2013年09月03日

2013年8月読書ノート

2013年8月読書ノート



三輪先生は,政府ではなく市場への信頼をよく主張されています。この本は,日本の産業政策が日本経済を発展させたという定説を覆す主張をしています。つまり産業政策という政府の政策が有効だったために日本の経済が成長したのではなく,そもそも政府の実施した産業政策は機能していなかったとします。

「産業政策は、政策目的の実現よりも業界団体が特定産業の具体的な個別支援を求めるのが実情」(p.184)です。そして「具体的な政策の決定は多くの人間が直接・間接に参加」しますが,政府が「それら利害関係者の同調を獲得するための条件にかけていた」(p.283)のです。

そもそも政府は政策を実行できる能力はないのではないかという疑問があります。

政府が「ミクロベースの詳細な情報を収集し、各経済主体の適切な反応を引き出すための調整機能を有効に果たすことが必要だが、集権化されたシステムでは複雑で柔軟な対応をすることは不可能」(p.78)です。計画経済がうまくいかないのはまさに政府が経済主体の情報をすべて手に入れることができないというところにありますが,市場経済においてもそれは全く同じで,政府が合理的意思決定する各経済主体をコントロールできるというのは幻想かもしれません。


<経済>

高村学人(2012)『コモンズからの都市再生-地域共同管理と法の新たな役割』ミネルヴァ書房 小公園、集合住宅や共用施設、まちなみ景観という地域共同空間の最適な利用は、所有権の設定という市場システムよりも、住民自治組織の自発的な共同管理によってコモンズの悲劇を避けることが可能。

アンドリュー・ヴィッカーズ(竹内正弘監訳)(2013)『p値とは何か-統計を少しずつ理解する34章』丸善出版 統計学とは推定(大小を答える)、推論(仮説から結論を導く)、実験をデザインすること。p値とは観察されたデータが少なくとも同じか、もっと極端である確率。

東谷暁(2013)『経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語 (朝日新書)』朝日新書 不況を分析したケインズの経済学に対しアメリカではサミュエルソンなどのケインズ主義者を生み、フリードマンら新古典派を生んだ。また新たなケインズ経済学としてクルーグマンらがいる。

三輪芳朗(1998)『政府の能力』有斐閣 戦時統制下の工作機械、戦後の機械工業振興臨時法(機振法)、中小企業政策を焦点に政府の政策を検討すると、産業に対する政府の働きかけは積極的でも強力的でもなく、政策の効果はなかった。

高橋洋一(2007)『財投改革の経済学』東洋経済新報社 政府の金融活動は郵貯や公的年金の金利上乗せ、量的拡大が問題に。公共投資のファイナンスにとどまらず財投システムの維持コストが巨額になり、郵貯の市場での自主運用(民営化)、特殊法人(道路公団)改革、政策金融の改革が必要になった。

<中国>

Tokyo Panda(2013)『《80后・90后》中国ネット世代の実態』角川SSC新書 瀋陽の医学部に留学した筆者が「淘宝」のファッション買い物に興味を持ち、ブログを開設。卒業後は淘宝でセレクトショップを開業。肌で接する中国の若者の感覚、流行を語る。

丸川知雄(2013)『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える (ちくま新書)』ちくま新書 お金のない人々が資本家を目指して起業する。携帯電話、太陽電池、電動自転車、レアアース。産業の成長期には大衆資本家が参入。他の資本主義国家が経験したことがないほどの規模とスピードで拡大している。

徐友漁・鈴木賢・遠藤乾・川島真・石井知章(2013)『文化大革命の遺制と戦う-徐友漁と中国のリベラリズム』社会評論社 文革は中国に損害をもたらしたのになぜ重慶モデルが支持されるのか。社会を変える唯一の政治体験が文革だった。しかし文革は民主化運動を生み出す力がある。

<自己啓発>

午堂登紀雄(2009)『頭のいい人だけが知っているお金を稼ぐ読書術』ビジネス社 お金に変える技術とは本から得たことをどれだけ深く考え、どれだけたくさん実践したかである。比較し、筆者と対話し、自分ならどうするを考え、アウトプットし、実践してみる。

午堂登喜雄(2008)『脳を「見える化」する思考ノート』ビジネス社 B5ノートに仕事、プライベートすべての情報を書く。目標、やることリスト、打ち合わせ、読書、アイデアを書き留め、キーワードを矢印で関連性を持たせる。後から何度も見直し加筆する。

午堂登喜雄(2008)『「突き抜ける!」時間思考術』インデックス・コミュニケーションズ 何のためにそれをやるかという目的と目的達成に向けたクオリティを追求すること、優先順位を考えると時間が作り出される、期限と目標、睡眠が時間密度を高める。

山崎将志(2010)『残念な人の仕事の習慣』アスコム 面白いことは転がっている。ゲーム化、日常へのフィードバックを行い、勉強への接点を考え、自分のポジションを構築。面白い仕事はつまらない仕事の積み重ねで成り立っている。一年前と同じ仕事をしているのか、惰性でするのは残念である。

ハワード・ビーハー、ジャネット・ゴールドシュタイン(関美和)(2009)『スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則』日経新聞出版社 自分に正直に、この会社で働く理由、自主的に考え、信頼を築き、真実に耳を済ます。責任を持ち、行動し、困難に立ち向かう,など。

<社会>

辻太一郎(2013)『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』東洋経済新報社 大学生、大学、企業が大学の成績を評価しない負のスパイラルに。企業に大学の授業情報を提供し、採用活動の参考に。学生が真剣に勉強するようになり、大学も授業改善に取り組むようになる。

W・ブライアン・アーサー(有賀裕二監修日暮雅通訳)(2011)『テクノロジーとイノベーション-進化/生成の理論』みすず書房 特定の目的を達成するために現象を取り込むテクノロジー。テクノロジーは新しい組み合わせで進化し,テクノロジーは自己創出している。

エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー(村井章子)(2013)『機械との競争』日経BP社 「コンピュータが人間の領域を侵食することにより、雇用は減り、その減った雇用は、高所得を得られる創造的な職場と、低賃金の肉体労働に二極化する」。

エリック・スティーブン・レイモンド(山形浩生)(1999)『伽藍とバザール-オープンソース・ソフトLINUXマニフェスト』光芒社 組織で開発する伽藍方式、ハッカーが自発的に参加するバザール方式。ハッカー文化にはロックの土地所有権的な規範と贈与文化がある。

上野千鶴子(1989)『スカートの下の劇場―ひとはどうしてパンティにこだわるのか』河出書房新社 女性がパンティを選ぶ基準はセックス・アピールとナルシズムである。男たちはパンティを性的なものと勘違いし、女は自分のボディを自分自身で客体化する。

上野千鶴子(2010)『女ぎらい――ニッポンのミソジニー』紀伊國屋書店 女性嫌悪(ミソジニー)は男にとって女性蔑視であり、女にとっては自己嫌悪である。男は性的主体であろうと連帯し、女を性的客体化する。女が客体から脱出するのは男性側(エリート)になるか女をドロップアウトすること。

上野千鶴子(2012)『みんな「おひとりさま」』青灯社 1960年代に累積婚姻率がほぼ100%だったが有配偶率は減少。シングルのまま、離婚や死別でシングル・アゲインが増えている。孤立を避ける人間関係のネットワークを維持し、社会の評価軸ではなく、自分の評価軸で生きる。

上野千鶴子(2002)『サヨナラ、学校化社会』太郎次郎社 現在を未来のための手段とし、偏差値で評価する学校的価値観が学校空間からあふれだしているのが学校化社会。偏差値身分制は自己評価の評価軸が学校的価値と同じになる。敗者の不満、勝者の不安が蔓延する。

吉成真由美(2012)『知の逆転』NHK出版新書 『銃・病原菌・鉄』のダイアモンド、アメリカの覇権主義を批判する言語学者のチョムスキー、音楽の力を大事にする神経科医のサックス、ロボット工学が人真似に陥っているとするミンスキー、個人を尊重すべきという二重らせんのワトソン,など。

ナシーム・ニコラス・タレブ(望月衛)『ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質』ダイヤモンド社 普通は起こらない、大きな衝撃がある、事後には予測可能である、という三つの特徴を持つ事象ーブラック・スワン。人はプラトン性という純粋で扱いやすい「型」で思考する傾向がある。

ナシーム・ニコラス・タレブ(望月衛)『ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質』ダイヤモンド社 ベルカーブはまやかし。白鳥を灰色にしたのはマンデルブロだ。とても稀な事象の確率は計算できないが、その影響を想像することは可能。確率よりも影響に焦点をあてて意思決定するべき。

<その他>

安藤祐介(2010)『営業零課接待班』講談社 営業で成績の出ない真島は退職を勧告される。それを救ったのは営業担当の井岡専務。井岡は飲みの接待を中心とする新たな営業零課を作った。一年で50億の売上を目指すがなかなか目標に到達しない。最後の起死回生をかけて営業零課が団結する。

安藤祐介(2008)『被取締役新入社員 (講談社文庫)』講談社 小学校入学式でお漏らしから最悪の人生がスタートした鈴木信男。会社勤めも続かず、冗談で受けた世界十指の広告代理店に採用される。条件はダメ人間として周りの人のハケ口になる「被取り締まられ役」になること。自分の誇りと仕事はどうなるか…

吾妻ひでお・西原理恵子(2013)『実録!あるこーる白書』徳間書店 依存症は妊娠と同じ。一ヶ月でも二ヶ月でも妊娠は妊娠(軽い、重いはない)。途中で戻れず必ず出産に至るのと同じように始まったら進行するだけ。アルコール依存症は病気という自覚が必要。

吾妻ひでお(2007)『逃亡日記』日本文芸社 2005年に発表した漫画『失踪日記』に基づいたインタビュー。仕事からの逃亡、路上生活の実際、水道管工事の体験、アルコール中毒者、治療としてのアルコール病棟の体験、そして『失踪日記』表彰後の生活を語る。

川上徹也(2012)『独裁者の最強スピーチ術 (星海社新書)』星海社新書 人を動かす演説にはストーリーの黄金律がある。それは「欠落したもしくは欠落させられた主人公」と「無理かと思うほどの遠く険しい目標に向かう」というものだ。

菊池省三・関原美和子(2012)『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』講談社 言葉が児童を変える。みんなで褒め言葉を言う。「成長ノート」(運動会で輝いていた友達、友達から学んだこと、など)、「私の本」(自分のテーマで書いてクラスで発表する)など。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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