献>
砂原庸介(2012)『大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)』中公新書
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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