2014年04月08日

2014年3月読書ノート

2014年3月の読書ノートです。



本書は「売春」について考えさせられる名著です。売春が成立するための条件は男性が支配的な社会であり,みだらな女性を求める一方で妻には貞淑さを求めるという二重規範が売春を強化することが述べられています。

二重規範の社会は,女性に純潔を求め期待に背けば制裁を与えます。支配下の女性に貞操を守らせながらも婚外交渉を求めるならばニーズに応える女性のサービスに市場価格がつきます。これが売春ですし,そして売春は社会から制裁を加えられてきました。

その一方で,貧困によって金持ちの愛人になることや、売春身受けは社会階層の移動であったという事実も指摘されます。

結局,売春が減る条件は,女性が性にオープンになり二重規範社会が崩れた場合だとしています。


<経済>

坂井豊貴(2013)『社会的選択理論への招待』日本評論社 コンドルセの二つの選択肢比較という方法に対し,多数決という意志集約で選択肢を順位付けして加点し和をとる意見集約の方法、ボルダルール。アローの不可能性定理ではコンドルセ方法は意志集約できない程度に解釈すべき。

船木由喜彦・石川竜一郎編(2013)『制度と認識の経済学』NTT出版 正義などの社会的目標を明確にし制度設計とメカニズムなどの規範的側面、限定合理的な主体がどのように意思決定し結果どうなるか事実解明的側面を明らかに。

朝倉啓一郎(2006)『産業連関計算の新しい展開』九州大学出版会 産業連関表の構成と分析手法が有効需要政策という歴史的に特殊な経済事象に方向づけられた。部門統合は投入構造異質化が平均化してしまうこと、質的分析は投入産出の構造解析が可能。環境モデルや産業連関分析の動向など。

河野稠果(2007)『人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか』中公新書 人口問題は少子化、高齢化、人口減少。人口学は出生、死亡、移動の三要素を社会経済政治現象との関係を研究。人口転換理論は多産多死から少産少死を説明。死亡は生命表から、出生は結婚、受胎確率などから人口動態を推測。

加藤久和(2007)『人口経済学』日経文庫 マルサスの人口論から新古典派へ。新古典派は限界生産力から適度人口を議論、出生行動を夫婦の効用最大化として考え、成長モデルは人口増加と所得の豊かさを説明。労働市場と社会保障制度の役割など。

ルチル・シャルマ(鈴木立哉)(2013)『ブレイクアウト・ネーションズ-大停滞を打ち破る新興国』早川書房 新興国はこの10年成長の範囲とスピードが異例だったために不合理なほど期待値が世界中で高まった。ただしすべての新興国がブレイクアウト・ネーションズになれるわけではない。

ケネス・ポメランツ、スティーヴン・トピック(福田吉田訳)(2013)『グローバル経済の誕生-貿易が作り変えたこの世界』筑摩書房 貿易は何千年にも渡って行われてきており、ヨーロッパは貿易を拡大。カカオ豆、コーヒー、砂糖は世界を廻り、時にして暴力的な奴隷貿易が行われた。

ポール・シーブライト(山形浩生森本正史)(2014)『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?―― ヒトの進化からみた経済学』みすず書房 個人が視野狭窄で行動しているにもかかわらず社会はうまく行く。うまくいくのは協力することによるメリットと強い返報性。集団内での協調は集団外では戦闘的に。

ポール・J・ザック(柴田裕之)(2013)『経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学』ダイヤモンド社 オキシトシンが共感を生み道徳的行動をもたらす。取引の効率性と収益性を高め、繁栄がストレスを減らして信頼を高める。これがオキシトシンの繁栄サイクルだ。長期的な繁栄には公正な取引の規則が必要。

大村平(2006)『統計解析のはなし-データに語らせるテクニック[改訂版]』日科技連出版社 少ないデータから得られたものの信頼性を調べる推定、まぐれか実際の因果のものかを決める検定。ばらつきを列、行、誤差の情報に分ける分散分析、相関と回帰、多変量解析へ。

大村平(2002)『統計のはなし-基礎・応用・娯楽[改訂版]』日科技連出版社 代表値を求め、正規分布であれば見本から全体を推定可能。たまたまうまく行ったので仮説を棄却するのがあわてもの(第一種過誤)、うまくいっているのに仮説を採用してしまうぼんやり(第二種過誤)ものの誤り。

レナード・ムロディナウ(田中三彦)(2009)『たまたま-日常に潜む「偶然」を科学する』ダイヤモンド社 物事は偶然の状況から発生していることが多い(ランダムネス)。私たちは並外れた出来事でも因果で解釈しようとする。

吉本佳生(2013)『データ分析ってこうやるんだ!実況講義』ダイヤモンド社 人のデータを使う時には偏りについて慎重にチェック。期間、変化率、グラフの錯覚に注意し多くの試行錯誤で経験を積むことがコツをつかむ近道。凝った計算で得られるジニ係数などは欠点が多いので注意。

ネイト・シルバー(川添節子)(2013)『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』日経BP社 情報量が急増してノイズも増え予測に必要なシグナルは減ってきている。ベイズ的に予測と確率を考える。最初の推定から情報を得て修正していく。

藤澤陽介(2014)『すべては統計にまかせなさい』PHP研究所 統計ツールでリスクを計量化し、リスクを引き受けて生み出される価値、その評価を行うアクチュアリー。計算にはリスクの金額と確率が必要。確率はポアソン分布や正規分布でモデル化。保険金額は大数の法則と収支相等の原則で決定。

