2015年02月10日

都市・農村二元構造はなぜ存在するのか?

中国は見た目ではわからなくなってきましたが、都市と農村ではっきりと制度が違っています。いわゆる二元構造と言われるものです。

具体的には,人は戸籍制度によって都市と農村に分断されていますし,土地も所有制によって都市と農村に分かれています。戸籍制度では農業戸籍、非農業戸籍という区分があり、土地制度は国有地と集団所有地という違いがあります。

土地戸籍二重制度.jpg

戸籍制度は,人を「場所」と「産業」に拘束します。農業に従事し,農村にいる人は農業戸籍となります。農業以外に従事し,人が集まっている場所,いわゆる都市にいる人は非農業戸籍となります。

注意しないといけないのは,中国の農村と区分される県レベルにおいてもそこの集積地(「鎮」)では農業を行なっていないので,非農業戸籍になります。でもその県に所在するという意味では,県の戸籍取得者であり,市の戸籍取得者とは空間的に区別されます。

戸籍制度は、労働の地域間、産業間移動を制限します。農村では戸籍登録地での農業就業以外の選択が不可能でした。そこにある人民公社に働き続ける以外の選択肢が存在しませんでした。

戸籍制度が存在した理由は、(1)農業生産を維持すること、(2)都市のスラム化を防ぐこと(治安や思想教育の意味もあるが),の二つが大きいです。工業化にとって農業は原材料供給の上流産業です。貿易を考えない場合,農業があって工業が発展するので,戸籍制度が農業生産に果たした役割は大きいです。

土地制度も似た問題を持っています。都市は国有地ですが,農村では集団所有地です。

このような二元構造になったのは歴史的経緯があります。

そもそも革命で都市の企業を接収するとともに都市という場所を共産党が接収していきました。農村でも同じ経緯で共産党が地主から農地を取り上げます。解放という旗印のもと土地が小作農に分配されます。これが農民の共産党支持につながります。

しかし1952年からの農業集団化においては,一旦配分された農地を集める必要がでてきます。当然,接収するという選択肢もあるわけですが,農民から土地を取り上げるのは大問題になります。その妥協点が農村にいる農民全体で所有するという集団所有制です。

この制度の合理性も戸籍制度と同じように,(1)農業生産を維持すること,(2)農村を守ること(都市化を抑えること),であったと考えられます。

いずれにせよ、この二元制度は、労働と土地を都市・農村、農業・工業と空間的産業的に固定化することによて計画経済を実行する上で、大きな役割を果たしたといえます。

現在の中国で計画経済の色彩が強いのはまさにこの都市・農村二元制度です。戸籍制度はゆるくなりました(あるいは居住証制度に変わった)し、集団所有地も国有地に変換する制度も整ってきました。しかし、実際には今までの二元制度は厳然と残っていますし、現在の都市化はまさにこの制度の二元構造の打破が焦点でもあります。

しかし制度変換には大きな困難を伴います。制度によって既得権益がすでに存在しているからです。農民の流入によって都市住民の快適な生活が変わってしまうかもしれないというのは,都市住民の安定生活という権益をおびやかします。また都市就業での都市住民の有利性、集団所有地によって生まれている農民の利益、などこれらはすべて二元制度によって生み出された権益です。制度が存在する以上,その制度で得をしようと行動した結果,制度で利益を得ている人たちが存在します。

この制度を「変更」することは難しいです。人の利益を奪うわけですし,扱いを誤れば政権批判に向きます。

近年中国は改革の「深化」とか「深水区」といった言葉を使います。これはこれまでの漸進主義的改革がフローの改革(存在する制度には手を付けず、新たに付け加えた部分の改革)であり、既存のストックには手をつけてきませんでした。「深化」という言葉には,このストックの部分の改革がいよいよ本格化したということを意味しています。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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