2014年04月29日

就職が難しくなった理由

ずっと疑問に思っていることがあります。それは

1.なぜ就職活動が難しくなってきたのか?
2.なぜ企業は主体性,コミュニケーション能力を求めるのか?
3.これらは大学の問題なのか,それとも社会の変化なのか?

といったことです。少なくとも私が大学にいた時代は,(大学の)勉強をしなくてもそこそこ就職可能でした。それでも社会に必要な主体性やコミュニケーションは身についてきたように思います。

最近は就職活動も大変ですし,企業は即戦力を求めます。いろんな議論をみてみると,大学進学率があがって大学生数が増加したとか,もともと大学になじまない学生も大学に進学しているとか,「ゆとり」で大学生の質が下がったとか,大学などの教育機関の問題としてとらえることも多いです。

でも,極端な話,優秀な大学を卒業する学生数が増えたわけではないので,私としては大学よりも社会が変化してきているからではないか,と感じるようになりました。

そのきっかけが『機械との競争』(ブリニョルフソン&マカフィー)という本です(エントリはここ)。IT化や情報化によって労働の質が変わり,どうも今まで普通に必要とされていた大卒レベルの人材像が変わってきたようです。IT技術の進歩や情報の発達で,多くの職業から普通の労働力が阻害されてきたようです。

そして,就職が難しくなってきた社会の変化をわかりやすく書いていたのが高橋(2013)でした。高橋(2013)はタイトル(『ホワイト企業』)と違い,職業のサービス業化,そしてそれに必要な人材育成とはどういうものか論じています。

とくにおもしろかったのが職業のサービス業化,そして産業構造自体がより製造業からサービス業にシフトしてきて,必要な人材像が変わってきているということです。

サービス業は仕事の個別性、専門性の二軸によって位置づけられます。個別性が低く,専門性が低いのは普通のコンビニやレストラン,ショップでの商品販売などです。ある意味マニュアル化が可能で,とくに必要な技能がなくてもできる仕事です。そして個別性が高くなると顧客接点サービス業務になります。介護,看護,高級宿泊施設や高級レストランなど,対応する顧客の多様性にあった適切なサービスの提供が必要になってきます。この意味で介護職員,看護師,ホテル業などは個別性の高いサービス業です。

ついでにいえば,これらは以前は専門学校でも提供できたものですが,専門性が向上しているために大学教育に移行しています。

そして個別性と専門性が高くなると医師や弁護士など個別に対応しながら他がもたない専門的知識でサービスを提供します。

IT技術の革新で,多くのサービス業がただのオペレーション業務,単純労働化しているようです。本書では鉄道乗務員の例をだし,鉄道運行のIT化が進むことによって,電車の運転士の仕事はオペレーション業務になりつつあり,専門性をどんどん習熟させていく必要がなくなってきているといいます。

またタクシー業界でも,長距離客をつかむのは運転手さんの経験とカンではなく,タクシーを電話で予約する客層だそうです。データにもとづいてそれらの客層にアプローチし,会社として営業することで収益があがります。運転手さんの業務は会社の方針に即したマニュアル化された単純的業務に変化していっているそうです。予約する客層の管理,丁寧な接客が可能なシステムの構築を考えると,このような仕事は専門性が高くなります。

このように社会の仕事はますます個別化,専門化していき,大学などで高等教育を受けた人材は,「個別」の顧客が必要としているものを,「コミュニケーション」を取りながら,専門性の高い(満足度の高い)解決策を「主体性」をもって考えなければならないという状況になっています。

製造業の時代は,機械が労働の代わりになって,人は機械を開発,オペレーションできる技術をもつ必要がありました。サービス業の時代も同じようにIT技術が人のできる職業を奪い,人はIT技術をマネージする能力や人と相対するコミュニケーション中心の業務に追いやられているのかもしれません。

<参考文献>
高橋俊介(2013)『ホワイト企業 サービス業化する日本の人材育成戦略 (PHP新書)』PHP新書
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 大学教育について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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