2017年07月04日

中国の都市伝説

留学生らと話していて,ふと気がついたことがある。それは彼らの中に

「中国の製品は三流である。例え中国製品(Made in China)を認めたとしても,一流品は海外に,二流品は北京,上海などの都市部に,三流品がその他国内に出回っている。」

という考えが染みついている。

これが本当かどうかはわからないし,ただの都市伝説といってしまえばそれまでだ。

でも,都市伝説といってはねつけてしまっても,このような「思いこみ」が彼らの消費行動に影響を与えているのは確かなようだ。

「爆買い」を支える一つの根拠にはなっている。

これを検証した論文があるのかどうかわからないけど,さまざまな中国製品(ただしブランドは海外ものだったりするが)が世界市場にあふれていることをみると,十分技術的には高く,いい物を生産しているように思う。

ちなみにググってみたらこんな記事があった。どうも中国人自身が中国市場での製品に信頼がないのかもしれない。

「日本は三流品を中国に輸出している?「いや、それはデマだ」=中国報道」
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2017年05月30日

中国人留学生の発言

メリーランド大学での一留学生のスピーチが波紋をよんでいる。



流れはこうだ。

彼女がアメリカに来て新鮮な空気を感じた、表現の自由は素晴らしいなどと発言。この発言について、中国国内、アメリカの中国人留学生から叩かれるととともに、中国政府も各個人は発言に気をつけてもらいたいと注文をつけた。

スピーチした本人は、祖国を貶める意図はなかったと謝罪。しかし国内、国外からの彼女への非難は続きそうだ。

スピーチ自体は一学生の感想に過ぎないと思うのだが、感じたことは二つ。

一つは、中国政府の発言の自由に対するコントロールは「国境を超えている」。これはインターネットの発展という要因もあるけど、海外に出て行っても中国人の発言は中国政府の耳に入ることになる。政府と違う意見を持っても、やはりそれは尊重されるべきだろう。でもこの一件で海外にいる中国人は政府と違う見解を持ちにくくなるかもしれない。

そもそも多くの中国人は在外大使館の意向を気にしているふしもある。当該国でデモを行う際にも、当該国の当局に申請するのはもちろんだが、大使館にも連絡しているようだ。とくに大学が招へいする台湾、チベットの要人に対しての反対抗議活動などは大使館が後押ししているようにも見える。

もう一つは、社会の同調圧力はアジアの共通点だ。個人の気持ちよりも社会の考えが優先されることがある。とくに愛国はそれに使われやすい。アジアは列強から支配された経験があり、どうしても西洋列強諸国に対してコンプレックスがある。中国も日本も西洋人が自国文化を褒め称えることがあると、ことさらそれを強調して報道することがあるし、日本でも日本人が海外で自国を貶めるような発言をしたら、同じように日本好きな人たち(愛国者)からなじられることになるだろう。愛国は同調に使われやすい。

それに加えて中国にとって「愛国」というのは政府支持を示す政治的にも重要な態度だ。この記事にもあるように中国国内国外の中国人コミュニティはまるで文化大革命時の「紅衛兵」にも見える。大陸出身の中国人はつねに中国人社会において政治的忠誠心を互いに監視することになっているようにも思える。つまり政治的忠誠心は社会同調圧力の主要な原動力になっている。

個人の自由な感想を持つことを、政府ではなく社会が許さないのである。政府だけでなく社会まで個人の発言を監視するようになったら、これは生きづらいと思う。

The new Red Guards: China's angry student patriots
http://www.bbc.com/news/world-asia-39996940
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2017年05月18日

一帯一路サミット

北京で「一帯一路」サミットが終了して,どのような成果があったのか,South China Morning Postの報道が簡潔にまとめてくれていたので,簡単に紹介。

1.次回の一帯一路サミットを2019年に開催する。次回の開催までに協議委員会と連絡事務所を準備していくという。

2.国際貿易推進として,国際輸入博覧会を来年開催し,海外製品の中国市場参入を促進する。北京は一帯一路国から次の5年間で1000億USドル分の輸入をするという。

3.習近平は新シルクロードのための基金に100億元追加すると発表。中国開発銀行や輸出入銀行も250億元,130億元の貸出枠を設定する。また中国は次の3年間沿線各国の貧困削減に60億元を拠出するという。

4.全部で68の国と国際機関が一帯一路に関する契約に調印したという。270以上の協力プロジェクトや契約がこのサミット期間に調印されたという。ただし詳細は習近平のスピーチでは触れられていない。

5.中国は異なる国に対してただよう疑念を払拭する必要がある。アメリカ,日本は一帯一路構想に疑問を投げかけており,インドは中国パキスタンの経済回廊に関する紛争のため代表団の派遣を見送った。またフランスやドイツ,イギリスは貿易に関する宣言に調印していない。これらの国々はこの構想が政府調達や社会・環境基準がどうなっているか不透明だとしている。

<参考>
South China Morning Post, Five things to watch as China’s belt and road plan unfolds, 17 May 2017

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2017年05月02日

東アジアにおける中国のプレゼンス

最近、北朝鮮問題で東アジアの安全保障が揺らいでいる。

北朝鮮の瀬戸際外交にアメリカの堪忍の緒が切れようとしている。これまではアメリカは北朝鮮に対し静観あるいは無視という方策だった(ブッシュ政権時に「悪の枢軸国」として指摘した以外は)。

トランプ政権に代わってから、シリアへの介入をはじめ、アメリカの態度も変わりつつある。このため、今がおそらく第二次大戦後の時期で、もっとも東アジアの安全保障が不安定になっている時期だろう。

よくも悪くも現在の北朝鮮、米国の緊張を和らげるのは中国しかない。安保理の北朝鮮決議に賛成も示し、エネルギー(石炭)の支援も切り始めた。中国もアメリカと歩調を合わせているかのようにも見える。中国が、圧力と対話で、北朝鮮とアメリカの緊張緩和ができれば中国のアジアにおける安全保障プレゼンスは上昇する。

しかし、基本的に中国の対韓半島への政策は冷戦時代と変わらない。米国支援の統一韓半島よりは核開発で暴れる北朝鮮の方が中国にとっては都合がよい。しかし、一方で経済関係は米国、韓国は欠かせなくなっており、その上北朝鮮の軍事エスカレートは日本の右傾化可能性もあるので、このままの北朝鮮政策を見直す必要に迫られているのは確かだろう。

北朝鮮への圧力はその変化の兆しだろうと思う。

一方で対話も強調しているので、もし中国がこの緊張緩和に成功したら、東アジア安全保障面で中国のプレゼンスは非常に高まる(これが日米が望んでいるかどうかは別にしても)。

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2017年04月25日

恵投御礼

執筆者の方々から昨年度以下の本をご恵投いただきました。



本書の特徴は,中国の勃興を追いつつ,「アジア・コンセンサス」というものを提示しようと試みているところです。



本書は,近年指摘されるようになった中国の二重の罠(中所得国の罠と体制移行の罠)の枠組から中国の今後を考えるものです。

執筆者の方々に感謝申し上げます。
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2017年03月21日

アジア太平洋地域のメガ市場統合

中央大学経済研究所の成果として以下の本が出版。




私は

「第7章  中国の都市化と経済成長へのインパクト」

に寄稿しました。
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2017年03月14日

高福祉国(北欧型)になる条件とは?

デンマーク(コペンハーゲン)、スウェーデン(エルムフルト、ストックホルム)を駆け足で出張して来た。

仕事以外でちょっと感じたことを備忘録として。

北欧は高福祉国として有名だけど、それが成り立つ条件というのがありそうだ。

1)高税金負担
高福祉の財源として、税金、社会保障費の徴収が必要。税金支払いに対して不快感を持たず、高税率に不満を持たない。(なお社会保障は企業負担)

2)国民総背番号制
徴収率を上げて福祉を効率的に分配するためには国民全員の所得等を透明にする必要がある。

3)政府への信頼
税金が無駄なく使われているという安心感、そしてそれが自分に跳ね返ってくるという期待が存在する。それに加えて政治家は清廉であり、少ない給与でも人のために働いていることに喜びを感じている人が選ばれているという信頼。

4)愛国心
徴兵制も含めて国を良くするためには自分も社会に貢献するというボランティア精神が強く、それが高福祉にもかかわらず社会貢献としての勤労意欲につながる。

5)個人と社会の絶妙な関係
働き方が多様であり、個人の都合(嗜好や事情など)を優先しつつ、それを職場や社会と共有する。職場も社会もそれに強く関与せずそれを認める。

感想として日本(もちろん他国も)では難しい。

1)政府に対する信頼はそう簡単に醸成されない。
2)子どもの入学式で休んだ教員が非難される社会で、安心して自分のプライバシーを社会と共有できない。
3)同様に職歴、収入、福祉などを社会に透明にさらすなどは日本にはできない。(北欧では情報がさらされるから高福祉に甘んじて働かないという選択ができないという事情もある。)

高福祉国、つまりある種社会民主主義って個人と社会が情報を強く共有しないと無理なんじゃないかなと思う。いやらしく言うと、相互監視しつつ、個人に干渉しないという絶妙なバランスが必要。卑近な例で言うと、町内の人は各世帯の状況を共有していて、町内会長は清廉な人なので安心してプライバシーを晒し、大好きな町内のためには一生懸命働きつつ、困ったことがあったら助けてもらえるという感じだろうか。

このような社会制度ができるには経済学的には初期条件が大きく効いているような気がする。

北欧という人口が少なく自然環境が厳しい中で、助け合いが必要だったというのもあるかもしれない。例えば、協同組合という考えはイギリスで生まれたけど、デンマークでは早くから農協が発達したらしい。こういうところから相互扶助(逆に言えば相互監視)が発達したのかもしれない。

このような条件がない他の資本主義国で、高税金高福祉をやると企業にとっても消費者にとってもやりにくいと思う。
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2017年03月06日

北アイルランド

中国的には全人代開催中なのですが、関係なく、イギリスネタで(笑)

私が高校、大学生の頃にちょこちょことニュースでアイルランド紛争が報道されていました。その後世界は、天安門事件、ベルリンの壁、アイルランド和平と激動し、その90年代前後を体験できた世代です。

世界で話題になった場所にいっておきたいと思って、2月後半にベルファスト(北アイルランド首都)にいってきました。

ベルファストは、造船、航空機部品等を中心とする重工業都市です。タイタニックもここで作られたようで、タイタニック博物館があり、当時の重工業の発展ぶりが感じられます。

taitanic.jpg

またベルファスト中心部から数マイルいったところの郊外にシャンキル(Shankill)という地域があり、そのあたりが北アイルランド紛争の場所になったようで、たくさんの無実の罪で亡くなった人のを弔うように壁に絵が書かれていました。

Peace Wallというのは、北アイルランド紛争を避けるために、居住地域を分けた形になっています。カソリック(Republican)とプロテスタント(Royalist)を分けていた壁で、ここもたくさんの平和を祈る壁画が描かれていました。

Peace Wall.jpg
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2017年02月14日

議会制民主主義

イギリスが議会制民主主義の発祥の地ということで、Parliament見学に行ってきました。

議会の発祥は、国王が力のある地主たちに相談を始めたということにあるようです(1066年のノルマンディー公の頃)。その後、国王が勝手に権力を悪用して地主たちに課税したりしないように約束させたマグナカルタ(1215年)以降、地主たち(Barons男爵)が政治のことを相談するようになったのが議会という形になってきました。

(その名残が現在の貴族院。ただし貴族院は現在大部分が一代かぎりで、社会に貢献した人(称号をもらった人など)が任命されているようです。でも無給。)

その後、国王の権力は低下していき、イギリス内乱とその後のチャールズ1世の処刑(1649年)で王政が一旦終了し、共和国になります。その後チャールズII世が王政復古を果たし、1688年の革命でウィリアムIII世率いる議会派によって議会制がほぼ完成しました。

現在も、形式は国王(女王)と議会で政治をすすめることになっています。実質は内閣が国王に代わって政治をしています。

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2017年01月31日

中国は民主化するのか?

久しぶりにChina Instituteの講演。

Democratizing China: Insights and Lessons from history
Prof. Minxin Pei (Claremont McKenna College, USA)

刺激的なタイトルです。直球で中国の民主化を論じています。

備忘録として。
・どのように民主化が行われるのか。政権崩壊、社会圧力、外部からの影響の3要素がからみあう。一つの要素だけではレジーム交代は説明できない。
・社会圧力は3つ。社会能力の向上(物質的豊かさなど)、社会的な緊張(不平等など)、実行レベルの法律の崩壊(社会不安定、成長の停滞)。
・どのように中国は歴史と比較するべきか。社会の能力、中所得国の罠、政権の寿命の3点からみる。
・(1)社会能力。1人当たりの所得と自由民主国との相関は高い。レジーム転換リスクと所得は逆U字の関係。中所得国のリスクは高い。中国より所得が高くて自由がないのはほとんどが産油国。(産油国は税金を課さなくてもいいので独裁体制を維持しやすい)しかし選挙民主国になった国の年はさまざま。教育レベルからも、転換ゾーンにはある。
・(2)中所得国の罠。罠を抜けでた国は13か国。その中に独裁体制の国はない。スペイン、ギリシャ、ポルトガル、韓国、台湾などは民主化した。
・(3)政権には寿命がある。軍事政権はもっとも短い、一党独裁がもっとも長い(70年ほど)。中国はもうすぐ寿命に来る。
・一党独裁が次の10年まで持つかどうかだ。根拠として(1)2000年以降急激に大学卒業生が増えている。一党システムがこのグループに職を提供できるか。(2)レジーム転換した国の都市化率平均は60%程度。(現在中国は55%程度)(3)クリスチャンの人数が増えている。(4)増加する年金生活者を支えられるか。すでにキャッシュフローとしては支えられなくなってきている。(5)ヘルスケアのGDPシェアも増加している。
・政権崩壊の可能性は3つから観察される。支配層の汚職、権力闘争と団結の喪失、抑圧コストの増加。
・しかし、外部環境をみると、トランプが現れるなど、民主主義への信頼性の低下は中国共産党にとって短中期的な追い風でもある。
・もし政権が変わるとして・・・3つの古典的選択がある。改革(政権側による転換、タイミングが重要。)、革命(軍隊と支配層の分裂)、改革と革命(Refolution-reformとrevolutionの造語)(改革の遅れと革命を引き出す、旧ソ連のケース)。
・政権側が民主的な制度を導入することがなければ、Refolutionになる可能性がある。

感想
これまで共産党に代わる政権担当能力のあるグループが存在しない中で、政権転換があるとは思わなかったけど、中国共産党の中で派閥が現れると、闘争ではなくなにかしらのシステム(選挙等)で民意を問う必要があるかもしれない。

大変面白かったです。

報告者の最近の成果はこちら。

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2017年01月17日

財と人の移動

イギリスのEU離脱の方向がだんだん見えてきました。

これまで、離脱にあたっては、相反する命題

移民コントロールとEU統一市場へのアクセス

をどれだけ確保するかが、現政権の課題でした。

EU側の強い交渉態度(人の移動をコントロールするのに、財の自由な移動を認めろというのはけしからん)により、イギリス側はEUへの統一市場へのアクセスを手放さなければならない、つまり自由貿易地域からイギリスは出るということになりそうです。

イギリスの人口は6000万人弱です。高齢化が進んでおり、市場規模は拡大する見込みはありません。一方EU市場はイギリスを除いても5億人あります。中には東欧のようにこれから発展していく可能性のある国もあるので、市場の将来性は大きいです。

イギリスはこのEU統一市場から出ていくことになります。財、サービスの取引に関しては自由な取引はできません。その分、関税やらサービス規制などでイギリスはEU市場アクセスにおいてハードルが高くなります。

一方でイギリスは移民問題のコントロールを手に入れることができます。EU統一市場では、多くのEUの人々がイギリスに職探しに来ましたし、実際、街や学校の清掃、小売り、建設業などではEUからの移民が支えています。彼らがいなくなるとイギリス経済は回らなくなりますが、彼らの帰国を求めることも可能となります。(実際には不可能だと思う。)

アジアでの自由貿易協定は人の移動以外の協定です。アジアでも財、サービスの貿易が進み、さらに人の移動の自由化を進めると、財・サービスの統一市場は欲しいけど、雇用に影響のある移民は困るという同じ問題が発生するでしょう。

とはいえ事実上、東京にも多くの外国人が働きにきています。上海で就職している日本人も多いです。今後都市間で国際的な人材獲得競争が激しくなってくるとともに、自由貿易と人の自由移動は、人の国籍に対する排他的な感情も重なって、経済的な問題というよりも感情的な問題になっていくように思います。

参考
Theresa May to say UK is 'prepared to accept hard Brexit'
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2017年01月09日

ロンドン地下鉄のスト

1月8日の午後6時から24時間のロンドン地下鉄ストライキが始まりました。

私が学校を卒業して就職してから公共交通機関のストの覚えはないので、かなり珍しい現象に直面したことになります。

ロンドン地下鉄労組(実際には2団体の連合のようですが)と市政府の争点は、ボリス・ジョンソン(前市長、現外務大臣)時代の人員削減と切符売り場の閉鎖です。これにより職を失う職員もさることながら、大量の人員輸送を行う現場にとって、安全が保障できないという主張です。

日曜日に最終交渉が行われました。報道によると、800の人員削減に対し、150を撤回する、しかし切符売り場の閉鎖はそのままというロンドン地下鉄側の提案に労組側は不服。結局、ストが始まりました。

今日は一日ロンドンは混乱しそうです。

http://www.bbc.co.uk/news/live/uk-england-london-38529140
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2017年01月03日

都市に必要なもの

日本のニュータウンの疲弊や中国のゴーストタウンの問題を見ていると、共通点があるように思います。

それは短期間に一度に多くの建物(住居地)を建設したものの、そこに職がないというのが非常に大きいです。日本の場合は鉄道で都心とつながっていたからすぐにはゴーストタウン化しませんでした。でも中国の場合交通機関の発達はあとで来るので、それがないと自分の交通手段(車や自転車等)で通勤しなければなりません。結局、通勤場所との近接性こそが街として発展するかどうかがかかっています。

でも新しい街はきれいです。フランスの都市計画家ル・コルビュジェが合理的な集合住宅を提唱し、世界中のニュータウンに影響を与えました。コンクリートや鉄筋で高層、近隣には公園を配置したりと現代的な住宅として非常に魅力的でした。でも失敗しているケースがあります。それは、仕事終わった後に帰りにくい、あるいは結構歩くという問題です。

つまり職住接近こそが街の発展としてとても重要なのです。

それが永続的に発展するにはどうすればいいのでしょう。それは多様性です(ジェイコブズ)。町が町として機能するには、職住の近接性に加えて、職の多様性、エンターテイメントの幅が広く、そしてモザイクのように交じり合っているほうがいいのです。機能性、効率性を都市計画に入れて、この区画は住居、この区画は文京区のように分けてしまうと町が単調になり町としての魅力がなくなります。

多摩ニュータウンができても、仕事は都内に求めればいいというのが東京の状況でした。青島(チンタオ)の旧市街地ではなく、フェリーで渡った開発区に新しい住居を立てて、企業を呼び込むというのはどの都市でも見られました。

でも結局、東京の下町や青島の旧市街地の方が魅力があります。それは職があり住がありエンターテイメントがあり、それが入り乱れているので、町として「歩かなくても」なんでもできるのです。

千葉ニュータウンはいろいろあって40年かけて開発してきました。職の問題は千葉県企業局も早く気がついたので、物流企業を中心として誘致をすすめてきました。職と住の融合は千葉ニュータウンの重要な課題です。なぜなら北総線が他の路線より圧倒的に高いからです。

また幸いなことに土地の収用に時間がかかり、時代の流れとともに規模を縮小してきたので、場所によって入居年代が違います。幸いなことにこれで年代別の多様性は残ります。そしてエンターテイメント(それでも外食とショッピング程度)を導入してきています。あとはモザイク性なのですが、都市計画によってばらばらに分けられており、自動車がないと不便です。結局、高齢化すると移動に不便が出てくるので、今後の高齢化社会においては、新市街地(ニュータウン)よりも旧市街地(都内)の方がいいということになります。



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2016年12月13日

なぜ日本は長期的な経済低迷なのか?

12月7日に中国とは関係ないけど、気になっていたことがセミナーであったので、参加してきました。

Japanese-style long-term recession - the future of the world?
Prof Richard Werner (University of Southampton)

日本の長期的な低迷は世界経済の将来か?というテーマです。日本でも翻訳本が結構出ていますが、関連ではこれでしょう。



2年前に映画化もされているようです。



主張は、中央銀行の力は強く積極的な介入が功を奏する、具体的には、バブル崩壊は中央銀行の窓口指導の間違いであり、長期低迷は中央銀行が信用創造を何も行っていないからだというものでした。

以下備忘録として。

・アベノミクスの三本の矢(財政、金融、構造改革)+軍事化
・長期低迷のきっかけ
1991年に世界のトップ銀行は日本だったし、名目成長7%、金利も6.25%だった。
・中央銀行理論(ウェルナー)では成長を決めるのは利子率。「利子率が低ければ成長を促し、利子率が高ければ成長を遮る」=>実証研究がない 実証してみると結果は・・「成長率が高いと利子率が高い、成長が低いと利子率が低くなる」利子率は成長率の結果であるので、中央銀行理論は間違い。
・なぜ中央銀行は間違えた理論を信奉するのか?何が成長率を決めるのか?
新古典派「市場は効率的である。ゆえに価格(利子)が重要。価格が量の調整をして均衡を決める。」ただし情報の完全性、完全競争、瞬間的に価格が調整、などが保障されればそうなるが。。。現実は市場はクリアではない。
・市場は「量」「short-side principle(力が働く)」、Moneyはサプライが決める(貨幣需要には際限がない)
・貨幣はどこから来るか?中央銀行だというが実際には3%だ。答えは民間銀行だ。民間銀行はお金を貸すのではなくお金を創る。銀行は仲裁機能ではなく貨幣を創る?実証研究はYes
・信用(credit)の量理論。
銀行の信用創造(credit creation貨幣創造)がどこに配分されるかで成長かそうでないかを生む。消費信用に配分されると、成長はなくインフレになる。金融信用はGDPにはなんの貢献もなく、資産インフレ、バブルを生む。投資信用は新しい製品やサービスを創る(=>productive credit creation)。
・金融取引での信用はブーストと破滅を生む。したがって中央銀行は銀行信用を操作して経済を管理すべきである。中央銀行へのインタビュー結果、公式の政策ツール(価格、量など)を使わず、銀行の負債を指導(窓口指導)する。実証でも窓口指導と銀行融資は相関が高い。つまり中央銀行がバブルを創った原因。与えられた枠組みで貸し出しを続けた。銀行信用供与の指導が成長を支えてきた。もちろん日本だけでなく世界的に似たようなことは行われている。
・91年以降停滞に入ったあと、なぜ日本銀行は何もしなかったのか。90年代は介入よりも構造変革を待っていたところがある。金融政策では何もできないという立場だった。
・バブル崩壊後、日本は簡単に、コストかからずに素早く問題を解決できたはずだ。1945年の金融危機と1991年と比べてみても小さい。違いは中央銀行の政策だ。1945年時には不良債権を買い取り、直接企業へ融資を行い、窓口指導で融資枠を広げていった。
・日本銀行は20年以上銀行信用(Bank Credit)を増やすことをしなかった。量的緩和も本当の銀行信用を増加させるものになっていない。
・理論では「市場が成長を生む」現実は「日本は規制緩和するほど成長がだめになる」実際にカルテルの数が減ると成長率が下がっている。
・人口問題も解決する必要がある。ロシア、オーストラリアはBaby Bonusを導入。それで出生率が回復。重要な中央銀行の必要なものは、Baby Bonusという量的緩和だ。
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2016年11月29日

世界の貿易システムの将来

11月21日に自由貿易に関するフォーラムに参加。

"Mega-regionalism" and the Future of the Global Trading System

Michael G. Plummer (Director, SAIS Europe and Eni Professor of International Economics: The Johns Hopkins University)

以下、備忘録として。

・貿易自体は、職を作り、貧困を解決する。
・Megaregionalsは、WTOの失敗、FTAのスパゲティボール現象、RTAは改善してきた、ということが背景にある。
・ASEANにとって貿易が占める割合はGDPの100%近くにまで上昇してきた。
・APEC21か国その中の12か国がTPPに参加。
・過去の研究では40%から250%の貿易上昇効果があるという。
・TPPでは、関税の撤廃、サービスや投資ではティブリスト方式に、政府購入、デジタル経済のルール化、IPの保護、そして新しく貿易促進策、国有企業扱い、規制の統一化などが入る。
・GTAPデータベース、現在の貿易理論、関税、非関税障壁、貿易合意を考慮したモデルを構築。
・分析の結果、アメリカ、日本が最も利益を得る。%レベルでみるとベトナム、マレーシア、ブルネイが利益を得る。ただしヨーロッパ、その他の国がスピルオーバー効果で利益が得られるにもかかわらず中国がもっとも損を被る。
・アメリカは熟練労働者、日本は未熟練労働者の要素にいい影響がある。
・TPPは重要かつ利益をもたらし、発展のインパクトを最大化する。

・政治的には、Brexitやトランプ現象と同じく企業.が利益を得るだけ(左派)、統治権の侵害(右派)から批判され、中国の孤立化の可能性がある。
・トランプ政権はTPPを破棄し、中国との対立の可能性(中国製品に課税の姿勢)。
・詳細はこのサイトへ→www.asiapacifictrade.org
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2016年11月08日

イングランド銀行

イングランド銀行の博物館に行ってきました。日本銀行の貨幣博物館のようなものです。

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1)イングランド銀行は民間投資家が出資して1694年に設立されました。これはフランスとの戦争に必要な戦費を調達する政府にお金を貸すところからはじまっています。ナポレオン戦争期の1790年代には政府銀行としての役割を持つようになりました。

2)1800年代に国家の銀行としての役割を固め、第一次世界大戦期に国家負債は増え続けるとともに、国家の金保有、外国為替を管理し、金融政策を行う銀行になりました。1946年に国有化されたようです。

3)イングランド銀行は国家の中央銀行として、インフレを低く抑えること(2%を目標としている)、金融システムを安定させることを主な役割としています。

インフレをコントロールするゲームがあるなど、中央銀行の役割がわかりやすく説明しているいい展示でした。

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2016年11月01日

時間をどうするか―イギリスのサマータイムから

ロンドンに赴任してから、なぜか日照時間が気になっています。とくに日照時間を人為的に動かすサマータイム(Daylight Saving Time)を10月30日に経験し、「時間を決める」ことに興味を持っています。

ということで今日は、サマータイムを考えてみようと思います。

サマータイムは日本でも導入が時々議論されます。期待される効果は夜の日照時間を人為的に長くして、経済活動を活発化させることです。

効果についてはまだ議論がありますが、日本に馴染みのないサマータイムについて簡単に整理してみました。

1)歴史

1907年William Willettがイギリス・サマータイムという概念を紹介しました。彼は貴重な日照時間を大事にすべきだいうことを主張し、具体的には4月に4回に分けて80分早め、9月に同じように80分もとに戻すという方法を提案しました。しかし、彼のアイデアは採用されませんでした。

(ただし1895年にニュージーランドの昆虫学者George Vernon Hudsonがこのような計画を提案したことがあります。)

彼がなくなる年にドイツは時計変更方案を作成、1916年4月30日に初めてのサマータイムを導入、イギリスもその後を追って5月21日にサマータイムを導入しました。(第一次世界大戦期間で英独は戦争していた。)

2)議論

サマータイムの支持者は、国内石炭消費量を抑えられる、第一次世界大戦のための製造業生産を増加させられる、と主張しました。

一方で反対意見もあります。エネルギー消費への効果も疑問、健康リスクもあるという意見です。

夜が来るのが遅くなるので、夏のエアコン消費量が増えること(ただしイギリスはエアコン使わないのであまり影響がない)、そして朝は暗くなるので子供たちの徒歩通学が危険にさらされるというものです。

支持者たちは、交通事故が減少し、エネルギー消費が抑えられ、観光業を後押しし、人々の野外活動が増加する、と主張します。1980年代ではサマータイムの導入でゴルフ産業の売上が4億ドル伸びたというデータもあります。


3)時間をどうするか

イギリスの世論調査では、53%の人々が永久にサマータイムにしてしまうことを支持し、32%は時間を変更することに反対しています。

2011年にサマータイムのままにしようじゃないかという方案が議会に出されましたが、通りませんでした。

とくにスコットランドにとっては、時間がサマータイムのままになると9時ごろまで朝の太陽が出てこないことになってしまうので、農業や建設業で影響が出るためです。

イギリスでは過去、時間に関する取組みが試行錯誤されてきました。標準時子午線のある国ですが、一時期は現在の時間よりも2時間早めていたこともあります。

時間をどう決めるか、日本でも『天地明察』という小説にありましたが、別の意味で国のあり方を決める重要なテーマのように思います。

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<参考>
ICYMI, the clocks have gone back one hour in the UK - but why do we have Daylight Saving Time?
The Telegraph, 30 Oct 2016
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2016年10月26日

国民投票以降のイギリスの将来は?

今日は趣向を変えて、イギリスのEU脱退についてのトークに参加して来ました。

Prof Michael Dougan: What is the future for Britain in Europe after the Referendum?

ドーガン教授はリパプール大学でEU法、憲法など法律の専門家です。

スピーチは短めであとはディスカッションでしたが、話の要約を備忘録として。

・これからUKは内部的な挑戦(UK法の改定、スコットランド国民投票など)と外部的な挑戦(例えばアイルランド、フランスにおける国境の取り扱い(注))にある。
・EU条約、UKは加盟国としてずっと特別に扱われていた中で、UKは何が国家利益なのかそれを特定する必要がある。これからの交渉はUKが一国として再定義される過程である。
・脱退過程は、知られているように来年3月UKが通知して、EUが委員会を立ち上げ50条に基づき進められる。前例がないし、途中で気が変わったなんていうこともできない。もし再度EU加盟となるとすべての特例はなくなるだろう。300万人がUKで働いているし、逆もしかりなのでこの取り扱いは難しい。
・脱退が同意されると、移行期の取り扱いが重要となる。得るものがあるわけではない。損失を小さくしていく過程である。
・いい意味では、これまでEU法に縛られていたものがとれる。実際 スイス、ノルウェーは特別にされているが実際にはEUが上にあるので例えば一つのマーケットと言われれば聞き入れなければならない。
・北アイルランドは難しい問題。UKの中でもっともEUの農業補助金を受けているし、政府雇用も多い。

(注)話ではよくわからなかったが、移民管理の特別な措置が行われている模様。
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2016年10月11日

個人の独立(Individualization)

今日SOAS恒例月曜セミナーは、中国の個人がどのように育つかという問題。

Educating the Chinese Individual: Political Ambitions and Processes of Individualization
Professor Mette Halskov Hansen (University of Oslo)

Hansen教授はSOASの卒業生で、そのため現地調査による参与観察によって中国の個人がどのように個人として独立していくか(いわゆるIndividualizationの過程)を分析しています。

そもそもIndividualismというのは個人主義と言われ、西洋社会の中で注目されてきた概念です。アジアは比較的個人の概念が弱く、「空気を読む」という言葉で知られるように、個人が前面に出るよりは社会を立てる傾向があります。

西洋では、所属組織(家族、階級、性別、制度(教会)など)からの独立が進み、福祉でも伝統的な家族で面倒を見るというものから、社会で福祉を補うようになって、個人が独立してきました。

一方、中国は皮肉なことに政府、あるいは著名な知識人によって封建主義からの脱却というスローガンの下、個人の独立が行われてきました。つまり国家主導による個人の独立過程です。改革開放以降は経済の自由化、制度の変化により、市場での私有化の概念がすすみ、個人が独立した存在として成長してきています。

Hansenは中国浙江省の農村地域にある公立学校を事例にその個人の独立化を考えようとしました。

例えば
Case1 新社会主義における個人の教育では、良い共産主義者としていまだに雷峰同志に学べとしてあるべき個人像が学ばれている。しかし学生も教員もカリキュラムとして学び教えており、形骸化が見られる。

Case2 生徒会での経験
 学校側から生徒会の立ち上げが提案され、生徒側から会長選挙を選ぶ際には先生からの介入が強い。生徒は学校を良くするとかの方針を述べることを許されず、自分は何者かを示すよう求められる。

Case3 学校集会
 学校の精神などを学ぶときに学校集会が開かれ、そして熱狂の中で個人が自己を吐露することがある。

彼女の結論としては、西洋的な個人は社会や政府への反抗で生まれてきたけども、中国のように個人は社会や制度の中でも生まれるのではないかとしています。

この議論はやや悩ましいと思いました。一つは学校を社会のミニチュア版としてみることの妥当性、もう一つは参与観察だけなので、個人が独立してきているのかどうかはなんともいえないでしょう。

むしろ経済学的には市場経済の中における「関係」の存在がどれだけ減ってきたかによって個人が独立しているというのを見ることが可能ではと思いました。

興味がある人はこちらで本が買えます。
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2016年09月13日

Chinese Economic Association Annual Conference 2016(3)

9月1日から3日にドイツ・デュイスブルグで開催された中国経済学会(ヨーロッパ/UK)に参加、報告してきました。

IMG_9344.JPG

私の報告を紹介。

Okamoto, N.(2016)"What matters in urbanisation of China?"(PDFバージョン), Draft Paper Presented at the Chinese Economic Association Annual Conference 2016, University of Duisburg-Essen, Germany. 2/Sep/2016

The paper reveals the characteristics of urbanisation in China, which has started as a comprehensive social-economic plan since 2014. The current ongoing urbanisation process is examined from the perspective of history, the size of city, village urbanisation and cost-benefits of settlement of rural migrants in cities, then the paper argues that urbanisation in China is not only just a "spatial urbanisation", which has been commonly observed in developed countries, but also a "institutional urbanisation" in which the institutional barrier would be needed to reform if the government wants it to be successful.

発表したとき、フロアからの反応があまりにも薄すぎて、まったく面白くないんだろうな(新規性がないんだろうな)と反省し、現在、鋭意修正中。

Academia.eduでみれる人はドラフト(ここ)として公開しているので、コメント等大歓迎します。

posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育研究活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする