2013年08月22日

『ブラック・スワン』

『ブラック・スワン』は危機について科学的に考察した本です。複雑系,とくにフラクタルの概念を用いて(数学を使うことなく)説明している良書です。

まず,「ブラック・スワン」は名前の通り黒い白鳥のことです。危機やリスクを私たちは白鳥と思っていますが,実は真っ黒な白鳥であることを指摘するために,象徴的なタイトルがつけられています。

ブラック・スワンという現象は,次の特徴を持ちます。

普通は起こらないこと、大きな衝撃があること、事後には予測可能であること、です。

しかし私たちはこのブラック・スワンを扱いやすい「型」で思考する傾向を持っています。私たちは,歴史的に起きた事件を,あとでわかりやすい形で説明しようとしますが,歴史の本質は,流れるものではなく移行するのだと言っています。

私たちは複雑なものを簡単なものとして取り扱いたがります。例えば,体重や身長,カロリーなど物理的な数値を扱いますが,これらは一つのデータが全体に与える影響は小さいです。(これらの数値は正規分布する!)

一方で社会的な情報は複雑です。所得,売上,引用回数,企業規模などは格差が大きくです。データ一つが集計量や全体に圧倒的に影響を与えます。(これらはべき乗分布になるし,私たちの世界ではこちらの情報が圧倒的に多い。)

しかし私たちはリスクを捉え間違えているようです。さまざまな社会のリスク現象を正規分布(ベル・カーブ)で把握しているからです。でもリスクや危機はフラクタルな現象である,と本書は説明しています。

本書の説明の仕方で感心したのが,七面鳥モデルです(私が勝手にモデルとしています)。

七面鳥は,毎日飼い主から餌をもらいながら成長していきます。そうすると七面鳥は予測します。明日も餌を貰えるだろう,と。

ところが,感謝祭の前日に悲劇が発生します。それは感謝祭に捧げる食事に供されるため殺されるのです。

この瞬間,七面鳥は今までの予測が間違えていたことを知ります。

私たちの日々の生活はこの七面鳥モデルです。予測が違って危機が発生し右往左往しています。

なぜでしょうか。それこそ私たち人間の性質が問題です。生まれつき人は、外れ値、黒い白鳥を過小評価する性質が備わっているとします。

リスクを正規分布としてとらえると過小評価してしまいます。リスクはフラクタルだと言われても,はあ,そうですかにしかなりません。

複雑系は複雑な現象を複雑なままで把握します。その結果複雑系では説明できたように見えて説明できていないという結果になりがちです。

本書もその枠からはみ出てはいません。

でも不確実性やリスクについてどう対処するかを述べてはいます。

とても稀な事象の確率は計算できませんが、その影響を想像することはできます。確率よりも影響に焦点をあてて意思決定するべきで,不確実性の本質はまさにそこにあると言えます。

彼の言い方でいえば,「電車を逃して残念なのは、捕まえようと急いだ時だけ(p.217)」なので,電車を逃したあとの影響について意思決定するべきだということでしょう。


posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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