2013年10月08日

2013年9月読書ノート

今年6月末から7月にかけて,理財商品やらシャドーバンキングやらが中国ニュースの中心でした。2008年の4兆元対策以降,地方政府のインフラ開発は地方融資平台などが注目されていましたが,その金融面の資金調達の仕組みが明らかになった形です。

フタをあけてみると,キャッシュフローを生み出すインフラを信託公司が地方融資平台と組んで証券化して家計に販売したというが実情でした。私は金融が弱いので言葉をきちんと理解しようと思い,手にとったのが以下の3冊です。やっぱり日経文庫はわかりやすくて網羅的なのでオススメです。




<経済>

安西正鷹(2012)『お金の秘密-国際金融資本がひた隠しに隠す』成甲書房 金と兌換できるという安心感から預かり手形が紙幣になる。その何倍ものお金が発行され(信用創造)、そのお金は利子を生み出す。この預証紙幣の終着点が中央銀行となり、通貨発行益を得る。

久保田博幸(2012)『図解入門ビジネス最新短期金融市場の基本がよ〜くわかる本』秀和システム 銀行券の発行,物価と決済システムの安定を図る日銀。金融恐慌をきっかけにコール市場が誕生,仲介役として短資会社が出現し短期金融市場が発展。

久保田博幸(2013)『図解入門最新債権の基本とカラクリがよ〜くわかる本[第2版]』秀和システム 借用証書としての債権は資金運用先,中でも米国債は影響力が大。債権は店頭取引が中心で価格ではなく利回りで売買。日銀は短期金利に影響を与えられるが,長期金利は国債の市場取引で決定。

日本経済新聞社編(2011)『金融入門[第7版]』日経文庫ベーシック 資産価格の上昇を人は信じ金融危機を引き起こす。金融とはお「金」を「融」通することであり,仲立ちするのが金融機関。お金の値段・金利を決めるのが金融市場。日銀,銀行,証券会社や商品である国債,株式,為替の仕組み等。

国際通貨研究所編(2012)『外国為替の知識[第3版]』日経文庫 為替とは地理的に離れた場所で現金輸送せずに決済すること。決済通貨を決めて商品の輸出入や投資が行われる。為替リスクにさらされる外貨建て資産・負債をエクスポージャーといい,企業にとってエスポージャー管理は重要。

竹内浩二(2012)『債権取引の知識[第3版]』日経文庫 借り手が期日に支払うことを約束しているのが債券。期日前に取引するのが債券市場。債券の信用性は格付会社の格付と安全な国債利回りとの格差(クレジットスプレッド)で。日本の債券市場は国債、米ではモーゲージ(住宅ローン)担保証券。

大橋和彦(2010)『証券化の知識[第2版]』日経文庫 住宅・自動車ローン,クレジット,手形などキャッシュフローを生み出すものは特定目的事業体に移行して,そのフローを利用して証券を発行するのが証券化である。メリットはリスクをコントロールすることができること。

井上聡(2007)『信託の仕組み』日経文庫 リース会社は土地建物などの財産を銀行などに託し管理運営を任せる。リース会社は財産から生み出されるお金の受益権を第三者に販売し,第三者は信託財産からの配当を信託銀行から受け取る。受益権は証券として売買も可能。

野田由美子(2002)『PFIの知識』日経文庫 民間(Private)の経営ノウハウと資金(Fincance)を活用する施策(Initiative)。公共が事業計画を立案し,設計,建設,運営,維持管理は民間が遂行する。公共は水準を満たしたサービスを購入する。

町田裕彦(2009)『PPPの知識』日経文庫 公民が連携して公共サービスを行うスキーム,PPP(Public Private Partnership)。PPPはPFIや指定管理者制度,独立採算型BOTなどを含む概念。背景に財政赤字,高齢化,インフラの老朽化などがあげられる。

厚谷襄児(2012)『独占禁止法入門[第7版]』日経文庫 私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法、事業支配力の過度な集中を禁止し、市場メカニズムを健全にする独占禁止法。ただし知的財産、協同組合、再販価格維持などが適用除外され、政府規制制度も批判に。

W.ブライアン・アーサー(有賀裕二)(2003)『収益逓増と経路依存-複雑系の経済学』多賀出版 立地は歴史的偶然性も作用する。鉄鋼業は原材料供給の近くにいる必要があるが(空間経済の必然性)、企業は企業の近くにいる必要があるという凝集性によって歴史の偶然が重要になってくる。

ポール・オームロッド(塩沢由典)『バタフライ・エコノミクス-複雑系で読み解く社会と経済の動き』早川書房 二つの場所のどちらにアリは向かうのかというアリモデルは、アリ相互の影響力に依存する。景気循環も片方に自己強化する傾向を持ち、個人の相互依存によって変化する。

<中国>

中條誠一(2013)『人民元は覇権を握るか-アジア共通通貨の実現性』中公新書 基軸通貨がドルなのはアメリカが発達した金融システムと巨大な最終財市場であるから。アメリカ経済力の相対的低下と過剰なドル垂れ流しはアジアの持続的発展に不利。アジアに共通通貨制度を構築する必要がある。

