2016年08月09日

新しい都市アジェンダ‐World Cities Report 2016

昨年、国連で「持続可能な開発目標(SDGs)2030アジェンダ」が採用されました。2001年に策定されたミレニアム開発目標の後継です。

都市人口が世界の54%を占めるようになった現在、そのSDGsを到達するために重要な役割を持っているのが都市です。都市開発においては、1996年イスタンブールでHabitat IIが開催され、今年はその20年目という節目になりました。今年10月にエクアドル・キトでHabitat IIIが開催され、新しい都市アジェンダ(A New Urban Agenda)が採択される予定です。

その下準備ともいえる資料が、World Cities Report 2016です。都市計画・政策の重要性が主張されています。

参考資料(要約)

World Cities Report 2016
(Quick FactとPolicy Pointsを整理。)

第1章 HABITAT IIからHABITAT IIIへ:都市発展の20年
現状
世界の都市地域は20年前の時よりもさらに巨大な課題と挑戦に直面している。

都市は経済、社会、文化、生態という面で運営されており、それらは20世紀の都市モデルとは大きく異なってきている。

過去20年間の恒久的な都市問題は、都市の成長、家族構成の変化、スラム人口の増加、非正式な定住、そして都市サービスの提供である。

それに関連して、都市統治と金融の中で新たなトレンドになっている問題がある。それらは気候変動、疎外と所得格差、治安の不安定、国際移民の増加などである。

政策
きちんと運営されると、都市化は社会と経済の進歩そして生活の質の改善につながる。

現在の都市化モデルは多くの点で持続不可能である。

世界の多くの都市が都市化にともなう挑戦に準備できていない。

新しいアジェンダはこれらの挑戦に効果的に対応でき、都市化が持ち込む機会を最大限利用できるものでなければならない。

新しいアジェンダは都市と人の定住を促すべきで、それらは環境持続的で、回復力を持ち、社会包摂的で、安全で暴力がなく、経済的には生産的なものでなければならない。

第2章 変化を起こす力としての都市化
現状
この20年間、都市は生産、イノベーション、貿易の経済プラットフォームとして台頭してきた。

都市地域は、フォーマルであれインフォーマルであれ就業機会を提供し、新たな民間部門での仕事を生み出してきた。

都市化は生産性の向上、就業機会、改善された生活の質、そしてインフラやサービスへの大規模投資によって何千万もの人々を貧困から救い出してきた。

都市化の変化を起こす力は、一部情報通信技術の発展に負っている。

政策
都市は、持続的な経済成長、発展、繁栄をもたらし、またイノベーションを生み出す積極的かつ潜在的な力を持つようになっている。

都市化のメリットを実現するには、都市の成長をどのように計画し、運営するか、そして都市化の便益をどのように平等に分配するかという点にかかっている。

部門介入から戦略的都市計画へ、そしてより包括的な都市政策プラットフォームが、都市を変えるのに重要である。

情報通信技術が偏って利用される時、デジタルデバイドが発生する。それは不平等を生み出し、情報につながっている裕福な人々と、情報サービスが受けられていない貧困層が共存する形となる。

