2015年02月24日

中国の財政を考える

中国は,政府の役割を再考しています。多くの知識人は政府は産業などから退出すべきであって,都市化でも言われるように公共サービスの均等化に力を入れるべきだという考えが広がっています。

公共サービスを提供するにもお金が必要です。中国の財政から政府の役割を考えてみたいと思います。

(1)分税制

1994年より分税制が導入され,税種ごとに中央税,地方税と決められ,中央の財政力が強くなりました。それまで税の徴収も支出も地方政府に「委託」し,一部を上納させるという地方財政請負制でしたが,それでは中央にお金が集まらず,中央政府によるマクロコントロールができないという事態になっていました。

市場経済化でマクロ経済コントロールをするには中央による財政政策が重要です。そのために中央が財源をコントロールできる体制をつくることが必要でした。これが分税制で,中央に財源が集まるようになったという意味で,成功だったといえます。

(2)問題点ー財力と事権(やるべきこと)のアンバランス

問題は,財力と権限がアンバランスになったということでした。

分税制により中央政府に税があつまるようになりました。したがって中央政府には財力があります。これにより必要な公共財,とくに国家レベルで必要な軍事や治安などにお金を使うことができます。

一方で,省級政府あるいはその下の地市級,区県級にはお金が集まらず,一方で,やるべきことが増加しています。つまり自地域の人々の生活にかかわる教育は福利厚生面での責任や事権(やるべきこと)は多いままですし,その支出圧力は大きいです。

結局,上級政府にお金が集まっても下級政府にお金はない,上級政府がやるべきことは少ないけど,下級政府がやるべきことは多い,というふうになります。

ある推計によれば地方政府は45%の予算財政能力で75%の事務を背負っている,といいます(下の参考文献)。財力と権限がアンバランスな状態です。

(3)もたらされた弊害

地方政府にお金がなく支出圧力はあるという状態は,地方政府をしてお金の調達に走らせます。これがいわゆる土地財政への過度の依存です。

これはよく言われることなので,ここではおいておいて,もう一つ重要なのは,財政移転支出の増加です。つまり中央財政や主管部門から目に見えない金の流れが発生するということです。

財政移転支出には一般性の財政移転と特定目的やプロジェクトへの財政移転があります。前者は日本でいう地方交付税(ひもなし),後者は国庫交付金(ひもつき)に近いものです。

会計監査報告によると,42%のお金が各級財政や主管部門の口座に残ったままであるし,2%は虚偽流用されているといいます。またサンプル調査では23%のプロジェクトは実施がされていないか遅いままです。つまり特定目的の財政移転支出は一旦できあがるとそのままになってしまい,絶対に必要なプロジェクトでなかったりします。お金を出す方も受け取る方もずぶずぶの関係になり,腐敗の温床になりやすいですし,なにより税の効率的な利用につながっていないという問題があります。

(4)現在の改革方向

第12次五カ年計画間の大きな改革の方向は,中央のやるべきこと(事権)を増やして,地方のやることを減少させ,地方の財政を強化することです。中央政府は公共基本サービス(失業や年金,健康保険)などの責任を持つようにして,全国のナショナルミニマムを補償すべきだということになっています。

また財政移転支出についていえば,国庫交付金のような特定プロジェクト型財政移転支出を減らして一般性財政移転にして,民生,教育,福利厚生,などへの支出に利用できるようにすることが期待されています。

でも地方財政の強化では??となるような改革方向です。営業税の増値税改革が進められていますが,営業税は地方税の柱です。これを中央の増値税に変えていき,中央に入れる,あるいは増値税を中央・地方の共有税にして調整するという方向です。一般性の財政移転支出が増加するのであれば地方財政も強化されるのでしょうが,これも中央集権的な財政システムへの方向であることは疑いありません。(ただし重慶と上海で試行されている不動産税がどう展開されていくかによって、地方税の柱になる可能性も)

その意味では,地方の財政と事権(やるべきこと)を減らして,中央が負担していくという一種の大きな政府の動きのようにも思えます。


<参考>近年の財政改革の歴史

 2001年 国庫単一口座体系を基本とした国庫集中収支制度の試点を実施,2011年には全部の中央予算単位,全部の一般予算,政府性基金,国有資本経営予算資金を国庫に集中させた。

 2006年 農業税の廃止
 
 2009年 増値税の改革,製油の税費改革
 
 2011年 中央各部門の予算外収入を全部予算内管理に

 2011年 個人所得税の控除を月2000元から500元に引き下げ


<参考文献>
「財権要与 事権匹配」『光明日報』2013年8月27日(http://news.12371.cn/2013/08/27/ARTI1377547682298630.shtml
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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