2016年04月15日

在外研究に出ています。

4月1日よりイギリスのSOAS(東洋アフリカ学院,ロンドン大学)で研究することになりました。任期は来年の3月末までです。

Department of Economics
Faculty of Law and Social Sciences
SOAS, University of London

大学の海外研究員制度を利用して,一年間在外研究に取り組みます。研究テーマは日本で続けてきた中国の都市化です。SOASの各種セミナーに出席しつつ,また中国からくる専門家とも交流しながら,イギリスを中心とした英語圏における中国研究の状況を理解したいと思っています。
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2016年03月29日

中大経済研究所の研究合宿

3月19日〜20日と湯河原で中大経済研究所の研究合宿が開かれました。温泉を味わいつつ,集中的に研究会のテーマ(アジア経済圏)について議論するというものです。

今回もいろいろTPPについていろいろ勉強になりました。とくに石川幸一先生のTPPの解説と中国への影響が面白かったので備忘録として。

今回合意されたTPPの概要は以下の通り。

1)高い自由化率ー関税撤廃が100%、日本は95%(聖域5品目があるため)

2)新しいルールとして、@国有企業(非商業的援助の禁止)、A電子商取引(データセンターの設置、ソースの開示などの条件を設けない)、B知的財産(著作権保護期間70年)、C労働環境の保護(タイが不利)、D原産地規準(完全累積、ヤーンフォーワード)などがもうけられた。

TPPに加盟していない中国への影響としては,以下の通り。

1)完全累積基準により中国の輸出が減少する可能性。TPP域内国で生産された財の付加価値が50%以上になるように生産した方がTPPの恩恵を受けることができるため。

2)対中投資が減少する可能性。とくにヤーンフォーワードによって繊維製品の糸から製品までの生産チェーンは域内で行なわれることが前提になるので,繊維製品の生産拠点は中国からTPP域内国へ移転する可能性があるという。

3)もし,中国がTPPに加盟を求めるようになったとしても,国有企業改革など中国にとってはハードルの高いルールになった。

現在TPPは合意各国の批准手続きを待って発行されます。不安材料は,アメリカ大統領選の行方によって,アメリカ議会がTPPを批准しない可能性もあるという点でしょうか。

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2016年03月22日

中国の都市化の現状と課題

3月16日から19日まで、国家信息中心経済予測部と貴安新区発展研究中心の専門家が日本に来ました。3月16日にはERINA(環日本海経済研究所)でアジ研と一緒にワークショップを開催,また3月18日にはアジ研で日本の都市化について議論しました。

中国は工業化に比べて都市化が遅れてきました。実際、中国の都市は開発区に見られるように「生産拠点」であり「消費拠点」ではありませんでした。途上国の平均都市化率は約60%、中国の都市化率は14年で56%、戸籍人口では40%しかありません。16%の農民工(2億前後)が都市で生産活動に勤しむ形になっています。

現在行われている新型都市化は、まさに都市に住む人口の16%の農民を都市住民にしてて消費主体へと育てる政策です。社会保障を与えて定住させ、貯蓄から消費へ向かわせようとしています。

ただ問題はお金と制度改革の困難さです。

彼らの推計によると,1人の農民が都市に入ると10万元のインフラ投資が必要になるけども,彼らが消費住民になっても1万元の消費しか伸びない,といいます。この意味で都市化の財政的負担は大きいものとなります。

また都市,農村の二元化構造が改革を難しくしています。戸籍制度,土地制度の分断は労働と土地取引が分断されているということを示し,そのため政府のコストを引き上げています。

そして都市規模によって改革の程度が違います。北京,上海は相変わらず厳しく戸籍制度を実施していますが,中小都市では自由化が進んでいます。でも人は大都市に移動したがるため,都市管理の問題が発生してしまいます。

この制度改革が他の国にない都市化の難しさです。

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2016年03月15日

中国経済研究

中国経済経営学会の学術誌『中国経済研究』に論文を発表しました。

岡本信広(2015)「中国の地域間分業と地域の「位置」」『中国経済研究』第12巻第2号、pp.1-17

「おわりに」より

 「本稿では,地域間産業連関モデルを用い,基本的な産業連関分析と平均波及世代数(APL)を利用して,地域間分業を明らかにし,二つの作業仮説,「内陸地域は沿海地域の原材料供給 地域である」「都市化・サービス化が進む地域は地域間分業の上流に位置する」を検証した。
 最初の仮説,「内陸地域は沿海地域の原材料 供給地域である」という点については,ほぼ支持されうるであろう。逆の言い方をすると,沿 海地域の発展は原材料等の需要を生み出し内陸の発展をけん引する。ただし西部大開発で工業化の進む内陸地域,例えば重慶,四川や甘粛な どは下流に位置し,沿海と同じく成長の極として周りの地域をけん引する存在である。
 二つ目の仮説,「都市化・サービス化が進む 地域は地域間分業の上流に位置する」という点については,支持されそうにない。都市化が進 む省市は地域間分業,サプライ・チェーンの下流に位置するのが一般的であり,もっとも都市化率の高い上海や北京も下流である。これは国 際分業の分析結果(Inomata and Fathi, 203) と相違する。想像されうる解釈としては,中国 の都市化は新しいビジネスサービスを生み出したり,研究開発などが進んで新しい付加価値を生み出したりはせず,むしろ,現状では都市化 は中国特有の「都市建設」(都市インフラ建設などのハード整備)であることを示唆している。 インフラ建設のために必要なセメントや鉄筋など原材料を内陸などから必要とする形になって いる。 もう一つの解釈は,都市化が進む地域は北京, 上海,広東,江蘇,浙江などの沿海地域であり, 国際サプライ・チェーンの中で輸出を通して付加価値を海外に提供している可能性もある。国 内サプライ・チェーンの中では下流に位置しつつも,このような地域は国際サプライ・チェー ンでみると上流に位置する可能性もあろう。これに関する検証は今後の課題である。」

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2016年03月08日

2016年2月読書ノート

2016年2月の読書ノート

久しぶりに読書ノートの一覧をアップ。



オススメはこれ。同業者にも院生にもあてはまるけど、どうすれば論文が生産できるかがよくわかる本。私も心がけていることとがこの本と一致したので、非常に納得。生産性をあげるにはとにかく毎日決まった時間に取り組むこと。

<経済>
柴田章久・宇南山卓(2013)『マクロ経済学の第一歩』有斐閣ストゥディア GDP、成長、消費、投資、労働、再分配、政府支出、財政と開放経済まで。消費を考えるには恒常所得仮説、賃金が硬直化している時には政府支出増加による失業対策の可能性、高齢化、社会保障費こそが財政の赤字負担。

ルイジ・ジンガレス(若田部昌澄・栗原百代)(2013)『人々のための資本主義-市場と自由を取り戻す』NTT出版 アメリカの自由市場が企業と政府の馴れ合いのクローニー資本主義に堕してしまう。ロビー活動を禁止するためにピグー税は有用。競争と市場を高めることが大事。

アンガス・ディートン(松本裕)(2014)『大脱出-健康、お金、格差の起源』みすず書房 人々は貧困、欠乏、病気から脱出してきた。相関はないが豊かになり、健康になったが富裕国では格差は拡大。脱出できていない貧困層も多く,援助は役に立っていない。成長は貧困から脱出するための原動力。


<自己啓発>
ポール・J・シルビア(高橋さきの)(2015)『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)』講談社 文章をたくさん書くための唯一の方法が、書く気の有無にかかわらず決まった時間に書くこと。まとまった時間に執筆する人、独創的アイデアが降りた時に執筆する人は、量、アイデア回数ともに低い。

山口真由(2014)『東大主席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法』PHP研究所 繰り返して読みながら全体、内容、細部に意識を向けて鮮明にしていく。気分転換も罪悪感を感じたりするので、とにかく続ける、場所を変える、教科を変える、使う器官を変えるなど。

<社会>
井上達夫(2015)『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門』毎日新聞出版 啓蒙は理性の独断化、絶対化を招く可能性、寛容は抑圧的体制とまで妥協する弛緩性を持つ。リベラリズムの核心は正義である。正義は反転可能性テストに合格しなければならない。

施光恒(2015)『英語化は愚民化-日本の国力が地に落ちる』集英社新書 土着から普遍へというグローバル史観、英語化史観の妥当性は疑問。翻訳と土着化のプロセスがなくなれば多くの人々が社会から取り残され、知的成長の機会を奪われ、愚民化してしまう。
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2016年03月01日

六甲フォーラム

2月15日に開催された神戸大学大学院経済学研究科の六甲フォーラムで貴州省の都市化について報告しました。

これは昨年11月に実施された現地調査の報告を主体とするものです。

1)貴州省の都市化の特徴は、山型の都市化である
2)貴安新区での急ピッチの都市化と観光農村化による農村都市化
3)これらは投資主導型であるために、持続可能性に疑問

であることを報告。

伊藤亜聖(東大)さんより

1)内陸での産業誘致を内陸工業化論との関係を論じる必要がある。
2)都市化はどうファイナンスされているのか。比較として重慶モデルをあげるといいのではないか。
3)「下からの都市化」を感じさせる動きはあるのか。

というコメントをいただくとともに、城鎮化とは事実上「都市化+農村振興」という側面があることを指摘してくれました。

今後の改訂に役立てるとともに、この成果はアジ研研究会の一年目の報告書として公開される予定です。
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2016年01月26日

地方創生のためには「どこでもドア」をつくること

地方の発展のためには、地方が東京とが「つながること」、財やサービス、人とお金(資本)、そして情報が自由に行き来できるようにすることが大事です。

つまり、地方と東京の間にドラえもんの「どこでもドア」を設置するということです。地方にいても「どこでもドア」を開けたらすぐ東京になるようにするわけです。

頭の中で行う思考実験をしてみましょう。

「どこでもドア」があったらどうなるか。地方と東京の「境界」、つまり距離とか場所とかが関係なくなります。どの地方もすべての地域が東京と同じ経済圏になります。どの地方に住んでも、いつでも必要であれば東京で仕事を探すこと、働くことが可能です。東京で疲れたらいつでも地方の自然でリフレッシュすることが可能です。仕事の賃金、所得、消費はすべて同じ水準になるでしょう。

現実は地方よりも東京が発展しています。東京が発展するのは、多くに人が集まっているからです。企業からすれば、東京に本社を置く方が人を雇いやすいです。実際、大学生の40%強が首都圏の大学にいます。また、多くの企業があるので、必要な原材料や情報が手に入りやすいです。多くの企業が東京に集まって、首都圏そして日本の経済発展の中心となっています。

この発展の恩恵を受け取るためには、地方は「どこでもドア」を手に入れるべきです。地方創生には、首都圏あるいは大阪とか名古屋など都市とどのようにできるだけ便利につながるかという観点をとりいれるべきなのです。

実際に、日本は地方と都市との格差は非常に小さいです、これは日本の地方が首都圏とつながったためです。

時間距離で見ると東京から各地方まで遠いところでもほぼ6−7時間で行けてしまうのが現在です。

「東京駅から全国各地への所要時間を可視化した映像。これはタメになる!」


実際には、金銭的距離や心理的距離があったりしますが、東京に一極集中しながらも地方が恩恵を受けてきたのは、地方と東京がつながったためなのです。
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2016年01月19日

都市とは何か?

私たちが普段暮らしている家にそんなに興味も話す内容もないのと同じように,普段の生活の場所として暮らしている都市にもあまり興味をもたないのが一般的です。

でも,都市に興味を持つ人たちもいます。時にはオタクのように,建築物の特徴や町の歴史,地下鉄のネットワークなどに詳しい人たちもいます。

都市の面白さを感じてもらうために,「都市とは何なのか」,ちょっと考えてみたいと思います。


1.ムラとマチの違い

ジェイコブズ(『都市の原理』)は最初に街や都市ができたと考えていますが,一般的にムラからマチに移行したと考えられています。ムラは農業が中心の場所です。土地を使うために,集落は分散しがちです。マチは商業が中心です。モノの売買が行われるので,人が集まって住むようになります。

ムラとマチの違いは,まさに人の集まり具合が違うこと,営む経済活動が違うところにあります。

もう一つの違いは,ムラでは血縁者が多いこと,あるいはよく知った関係者で成り立っており,よそ者に敏感な閉鎖的な場所になっています(田中2004)。農業にはその方が都合がよいからです。

マチは,知らない人が集まっています。どこの出身だとか,今まで何をしてきた人とかわかりません。そのために誰がやってきても誰が去っていてもいいという開放的な場所になります。

2.都市の生成

マチを都市として考えていきましょう。

都市は異質な人が集まり,交流を始めます。自分の持っていない者が欲しい,自分の持っているものを売ろう,これにより無数の知らない人同士が町に集まり,情報を交換し交流をします。都市は新しいモノや情報が集まり,それに興味を持つ人々が集まります。そしてそれらが交換されます

都市は,新しいモノ,新しいことを生み出す創造的意欲をかきたてる場所となります(田中2004)。

このような都市は自然発生的に出来た都市といえます。自由な個人が自分の意志で町に集まり経済活動を行います。好きな場所に家を建て,好きな場所で商売をします。その結果として都市の景観が出来上がっていきます。地中海貿易が盛んなころの諸都市はそのような都市だったのかもしれません。

3.権威とルール

さて,村と都市の違いのもう一つは,その地域(国)の権力者は村に住まず,都市に住みます。その理由は利便性にあります。軍隊を持つ,必要な物資を調達する,等権力を維持するために必要なものはすべて都市にあるからです。

権力者は,知らない人,異質な人が集まる都市で安全な取引を保証しなければなりません。そうしないと,みなが出ていくからです。つまり,私有権や市場の取引ルールが制定されるようになります。

これは都市に集まった個人にとっても便利です。ルールがあるからこそ,安心して取引が可能になるからです(ヒックス『経済学史の理論』)。


4.都市づくり

都市ができる過程には,個人が自由勝手に集まってできた場所なのか権力者が街づくりを行ったかに分けられます。

日本の平城京,平安京などは中国の都づくりに影響を受けた権力者によるまちづくりです。軍事を含めて権力者が運営しやすい仕組みであったと思われます。知らない人が入らないように監視できること,街の中では安心して暮らせるようにすることなどです。城や門や広場などを町の中心に配置するのは世界の都市づくりの共通点です。権力者の権威を示すとともに,軍事的な目的を達成しやすいように町がつくられ,運営されます。ベルサイユやパリなどもその典型でしょう。

首都でないところは自由に街づくりができる傾向があります。ワシントンは区画が整理され,人工的な町の雰囲気を醸し出していますが,ニューヨークは雑多な人たちが集まり,心地よいカオス感を出しています。


5.都市は管理と自由がせめぎ合う場所

都市は,権力者によって管理しようとする力と個人が自由に集まって取引しようとする力がせめぎ合った場所です。市場経済の良さは,匿名の不特定多数が自由に取引でき,そしてそれが住む人々の満足度をあげるところにあります。

しかし都市の市場経済は,混雑や廃棄物や犯罪なども生んでしまいます(市場の失敗)。このために政府は都市に住む人々の自由を管理,コントロールしようとします。あまりコントロールが強いと都市の経済は栄えません。もっと自由な場所を求めて移動するでしょう。とくに資本はすぐに移動してしまいます。

都市の繁栄には,適度な管理と自由な経済取引がないと難しいです。都市では常に個人の自由が発揮されつつも権力者による管理とが生まれています。

このように都市とは,「管理と自由がせめぎ合う場所」だということができます。

<参考>
田村明(2004)「都市をいかにデザインするか」 pp.250-256
学芸総合誌・季刊『環』【特集】都市とは何か Vol.17 藤原書店
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2015年12月29日

ERINA REPORTに寄稿

ERINA REPORTに寄稿しました。

岡本信広(2015)「一帯一路は内陸部を発展させられるか?-重慶を事例に」『ERINA REPORT』環日本海経済研究所,No.127, pp.46-52 (リンク先からPDFでみられます。)

結論として,「「一帯一路」による物流業の発展は中国国内の都市化の推進,さらなる経済発展をも期待できる。重慶はまさに「一帯一路」を活用しつつ,産業集積と物流業の発展が期待できる都市である。シルクロード経済帯にある渝新欧鉄道は重慶の経済発展をもたらす可能性を持っている。通関制度の共通化,運行時刻の改善や便数の増加,そしてコストの低下が進めば,内陸部であるにもかかわらず重慶は中国のさらなる物流拠点,産業集積拠点として発展が見込めるかも知れない。」としています。

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2015年12月22日

地方が消滅してもいい!?

アゴラから

地方創生を考えるには,地方消滅も考慮しないといけないだろうということで,ややあおり(笑)を入れて議論してみました。

さて,前回のエントリーで地方創生のためには、「地方と都市がつながること」と主張しました。

地方を創生するためにやるべきことは何か? --- 岡本 信広

今日は、地方の消滅について考えてみます。結論として、日本という一国全体でみると、地方消滅(その反義としての東京の一極集中)は、感情的には寂しいことですがメリットがあります。


1.地方は都市に吸い込まれる?

地方が東京圏とつながると,地方は恩恵を受けて豊かになりますが,たしかに消滅する可能性もあります。

都市経済圏との一体化は、地方を消滅させる、あるいは地方と都市の格差を拡大する(あるいは固定化しうる)という見方も経済学者にはあります。代表的なものでは,ウォーラーステインの世界システム論,ミュルダールの累積的因果関係,ハーシュマンの分極効果などです。

簡単にまとめると,

1)地方は産業基盤が弱いので常に都市からの財やサービスを購入しつづける。
2)地方の優秀な人材が都市の大学に進学する,就職して帰ってこない。
3)人が移動する→産業が衰退する→町に活気がない→さらに人が来ないという因果関係が累積的に繰り返される。

ということがあげられます。具体的には,東京湾にアクアラインができて木更津がさびれた,つくばエクスプレスができて秋葉原ばかりが得をした,という現象です。「ストロー効果」といわれたりします。


2.長期的にはメリットがある

都市と地方がつながるメリットは以下のメカニズムで働きます。

1)都市部の住民が地方の特産品や農業製品を購入する。
2)都市部の人たちが地方に観光にいく,あるいは混雑をきらって地方に移住する。
3)都市では競争が激しく利益が得られないので,地方に企業が投資をする。

などです。具体的には,木更津に有名アウトレットパークができたとか,つくば市の人口が増えているとか,です。

都市と地方が「つながる」ことによって地方は得をします。中国の事例ですが,私の研究でも地方都市化間の格差を固定化する効果よりも都市の恩恵が地方にいく効果の方が大きいと出ています(岡本2012)。


3.地方が消滅することは悪いことか?

すべての地方が都市とつながったとして、すべての地方にメリットがあるとは考えにくいのは確かです。日本の人口が減少傾向にあるために、地方に行くのが便利になった、都市の混雑がいやで地方に住みたいという需要が出てきますが、すべての地方を潤すほどの労働者と消費者がいるわけではありません。

となると、やはり一部地方には、消滅するリスクが存在します。

しかし、ミクロ的な個人の感情を除いて、マクロ的な経済全体としては地方消滅にはメリットがあります。

都市化は災害、環境、エネルギー、そして経済の生産性向上に力を発揮します(グレイザー2012)。

都市の方が災害の被害が少なく、環境にもやさしく、エネルギーを節約することが可能です。

自宅で各部屋に家族が散らばってエアコンを各部屋ガンガンかけるよりも、リビングに集まっているほうが、環境とエネルギーに優しいのと同じです。

それに加えて、多くの多様な人々が都市に集まるため、新しいアイデアが生み出され、生産性が向上する可能性も増します。生産性が向上すれば、その都市が経済発展を牽引します。この意味でも都市は「人類最大の発明」であるのです。(この意味では、東京はさておき大阪は頑張ってほしい。)

ただ、個人的あるいはミクロ的には、地方消滅には物悲しいものがあることは否定できません。自分の育った村が、朽ち果てていくのをみるのはつらいことでしょう。

しかし、それでも郷愁という感情を我慢すれば,自然淘汰としての地方消滅、そしてその反対の現象としての東京一極集中は、国全体としては便益の方が大きいのです。

<参考>
岡本信広(2012)『中国の地域経済: 空間構造と相互依存』日本評論社
エドワード・グレイザー(山形浩生)(2012)『都市は人類最高の発明である』NTT出版
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2015年12月15日

地方を発展させるためには

アゴラでの元ネタ

地方創生VS地方消滅という面白い議論が展開されていたので,遅ればせながら参戦(笑)

まあ何事も結論から単刀直入に言う方が人に伝わりやすいので,結論を先に行っておきますね。

経済活動は一部地域に集積するけど,距離とか移動の妨げがなくなって経済圏が一体化すると,消費と所得は平準化するというのが経済学の知見です。その法則(仮説)からすると,地方創生のためには都市とつながろう,というのが私の意見。


1.経済学の知見

世界銀行は『世界開発報告2009-変わりつつある世界経済地理』を発表しました。(日本語の概要版がこちらでダウンロード可能になっています。)

これは,地域,都市経済学(あるいは空間経済学)のこれまでの研究成果にもとづいてまとめられたものです。ざっくりこの本の主張をまとめると「経済活動は一部地域に集積するけど,距離とか移動の妨げがなくなって経済圏が一体化すると,消費と所得は平準化する」といいます。これが現在の経済学のスタンダードな見方です。これにもとづいて考えていきたいと思います。


2.都市化は進行する

まず,日本でみても,世界でみても都市化は上昇の傾向にあり,それがひっくりかえることはないです。

それは長坂さんのデータが示すとおり。

東京のみなさん、まだイケダハヤトで消耗してるの?


世界の都市化率についても同じことがいえます(UN-HABITATの統計もそれを示している)。

つまり,一部地域、都市に人々が集まり経済活動が行われるという集積の傾向は変わりません。なぜそうなるかは一言で言ってしまうと,企業はコストが減少し,消費者は便益が増すからです。市場経済が発達し,人々の意思決定が自由であるならば,都市の方が地方よりも経済活動は行いやすいのです。


3.都市ががんばれば地方も豊かに

経済活動が一部都市に集積すると地方はどうなるんだと思われるでしょう。でも、安心してください。都市の発展は都市以外の地域、過疎地域も含めて所得を引き上げます。

高知県が貧しいということはなく,人口の集積具合に比べれば,東京都と許せないぐらいの格差があるわけではないです。

平成24年度の統計(人口と1人当たり県民総生産)をみてみましょう。東京の人口は1324万人です。日本の総人口10%以上の人が東京に集まっています。一方高知県は75万人,日本総人口の0.6%です。圧倒的に東京という大都市に人が集まっています。(近隣の神奈川,埼玉,千葉を入れると3000万人を越える!)

1人当たり県民総生産では,1位の東京が442万円であり,2位愛知344万円,3位静岡320万円と続いていきます。高知県は225万円(45位),沖縄県204万円(47位)です。東京が圧倒的に経済活動が集積しているので当然としても,3位の静岡は高知県の1.5倍程度です。

つまり経済活動の集積具合に比べて,所得の差は小さいです。また,お隣中国の上海と貴州の差が約4倍あることを考えれば,所得水準は平準化しているといえるでしょう。(ちなみに10年前は10倍開いていた。)

世界的にみても、先進国は都市化が進んでもそれ以外の地域は貧しくなったかというとそんなことはなく、やっぱり豊かになっています。

経済活動はなくなってきて、地方は閑散としてきたという実感があったとしても,高知県の人の所得と消費が東京に劣っているということはあまり感じられません。

つまり集積して東京が発展すると,地方にもかならず恩恵があります。これが経済の波及効果といわれます(経済学者ハーシュマンは浸透効果と名付けた)。

東京が発展すると,フィリピンの辺鄙な島にはなんの効果はありませんが、高知県、はては沖縄県にも恩恵は波及しているのです。この違いはつながりです。東京と高知,沖縄はつながっていますが,東京とフィリピンのつながりは薄いです。

経済は相互につながっています。一部地域の都市化のみ,あるいはその反対に一部地域の過疎化に焦点をあてても,本質を見落とします。


4.地方は何をすべきか

地方は何をすべきでしょうか。水谷さんが,地方の観光化とかゆるキャラ戦略に金を使うなと,提案されましたが,まさしくこの通りだと思います。これは得策ではなく,確かに無駄な可能性が高いです。以上でも述べたように,人は都市に集まっていくからです。

では何をすべきか?

東京,愛知(名古屋),大阪といった都市圏と「つながる」ことです。高速道路,鉄道,空港,物流センターなどなど,都市とつながることです。情報でいえば,インターネットを普及させることです。財・サービス,人,お金,情報が常に都市とつながっている状態にすることを考えるべきです。

財・サービス,人の移動に関わるコストを下げる方が有益です。

もし,公共事業がきらいなら,iPadのようなガジェットを県民に配り,使い方の講習を行うべきです。そうすれば地方は都市という経済活動の恩恵を受けることが可能です。

イケダさんが高知県に住むことを可能にしているのはまさに現在の日本の各地方が都市との強い「つながり」を確保しているからだといえます。東京への移動に1週間もかかるとか,ネットがないとかになれば,高知県はもっと貧しくなっていたかもしれず,そうすると東京の人がそこに住むという選択肢もなくなります。

世界をみると先進国と途上国に分かれています。途上国の特徴は,先進国との垣根が高い,国境による封鎖度(手続きが煩瑣だとかVISAが発給されにくいとか),世界市場へのアクセス悪い(内陸部だとか,空港がないとか)といった問題があります(世界銀行の報告書)。

中国も地方と都市部(上海,北京,天津など)との格差は開いていましたが,高速道路,高速鉄道,空港の整備などによって一国の時間距離は大幅に改善しました。また戸籍など人の移動を妨げる制度もありましたが徐々に改善し,地方と都市部とのアクセスは改善してきています。これが近年の中国国内の格差縮小,地方発展につながっています。

日本も地方創生を考えるのであれば,都市とのアクセスをさらによくすることです。それにより,都市の発展の恩恵を地方に分配することが可能になるでしょう。
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2015年12月08日

物流や交通インフラ

中国でも日本でも国内市場の統一には物流センターや道路、鉄道、港湾の整備がなされます。物や人の集散地を設けることにより、効率的に物や人が市場の隅々にまで行き渡ることが可能になります。

問題はどこに物流・交通インフラを設置するかです。これは市場が決定するというよりも政府が決定します。

まず大都市間で物流・交通ネットワークを構築することが考えられます。大都市は財・サービスや労働を必要とするために、そこへのネットワークを構築することは利便性を高めることになります。

次は中都市を巻き込んだネットワーク、そして小都市を巻き込んだネットワークでしょう。これにより市場の隅々にまでネットワークが張り巡らされ、財・サービス、労働の取引が可能になります。

問題はこの次です。物流・交通インフラの整備が終わり、ネットワークの改善が行われたとします(鉄道の高速化、道路の拡張、港湾、空港の整備、物流センターの効率化など)。

そうすると各都市に作られた物流・交通インフラは競争を始めます。空港を例に挙げてみると、日本でも各地に空港が建設され、県によっては2つの空港が建設されます。路線によっては採算の度合いが違ってくるでしょうし、場合によっては行き先の乗り換えが便利という、ハブになる空港が出てきます。空港が競争淘汰の段階に入ります。

物流センターも同じで各地でコンテナ輸送の乗り換えや集散が行われます。そうすると、空港も物流センターも多層化します。つまり一部の物流・交通インフラは大広域を範囲とするハブとして、そして一部は中広域を範囲とする地域性のハブとして、そして残りは小地域を対象とするセンターになっていく、というように、カバーする範囲の違う役割を持ったインフラになります。

この競争によって、もしかしたらネットワークの中に必要のない物流・交通インフラが出てくるかもしれません。いわゆる無駄な交通インフラがあぶり出される可能性がでてきます。

国鉄がJRに変換した時に、不採算路線の閉鎖などが話題になりましたが、まさに物流でも交通でも使われなくなったインフラをどうするかという問題が発生します。

公共財として政府が補助金を出し続け維持していくのか、それとも市場淘汰に任せるのか、対象地域の持続的成長にもかかわる大きな選択が、政府と地域住民に迫られることになります。
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2015年11月10日

浙江工商大学学報に

昨年神戸大学で開催された都市化に関する会議でコメントした内容が発展して,以下の成果になりました。

冈本信广(2015)「城乡一体化的艰难前行」『浙江工商大学学报』(2015 年9 月)第4 期(总第134 期),pp.112-117(招待論文)DOI:10.14134/j.cnki.cn33-1337/c.2015.05.014

都市農村一体化の難しい点は,都市農村二元制度と農民の利益調整であることを主張しています。

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2015年11月03日

産業連関分析手法の動向

10月10日には日本地域学会第52回年次大会(岡山大学)で,10月31日には環太平洋産業連関学会(通称PAPAIOS)第26回大会(明治大学)で,討論者として参加しました。どちらも産業連関分析に関するものです。

藤岡明房 「産業連関表の単位構造分析 についての一考察 」 へのコメント
陳・申・山田 「中部地域における生産構造の経年変化に関する一考察」 へのコメント

です。上記は単位構造(故尾崎厳先生)について,後者はAPL(平均世代波及数,平均波及長)の分析手法を使っています。

1)産業連関分析の動向

産業連関分析には時代的な波があります。レオンチェフが産業連関分析を発明後、その経済予測の正確性から経済モデルとして世界的に普及、統計的にはSNAの発展につながるとともに、経済の実証分析としてはレオンチェフ・パラドックスなどで貢献しました。

これらの貢献でレオンチェフは1973年にノーベル経済学賞を受賞。この辺りが産業連関分析のピークとなります。しかし,その線形性,作表の困難さ,モデルの柔軟性のなさ,などから,1980年代、1990年代に衰退します。

復活のきっかけは,空間経済学の勃興です。空間分析のツールとして1990年代後半より実証用データとして使われるようになりました。最近ではサプライチェーンの広がりによって付加価値貿易の分析など、新たな活用が広がり、Koopmanらの論文がAERに採用されるなど、経済学的に大きく貢献しています。また環境、資源、道路計画など工学分野でも活用されています。

2)単位構造は復活可能か

慶応大学の故尾崎先生が提唱した単位構造分析(Unit Structure Analysis)というのがあります。これは最終需要一単位を生産するのに必要な中間財投入構造(すなわち単位構造)を明らかにするというものでした。そしれ彼の実証結果は,単位構造は時系列的に見ても安定しているというものです。

これは産業連関表の前提である投入構造の安定性を示しているともいえます。分析手法がシンプル,導かれるファインディングスも結構頑健性のあるものであるため,最近では誰もつかっていないのが現状です。

もしこれを復活させるとするならば,やはり空間的な使い方が必要でしょう。つまり非競争型(輸入と国産財は別ものとして扱う)の表での単位構造の位置づけができる,あるいは国産率(藤川先生,長谷部先生)に関連した展開があれば,何かしらの使い方は可能かもしれません。でも単位構造は安定しているという尾崎仮説を覆す発見ができるか,できたとして,その理由は何かを考える必要がでてきます。

3)APL(Average Propagation Length)

最近の注目手法はAPLです。産業連関が前方連関,後方連関の強さを表わすというところから,産業間のつながりの「長さ」を分析することに成功した手法です(Ditzenbacherなど2005)。猪俣(アジ研)はこれらを図解する方法を考え出し,見方によっては新たな産業連関の発見につながってきたといえます。

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2015年10月06日

『東亜』COMPASSでの連載 第8回(最終回)

霞山会の月刊誌『東亜』2014年1月号から,3ヶ月に1回のペースで時評を担当しています。 最終回は 「都市化の推進には行政・財政改革が必要である」 です。 リードより。

【リード】

 新型都市化は農民工の都市住民化(市民化),都市建設が中心的テーマとして語られる。しかしこれらを実際に実施するには,行政と財政の改革が不可避だ。とくに均等化した公共サービスの提供,都市化に必要な資金調達,効率的な行政体制の確立が急がれている。

2ヶ月ぐらいすればWebで読めるようになるかと思います。約2年間,霞山会さんにお世話になりました。いい機会をいただき感謝です。

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岡本信広(2015)「都市化の推進には行政・財政改革が必要である」『東亜』No.580,pp.4-5
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2015年09月15日

中国の政策を追うということ

中国ウォッチャーは,中国共産党や政府が発する文件や政策に注目します。どの国でも経済政策は政府から提出されますが,中国の政府文件はとくに注目されているように思います。

中国の政策を文件から丹念に追うメリットはどこにあるのでしょうか。私は以下の二点が理由としてあげられると思っています。

(1)言論の自由がない
中国には言論の自由がないため,中国経済や現状の問題点や負の面が報道されることはほとんどありません。結局,中国の課題というのがつかみにくいということになります。

中国は改革を進めています。改革を進める分野がどこなのか文件が出され,改革を進めようということになります。これはとりもなおさず変えなければならない課題ということを意味しています。国有企業の経営効率を上げようという改革は,すなわち国有企業の経営効率は悪いという認識が政府内にあるということです。

(2)政府の力が強い
中国の経済政策は,とくに政府の役割が強いです。政府は国有企業を通じて大量の国家プロジェクトを配分するとともに,民間企業に対する有形無形の行政指導が行なわれています。そして幹部の評価制度により幹部は中央政府の政策を忠実に実行しようという動機になります。

中央の指示が厳密に実行されるかどうかはさておき,地方は何かしら形を変えて政策を実施しようとします。中央の指示に対する地方の反応により(いわゆる「上に政策あれば下に対策あり」),政治的には中央地方関係の動きがあわかるとともに,経済的には地域の特殊性や課題がわかります。


ただ政策ウォッチで注意する点として以下を指摘しておきたいと思います。

(1)過去との整合性
政策文件は過去からの流れがあるため,特別新しいことを言っていないということが多々あります。とくに国有企業改革のような既得権益の改革は表現が曖昧になったりする一方,一部では具体的になったりします。

一路一帯にしても新しいプロジェクトが一路一帯でいきなり出てきたように見えますが,すでに地域政策で実施されていたものが書き込まれたりします。過去の流れを把握しておかないと,意外に新規性は小さいということもよくあるので,新しい名前の文件には気をつける必要があります。

(2)現実の問題
政策文件は絵に描いた餅です。その餅が実際にどうなるかどうかは,政策が現実に実行されてはじめて判断されないといけません。政策文件は現実ではないという点に気をつける必要があります。つまり「中国経済は文件で起きてるんじゃない,現場で起きているんだ!」(踊る大捜査線風)というわけです。

私も含めてウォッチャーは往々にして文件ばかり気にして,現実把握が遅れがちになります。経済政策として文件を把握する場合はとくに,ある一定期間ののち,文件と現実を照らし合わせて,何かしらの政策評価は必要でしょう。

最近,自分の仕事をふり返りつつ自戒を込めて書いておきました。
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2015年09月08日

中国は脅威か?

ちょっと聞かれることがあるので,自分の考えをまとめる意味で。

中国は半植民地経験から先進国による覇権主義をひどくきらう傾向をもっています。

ソ連と蜜月の時代はあったものの,第三世界(途上国)の盟主(あるいは代表)という自認のもとで,独立した外交政策を展開してきました。

そのため自国の安全保障は,どの陣営に属するということなく,自らの軍備整備,核開発と人民解放軍の近代化で行なってきました。

安全保障という点では他国との同盟や協調という路線を採用しなかったので,軍事的には自衛の範囲を超えやすくなります。日本のように安全保障がアメリカの傘に入っている場合,自衛権以上の軍事力拡大は抑制されます。

中国の場合,他国から独立した外交戦略を採用するために,自衛武力の大幅な拡張を可能としています。

実際,台湾に対しては武力解放を辞さないという姿勢ですし,エネルギー安全保障という観点から南沙諸島への実効支配を強めてきました。

中国がアジアにおいて国際政治力における均衡(平和)に影響を与えているのは事実です。この武力拡張路線に傾倒しやすい点では脅威ですが,実際に他国への攻撃がおきるかどうかは疑問です。

それは対内的な問題(格差や腐敗など)への対応に力を注がざるを得ないという現実を抱えています。事実,国内治安維持費の支出が軍事費より大きいです。

したがって,中国がアジアの国際政治力の均衡を崩しつつあるのは事実です。しかし,他国へ武力行為を働くほどの政治力の均衡破壊はないでしょう。

現在のアジアは,安全保障という観点からは中国,アメリカ(韓日を含む)によって政治力の均衡が維持されているという現状がある以上,この2国の政治力の綱引きに注目しつつ,そしてその中にいる日本はどうあるべきかという認識は持つ必要があるでしょう。
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2015年09月01日

千葉ニュータウン

千葉県企業庁(千葉県の街開発を行う公営企業)が今年度で終わるということで,千葉ニュータウンの開発についてもヒアリングを行いました。(千葉ニュータウンの案内はこのファイル(PDF)を参照)

ヒアリングの備忘録として。

・千葉ニュータウンが開発されるきっかけとなったのは,@都市化による住宅用地の需要拡大,A住宅乱開発を防いで秩序だったまちづくりの必要性,B県内陸部の発展,C成田空港へのアクセス,である。

・1966年から事業が開始され,最初は多摩ニュータウンとほぼ同じ規模2900㏊,計画人口34万人を目指していたが,1986年には1930㏊,14万人の規模に修正された。この事業を行なっている企業庁は今年で解散し,精算事業は平成30年で終了する。

・1969年に新住宅市街地開発事業法が適用。用地の全面取得から整備,造成を経て分譲する事業が開始する。千葉県で行なっていたが1978年宅地開発公団(住宅都市整備公団を経て現在のUR,都市再生機構)が参画。企業庁が用地の取得を担当し,公団側が造成,販売を担当することとなった。(多摩ニュータウンは,事業分担ではなく地区でUR,東京都と分かれている。)

・社会資本開発にも力を入れており,道路,水道,調整池などを整備し,維持は市にまかすようにしている。

・農地買収は,農家の再就職問題にかかわる。農業を続ける場合は代替地の提案、別の仕事(例えば商業)に転換する意思があるのであれば、商業施設へのテナント区画の提供などの方法がある。
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2015年08月25日

日本の戦争謝罪について

8月15日に安倍首相が談話を発表しました。もっとも注目されたのは謝罪をどこまで盛り込むかという点だったわけですが,村山談話で一歩踏み込んだ謝罪がされて以来,各内閣は謝罪を入れています。

さて問題は,なぜ日本は謝罪を続けるのかという点です。謝罪を繰り返すというのは,謝罪が受け入れられていないということです。

BBCは,なぜ日本の謝罪は近隣から忘れられるのか,について日本のテンプル大学Dujarric教授の考察を紹介しています。すべて賛同できるわけではありませんが,参考になるのでポイントだけ紹介。

日本の謝罪が忘れられるのは3つの要因があるといいます。

一つは,謝罪が一進一退していること。閣僚による靖国神社参拝,従軍慰安婦問題,南京大虐殺はない,などの発言が与党から出ていることです。つまりメッセージ性がかけています。

二つめは,謝罪回数がかなり多いこと。しかしよく比較対象とされるドイツのケースと比べて,償いの対象(過去の行いの範囲,金銭的なものなど)が不足しているそうです。

三つめは,歴史認識についての国際政治の複雑性。北京は日米同盟に敵対し,日本を非難することで党の正統性を得ます。米国の朝鮮半島への影響力を下げるには韓国の対日批判を維持させたいと考えますし,また韓国も日本との連携を掲げたくても,それは国内政治での立場を悪くするのでできないという事情があります。

この記事は絶妙にバランスがとれています。

1つめは左の人,2つめは中道の人,3つめは右の人から支持されやすそうです。

一方で,国際情勢理解という意味では3つめがおもしろかったです。


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2015年08月04日

ジェトロ中国経済

『ジェトロ中国経済』8月号に寄稿しました。

岡本信広(2015)「中国の都市化とビジネスチャンス」『ジェトロ中国経済』No.595(8月号),pp.48-67

Web発行のみでしかもジェトロメンバーズ限定ですが,要旨だけ紹介。

□ 現政権が経済政策の一つとして実施しているのが「新型都市化」である。中国では戸籍・土地制度の下、都市と農村が分断している。労働移動、土地売買などさまざまな面において都市と農村が二分化しており、この制度的分断が都市化の障害になっている。
□ 歴史的にみると、都市化の抑制から推進へと政策方針が変更されてきた。従来、都市と農村を二元化することによって都市化を抑制させてきたが、市場経済化により現実的な都市化が進み、2000 年代以降、都市化が本格的に推進されるようになった。そのガイドラインとなるのが 2014 年の「国家新型都市化計画」(以下、「新型都市計画」)である。
□ 都市化にはメリットがある。一つは経済構造の転換である。都市化は輸出、投資主導型から消費型に構造を転換し、サービス産業を発展させることができる。もう一つは産業構造の高度化である。都市化は生産性を向上させ、中国独自の技術開発による「中国製造」を可能にする。
□ 「新型都市化計画」の特徴は、「人の都市化」である。都市に住む農民の農業戸籍を都市戸籍に転換し、農民を消費の主体としてサービス産業の発展に期待する。また、制度による都市と農村の分断を乗り越える制度改革が実施される予定である。
□ 中国の「新型都市化計画」の推進は、日本にもメリットをもたらす。農民工(農村出身の出稼ぎ労働者)は新たな中間層(ボリュームゾーン)の予備群であり、インフラ建設、社会サービスをはじめ中国市場の活発化が期待される。

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