第3章 住宅の運命
現状
この20年間、住宅事情は一国でも国際でも開発アジェンダの中心ではなかった。

実行可能なアプローチとして採用されてきた住宅政策は、適切かつ手の届く範囲での住宅建設を促すことはなかった。

政府がもっとも関わってきたのは、購入が可能な中産階級層のフォーマルセクターにおける住宅購入だった。

スラム問題は、発展途上国における都市の貧困問題の中心であり続け、全途上国のスラム居住者の割合は1990年から減少しているが、絶対数は増加している。

政策
都市の未来が持続可能なものとするためには、住宅を都市政策の中心におく新たなアプローチが必要である。

UN-Habitatは、持続可能な都市化を達成するために住宅に焦点をあて、新たな都市アジェンダの中心に住宅を置くことを提案している。

国家レベルでの目標は、住宅を国家都市政策に、そしてUN-Habitatが考える計画された都市化の戦略思考に組み入れることである。

地方レベルでは、住宅は、適切な日常のフレームワーク、都市計画とファイナンスの中で、人と都市の発展の一部として扱われ、強化されるべきである。

第4章 広がる都市格差
現状
今日の世界は20年前よりも不公平になっている。世界の75%の都市が20年前よりも所得格差が広がった。

歴史的に都市のダイナミズムとしてとらえられていた、多様な個人の能力、文化背景の機会は多くの地域で停滞している。

今日の多くの都市が、持続的な空間を物理的にも提供できておらず、市民社会、社会経済そして文化的領域のすべてにおいてそれが提供できていない。

隔離された形で低所得の非熟練労働者が空間的に集中しているという事実は、雇用の制限、ジェンダー不均衡、悪化する生活条件、社会的な疎外や限界、高犯罪率という貧困の罠として機能している。

政策
都市はイノベーションの場所である。新しい経済的なアイデアが結晶し、異質な集団が近隣として共存するスペースである。

都市の異質性、高密度、多様性は経済イノベーション、民主的な進展につながり、そのため計画され、管理されるべきであろう。

都市の市民空間から疎外されているという課題には、「都市での権利」や権利志向型アプローチで向き合う必要がある。

Habitat IIIはまさに包摂的な都市への国際的なコミットメントを新しくする時となっている。

第5章 「正しい」環境持続性
事実
2030年までに、世界のエネルギーと水需要はそれぞれ40%、50%増加すると予想されている。

固体廃棄物の処理では、低中所得国の地元政府の年間予算の30%から50%を占める。

都市では、熱波、深刻な降雨や干ばつにみられる気候変動がそれぞれの現象を混ぜ合わせ、災害危機管理をより複雑なものにしている。

極端な出来事に直面して、都市はより公平な環境に貢献できるよう、回復力をもった斬新な方法が必要であることをますます理解するようになってきている。

先進国は途上国に対して気候変動を和らげる金融支援を行っているけれども、この全地球気温が上昇し続けるならば、それは及ばなかったことになる。

政策
都市環境に対する人権志向型アプローチは、完全で豊富な資源に普遍的に依存していることを強調している。

「正しい持続可能性」という定義を都市計画や政策の主流にするには、現在優勢で、時代遅れの先入観に挑戦し、具体的な地域の生態学的制約を考慮していく。

新しい計画アプローチは環境活動への幅広い金融支援を提供し、ただの経済評価を超えた価値ある貢献を認識できるようになっている。

各レベルのガバナンスアプローチを強化することは、低炭素都市になること、将来の都市回復力をを上げることの必要条件である。

第6章 ゲームのルール:都市ガバナンスと立法
事実
多くの国で地方分権化を進めているが、一般的にHabitat IIで目指したものには到達しなかった。

非効率と実行不可能な立法改革は、「普遍性」へのこだわりの反映であり、海外の「ベストプラクティス」の導入は現場の状況を無視したものであった。

発展途上国や移行国の計画規則はしばしば詳細過ぎて、柔軟性がなく遵守するのが難しいので、人々はそれらをすり抜けてしまおうとしてしまう。

地元の詳細な情報に基づいた公共政策を行う行政能力と説明責任が、地方分権には必要であり、それが経済発展に貢献する。

政策
良質の都市法律は、投資、強い経済パフォーマンス、富の創出に貢献する。それは予測可能性と都市開発の秩序を指し示すからである。

効果的な地方政府のガバナンスは、参加型サービスの提供計画、予算、管理とモニタリングの上に成り立つ。一旦、適切な法律的な権力、適切な予算措置、人の能力が与えられると、変わるべき課題を動かすことができる。

成功した法改正のための重要な要素は、信頼性である。法律は文化的に共鳴し、強制力のあるとき信頼性が向上する。

基本的かつ本質的な法律、そして強制力のある派生的な立法への焦点が、持続可能な都市開発に最も効果的なサポートを提供する。

第7章 計画する都市:都市計画の再発明

事実
今日、世界の多くの都市は依然時代遅れの計画モデルに依存している。計画を中心におくこと、それが持続可能な都市開発を達成させることができる。

世界中の都市は、拡大しつつあり、そのため密度が大幅に減少してきている。発展途上国では、2000年から2050年の間に、年間密度が1パーセントずつ減少し、結果、都市部の土地面積は4倍になる見込みである。

ほとんどの都市の計画の枠組みは、ジェンダーに配慮されていない。その結果、女性は、多くの場合、計画プロセスと意思決定の外にある。

計画能力は、発展途上国の多くで不十分だ。ナイジェリア、インドでの都市計画プランナー人口10万人あたりそれぞれ1.44と0.23であるが、英国では、38人いる。

政策
統合された他部門の計画アプローチは、強力な成功体験がある。したがって、より多くの都市で採用されるべきであろう。

地方の状況、ニーズと要求は都市計画の最優先事項であるととともに、多様化する人口への対応としてジェンダーへの配慮と参画が必要である。

計画は、様々な地理的スケールで用意され、持続可能かつ協調的な道路、乗り換え、住宅、経済発展、をサポートするために統合されるべきであり、土地利用は地形的政治的境界を超えて実施されるべきである。

途上国では、教育とプロのプランナーの訓練を増加させ、計画教育の能力を向上させなければならない。

第8章 変化する都市経済のダイナミクス
事実
メガシティと大都市圏は、二次都市よりもグローバル化からより多くの恩恵を受けている。

不十分な都市インフラとサービスが最適な資源配分を可能にする経済成長や活動を妨げている。

集積のメリットは、欠点を補う傾向にあり、不経済を適切に管理するための資源を提供する。

フォーマルな雇用は、急速な都市化と並行して成長しておらず、そのため都市の社会的、経済的不平等を悪化させている。

政策
都市の計画と経済発展政策との間に関連をもたせ、政府のあらゆるレベルにわたって統合されなければならない。

官民パートナーシップ、土地税及び使用料を通じて都市の財政を強化すること、国と都市政府間のより公平な財政協定を発展させることは、持続可能な発展のために不可欠である。

責任の所在がわかるように地方分権化のための法的枠組みを提供することは、都市のガバナンス構造を改善するために不可欠である。

経済発展に都市政策をリンクすることは、競争力と地域経済のパフォーマンスを向上させるために重要である。

第9章 新しい都市アジェンダへの原則
事実
人口増加を予期して新たな都市部の出現と都市部の拡張は、それ自体で、前世期に世界が輩出したものよりも、多くの排出を引き起こしている。

この20年間の都市部での密度の減少は、人口統計と空間的拡大がともに協調していくことを示している。密度の低い都市は、より高いインフラストラクチャのコストをもたらし、モビリティを悪化させ、かつ農地を破壊する。

都市の新たな未来へのダイナミクスは、新しい都市の形、人々の新しい幸福な行動、行動や資源利用の新しいパターン、新しい機会とリスクの結果である。

豊かな国と貧しい国のどちらにおいても、経済と人口統計の重要性が増加しているにもかかわらず、都市の役割は広く理解されておらず、グローバルに政府や公式な場できちんと認識されていない。

政策
公共の利益が基本原則として考慮されなければならず、それによって都市部に影響を与える政策や行動が判断されるべきである。

新しい都市アジェンダが1国の政策で重視されないと、都市の将来は、生産性の低い、より不平等で、より気候変動の影響を受けやすく、貧困層の生活水準は低いままになりかねない。

ハビタットIIIは、持続可能な開発目標の下で包括的で上りゆく未来を示す地図となる。

戦略的・政策的思考で大きな変化を導く一連の原則は、その人権、法の支配を確かなものにするために提示され、公平な開発と民主的な参加こそが新たな都市アジェンダの要諦でもある。

新しい都市アジェンダは、部門ベースのアプローチを越えた一連の実行可能戦略に基づいてなければならない。地域の特異性は、信頼できる新しい都市アジェンダの策定のために考慮されなければならず、問題指向型であり、プログラムされたもので、そして実用的でなければならない。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育研究活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/440860155
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック