2015年02月17日

都市化と土地資源の配分

中国の都市化で土地制度改革は非常に大きな問題となっています。土地問題をみてみると市場経済と計画経済がもっともせめぎ合っている場所だなということがよくわかります。

今日は土地問題を経済学から考えてみたいと思います。


(1)市場と土地配分の考え方

市場経済が理論的に成り立っているとすると,土地が都市に配分されるのか,農村に配分されるのかは以下の図で説明されます。

市場化と土地.jpg

ちょっと簡単に図を説明しましょう。

横軸(AからC)はその国に存在する土地の量です。左から真ん中あたりまでが農村に配分される土地の量,右から真ん中あたりまでが都市として利用される土地の量です。

MPRは農村の土地の限界生産性を表わします。つまり農地が生み出す収益です。市場経済では農地の生み出す収益と地代が等しくなります。農地としてたくさん収穫できる土地の地代は高いですし,収穫があまりよくない(土地が痩せている)土地は地代が安くなります。

MPRが右下がりになるのは,農地として一番いいところが耕地として利用され,農地が広がるにつれて周辺の土地の生産性は下がってきていることを示します。

MPUは都市の土地の限界生産性を表わします。つまり都市の土地が生み出す収益です。宅地や工場に使われる,宅地でも高層化する,高い商業ビルを建てることによって土地の収益をさらにあげるなどによって,土地の限界生産性は決まってきます。ここでも市場経済である限り土地の地代はこの限界生産性と等しくなります。

農村の土地が生み出す限界生産性,都市の土地が生み出す限界生産性が等しくなった点,ここではB1ですが,B1から左側(A-B1)が農村で利用される土地の量,B1から右側(B1-C)が都市で利用される土地の量となります。

都市化は土地を都市に配分する過程です。

都市で増加した人々を収容するための場所が必要になってきます。

人が増加するということは都市の土地に対する需要が上昇します。また集積の経済(集まることによる利益)が働くことにより,都市で生み出される生産性は上昇します。つまりMPU1はMPU2と上に移動します。

これにより都市では周辺の土地を必要とします。実際,農家からすると,農地で生み出す収益よりも都市に売り渡した方が収益になるのであれば,農村の土地は都市の土地に変わっていきます。MPUがMPRより上にある以上は,農村の土地は都市の土地に変わっていきます。

その土地配分の変化過程が図のB1からB2への移動です。農地が都市部の宅地となり,都市の土地として利用されていっています。


(2)制度の衝突

完全な市場経済であれば地代によって土地が都市分と農村分に振り分けられます。

ところが中国では,土地が完全に二元化されていました。都市の土地は国有地,農村の土地は集団所有地です。一方で,所有権というものがあいまいなまま都市化が進み,農地が都市建設用地に接収され,都市建設が行なわれてきました。

法律的には都市建設用地を得るために,農地を集団所有地から国有地に変換しなければなりません。しかし国有地にできない場合は,都市化が進む中で一部の農村は農村のまま存在することになってしまいます(城中(辺)村といわれる)。

あるいは,集団所有地のまま宅地建設を行ない,住宅を販売するという所有権があいまいな小産権と呼ばれる土地が存在することとなってしまいます。

これは図中のB1-B2で示される部分です。所有権の違い,所有権転換の難しさから制度が慰留したままのため,土地配分の都市化が順調に進まないところでもあります。



(3)都市計画,農地保存

都市化による土地配分問題は市場経済国であっても,完全な市場経済にまかせてしまうのはためらわれる部分でもあります。

土地流動を自由化すると,都市における土地の乱開発(都市景観を損なう可能性),農村農地の荒廃(農業生産の減少)などを招きかねません。そこで多くの国で政府が都市計画を設置するとともに開発場所を選んでいますし,農地保護のために農地の販売は規制していたりします。

中国でも同じ問題が存在します。中国の食糧を保護するために中国は18億ムーという耕地レッドラインを設けて,農地の減少を防ごうとしています。


(4)どう改革するのか?

農地を保護するには,規制だけではなく経済学的には農地によって生まれる収益をあげるしかありません。つまりMPRの上昇となる施策です。

それは農地への資本投入によって土地の改良を行ない,灌漑整備するなど土地の生産性をあげることです。

もう一つは,農地や農業経営を大規模化することによって,生産性を上げることです。


土地の生産性をあげるためには,制度はどうあるべきでしょうか。

一つは国有化です。国家が農村の土地を国有化して,国家主導で農地を保護し,一方で農業の大規模化を進めるというものです。

もう一つは私有化です。農村農地の権利を確定して,農民自身が土地を所有したという感覚を持つことによって土地の長期的生産性をあげようというインセンティブを期待します。あるいは私有化は高齢化によって農地を手放す人たち,農業に参入した若者たちが農地を購入にして大規模化する,という市場取引が期待できます。

中国では都市建設は国有化の流れになっています。しかし農民へ地代を払って転換するのは財政負担が大変なことになります。城中村改革と小産権住宅の解決がうまくいかないのはすでに存在する既得権益を国家は奪いにくいし,その補償は大変であるということを意味しています。

農業保護では,私有化の動きがあります。実際には農地の所有権は集団所有のままですが,請負権などを土地使用権と同じくらいしっかりとした権利として流通できるようにしようとしています。


制度矛盾と都市計画(その反対の農村保護)という制約の中で,中国はどのようなメカニズムで都市化に必要な土地を配分していくのか,大きな問題となっています。制度と市場化をどうするのか,改革の方向が大変悩ましいことになりますが,「国有化+市場化+法制化」というミックスを強調する学者もいます(魯2010。


<参考文献>
魯徳銀(2010)「土地城鎮化的中国模式剖析」『商業時代』2010年第33号,pp.7-9,40
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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