岡本隆司(2013)『近代中国史 (ちくま新書)』ちくま新書 士と庶、官と民の二元構造に公的な教育、政治の不在、一方的な収奪が明清時代の基本的構造。現物主義的財政が銀納に代わり、茶の輸出銀の輸入となる。人口が増加し開港場市場圏に。政府は信用、法制を供与せず産業化は失敗に。

渡邉真理子編(2013)『中国の産業はどのように発展してきたか』勁草書房 中国産業の特徴は「旺盛な参入と低い価格」である。固定費を回避したい企業は垂直分裂志向の取引を選択。技術的プラットフォームの存在、分化した市場、公共財的な技術がそれを可能に。食糧、労働、エネルギーは上昇へ。

丸川知雄(2013)『現代中国経済 (有斐閣アルマ)』有斐閣アルマ 変化の激しい中国経済を工業化という側面から2020年を意識し必要なものだけを整理する。中国経済の発展経緯を国有企業,民間企業,外資企業を主役に,労働市場と財政金融システムを補完しつつ明らかにする。

大西康雄編(2013)『習近平政権の中国-「調和」の次に来るもの』アジア経済研究所 習近平政権発足後の中国が抱える課題と展望を政治,経済,外交,軍事,公有制,社会保障の観点から明らかにする。習政権の独自路線は13年秋の三中全会以降に明らかになる。

石平(2013)『「歪んだ経済」で読み解く中国の謎』ワニブックス【PLUS】新書 中国は成長のための公共投資とインフレの板挟みに。経済が衰退すればケ小平マジックは消え社会は不安定に。習近平は、軍の視察強化など自分のカラーを出して国内の不安定を海外に背けようとしている。

沈才彬(2013)『大研究! 中国共産党 角川SSC新書』角川SSC新書 中国共産党の強さはイデオロギーに拘泥せずリアリズムに徹したため。共産党トップは下からの選抜、地方視察の現場主義、若手の育成や登用が強み。危機対応は強いが国内政変に弱い。保守派に配慮しつつも民主主義体制にいつかは移行する。

日経新聞社編(2013)『習近平に中国は変えられるか』日経新聞出版社 石油閥、機械工業閥などから見る新政権、土建国家と影の銀行、経済を支える中国企業の現状、米中外交、反日デモの裏側、小民主と呼ばれる民主化、言論統制の国、など。12年2月から13年3月までの企画連載のまとめ。

天児慧(2013)『日中対立: 習近平の中国をよむ (ちくま新書)』ちくま新書 12年以降の強硬姿勢の背景は日中関係の変化、対外戦略の強硬化がある。日本イニシアチブの日中関係が中国イニシアチブへ、対外戦略は09-10頃から海洋権益、核心的利益に南シナ海を含め、「積極有所作為」を主張し始める。

<自己啓発>

ジッドゥ・クリシュナムルティ(中川吉晴)(2013)『スタンフォードの人生観が変わる特別講義-あなたのなかに、人生がある』PHPエディターズグループ 先入観や偏見が「私」と「私以外」に分裂させ、思考が壁を作る。恐怖、絶望を見つめ、真実をみて権威や体系の間違いを見れば心は静かに。

チャールズ・デュヒッグ(渡会圭子)(2013)『習慣の力 The Power of Habit』講談社 毎日の人の行動の4割が習慣。習慣のループとは、欲求に基づき、何かのきっかけでルーチン行動が発生し報酬を得る、というもの。きっかけ、ルーチン、報酬を理解するとともに、変われると信じること、社会の目なども重要。

マリオ・アロンソ・ブッチ(山本泉)(2013)『ハーバード流 自分の限界を超える思考法』アチーブメント出版 過去に達成できたことと将来達成できそうなことは全然違う。現実を違った目で見ることができればまったく違った決断が下せる。

山ア拓巳(2006)『山崎拓巳の道は開ける』大和書房 悩んでいる人は努力することを保留している、決めてやってみること、感じるということはその事が起こる事を受け入れる準備ができたこと、意識すること、そうしようとすること、そしてある程度のストレスは幸せに関係している。

椋木修三(2013)『「顔と名前」の記憶術』PHPビジネス新書 自分の人生に重要でないものは忘れる。相手の名前や顔の特徴を意識し、メモを取る、イラストを書く、反復する、意識的に相手の名前を呼ぶ、会う前にメモを見直す、などの工夫。

<社会>

五十嵐泰正+「安全・安心の柏産柏消」円卓会議(2012)『みんなで決めた「安心」のかたち-ポスト3・11の「地産地消」を探した一年』亜紀書房 全国的な生産高を誇る柏のカブ、ネギ、ホウレンソウ。消費者、生産者、流通者が協力して放射能測定、安心農業の取り組み、消費者意識への働きかけ。

<その他>

中島岳志・森あゆみ(2012)『帝都の事件を歩く-藤村操から2・26まで』亜紀書房 東大の周りに下宿、旅館が集まり世を憂う煩悶青年が集まる本郷、浜口雄幸暗殺が起こる東京駅周辺、血盟団事件の日本橋、明歴の大火のあとに発展する両国、など、近代史に関連つけながら東京の街を歩く。

蜂屋邦夫(2002)『荘子=超俗の境へ』講談社選書メチエ 天空の高みに身をおけば俗世の争いごとは矮小に見える。すべてを天地自然の道に任せて、人為的な価値判断を超越することこそが荘子の思想。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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