2014年08月05日

2014年7月読書ノート

2014年7月読書ノート



どの大学も,どの大学教員も大学は変わらなければ生き残れないという意識はもっています。ただどう変わればいいのかわかりません。文科省の主導するグローバル化に対応することが必要なのか,それとも教育研究機関として懐古的ではありながらその存在をアピールしていく方向にいくべきか,多くの迷いがあり多くの意見が存在します。

本書は,アメリカの小さな大学の変革物語です。この大学変革ではやはりトップのリーダーシップがキーだったようです。アメリカらしく変わるべき像をあきらかにし,すべての面で目標到達を目指したことが描かれています。

日本でも最近大学変革の事例が増えています。下記は創価大学経済学部がグローバル化への対応にいち早く取り組み,高くない偏差値ながらも世界基準に合わせようとした学部改革の様子がわかります。




<経済学>

竹内健蔵(2013)『なぜタクシーは動かなくてもメーターが上がるのか-経済学でわかる交通の謎』NTT出版 タクシーは渋滞によって、その時間別の客を乗せられたはずの機会費用が発生している。本来稼げるはずの運賃収入(機会費用)を時間距離併用運賃を使って利用客が弁済している。

竹内健蔵(2008)『交通経済学入門 (有斐閣ブックス 454)』有斐閣 交通経済学はよりよい交通社会を創るため。1人しか住んでいない島に橋をかけるべきか、効率と公正の問題に直面。交通の移動は費用として捉えられ、機会費用で運賃などを考える。交通サービス、費用、運賃、規制、投資、補助と交通ネットワークなど。

松原宏(2006)『経済地理学-立地・地域・都市の理論』東京大学出版会 経済地理学は経済現象の空間性・地域性・場所性に着目しその連関と構造を明らかにするもの。技術によって立地が空間性から自由になり地域性や場所性が重要に。集積点としての都市のネットワークも重要になる。

ジェイン・ジェイコブズ(香西泰植木直子)(2013)『経済の本質-自然から学ぶ』日経ビジネス人文庫 成功している経済には、分化と結合による発展と共発展、エネルギーの多様かつ多角的な利用による拡大、活力自己再補給による自己保全がある。好循環は動的安定性をもたらし、悪循環は瓦解に。

ジェイン・ジェイコブズ(香西泰)(2003)『市場の倫理 統治の倫理』日経ビジネス人文庫 対立する統治者の倫理と市場の倫理。商業生活における暴力、詐欺、貪欲と戦い、私有財産と人権の尊重を統治者に承認させる。統治と商業の共生が達成されればそれが文明になる。

溝口哲郎(2010)『国家統治の質に関する経済分析〈2010〉』三菱経済研究所 経済成長には高質な市場が不可欠である(矢野)。腐敗と汚職は経済効率性を高める潤滑剤の役割を果たすという効率性賄賂の仮説は近年の実証分析で棄却されている。また投資や外国直接投資の水準を下げる。

中島隆信(2014)『経済学ではこう考える』慶應義塾大学出版会 経済学では世の中に存在するものには何らかの合理性があると考える。伝統文化は実用性を失った技術が生き残る道のひとつ、お寺は檀家制度が参入障壁に、弱者という身分を定義した上での福祉サービスの提供は限界に。

山崎圭一(2013)『進化する政治経済学-発展途上国研究ノート』レイライン 島、宮本によって発展してきた政治経済学の枠組みで途上国の内部構造・動態にアプローチ。政治経済学、欧米思想、開発諸理論からアフリカ、ブラジルを考察、外国人労働者も。

チャールズ・D・コルスタッド(細江守紀藤田敏之)(2001)『環境経済学入門』有斐閣 規制とインセンティブによる解決方法、どれほど環境保護をするかという社会選択、市場の効率性と失敗、財産権、ピグー税の設定か規制か、排出税と排出権取引、汚染者と規制者の情報の非対称など。

細田衛士・横山彰(2007)『環境経済学 (有斐閣アルマ)』有斐閣アロマ 環境経済学の基礎(公共財、外部不経済、コースの定理)を解説、再生可能・不可能資源の分析、環境税と排出権取引、廃棄物(リサイクルやデポジット制度)の経済学的分析。分配問題、負担の公平性、安定や安全など効率以外の価値観が入る。

細田衛士(2010)『環境と経済の文明史』NTT出版 環境問題は不確かさと判断基準の曖昧さがつきまとう。温暖化の理由、リサイクルすべきか焼却すべきかにもわからなさがつきまとう。農耕、技術の発展、化石燃料革命、日本文明と環境、貧困と環境、資本主義・共産主義など。

<社会>

室田康弘(2007)『YouTubeはなぜ成功したのか』東洋経済新報社 自作映像のネット品評会というアイデアから始まったユーチューブ。テレビ視聴時間は減少し著作権との軋轢を生む。無料ダウンロードとCD売上とは無関係という研究、VTRの軋轢はレンタルという派生市場を生んだ、など。

グイド・カルダレリ、ミケーレ・カタンツァロ(高口太朗増田直紀)(2014)『ネットワーク科学 (サイエンス・パレット)』丸善 食物連鎖、感染症、インターネットなど様々な異なる現象をネットワークという観点で明らかにできる。共通点は複雑で創発的で自己組織的なシステム。

カール・シャピロ、ハルR・バリアン(千本倖生宮本喜一)(1999)『ネットワーク経済の法則』IDGコミュニケーションズ 情報経済ではコンテンツの差別化、バージョン化は頻繁、システムに情報を入れるとスイッチングコストがかかりロックインされる。ネットワーク外部性は勝者の総取り。

山下一仁(2014)『農協解体』宝島社 組合員に高い資材価格を押しつけ、農家以外の準組合員の利用を拡大させ、信用・共済事業が柱になった。農家は兼業農家になり、農協は不特定多数を相手とする脱農化で生き残ってきた。都市周辺農家は農協を通さずに販売する。農協の政治力は低下している。

<その他>

高濱正伸(2013)『10歳からの子育て』総合法令出版 子育ての目標はメシが食える、モテて魅力のある大人に育つこと。重要なのは思春期の子離れと同性の親による性差の伝承。

ウッディー・ウェイド(野村恭彦監訳)(2013)『シナリオ・プランニング-未来を描き、創造する』英治出版 シナリオ・プランニングとは「現在のトレンドにもとづいて、未来のチャンスと脅威を描くことを助け、組織の成功確率を高める」こと。未来のシナリオが頭に入ると行動が変わる。

香取一昭・大川恒(2009)『ワールド・カフェをやろう-会話がつながり,世界がつながる』日経新聞出版社 ワールド・カフェとはメンバーの構成を変えながら4~5人単位の小グループで話し合いを続けることにより参加者全員が話し合っているような効果が得られる会話の手法。

香取一昭・大川恒(2011)『ホール・システム・アプローチ-1000人以上でもとことん話し合える方法』日経新聞出版社 ホールシステム・アプローチとは多くの関係者が集まり自分たちの課題や目指したい未来などについて話し合う大規模な会話の手法。ワールド・カフェ,シナリオプランニング等。

クリスティン・バーネット(永峯涼)(2014)『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』KADOKAWA 2歳で自閉症と診断されたジェイクは10歳で大学入学。好きなことをさせて創造性を発揮させれば他の面も成長する。他の自閉症児の受け入れ、自らの脳卒中、夫の失業などの自伝。

ジョナサン・ハイト(高橋洋)(2014)『社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学』紀伊国屋書店 人は理性よりも直感で動いており,六つの道徳基盤を持つ。リベラル(左)はケア,公正,自由に依存するが,保守(右)は他の忠誠,権威,神聖の全ての基盤を持っている。

片田珠美(2012)『なぜ、「怒る」のをやめられないのか 「怒り恐怖症」と受動的攻撃 (光文社新書)』光文社新書 怒りを表現できないようしつけられた私たちは怒り恐怖症に。怒りをためると沈黙や不機嫌など受動的攻撃の形で外に出る。怒りの原因について@行動A解釈B感情C影響D希望を人に伝える。相手の立場理解や諦めも必要。

榎本博明(2012)『近しい相手ほど許せないのはなぜか』角川SSC新書 心理的距離が縮まると遠慮がなくなり衝突することが増えるので、親しい人ほど腹が立つ。許せない人は他人と自分を切り離せず自分が感じるものは人も感じており自分の考えていることはみんなもわかるはずと思いがち。

岡田尊司(2014)『(017)母という病 (ポプラ新書)』ポプラ新書 母という病を抱えた人は相手の不機嫌に敏感に反応し相手の都合に合わせてしまう。母親に本音を言う、母親から適度な距離を持つ、理想の自分にとらわれない、ネガティブに反応しない、良いことに目を向ける。

マイケル・ブース(寺西のぶ子)(2013)『英国一家、日本を食べる(亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)』亜紀書房 辻の本で知った日本料理。マイケルは東京でちゃんこ、天ぷら、クジラ、北海道でカニ、ラーメン、昆布を知る。京都で懐石の奥深さ、流しソーメン、豆腐、日本酒を楽しむ。大阪の串カツ、沖縄料理など日本料理再発見。

マイケル・ブース(寺西のぶ子)(2013)『英国一家、ますます日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)』亜紀書房 味の素社の訪問で「うま味」を再発見、焼津の鰹節加工場を見学しうま味の想像を広げる。わさびの栽培、松阪牛の牧場、海女漁、キッコーマンの醤油を見学し、日本の食文化を理解する。

片田珠美(2011)『一億総うつ社会』ちくま新書 最近増えている新型うつには他責的傾向がある。他責になるのはこうありたいという自己愛イメージとこれだけしかない現実の自分のギャップを受け入れられないから。自分自身の問題を否認し他人に投影したりして自分に責任がないように振る舞う。

岡田尊司(2012)『発達障害と呼ばないで』幻冬舎新書 発達障害は遺伝子要因が強いが愛着障害の症状と似ている。生物学的基盤である子育てに関わるオキシトシン・システムの機能不全という共通性。視覚空間型の才能はイメージや体感で伸ばす。安全と共感的応答が必要。

岡田尊司(2004)『パーソナリティ障害--いかに接し、どう克服するか』PHP新書 偏った考え方や行動パターンのために社会生活に支障をきたした状態がパーソナリティ障害。自分に強いこだわり、傷つきやすいという特徴を持つ。自己愛性の人は謙虚に他人の言葉を聞く、他人のために生きる。

ジョージ・ケラー(堀江未来監訳)(2013)『無名大学を優良大学にする力―ある大学の変革物語―』学文社 電話応対からトイレまで質の向上を目指し、計画立案と優先順位、教職員学生の選考育成報酬にできる限りの配慮、学生参加型学習でニッチ市場を開拓、財政政策と積極的なマスコミ活用、など。

紀川しのろ(2014)『教養部しのろ教授の大学入門』ナカニシヤ出版 ミッション系大学のはきだめと言われる教養学部に移ったしのろ教授。学生に手厚くなる大学、入学式、授業開始、夏休みの過ごし方、オープンキャンパス、来年度授業組み立て、入試、卒業式など大学教授の1年をシニカルに。

posted by okmtnbhr at 23:41| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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