2014年08月26日

二重戸籍制度を廃止し,居住証制度へ(中国の戸籍制度改革)

中国の戸籍制度改革がさらに一歩進みそうです。

国務院は2014年7月30日に新華社を通じて,《戸籍改革をさらに一歩すすめることに関する意見》を発表しました。

1997年国務院は公安部の《小城鎮戸籍管理制度改革試点方案》を批准し,テスト地域での改革経験をもとに,2001年《小城鎮の戸籍管理制度改革の推進に関する意見》を批准しました。この《意見》により小都市の常住人口に関しては計画指標管理をやめるとともに,基本的(絶対的多数の都市で)に小都市戸籍は農民に開放されることとなりました。

2007年には成都と重慶が都市農村一体化総合改革試験区に指定され,戸籍制度改革が大都市でも実施されてきました。今回はこのような戸籍改革の流れの中で,全国的な方針を示したという意味で注目されるべき改革方針と言えます。(過去の流れは,「中国の戸籍制度改革が進展!?」を参照してください。)

簡単に中身を紹介。

一.総体要求

都市定住については,農民の権利であり意思を尊重すること,各地域の経済発展水準に合わせて実施すること,公共サービス提供の均等化を図ることなどが触れられ,発展目標として,都市農村戸籍を統一化し,居住証制度によって統一的な人口管理データベースを構築,義務教育,就業支援,基本年金,医療衛生,住宅保障などの待遇を全常住人口に供給し,2020年までに1億人前後の農民移動人口やその他の常住人口の定住を達成する,としている。

二.さらなる戸籍遷移政策の調整

ここでは,都市規模によって戸籍転換の基本的指針を示しています。

建制鎮や小城鎮では,就業しており住所があれば定住戸籍を申請できるとしています。

中等都市(人口50万人から100万人)では,就業と住所および国家が規定する一定期間の都市社会保障参加があれば,基本的に定住戸籍を認める。受け入れ能力がある中等都市は,建制鎮や小城鎮と同じ方針を採用してもよい,能力がない都市は条件を明確にするが社会保障の参加年限を3年越えてはならないとしている。

大都市(100万人から300万人)は,中等都市と同じ方針であるが,大都市(300万人から500万人)では就業範囲,就業年限,住所の条件を明確にし,ポイント制度を採用して徐々に定住をすすめる。社会保障参加の年限は5年を越えてはいけないとしている。

特大都市(500万人以上)は,厳格に人口管理を行う方針であり,就業,住所,社会保障などの参加程度によってポイントを付与し,ポイントを公平かつ合理的に設定し,ポイントがたまった世帯から定住を申請できる,としている。

三.人口管理の創新

都市農村戸籍の区別をなくし,居住証制度を確立するとしています。居住証制度は半年以上当該都市に住めば申請できるとし,居住証は居住年数などの各種条件をリンクさせ,公共サービスを受けることができるとします。居住証は居住年数,社会保障制度への加入年数を基本として徐々に当該地戸籍保有者と同じような労働就業,公共教育,公共医療,計画生育,公共文化等のサービスを受けれるものとされています。共に移住した子女教育も当該地の待遇を受けれるものとしています。

またこの居住証を中心として人口管理データベースを整備していき,人口にまつわる就業,教育,社会保障,収入,不動産,計画生育,税務,婚姻,民族などの情報を正確に把握していくとしています。

四.農業移動人口及びその他常住人口への合法権益の保証

農村での財産権を完全なものにすることがうたわれています。土地経営請負権,宅地使用権,そして集団所有の農村財産に関する集団収益分配権を明確にし,登記し,証書を発行するとしています。基本的に都市に入った農民は,法律,自らの意思,有償という原則のもとでこの三権を手放すことによって都市定住を可能にするとしています。そしてこれらの財産権は取引所で市場取引を可能にするとしています。

教育,医療衛生(計画生育),年金制度を農村でも普及させ,将来的には都市と一緒にしていくことが目指されています。

最後に,これらの費用については財政移転制度が用いられ,農民市民化の数とリンクさせることがうたわれています。

五.組織的リーダーシップの強化

各地域,各部門は本意見をもとに,地域の実情にあった改革施策を早急に整えることが求められています。

この「意見」のポイントは
(1)二重戸籍制度を廃止し,居住証を中心とした制度に転換すること
(2)居住証のポイント積算が公共サービスの程度を決定すること
(3)都市規模によって居住証の運用が変わること
です。

そして課題は
(1)ポイントの多寡によって公共サービス提供が変わるため,農民が居住証を持っていたとしてもその中身で都市住民との差は存在し続けること
(2)すでに公共インフラが整っていて農民市民化のコストが低いであろう特大都市では依然定住は難しいこと
(3)地方政府は中央からの財政移転を目当てに強制的な定住政策を推し進める可能性が存在すること
が指摘できます。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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