2014年12月11日

土地制度改革の問題は農村集団利益をどうするか,である。

中国の土地は二種類あります。都市部の国有地とその他農村部です。農村の土地は集団所有という形態をとっており,農村に住む農民全員で所有しています。

ただし使用権は国有地のみに取引が認められていますが,農村の集団所有地についてはその取引がずっと曖昧なままです。

1987年に深センで初めて土地使用権の入札が行なわれました。これにより工業地は50年間の使用権を持つことが可能で,長期的な経営が可能になります。

1988年に憲法が改正されました。ここでは土地の所有権の売買やリース,流通を否定するとともに使用権のみ可能であることが明確にされます。

同年,土地管理法が修正されます。国有地,集団所有地の流通が認められます。

1990年「城鎮国有土地使用権譲渡と流通暫定条例」が公布され,国有地の譲渡規定が明確になりました。しかしその後出るとされている集団所有地の譲渡方法については曖昧なままにされています。

これは農村の土地利用が現実に進んでいたためです。

沿海部の農村では,外資がやってきて,村長に工場用地が欲しいと訴えます。村長も村の発展を考えると,外資を誘致したい,しかし土地を貸すのは違法になってしまう,そこで考え出されたのが,合資,合弁,聯営という中外合作方式での企業経営です。現実は中方が土地を提供し,外資が工場を提供して,それで合作経営を行なうというものでした。集団所有地のまま工場用地にしてしまう苦肉の策でした。

これにより沿海の農村は国家級の開発区以外でも工場誘致が可能になりました。沿海部の農村が発展を始めます。

農地が工業用地に変わることを恐れた国は農業用地のレッドラインを設けて,農地保護の方針を出します。村長は住宅地の集約や耕作されていない土地を新開拓地として農地を増やし,その代わりに農地を工業用地に転換する方法を編み出します。

郷鎮企業や内資の進出においても同じ方法がとられ,農村の雇用問題が解決するとともに足らない労働力は外地から来ることとなります。進出企業から生み出された利益は,農村は管理費という名目の地代を受け取り,村は豊かになりました。

農民たちは外地労働者のための住宅を建設しはじめます。彼らに住宅を貸し出し,賃貸料を受け取ることとなります。また請け負った農地についても外地労働者に耕作させることにより,地代を得ることになりました。

村全体が「地主化」しました。村が地代で食べている以上,彼らの飯の種(集団所有地)を取り上げて国有地に変更することは大変な困難を伴います。


今度は都市周辺の農村に目を向けてみましょう。都市化が進む中で,都市辺境の農村にも開発の波がやってきています。しかし農村の集団所有地はそのままで,住宅建設や工場建設が進みます。住宅では一部を農民に等価交換するとしても,農村に地代を払うあるいは地代を賃貸住宅に変更することによって農村の収入を確保するという点では,先ほどの事例と同じです。

しかし都市部では多くの住宅地が集団所有地にたっており,いわゆる「小産権」物件として販売されました。集団所有地における住宅建設は違法です。法律では国有地のみに住宅建設が可能であり,それによってはじめて物件の使用権が譲渡,流通することが可能です。しかし小産権物件は法律保護がないものの,価格が安いのが魅力です。流通が無理,としても売買方双方が同意すれば実質的に売買可能です。

北京では報道によると少なくとも20%は小産権住宅です(識者はもっと多いという)。珠江デルタ地帯の都市化では都市の2/3は集団所有地のままです。

さて,土地制度改革の基本は都市農村の土地(建設用地)取引の一体化です(第18三中全会)。集団所有地のままになっているのを国有地に変更して取引を可能にするのが目標です。

しかし上記で見たように集団所有地はその場所にいる(いた)農民たち農村全体の利益の源泉です。彼らは働かずして地主になれ,企業や工場,住宅が生み出す地代(管理費)収入は莫大なものになっており,改革開放後すでに35年が経過しており,利益は固定化してきています。

彼ら農村集団の利益を取り上げて国有地にするのは至難のわざです。何かしら再開発するときに発生する利潤を農村農民に分配しなければなりません。

2008年末から北京では50の城中村が改造対象になりました。しかし現在でも解決していない村が相当数にのぼるといいます。広州市でも1000以上の集団所有地が残っており,今年ようやく1つ改造が終わったと言います。このままでは集団所有地の国有地化は難しいですし,利益を生み出す集団所有地を村が喜んで放り出すわけもありません。

利益を生み出す土地を農村が持っている以上,国が法律通りに国有地にして工業用地として提供するためには,そのための補償が必要です。そのコストは年々高くなっており,国家が都市の中にある集団所有地を国有地に変換することは不可能でしょう。

珠江デルタ地帯は経済発展の最も速い地域の一つです。土地が利潤を生み出してきた以上,改革の利益分配は至難のわざになっているのです。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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