2015年11月10日

浙江工商大学学報に

昨年神戸大学で開催された都市化に関する会議でコメントした内容が発展して,以下の成果になりました。

冈本信广(2015)「城乡一体化的艰难前行」『浙江工商大学学报』(2015 年9 月)第4 期(总第134 期),pp.112-117(招待論文)DOI:10.14134/j.cnki.cn33-1337/c.2015.05.014

都市農村一体化の難しい点は,都市農村二元制度と農民の利益調整であることを主張しています。

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2015年11月03日

産業連関分析手法の動向

10月10日には日本地域学会第52回年次大会(岡山大学)で,10月31日には環太平洋産業連関学会(通称PAPAIOS)第26回大会(明治大学)で,討論者として参加しました。どちらも産業連関分析に関するものです。

藤岡明房 「産業連関表の単位構造分析 についての一考察 」 へのコメント
陳・申・山田 「中部地域における生産構造の経年変化に関する一考察」 へのコメント

です。上記は単位構造(故尾崎厳先生)について,後者はAPL(平均世代波及数,平均波及長)の分析手法を使っています。

1)産業連関分析の動向

産業連関分析には時代的な波があります。レオンチェフが産業連関分析を発明後、その経済予測の正確性から経済モデルとして世界的に普及、統計的にはSNAの発展につながるとともに、経済の実証分析としてはレオンチェフ・パラドックスなどで貢献しました。

これらの貢献でレオンチェフは1973年にノーベル経済学賞を受賞。この辺りが産業連関分析のピークとなります。しかし,その線形性,作表の困難さ,モデルの柔軟性のなさ,などから,1980年代、1990年代に衰退します。

復活のきっかけは,空間経済学の勃興です。空間分析のツールとして1990年代後半より実証用データとして使われるようになりました。最近ではサプライチェーンの広がりによって付加価値貿易の分析など、新たな活用が広がり、Koopmanらの論文がAERに採用されるなど、経済学的に大きく貢献しています。また環境、資源、道路計画など工学分野でも活用されています。

2)単位構造は復活可能か

慶応大学の故尾崎先生が提唱した単位構造分析(Unit Structure Analysis)というのがあります。これは最終需要一単位を生産するのに必要な中間財投入構造(すなわち単位構造)を明らかにするというものでした。そしれ彼の実証結果は,単位構造は時系列的に見ても安定しているというものです。

これは産業連関表の前提である投入構造の安定性を示しているともいえます。分析手法がシンプル,導かれるファインディングスも結構頑健性のあるものであるため,最近では誰もつかっていないのが現状です。

もしこれを復活させるとするならば,やはり空間的な使い方が必要でしょう。つまり非競争型(輸入と国産財は別ものとして扱う)の表での単位構造の位置づけができる,あるいは国産率(藤川先生,長谷部先生)に関連した展開があれば,何かしらの使い方は可能かもしれません。でも単位構造は安定しているという尾崎仮説を覆す発見ができるか,できたとして,その理由は何かを考える必要がでてきます。

3)APL(Average Propagation Length)

最近の注目手法はAPLです。産業連関が前方連関,後方連関の強さを表わすというところから,産業間のつながりの「長さ」を分析することに成功した手法です(Ditzenbacherなど2005)。猪俣(アジ研)はこれらを図解する方法を考え出し,見方によっては新たな産業連関の発見につながってきたといえます。

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2015年10月06日

『東亜』COMPASSでの連載 第8回(最終回)

霞山会の月刊誌『東亜』2014年1月号から,3ヶ月に1回のペースで時評を担当しています。 最終回は 「都市化の推進には行政・財政改革が必要である」 です。 リードより。

【リード】

 新型都市化は農民工の都市住民化(市民化),都市建設が中心的テーマとして語られる。しかしこれらを実際に実施するには,行政と財政の改革が不可避だ。とくに均等化した公共サービスの提供,都市化に必要な資金調達,効率的な行政体制の確立が急がれている。

2ヶ月ぐらいすればWebで読めるようになるかと思います。約2年間,霞山会さんにお世話になりました。いい機会をいただき感謝です。

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岡本信広(2015)「都市化の推進には行政・財政改革が必要である」『東亜』No.580,pp.4-5
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2015年09月15日

中国の政策を追うということ

中国ウォッチャーは,中国共産党や政府が発する文件や政策に注目します。どの国でも経済政策は政府から提出されますが,中国の政府文件はとくに注目されているように思います。

中国の政策を文件から丹念に追うメリットはどこにあるのでしょうか。私は以下の二点が理由としてあげられると思っています。

(1)言論の自由がない
中国には言論の自由がないため,中国経済や現状の問題点や負の面が報道されることはほとんどありません。結局,中国の課題というのがつかみにくいということになります。

中国は改革を進めています。改革を進める分野がどこなのか文件が出され,改革を進めようということになります。これはとりもなおさず変えなければならない課題ということを意味しています。国有企業の経営効率を上げようという改革は,すなわち国有企業の経営効率は悪いという認識が政府内にあるということです。

(2)政府の力が強い
中国の経済政策は,とくに政府の役割が強いです。政府は国有企業を通じて大量の国家プロジェクトを配分するとともに,民間企業に対する有形無形の行政指導が行なわれています。そして幹部の評価制度により幹部は中央政府の政策を忠実に実行しようという動機になります。

中央の指示が厳密に実行されるかどうかはさておき,地方は何かしら形を変えて政策を実施しようとします。中央の指示に対する地方の反応により(いわゆる「上に政策あれば下に対策あり」),政治的には中央地方関係の動きがあわかるとともに,経済的には地域の特殊性や課題がわかります。


ただ政策ウォッチで注意する点として以下を指摘しておきたいと思います。

(1)過去との整合性
政策文件は過去からの流れがあるため,特別新しいことを言っていないということが多々あります。とくに国有企業改革のような既得権益の改革は表現が曖昧になったりする一方,一部では具体的になったりします。

一路一帯にしても新しいプロジェクトが一路一帯でいきなり出てきたように見えますが,すでに地域政策で実施されていたものが書き込まれたりします。過去の流れを把握しておかないと,意外に新規性は小さいということもよくあるので,新しい名前の文件には気をつける必要があります。

(2)現実の問題
政策文件は絵に描いた餅です。その餅が実際にどうなるかどうかは,政策が現実に実行されてはじめて判断されないといけません。政策文件は現実ではないという点に気をつける必要があります。つまり「中国経済は文件で起きてるんじゃない,現場で起きているんだ!」(踊る大捜査線風)というわけです。

私も含めてウォッチャーは往々にして文件ばかり気にして,現実把握が遅れがちになります。経済政策として文件を把握する場合はとくに,ある一定期間ののち,文件と現実を照らし合わせて,何かしらの政策評価は必要でしょう。

最近,自分の仕事をふり返りつつ自戒を込めて書いておきました。
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2015年09月08日

中国は脅威か?

ちょっと聞かれることがあるので,自分の考えをまとめる意味で。

中国は半植民地経験から先進国による覇権主義をひどくきらう傾向をもっています。

ソ連と蜜月の時代はあったものの,第三世界(途上国)の盟主(あるいは代表)という自認のもとで,独立した外交政策を展開してきました。

そのため自国の安全保障は,どの陣営に属するということなく,自らの軍備整備,核開発と人民解放軍の近代化で行なってきました。

安全保障という点では他国との同盟や協調という路線を採用しなかったので,軍事的には自衛の範囲を超えやすくなります。日本のように安全保障がアメリカの傘に入っている場合,自衛権以上の軍事力拡大は抑制されます。

中国の場合,他国から独立した外交戦略を採用するために,自衛武力の大幅な拡張を可能としています。

実際,台湾に対しては武力解放を辞さないという姿勢ですし,エネルギー安全保障という観点から南沙諸島への実効支配を強めてきました。

中国がアジアにおいて国際政治力における均衡(平和)に影響を与えているのは事実です。この武力拡張路線に傾倒しやすい点では脅威ですが,実際に他国への攻撃がおきるかどうかは疑問です。

それは対内的な問題(格差や腐敗など)への対応に力を注がざるを得ないという現実を抱えています。事実,国内治安維持費の支出が軍事費より大きいです。

したがって,中国がアジアの国際政治力の均衡を崩しつつあるのは事実です。しかし,他国へ武力行為を働くほどの政治力の均衡破壊はないでしょう。

現在のアジアは,安全保障という観点からは中国,アメリカ(韓日を含む)によって政治力の均衡が維持されているという現状がある以上,この2国の政治力の綱引きに注目しつつ,そしてその中にいる日本はどうあるべきかという認識は持つ必要があるでしょう。
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2015年09月01日

千葉ニュータウン

千葉県企業庁(千葉県の街開発を行う公営企業)が今年度で終わるということで,千葉ニュータウンの開発についてもヒアリングを行いました。(千葉ニュータウンの案内はこのファイル(PDF)を参照)

ヒアリングの備忘録として。

・千葉ニュータウンが開発されるきっかけとなったのは,@都市化による住宅用地の需要拡大,A住宅乱開発を防いで秩序だったまちづくりの必要性,B県内陸部の発展,C成田空港へのアクセス,である。

・1966年から事業が開始され,最初は多摩ニュータウンとほぼ同じ規模2900㏊,計画人口34万人を目指していたが,1986年には1930㏊,14万人の規模に修正された。この事業を行なっている企業庁は今年で解散し,精算事業は平成30年で終了する。

・1969年に新住宅市街地開発事業法が適用。用地の全面取得から整備,造成を経て分譲する事業が開始する。千葉県で行なっていたが1978年宅地開発公団(住宅都市整備公団を経て現在のUR,都市再生機構)が参画。企業庁が用地の取得を担当し,公団側が造成,販売を担当することとなった。(多摩ニュータウンは,事業分担ではなく地区でUR,東京都と分かれている。)

・社会資本開発にも力を入れており,道路,水道,調整池などを整備し,維持は市にまかすようにしている。

・農地買収は,農家の再就職問題にかかわる。農業を続ける場合は代替地の提案、別の仕事(例えば商業)に転換する意思があるのであれば、商業施設へのテナント区画の提供などの方法がある。
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2015年08月25日

日本の戦争謝罪について

8月15日に安倍首相が談話を発表しました。もっとも注目されたのは謝罪をどこまで盛り込むかという点だったわけですが,村山談話で一歩踏み込んだ謝罪がされて以来,各内閣は謝罪を入れています。

さて問題は,なぜ日本は謝罪を続けるのかという点です。謝罪を繰り返すというのは,謝罪が受け入れられていないということです。

BBCは,なぜ日本の謝罪は近隣から忘れられるのか,について日本のテンプル大学Dujarric教授の考察を紹介しています。すべて賛同できるわけではありませんが,参考になるのでポイントだけ紹介。

日本の謝罪が忘れられるのは3つの要因があるといいます。

一つは,謝罪が一進一退していること。閣僚による靖国神社参拝,従軍慰安婦問題,南京大虐殺はない,などの発言が与党から出ていることです。つまりメッセージ性がかけています。

二つめは,謝罪回数がかなり多いこと。しかしよく比較対象とされるドイツのケースと比べて,償いの対象(過去の行いの範囲,金銭的なものなど)が不足しているそうです。

三つめは,歴史認識についての国際政治の複雑性。北京は日米同盟に敵対し,日本を非難することで党の正統性を得ます。米国の朝鮮半島への影響力を下げるには韓国の対日批判を維持させたいと考えますし,また韓国も日本との連携を掲げたくても,それは国内政治での立場を悪くするのでできないという事情があります。

この記事は絶妙にバランスがとれています。

1つめは左の人,2つめは中道の人,3つめは右の人から支持されやすそうです。

一方で,国際情勢理解という意味では3つめがおもしろかったです。


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2015年08月04日

ジェトロ中国経済

『ジェトロ中国経済』8月号に寄稿しました。

岡本信広(2015)「中国の都市化とビジネスチャンス」『ジェトロ中国経済』No.595(8月号),pp.48-67

Web発行のみでしかもジェトロメンバーズ限定ですが,要旨だけ紹介。

□ 現政権が経済政策の一つとして実施しているのが「新型都市化」である。中国では戸籍・土地制度の下、都市と農村が分断している。労働移動、土地売買などさまざまな面において都市と農村が二分化しており、この制度的分断が都市化の障害になっている。
□ 歴史的にみると、都市化の抑制から推進へと政策方針が変更されてきた。従来、都市と農村を二元化することによって都市化を抑制させてきたが、市場経済化により現実的な都市化が進み、2000 年代以降、都市化が本格的に推進されるようになった。そのガイドラインとなるのが 2014 年の「国家新型都市化計画」(以下、「新型都市計画」)である。
□ 都市化にはメリットがある。一つは経済構造の転換である。都市化は輸出、投資主導型から消費型に構造を転換し、サービス産業を発展させることができる。もう一つは産業構造の高度化である。都市化は生産性を向上させ、中国独自の技術開発による「中国製造」を可能にする。
□ 「新型都市化計画」の特徴は、「人の都市化」である。都市に住む農民の農業戸籍を都市戸籍に転換し、農民を消費の主体としてサービス産業の発展に期待する。また、制度による都市と農村の分断を乗り越える制度改革が実施される予定である。
□ 中国の「新型都市化計画」の推進は、日本にもメリットをもたらす。農民工(農村出身の出稼ぎ労働者)は新たな中間層(ボリュームゾーン)の予備群であり、インフラ建設、社会サービスをはじめ中国市場の活発化が期待される。

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2015年07月28日

幕張新都心

7月25日に千葉県企業庁にて幕張新都心開発についてのインタビューを行なってきました。その備忘録として,幕張新都心の開発についてまとめておこうと思います。

千葉県企業庁は,国の公営企業法に則った,県によって運営されている公営企業です。主な事業は,土地買収,土地造成,土地分譲を主体とした都市基盤整備事業,および工業用水道事業であり,これまで千葉の内陸,臨海工業団地の開発に携わってきました。(以前は開発庁という名前だった。)

現在は,幕張新都心,千葉ニュータウン,つくばTX沿線開発が主体的な事業になっています。

幕張新都心の開発はここに詳しいのですが,簡単に状況を整理しておきます。

幕張新都心は千葉県が1973年から埋立造成して開発してきた都市で,国際交流業務機能(メッセ),中枢的業務機能(先端成長産業誘致),研究開発機能(大学,研究機関の誘致),住宅機能(ベイタウンなど)の一体的集積を目指して作られてきました。

1989年に完成した幕張メッセ(国際コンベンションセンター)より新都心建設が始まります。まだバブル期であったので1994年までに現在の代表的な企業(東京ガス,テクノガーデン,IBM,ワールドビジネスガーデンなど)によってオフィスビルが建てられました。現在約410社の企業,約4万人の就業者が幕張で働くようになっています。

1995年より幕張ベイタウン(住居)の入居が開始されます。住居開発では全国でも珍しい借地権による分譲形態でした。企業庁が開発した土地の所有権を持ちつつ,借地権のまま土地を住宅開発企業に譲渡,そしてその企業がマンションを建設し販売するというものです。これにより分譲価格に土地代金を反映することなく,相対的に低価格で販売できるというメリットがあります。(ただ現在は人気のためやはり価格は高い。)

日本経済のバブル崩壊後は,企業誘致に困難を極めます。

進出企業に分譲地を購入する体力がなくなってきたため,企業庁が考えた方法が住宅地と同じように事業用借地権の設定によって土地活用を促すというものでした。現在の三井アウトレットパークのあるところは事業用借地権で企業誘致をしている場所です。

もう一つの困難は,文教地区に誘致する予定だった大学も,大学の都心回帰志向により,誘致が見込めなくなったことです。文教地区ではアジ研やインターナショナルスクールの誘致のあと,新規の学術,教育機関の誘致の可能性がなくなってきました。そのため未利用地にするのはもったいないことから,地目を変更,住宅地にして,住宅開発にあてました。これも来年から入居が始まるようです。これにより幕張新都心の土地はほぼ開発済みとなります。

今後,千葉県企業庁は幕張新都心開発から撤退する予定です。(企業庁自体が使命を果たしたということでなくなる予定です。)これまで幕張新都心は千葉市にありながら,企業庁の管轄にあるような感じでした。県と市で協議会が設置され,街の維持,メンテナンスは千葉市に移行していきます。(千葉市に幕張新都心室が設けられた。)
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2015年07月07日

『転換を模索する中国』出版シンポジウム

7月1日に東京国際ブックフェアにて,私が監訳した本のシンポジウムが開催されました。

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来賓として原著の主編である高尚全先生と日本からは推薦人になっていただいた中兼和津次先生(東大名誉教授)からお話をいただきました。

高尚全先生は元国家発展改革委員会の副主任(副大臣)で,改革を主張する大御所です。

基調講演では,「改革の全面的深化」と改革の方向についてお話をされました。勉強になった点を3点ほど。

1)改革の全面的深化は三中全会の前に党中央に建議したものである。これによってこの言葉と習近平を中心とする現在の改革の全面的深化の領導小組が組織された。改革の突破口は公務員や幹部の財産公開である。

2)改革の特徴は全面的でありながらも,改革の的は反腐敗による公務員の任免制度の確立である。各地方のリーダーが改革に責任を持ち,現状をみて的確な身を切る改革が必要。

3)改革に終わりはない。2020年までに全面的小康状態を目指し,農村の貧困をなくす方針であるが,困難が伴う。改革の肝は農民の資産(宅地や請負権)の流通により,農民資産のマネタライズが必要であること,農村都市間で双方向の生産要素の流動が必要である。

中兼先生は中国の改革を,発展,体制移行,現代化の三つのキーワードで説明されました。

1)経済発展においては低所得国から高所得国への移行には産業構造高度化が必要であること。

2)計画経済から市場経済への移行においては政府の関与を少なくすること,とくに国有と民営では国有企業の民営化は必須であること。

3)現代化では,人治から法治への転換が必ず必要となること。

私自身も,中国の改革は「政府の退出」であるという点,レントシーキングをなくすにはさらなる市場経済化が必要であることを述べさせていただきました。

出版お披露目という意味もあって,あまり深い議論はできませんでしたが,本書の監訳に携わることによって中国の改革がより深く理解できたと思います。

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2015年06月30日

『東亜』COMPASSでの連載 第7回

霞山会の月刊誌『東亜』2014年1月号から,3ヶ月に1回のペースで時評を担当しています。 第7回は 「ゴーストタウン(鬼城)と都市の衰退」 です。 リードより。

【リード】
 中国の内モンゴル自治区にあるオルドス市はゴーストタウン(鬼城)として日本では有名だ。オルドスのゴーストタウン化はバブル経済崩壊の予兆として報道されるが,ゴーストタウンの実際は資源依存型都市の形成・衰退の過程である。中国政府も資源依存型都市の転換に取り組んでいるのが現状である。

2ヶ月ぐらいすればWebで読めるようになるかと思います。

岡本信広(2015)「ゴーストタウン(鬼城)と都市の衰退」『東亜』No.577,pp.4-5

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2015年06月23日

翻訳書を出版しました。

翻訳書を出版しました。

本書は成思危、肢ネ寧、呉敬l、林毅夫等著、高尚全主編(2013)『改革是中国最大的紅利』人民出版社が原著です。

中国国内の経済学者たちがそれぞれの専門分野から,中国の課題と改革の方針を示しています。



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本書の出版を記念して,第22回東京国際ブックフェアにて,主編者である高尚全氏(中国経済体制改革研究会名誉会長、国家経済体制改革委員会元副主任),日本からは中兼和津次氏(東京大学名誉教授)を招いて,セミナーを開催します。

日時:7月1日水曜日午前11時〜13時
場所:東京ビックサイト西1ホール
小間番号:2-28
セミナー会場:西1ホール中二階

==監訳者による本書の紹介から===

 中国が経済発展を遂げた大きな理由は、市場経済を導入して人々の積極性を引き出したことにある。それによって安い賃金を活かし、世界へ向けて製品を輸出し、大きく発展することができた。しかし、人々の積極性と低賃金労働だけに頼る発展は、すでに限界を迎えている。この先、中国の発展は頭打ちになるかもしれない。あるいは、限界を超えていよいよ先進国入りするかもしれない。
 本書の主張は、さらなる経済発展には、これまで以上の改革を行えるかどうかにかかっている、というものだ。改革の行く末を阻む腐敗、既得権益層、発展を妨げる格差、環境破壊など。これらを生み出したのは、これまでの体制であり制度である、というのが本書に収められた改革派経済学者の見方である。
 となると、今後の進むべき道はひとつである。改革によって体制や制度にメスを入れなければならない。しかし、現行の体制や制度によって利益を得る人々がいる以上、彼らが大きな抵抗勢力となり、その前に立ちはだかることは火を見るよりあきらかである。これまでは、「市場経済の導入」という目新しく、誰も敗者を生み出さない改革によって大きな発展を遂げてきた。しかし、この先は、必ず誰かが損を被る可能性をはらんだ改革がいよいよ始まる。
 本書は、中国のネガティブな問題や課題に目がいきがちな日本の読者に対して、今、中国はどのように課題に向き合い、対処しようとしているのか、その方法はあるのか、といった問いに対して、誠実な回答を試みている。これらは、既得権益を得る人々にとって大きな脅威である。したがって本書は、中国を本当に良くしたいと願う良識ある学者たちの「良心」が詰まっている。

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2015年06月09日

2015年5月の読書ノート

2015年5月の読書ノートです。

最近,本を読むことが少なくなってきています。

コーエンの『大格差』は別のエントリで紹介しているので,今月の1冊はなしでw

<経済>

伊東光晴(2014)『アベノミクス批判-四本の矢を折る』岩波書店 量的質的緩和は株価にも為替にも影響を与えていない。株価は外国人の買い越しで上昇。国土強靭化政策は予算化されていない。経済成長政策は具体性がなく人口減少下ではその時代ではない。安倍政権の右傾化を憂う。

八代尚宏(2014)『反グローバリズムの克服』新潮社 世界経済を見ると市場経済を活用している国は発展している。日本市場の国際化は消費者のため。少子高齢化に対応するには国内労働市場の流動性を高める。人口減少に対しても年令に中立な社会制度を。

<社会>

タイラー・コーエン(2014)『大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか』NTT出版 技術進歩に伴い機械と一緒に働ける人、働けない人で二極化する。特殊技能を持つ労働者の市場価値が上がり、人海戦術の必要な職は減少する。

<その他>

津守光太(2010)『aとtheの底力』プレイス theは他のモノとの区別・峻別を表す。話し手同士が了解しているモノにはthe。a/anはカタチをもつモノのリンカク、同じ種類のモノがいくつもあるうちの1つ。無冠詞は相手がわかっていないかつaをつけない名詞(リンカクがない)の時。
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2015年05月26日

社会科学の基本は政府対個人

社会科学を教えていて,思うことは社会の仕組みをできるだけシンプルにして,考えるというのがいいと思っています。またその仕組みのフレームワークとしては,社会を政府対個人の関係としてとらえるというのがいいでしょう。

個人が集まってできるのが社会です。その集まりには必ずリーダー格(あるいは仕切りたがり屋)が表れます。そのリーダー格の人はその集団に安全を保障するから金を出せという存在になります。これが国家の誕生です。

リーダー格の人は集団の政治を行う政府です。この政府は個人に関与し始めます。橋を作るから,ビルを作るからということで,個人を動員します。無償の労働力提供を強制するわけです。

政府が王さまとしてふるまうと,個人には自由がなくなります。やりたいこともできずに,ただただ政府のいいなりになり,彼のご機嫌を損なうとその社会で生きていけなくなるということになってしまいます。

個人が集まって,王さまを追い出したのがフランス革命です。個人の自由を取り戻すため,個人たちが「王さま」を選ぶ権利を得る,そして選ぶプロセスを発明したのが民主主義です。これにより,政府が個人たちを意のままに操るのではなく,形式的には政府は個人たちの意のままに動く存在になったのです。

現在も独裁体制的国家と民主義的体制国家があります。基本は,政府が個人に関与します。日本でも消費税をアップしてきたら,私たちは従わざるを得ないわけで,そこには自由はありません(あ,もちろん海外移住という選択は可能)。一方で,個人を自由にしたら社会は無秩序になってしまうという考えもあります。社会が秩序だって安心して暮らせるようになるには,個人の自由を抑えて政府が秩序を提供するか,個人が自発的に秩序を構成していくのか,どちらかです。

経済学では個人の自由が自生的秩序(ハイエク)を形成するとします。でもその秩序形成もうまくいかないことが多いので政府が関与すべきだ(ケインズ)という意見もあります。

社会の仕組みを理解する社会科学は,政府と個人というように二分化させるとシンプルに理解しやすくなるでしょう。
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2015年05月12日

上海社会科学院世界中国学研究所

上海社会科学院に新しく世界中国学研究所というのができているようです。

そこが近年「海外中国研究書目摘要」という本を発行していて,英文,和文の中国研究の成果を紹介しています。

その中で,私の本も紹介されていました。

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内容も的確に紹介していただいているので,中国研究に役立ててよかったと思っています。
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2015年04月14日

東亜』COMPASSでの連載。第6回目

霞山会の月刊誌『東亜』2014年1月号から,3ヶ月に1回のペースで時評を担当しています。 第6回は 「土地の国有化が難しいのはなぜか?−深圳を事例に」 です。 リードより。

【リード】
深圳は二度の土地国有化を通じて,農民,農村が存在しない都市化に「成功した」都市である。この経験から導かれる教訓は,土地需要の増加で発生した土地価値の利益分配のない国有化はうまくいかず,都市農村の二元構造は残ったままになるということである。

2ヶ月ぐらいすればWebで読めるようになるかと思います。

岡本信広(2015)「土地の国有化が難しいのはなぜか?−深圳を事例に」『東亜』No.574,pp.4-5
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2015年04月07日

『地域学研究』に

以下の論文が日本地域学会の学会誌に掲載されました。

岡本信広(2015)「中国産業連関表を地域化するのにFLQは有効か?」『地域学研究』第44巻第4号,pp.423-436

これはちょっとテクニカルなモノですが,将来的に産業連関表を都市地域に限定して推計したいというのがあって,その有効性を確認してみようというものです。

結論としては「なんともいえない」というのが現状で,それでも適切なパラメーターが推計できれば,全国の産業連関表から都市の産業連関表を推計できる可能性はあります。
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2015年03月10日

周其仁と姚洋の講演(中国経済経営学会第2回国際交流セミナー)

3月8日に拓殖大学で開催された2014年度中国経済経営学会第2回国際交流セミナー「中国経済改革の課題と展望」に参加してきました。

報告者は,北京大学国家発展研究院教授の周其仁さんと姚洋さんでした。

ここでは周其仁の報告の概要を備忘録として。

・経済成長率は2007年第1四半期の15%を最高に2014年第3四半期の7.3%まで下がってきた。

・下がった原因は,行政の関与が増えていること,物価下落により実質金利が上昇したこと,企業家精神が減少していること(国との関係維持に忙しい)。

・経済成長が下がったことで見えてきたことは,中国の生産コストは高いということ,債務が増加しているということ(とくに国有),過剰生産であること,である。

・それでも中国の経済成長には依然強みがある。一つは競争が激しいということ。社会保障はなく一般民衆は大変かもしれないが,とにかく市場で何かしら生き抜いてきているということ。2つ目はグローバル化によって中国にとっても新興市場が存在するし,グローバル化人材が蓄積されてきている。3つ目は,品質向上の余地があること。中国製は悪いかもしれないが,逆に輸入品に代替できるような製品も生まれつつある。4つ目は人口集積である。まだ都市化の余地が残されており,人口集積による経済成長効果が期待できる。

・中国経済が挑戦しなければならないのは,制度コストを如何に引き下げるかということである。中国では政府の存在によって税負担,規制,許認可,腐敗など制度が生み出すコストが高い。企業にとって政府との関係維持は大きなコストになっている。


報告後の質疑応答で,「制度コスト」を引き下げるにはどうしたらいいか,質問しました。

彼の答えは

・税率の決定や施行は法律に基づくべきであり,予算法の設立などその方面に動いている。(今は財政部や税務局が全人代から税率権限を授権しているという建前)

・市場参入をすすめること。北京で新しく始まったアプリ(「滴滴打車」:タクシー予約アプリ)が事業を始めるときに,まず政府はそれを認めない方向だった。現在でも一部の都市ではそれを拒否している。政府自体が市場参入の障壁となっている。

・審査や許可についても裁量的であるため,企業家の仕事は政府との関係に費やされ,品質改善や新しい製品の開発に向かないという問題もある。

ということでした。


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2015年02月26日

ネットと図書館

インターネットが発達し、Googleが「世界の情報を整理する」という野望を掲げるとともに、図書館の電子化に力をいれています。(著作権でもめて思うように進まないようですが。)

著作権はちょっと脇において考えると、書物がネットで見られるようになると、多くの人々の知的欲求をより便利により多くの情報で満たすことが可能となります。

例えば、著作権の切れた100年以上前の書物がネットで見られるようになると、人文系の人々にとっては朗報でしょう。これまで一次資料は一部の限られた図書館や一部の研究者でしか見ることができず、そのため多くの大学院生は一次資料にあたるのに苦労していました。

これがインターネットでもし見れるようになると、多くの人の当該分野への参入につながります。つまり図書館の物理的ロケーション、手続きなどが障害となっていて参入できなかった研究者の卵たちが、大御所と同じ資料アクセスを得ることができます。

これは「情報の民主化」です。図書館に閉じ込められていた情報が外部へ開放されることになります。

となると、これからの図書館はどうあるべきか、という問いが出ます。機械的なインターネットの検索結果ではなく、図書館員の専門知識による適切な資料の紹介(レファレンスサービス)、などで差別化される必要がでてきます(実際アメリカではそうらしい)。

この意味で図書館司書の専門性がますます高くなっていくような気がしています。
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2015年01月27日

「ググれカス」と「だから何?(So What?)」


私たちの欲しい情報はほとんどインターネットから得ることが可能です。分からないことがあればグーグル「先生」に聞けばほとんど教えてくれます。グーグルの検索機能は私たちの検索履歴からもっとも合うものと思われるものを上位に表示しますので,検索結果の中から最初の1ページ目か2ページ目で大体は手に入ります。グーグルは「世界の情報を整理する」という野望を成し遂げようとしているようです。(実際便利ですし。)

2chのスレでは,わからないことをスレで聞いたりすると,まず間違いなく

「ググれカス」

というとても暖かい(笑)アドバイスをもらうことができます。私たちはわからないことは人に聞くのではなく,グーグルに聞けば欲しい情報が得られるということを,多くの人が認識しています。

授業でも,あまりにも常識的なこと,中国の首都はどこですか,みたいなことを聞かれたら,笑顔で「ググれカス」と答えたいくらいです。それぐらい今は基本的な知識はネットから得られる時代です。

したがって,「これどうなっているんだろう?」とか「これは何かな?」という知識欲はまずネットで満たすことが可能です。

さて,話は変わって,学会で報告や院生の報告などを聞くと,「だから何?」というような報告がされることがあります。中国の生態移民はこうなっています!とか農村はこんな感じです!みたいな報告は,それに興味をもっていれば,報告を聞くことによって自分の知識欲を満たすことができますので,満足はあります。でも興味はたいしてないけどどうなんだろう的な気持ちで聞くと,なるほど,そうなっているのね,とはなります。

でもそのあとこう思います。「だから何?」

現在,知りたいことは良くも悪くもネットでわかります。便利な時代になっています。となると高等教育で教員が知識を供与するという役割は減ってきています。教員が中国に行ってきて一生懸命調べてきた中国の現在の状況を授業で話ししても学生にとっては,へ〜というような情報番組をみてちょっと賢くなったという感じを持つか,ちょっとできる学生だったら,やっぱり「だから何?」という疑問を持つでしょう。それぐらいだったらググればわかるんじゃね?と思う可能性さえあります。

インターネットで情報が簡単に手に入る時代です。となると教育も研究もいい問題意識,なぜこうなんだろう,どうしてこうなったんだろう,といった問いと,それに伴う自分なりの解釈(仮説)を持つということが重要になってきます。人は知って満足するのではなく,その解釈やフレームワークを手に入れたときに「わかった」「理解した」感覚を持ちます。

昔から学問では「なぜ」という問いを大切にしてきました。情報が簡単に手に入るだけに,知識欲だけではなく,なぜという疑問と自分なりの答えを常にもって,それを検証するために「ググる」というようなネットの使い方が,必要になってくるように思います。

情報化社会はより一層,いい問いを持つことが問われているように思われます。
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