2013年03月05日

2013年2月読書ノート

2013年2月読書ノート

今月の紹介は『文明』です。



発売当初からあまり評判がよくなかったのですが、それでも面白い1冊でした。

似たような本で、バーンスタインの『豊かさの誕生』があります。



この2つの本から西洋が発展した原因を比べてみます。

ファーガソン    @競争 A科学革命 B私的所有を守る法の支配と代議制 C医学の発達 D消費社会 E労働倫理
バーンスタイン  @私有財産権 A科学的合理主義 B効果的な資本市場 C効率的な輸送・通信手段

ファーガソンのDとEは議論を呼ぶところでしょう。実際、キリスト教的労働倫理の良さを挙げるのは過去いろいろありましたが、それを証明するのは難しいように思います。

それでもファーガソンの面白かったところとして、中国が台頭するかどうか、を述べているところがあります。

彼は中国の台頭を否定的に見ます。彼によると、日本と同じように失速するであろうと。社会不安(所得格差と男性が多い)があり、発言を求める中産階級の動きがどうなるか、周辺諸国の間でかなり反中国の気運が高まること、があげられるとしています。


<経済学>

マリル・ハート・マッカーティ(田中浩子)(2002)『ノーベル賞経済学者に学ぶ現代経済思想』日経BP社 データによる科学的手法が発展し、帰納法を使うようになった。利己的な個人のインセンティブシステムと社会の中の取り決め、制度に注目されている。一番ホットな分野は情報の経済学。

ロバート・J・バロー(仁平和夫)(1997)『経済学の正しい使用法―政府は経済に手を出すな』日経新聞社 貧しい国には民主主義よりも、経済体制(財産の保護と自由市場の原理)を整備することが先。経済の自由を根付かせることができれば経済成長は加速し、民主化が進む。

ロバート・J・バロー(中村康治)(2003)『バロー教授の経済学でここまでできる!』東洋経済新報社 身体的魅力も知性と同じく賃金に影響を与える。中絶の合法化は犯罪を減少させる、薬の高価格は開発インセンティブを支えている、反トラスト法は弱い企業を守るだけ、など。

ゲーリー・S・ベッカー、ギディ・N・ベッカー(鞍谷雅敏岡田滋行)(1998)『ベッカー教授の経済学ではこう考える―教育・結婚から税金・通貨問題まで』東洋経済新報社 インセンティブに歪みをもたらす政府規制、移住資格の競売化、差別撤廃ブログラムは有効ではない、厳罰化が犯罪を減少、独占には参入の奨励を、など。

ディビッド・フリードマン(上原一男)(1999)『日常生活を経済学する』日経新聞社 人は各選択肢の中で最も得(費用よりも便益が大きい)なものを選択する合理性を仮定する。個人の行動が合理的であっても集団になった時に悪い結果になる。合理性に潜む陰鬱な世界である。

ディビッド・オレル(松浦俊輔)(2011)『なぜ経済予測は間違えるのか?-科学で問い直す経済学』河出書房新社 経済学は人間の行動についての数理モデル。しかし、経済は独立した個人が経済法則に従って動く、合理的で効率的、経済成長は永遠に続く、といった前提は誤解である。

ディヴィッド・R・ヘンダーソン、チャールズ・L・フーバー(高橋由紀子)(2006)『転ばぬ先の経済学』オープンナレッジ 経済学は人生の意思決定に役立つ。増加分を考えるとものを明確に考えられる、価値を判断するには機会コストを考える、誰でももの見方にはバイアスがある、など。

ディヴィッド・オレル(望月衛)(2012)『経済学とおともだちになろう』東洋経済新報社 ピタゴラス、アリストテレスの思想から、近年の金融工学、スウェーデン国立銀行賞まで。ケネーの重農主義、スミス国富論、マルクスへ。ワルラス、パレートなどが新古典派経済学を。ケインズ、フリードマンへ

ジョン・マクミラン(伊藤秀史林田修)(1995)『経営戦略のゲーム理論-交渉・契約・入札の戦略分析』有斐閣 ゲーム理論は、人の行うことが他人の行うことに依存し、誰も結果を1人でコントロールすることはできないような相互作用を考えるための道具。プレイヤーの選択の余地、利得を考える。

中村宗悦(2005)『経済失政はなぜ繰り返すのか―メディアが伝えた昭和恐慌』東洋経済新報社新書 昭和恐慌期の金解禁論争では新平価解禁論者の議論が結果として正しかった。しかし浜口・井上の主張する旧平価解禁こそが昭和恐慌を乗り切る政策と報道した大新聞の責任は大きい。

山崎昭(2010)『ケーススタディ ミクロ経済学入門』日本評論社 主婦の月給から消費者行動を、落語の千両みかんから企業行動を、牛丼の価格下げから企業間競争を、福袋から情報の経済学を、ゴルフのかけから不確実性の意思決定を考え、解答例から筆者が解説。

ジョン・クイギン(山形浩生)(2012)『ゾンビ経済学-死に損ないの5つの経済思想』筑摩書房 ビジネスサイクルは安定したという大中庸時代仮説、株価は全ての情報を含む効率的市場仮説、ミクロ的基礎をもつDSGE、恩恵は周辺に伝わるトリクルダウン仮説、民営化はいい、はすべて破綻。

太田聰一(2010)『若年者就業の経済学』日経新聞出版社 若年失業の特徴は他世代より高く、自発的離職が多くて、失業と就業の行き来が活発。自社内育成を重視する日本企業は企業業績とスキル継承のため若年採用に。中高年が過剰ぎみだと若年採用は抑制される。近年の若年雇用施策は豊富。

エドワード・グレイザー(山形浩生)(2012)『都市は人類最高の発明である』NTT出版 都市は人と企業の距離がない場所であり、人類が持っているお互いから学ぶという能力を活かす。アイデアの交換が都市を成長させ、一国の成長を支え、幸福感をもたらし、環境に優しくなる。

ジェイン・ジェイコブズ(中江利忠加賀谷洋一)(2011)『都市の原理 (SD選書)(新装版)』鹿島出版会 鹿島出版会 都市は新しい仕事が追加される場所。輸出という仕事に対して輸出を助ける仕事が追加される。輸出に必要な輸入財を自分の地域で置き換える輸入置換が都市の成長過程である。

ニコラス・ワプショット(久保恵美子)(2012)『ケインズかハイエクか: 資本主義を動かした世紀の対決』新潮社 ケインズの雇用には政府が介入すべきという主張に真っ向から反対したハイエク。ケインズ主義は私たちの生活に浸透したが1970年代半ばよりハイエクが再評価されるようになった。


<中国>

ニューズウィーク日本版編集部(2012)『中国超入門-これだけは知っておきたい中国社会の基礎知識』阪急コミュニケーション 地理・民族、経済、政治、社会・歴史を簡単に。10都市を紹介し、言論で注目を浴びる中国国内のキーパーソンを詳しく。

毛里和子・園田茂人編(2012)『中国問題: キ−ワードで読み解く』東大出版会 統治の安定を分析する共産党、社会安定、農民工、土地と戸籍、人民解放軍、日中関係、海洋権益、対外援助、経済全球化、中国モデル、歴史観から中国を読み解く。

真家陽一編(2012)『中国経済の実像とゆくえ』日本貿易振興機構 4兆元の負の遺産、内需への転換、人民元、エネルギー環境が中国経済展望の視点。自動車、流通、水、金型、産業ロボット、介護産業の動向。日系企業の課題とリスク。

波多野淳彦(2012)『中国経済の基礎知識(改訂新版)-世界第二位の経済大国を支える制度と政策』日本貿易振興機構 第11次五カ年計画は規劃になり、第12次五カ年規劃(ビジョン)は環境と公共サービスを拘束性の目標とし、他は予期性目標に。行政制度と企業管理の法律を解説。

久保亨編(2012)『中国経済史入門』東大出版会 近年の中国経急成長を可能にした歴史的背景、近現代の経済発展が立ち遅れた理由、中国経済の構造的特質に関する見方を検討すること、の3つが経済史を学ぶ課題。19世紀末から現在までのアウトラインと先行研究の案内。

柴田聡(2010)『チャイナ・インパクト』中央公論新社 2008年9月のリーマン・ショックにより中国は歴史的危機に。国務院主体で内需拡大、増値税の還付率引き上げ、利下げなど政策を総動員。09年後半にはV字回復。規模拡大路線の副作用として土地依存、農民工賃金の上昇、国進民退など。


<社会>

ニーアル・ファーガソン(仙名紀)(2012)『文明-西洋が覇権をとれた6つの要因』勁草書房 西洋が覇権をとれたのは、競争、科学革命、私的所有を守る法の支配と代議制、医学の発達、消費社会、労働倫理である。アジアはこれらのキーアプリを導入することにより発展してきた。

ニーアル・ファーガソン(仙名紀)(2009)『マネーの進化史』早川書房 銀行、債券、株式、保険や不動産というマネーの制度的イノベーションは、資源を有効に活用できるが、熱狂と暴落を繰り返してきた。理由は未来は不確実、人の認知バイアス、突然変異と自然淘汰の繰り返し、である。


<その他>

ウィリアム・パウンドストーン(松浦俊輔)(2004)『パラドックス大全-世にも不思議な逆説パズル』青土社 我々が物事を理解するとは何か。「スペイン国王は牛である」は間違えているようだが、可能性として正しい。「すべての牛は紫である」がつながると逆説がありそうなので正しさが揺らぐ。

百田尚樹(2010)『モンスター (幻冬舎文庫)』幻冬舎 人から容姿をけなされ続けていた和子は、働いていた工場での出来事をきっかけに整形美容に力を入れる。容姿が変わることによって得たもの失ったものは何か。高校時代の憧れの人との恋は本物だったのか。

辻井正次、NPO法人アスペ・エルデの会編(2012)『楽しい毎日を送るためのスキル-発達障害ある子のステップアップ・トレーニング』日本評論社 アスペ・エルデの会が実施してきた療育方法。自分の感情に気がつくためのワーク、人とコミュニケーションをとる練習など、行われてきた合宿などの紹介。

清水一行(1994)『虚構大学 (光文社文庫)』集英社文庫 神官養成で実績をあげる伊勢大学の教務課長、学生課長の理想的な大学論から、元公認会計士、高校開設に実績のある千田孝志に大学設立の依頼がくる。文科省、銀行とのやりとり、財界政界を巻き込んでの大学開設に突き進む。さまざまな人間模様。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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