2013年08月20日

高速バスの規制

2000年の規制緩和により,多くの企業が高速バスツアー事業に参入しました。とくに旅行を企画する旅行会社,バスの稼働率を上げたいバス会社のタッグによりさまざまな路線が開発され,都市間移動は安く移動できるようになりました。

しかし2012年の関越自動車道の事故をきっかけに安全性を求める声が増加,国土交通省は以下の要件を満たす企業のみを参入可能としました。

(1)停留所の設置,(2)車両6台以上の自社保有,(3)運行計画の事前届出,など。

この結果により停留所の確保,長距離運転の場合は運転手を確保する必要があるためにコストが増加します。これにより高速ツアーバスの事業者は7割が撤退を余儀なくされました。

「安全」を錦の柱とした政府の規制強化です。この「安全」という言葉は政府介入の強い理由になっています。でも「安全」を理由に政府は経済に介入することは正当化されうるのでしょうか。

1つの問題は,消費者が求める「安全」の概念はそれぞれであり,政府が一律に同じ「安全」の商品を提供するのは消費者の選択の幅を狭めるということです。

アイドルのおっかけをしている人にとって安い高速バスは彼らの重要な移動手段でした。アイドルにかけるお金と移動にかけるお金を考慮し,安い高速バスを使っていました。彼らは多少の安全リスクを抱えても安い手段で移動したいと考えるでしょう。また新橋で働くサラリーマンが夜行バスで大阪に移動して翌日朝から有意義に仕事をしたいと考えます。この場合,安全も必要です。価格よりも安全や快適を選ぶということが考えられるでしょう。

「安全」は消費者によって重み付けが違うということ,市場でさまざまな「安全」商品が提供される方が,消費者にとって厚生は上がると思われます。

2つめの問題は,政府は本当に「安全」な商品やサービスを提供するのかということです。それに加えてその責任を持つことができるのかということです。

「安全」は政府がやろうが企業がやろうが同じように問題は出ます。政府がやると「安全」であるという合理的な理由はありません。むしろ事故が発生した時に,腹を切らされるのは企業です。規制を強化したとはいえ事故の責任はあくまで企業です。つまり政府は本当に「安全」に責任を負っているわけではないのです。


この高速バスの問題について,政府が企業に対して情報公開を義務付ける,つまりどういう安全施策をとっているか,情報を提供させることの方が重要で,実質的な参入規制をかけるのは市場経済を歪めるように思います。


<参考>
「安さより安全…高速バス新規制、便数減や値上げ」YOMIURI ONLINE, 2013/8/1
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育研究活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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