<中国>

橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司(2013)『おどろきの中国』講談社現代新書 トップは有能であるべきという公理で支配される中国。天が毛沢東に権力を丸投げし彼に欠陥があってもこれを承認するという。日本は何のために中国と戦争したか、理解できていないので何を謝罪すべきかわからない。

加藤嘉一(2012)『いま中国人は何を考えているのか』日経プレミアシリーズ 腐敗への民衆の不満を、地方政府の役人、サッカー、デモなどへ転化させ、共産党は民衆の味方を誇示。政府への不満をすべて消し去ることは不可能であり、ガス抜きのツールとして「反腐敗」。

若林敬子編(筒井紀美訳)(2006)『中国人口問題のいま-中国人研究者の視点から』ミネルヴァ書房 人口現状と展望(田雪原),一人っ子政策の成果(于学軍),計画出産改革(顧宝昌),人口転換(蔡ム),後期高齢者のニーズ(桂世勲)など。「城中村」も。

黄文雄(2010)『日本支配を狙って自滅する中国』徳間書店 中国の尖閣などの強硬姿勢の裏には国内に抱える問題に関係する。人口圧力と資源不足が強硬に向かわせるが最大の通商国家になり世界の中国に対する反感が増加。

エドワード・ルトワック(奥山真司監訳)(2013)『自滅する中国-なぜ世界帝国になれないのか』芙蓉書房 急速な経済発展と軍事力の増強は周辺諸国の敵対的反応を引き起こす。これが中国政府の威信と影響力を奪う。対抗手段は地経学的なもの、輸出をさせず、天然資源を中国に輸出しないこと。

国分良成・添谷芳秀・高原明生・川島真(2013)『日中関係史 (有斐閣アルマ)』有斐閣アロマ 戦前期の歴史は日中関係の前提。戦後二つの中国との三角関係、貿易面ではLT貿易。70年代に日中国交正常化、天安門事件までおおむね良好。06年に戦略的互恵関係が始まるも歴史、台湾、領土をめぐって摩擦は激化。

<自己啓発>

山崎雅保(2012)『「マイナスの自己暗示」からあなたの心を救い出す本』柏書房 生きる心地は主観次第。主観はそう感じる心のくせ。心のくせを治す自己暗示。「嫌だ」は自分の積極的に拒む感情を明確にし、「大丈夫」は安心と肯定感を培ってくれる最強の自己暗示。

エミール・クーエ(林泰監修)(2009)『暗示で心と体を癒しなさい!』かんき出版 無意識のうちに習慣を作り人生を形作る。意識的に無意識に自己暗示をかける。「私は毎日あらゆる面でますますよくなっている」という暗示が効果的。

リンダ・ローズ(2001)『あなたの人生を変える催眠療法―リンダ・ローズ博士の「潜在意識」活用マニュアル』雷韻出版 顕在意識と潜在意識。潜在意識に体験の痕跡が蓄積され信念になり、行動パターンや世界観に影響を与える。潜在意識を守るクリティカルファクターはボーッとしたり感傷的、感情的な時、ショック時になくなる(非意図的催眠状態)。

前田大輔(2006)『プロカウンセラーの心理の達人マニュアル』秀和システム 心を理解するとは欲求を理解すること。交流分析で自我状態を確認し、現代催眠(NLP)で気持ちを読む。私たちは常識という催眠にかかっている。思い込みという暗示を外せば生きるのが楽になる。

<社会>

大原ケイ(2010)『ルポ電子書籍大国アメリカ』アスキー新書 本が売れるならどんなフォーマットでもどんなルートでもどんな店でも売るというのが米国出版業界。訴訟は起きながらもルールが決まっていくという考え方。日本は出版文化を守るといいながら既得権益を守るだけではないか。

バーン・ブーロー、ボニー・ブーロー(1991)『売春の社会史―古代オリエントから現代まで』筑摩書房 女性に貞淑を求め自由な性を謳歌する男性の二重基準が売春を許容し、処罰対象となる。過去宗教は売春行為には敵意を抱いても売春婦には寛大であった。私生児と性病の蔓延を防ぐため国家管理に。

藤目ゆき(1998)『性の歴史学』不二出版 軍隊による公娼制度,明治期の出産奨励や戦後の産児調節,日本女性の性は政府の都合,女性人権運動の波に翻弄される。

熊本県庁チームくまモン(2013)『くまモンの秘密 地方公務員集団が起こしたサプライズ (幻冬舎新書)』幻冬舎新書 財政難、九州新幹線の逆境の中で生まれた熊本PR作戦。くまモンを関西に神出鬼没させ、ブログとツイッターを開設。失踪事件を演出し、非常勤職員から営業部長に昇格。職員の奮闘記録。

森永卓郎(2003)『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社 小泉政権の構造改革はデフレを生み失業者とフリーターを増加。不良債権処理により勝ち組に資産が集中する新階級社会に。年収が減る中、副業したり、ライフスタイルの見直しを。

茂木誠(2014)『経済は世界史から学べ』ダイヤモンド社 紙幣の発行、国際通貨は銀貨、金貨からドルへ。保護貿易の失敗でナポレオンは没落、金融の歴史は被迫害者の歴史、世界初のバブルはチューリップの球根、借金まみれの藩を立て直した山田方谷の改革など、金融、貿易、財政の解説。


<その他>

中川淳一郎(2009)『ウェブはバカと暇人のもの』光文社新書 ネットに過度な幻想を持つな。企業にとってネットは告知スペースでネットユーザーの嗜好に合わせたB級なことをやる場であり、一般の人にとってネットは便利なツールであり暇つぶしの場である。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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