2015年07月28日

幕張新都心

7月25日に千葉県企業庁にて幕張新都心開発についてのインタビューを行なってきました。その備忘録として,幕張新都心の開発についてまとめておこうと思います。

千葉県企業庁は,国の公営企業法に則った,県によって運営されている公営企業です。主な事業は,土地買収,土地造成,土地分譲を主体とした都市基盤整備事業,および工業用水道事業であり,これまで千葉の内陸,臨海工業団地の開発に携わってきました。(以前は開発庁という名前だった。)

現在は,幕張新都心,千葉ニュータウン,つくばTX沿線開発が主体的な事業になっています。

幕張新都心の開発はここに詳しいのですが,簡単に状況を整理しておきます。

幕張新都心は千葉県が1973年から埋立造成して開発してきた都市で,国際交流業務機能(メッセ),中枢的業務機能(先端成長産業誘致),研究開発機能(大学,研究機関の誘致),住宅機能(ベイタウンなど)の一体的集積を目指して作られてきました。

1989年に完成した幕張メッセ(国際コンベンションセンター)より新都心建設が始まります。まだバブル期であったので1994年までに現在の代表的な企業(東京ガス,テクノガーデン,IBM,ワールドビジネスガーデンなど)によってオフィスビルが建てられました。現在約410社の企業,約4万人の就業者が幕張で働くようになっています。

1995年より幕張ベイタウン(住居)の入居が開始されます。住居開発では全国でも珍しい借地権による分譲形態でした。企業庁が開発した土地の所有権を持ちつつ,借地権のまま土地を住宅開発企業に譲渡,そしてその企業がマンションを建設し販売するというものです。これにより分譲価格に土地代金を反映することなく,相対的に低価格で販売できるというメリットがあります。(ただ現在は人気のためやはり価格は高い。)

日本経済のバブル崩壊後は,企業誘致に困難を極めます。

進出企業に分譲地を購入する体力がなくなってきたため,企業庁が考えた方法が住宅地と同じように事業用借地権の設定によって土地活用を促すというものでした。現在の三井アウトレットパークのあるところは事業用借地権で企業誘致をしている場所です。

もう一つの困難は,文教地区に誘致する予定だった大学も,大学の都心回帰志向により,誘致が見込めなくなったことです。文教地区ではアジ研やインターナショナルスクールの誘致のあと,新規の学術,教育機関の誘致の可能性がなくなってきました。そのため未利用地にするのはもったいないことから,地目を変更,住宅地にして,住宅開発にあてました。これも来年から入居が始まるようです。これにより幕張新都心の土地はほぼ開発済みとなります。

今後,千葉県企業庁は幕張新都心開発から撤退する予定です。(企業庁自体が使命を果たしたということでなくなる予定です。)これまで幕張新都心は千葉市にありながら,企業庁の管轄にあるような感じでした。県と市で協議会が設置され,街の維持,メンテナンスは千葉市に移行していきます。(千葉市に幕張新都心室が設けられた。)
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2015年07月07日

『転換を模索する中国』出版シンポジウム

7月1日に東京国際ブックフェアにて,私が監訳した本のシンポジウムが開催されました。

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来賓として原著の主編である高尚全先生と日本からは推薦人になっていただいた中兼和津次先生(東大名誉教授)からお話をいただきました。

高尚全先生は元国家発展改革委員会の副主任(副大臣)で,改革を主張する大御所です。

基調講演では,「改革の全面的深化」と改革の方向についてお話をされました。勉強になった点を3点ほど。

1)改革の全面的深化は三中全会の前に党中央に建議したものである。これによってこの言葉と習近平を中心とする現在の改革の全面的深化の領導小組が組織された。改革の突破口は公務員や幹部の財産公開である。

2)改革の特徴は全面的でありながらも,改革の的は反腐敗による公務員の任免制度の確立である。各地方のリーダーが改革に責任を持ち,現状をみて的確な身を切る改革が必要。

3)改革に終わりはない。2020年までに全面的小康状態を目指し,農村の貧困をなくす方針であるが,困難が伴う。改革の肝は農民の資産(宅地や請負権)の流通により,農民資産のマネタライズが必要であること,農村都市間で双方向の生産要素の流動が必要である。

中兼先生は中国の改革を,発展,体制移行,現代化の三つのキーワードで説明されました。

1)経済発展においては低所得国から高所得国への移行には産業構造高度化が必要であること。

2)計画経済から市場経済への移行においては政府の関与を少なくすること,とくに国有と民営では国有企業の民営化は必須であること。

3)現代化では,人治から法治への転換が必ず必要となること。

私自身も,中国の改革は「政府の退出」であるという点,レントシーキングをなくすにはさらなる市場経済化が必要であることを述べさせていただきました。

出版お披露目という意味もあって,あまり深い議論はできませんでしたが,本書の監訳に携わることによって中国の改革がより深く理解できたと思います。

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2015年06月30日

『東亜』COMPASSでの連載 第7回

霞山会の月刊誌『東亜』2014年1月号から,3ヶ月に1回のペースで時評を担当しています。 第7回は 「ゴーストタウン(鬼城)と都市の衰退」 です。 リードより。

【リード】
 中国の内モンゴル自治区にあるオルドス市はゴーストタウン(鬼城)として日本では有名だ。オルドスのゴーストタウン化はバブル経済崩壊の予兆として報道されるが,ゴーストタウンの実際は資源依存型都市の形成・衰退の過程である。中国政府も資源依存型都市の転換に取り組んでいるのが現状である。

2ヶ月ぐらいすればWebで読めるようになるかと思います。

岡本信広(2015)「ゴーストタウン(鬼城)と都市の衰退」『東亜』No.577,pp.4-5

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2015年06月23日

翻訳書を出版しました。

翻訳書を出版しました。

本書は成思危、肢ネ寧、呉敬l、林毅夫等著、高尚全主編(2013)『改革是中国最大的紅利』人民出版社が原著です。

中国国内の経済学者たちがそれぞれの専門分野から,中国の課題と改革の方針を示しています。



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本書の出版を記念して,第22回東京国際ブックフェアにて,主編者である高尚全氏(中国経済体制改革研究会名誉会長、国家経済体制改革委員会元副主任),日本からは中兼和津次氏(東京大学名誉教授)を招いて,セミナーを開催します。

日時:7月1日水曜日午前11時〜13時
場所:東京ビックサイト西1ホール
小間番号:2-28
セミナー会場:西1ホール中二階

==監訳者による本書の紹介から===

 中国が経済発展を遂げた大きな理由は、市場経済を導入して人々の積極性を引き出したことにある。それによって安い賃金を活かし、世界へ向けて製品を輸出し、大きく発展することができた。しかし、人々の積極性と低賃金労働だけに頼る発展は、すでに限界を迎えている。この先、中国の発展は頭打ちになるかもしれない。あるいは、限界を超えていよいよ先進国入りするかもしれない。
 本書の主張は、さらなる経済発展には、これまで以上の改革を行えるかどうかにかかっている、というものだ。改革の行く末を阻む腐敗、既得権益層、発展を妨げる格差、環境破壊など。これらを生み出したのは、これまでの体制であり制度である、というのが本書に収められた改革派経済学者の見方である。
 となると、今後の進むべき道はひとつである。改革によって体制や制度にメスを入れなければならない。しかし、現行の体制や制度によって利益を得る人々がいる以上、彼らが大きな抵抗勢力となり、その前に立ちはだかることは火を見るよりあきらかである。これまでは、「市場経済の導入」という目新しく、誰も敗者を生み出さない改革によって大きな発展を遂げてきた。しかし、この先は、必ず誰かが損を被る可能性をはらんだ改革がいよいよ始まる。
 本書は、中国のネガティブな問題や課題に目がいきがちな日本の読者に対して、今、中国はどのように課題に向き合い、対処しようとしているのか、その方法はあるのか、といった問いに対して、誠実な回答を試みている。これらは、既得権益を得る人々にとって大きな脅威である。したがって本書は、中国を本当に良くしたいと願う良識ある学者たちの「良心」が詰まっている。

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2015年06月09日

2015年5月の読書ノート

2015年5月の読書ノートです。

最近,本を読むことが少なくなってきています。

コーエンの『大格差』は別のエントリで紹介しているので,今月の1冊はなしでw

<経済>

伊東光晴(2014)『アベノミクス批判-四本の矢を折る』岩波書店 量的質的緩和は株価にも為替にも影響を与えていない。株価は外国人の買い越しで上昇。国土強靭化政策は予算化されていない。経済成長政策は具体性がなく人口減少下ではその時代ではない。安倍政権の右傾化を憂う。

八代尚宏(2014)『反グローバリズムの克服』新潮社 世界経済を見ると市場経済を活用している国は発展している。日本市場の国際化は消費者のため。少子高齢化に対応するには国内労働市場の流動性を高める。人口減少に対しても年令に中立な社会制度を。

<社会>

タイラー・コーエン(2014)『大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか』NTT出版 技術進歩に伴い機械と一緒に働ける人、働けない人で二極化する。特殊技能を持つ労働者の市場価値が上がり、人海戦術の必要な職は減少する。

<その他>

津守光太(2010)『aとtheの底力』プレイス theは他のモノとの区別・峻別を表す。話し手同士が了解しているモノにはthe。a/anはカタチをもつモノのリンカク、同じ種類のモノがいくつもあるうちの1つ。無冠詞は相手がわかっていないかつaをつけない名詞(リンカクがない)の時。
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2015年05月26日

社会科学の基本は政府対個人

社会科学を教えていて,思うことは社会の仕組みをできるだけシンプルにして,考えるというのがいいと思っています。またその仕組みのフレームワークとしては,社会を政府対個人の関係としてとらえるというのがいいでしょう。

個人が集まってできるのが社会です。その集まりには必ずリーダー格(あるいは仕切りたがり屋)が表れます。そのリーダー格の人はその集団に安全を保障するから金を出せという存在になります。これが国家の誕生です。

リーダー格の人は集団の政治を行う政府です。この政府は個人に関与し始めます。橋を作るから,ビルを作るからということで,個人を動員します。無償の労働力提供を強制するわけです。

政府が王さまとしてふるまうと,個人には自由がなくなります。やりたいこともできずに,ただただ政府のいいなりになり,彼のご機嫌を損なうとその社会で生きていけなくなるということになってしまいます。

個人が集まって,王さまを追い出したのがフランス革命です。個人の自由を取り戻すため,個人たちが「王さま」を選ぶ権利を得る,そして選ぶプロセスを発明したのが民主主義です。これにより,政府が個人たちを意のままに操るのではなく,形式的には政府は個人たちの意のままに動く存在になったのです。

現在も独裁体制的国家と民主義的体制国家があります。基本は,政府が個人に関与します。日本でも消費税をアップしてきたら,私たちは従わざるを得ないわけで,そこには自由はありません(あ,もちろん海外移住という選択は可能)。一方で,個人を自由にしたら社会は無秩序になってしまうという考えもあります。社会が秩序だって安心して暮らせるようになるには,個人の自由を抑えて政府が秩序を提供するか,個人が自発的に秩序を構成していくのか,どちらかです。

経済学では個人の自由が自生的秩序(ハイエク)を形成するとします。でもその秩序形成もうまくいかないことが多いので政府が関与すべきだ(ケインズ)という意見もあります。

社会の仕組みを理解する社会科学は,政府と個人というように二分化させるとシンプルに理解しやすくなるでしょう。
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2015年05月12日

上海社会科学院世界中国学研究所

上海社会科学院に新しく世界中国学研究所というのができているようです。

そこが近年「海外中国研究書目摘要」という本を発行していて,英文,和文の中国研究の成果を紹介しています。

その中で,私の本も紹介されていました。

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内容も的確に紹介していただいているので,中国研究に役立ててよかったと思っています。
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2015年04月14日

東亜』COMPASSでの連載。第6回目

霞山会の月刊誌『東亜』2014年1月号から,3ヶ月に1回のペースで時評を担当しています。 第6回は 「土地の国有化が難しいのはなぜか?−深圳を事例に」 です。 リードより。

【リード】
深圳は二度の土地国有化を通じて,農民,農村が存在しない都市化に「成功した」都市である。この経験から導かれる教訓は,土地需要の増加で発生した土地価値の利益分配のない国有化はうまくいかず,都市農村の二元構造は残ったままになるということである。

2ヶ月ぐらいすればWebで読めるようになるかと思います。

岡本信広(2015)「土地の国有化が難しいのはなぜか?−深圳を事例に」『東亜』No.574,pp.4-5
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2015年04月07日

『地域学研究』に

以下の論文が日本地域学会の学会誌に掲載されました。

岡本信広(2015)「中国産業連関表を地域化するのにFLQは有効か?」『地域学研究』第44巻第4号,pp.423-436

これはちょっとテクニカルなモノですが,将来的に産業連関表を都市地域に限定して推計したいというのがあって,その有効性を確認してみようというものです。

結論としては「なんともいえない」というのが現状で,それでも適切なパラメーターが推計できれば,全国の産業連関表から都市の産業連関表を推計できる可能性はあります。
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2015年03月10日

周其仁と姚洋の講演(中国経済経営学会第2回国際交流セミナー)

3月8日に拓殖大学で開催された2014年度中国経済経営学会第2回国際交流セミナー「中国経済改革の課題と展望」に参加してきました。

報告者は,北京大学国家発展研究院教授の周其仁さんと姚洋さんでした。

ここでは周其仁の報告の概要を備忘録として。

・経済成長率は2007年第1四半期の15%を最高に2014年第3四半期の7.3%まで下がってきた。

・下がった原因は,行政の関与が増えていること,物価下落により実質金利が上昇したこと,企業家精神が減少していること(国との関係維持に忙しい)。

・経済成長が下がったことで見えてきたことは,中国の生産コストは高いということ,債務が増加しているということ(とくに国有),過剰生産であること,である。

・それでも中国の経済成長には依然強みがある。一つは競争が激しいということ。社会保障はなく一般民衆は大変かもしれないが,とにかく市場で何かしら生き抜いてきているということ。2つ目はグローバル化によって中国にとっても新興市場が存在するし,グローバル化人材が蓄積されてきている。3つ目は,品質向上の余地があること。中国製は悪いかもしれないが,逆に輸入品に代替できるような製品も生まれつつある。4つ目は人口集積である。まだ都市化の余地が残されており,人口集積による経済成長効果が期待できる。

・中国経済が挑戦しなければならないのは,制度コストを如何に引き下げるかということである。中国では政府の存在によって税負担,規制,許認可,腐敗など制度が生み出すコストが高い。企業にとって政府との関係維持は大きなコストになっている。


報告後の質疑応答で,「制度コスト」を引き下げるにはどうしたらいいか,質問しました。

彼の答えは

・税率の決定や施行は法律に基づくべきであり,予算法の設立などその方面に動いている。(今は財政部や税務局が全人代から税率権限を授権しているという建前)

・市場参入をすすめること。北京で新しく始まったアプリ(「滴滴打車」:タクシー予約アプリ)が事業を始めるときに,まず政府はそれを認めない方向だった。現在でも一部の都市ではそれを拒否している。政府自体が市場参入の障壁となっている。

・審査や許可についても裁量的であるため,企業家の仕事は政府との関係に費やされ,品質改善や新しい製品の開発に向かないという問題もある。

ということでした。


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2015年02月26日

ネットと図書館

インターネットが発達し、Googleが「世界の情報を整理する」という野望を掲げるとともに、図書館の電子化に力をいれています。(著作権でもめて思うように進まないようですが。)

著作権はちょっと脇において考えると、書物がネットで見られるようになると、多くの人々の知的欲求をより便利により多くの情報で満たすことが可能となります。

例えば、著作権の切れた100年以上前の書物がネットで見られるようになると、人文系の人々にとっては朗報でしょう。これまで一次資料は一部の限られた図書館や一部の研究者でしか見ることができず、そのため多くの大学院生は一次資料にあたるのに苦労していました。

これがインターネットでもし見れるようになると、多くの人の当該分野への参入につながります。つまり図書館の物理的ロケーション、手続きなどが障害となっていて参入できなかった研究者の卵たちが、大御所と同じ資料アクセスを得ることができます。

これは「情報の民主化」です。図書館に閉じ込められていた情報が外部へ開放されることになります。

となると、これからの図書館はどうあるべきか、という問いが出ます。機械的なインターネットの検索結果ではなく、図書館員の専門知識による適切な資料の紹介(レファレンスサービス)、などで差別化される必要がでてきます(実際アメリカではそうらしい)。

この意味で図書館司書の専門性がますます高くなっていくような気がしています。
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2015年01月27日

「ググれカス」と「だから何?(So What?)」


私たちの欲しい情報はほとんどインターネットから得ることが可能です。分からないことがあればグーグル「先生」に聞けばほとんど教えてくれます。グーグルの検索機能は私たちの検索履歴からもっとも合うものと思われるものを上位に表示しますので,検索結果の中から最初の1ページ目か2ページ目で大体は手に入ります。グーグルは「世界の情報を整理する」という野望を成し遂げようとしているようです。(実際便利ですし。)

2chのスレでは,わからないことをスレで聞いたりすると,まず間違いなく

「ググれカス」

というとても暖かい(笑)アドバイスをもらうことができます。私たちはわからないことは人に聞くのではなく,グーグルに聞けば欲しい情報が得られるということを,多くの人が認識しています。

授業でも,あまりにも常識的なこと,中国の首都はどこですか,みたいなことを聞かれたら,笑顔で「ググれカス」と答えたいくらいです。それぐらい今は基本的な知識はネットから得られる時代です。

したがって,「これどうなっているんだろう?」とか「これは何かな?」という知識欲はまずネットで満たすことが可能です。

さて,話は変わって,学会で報告や院生の報告などを聞くと,「だから何?」というような報告がされることがあります。中国の生態移民はこうなっています!とか農村はこんな感じです!みたいな報告は,それに興味をもっていれば,報告を聞くことによって自分の知識欲を満たすことができますので,満足はあります。でも興味はたいしてないけどどうなんだろう的な気持ちで聞くと,なるほど,そうなっているのね,とはなります。

でもそのあとこう思います。「だから何?」

現在,知りたいことは良くも悪くもネットでわかります。便利な時代になっています。となると高等教育で教員が知識を供与するという役割は減ってきています。教員が中国に行ってきて一生懸命調べてきた中国の現在の状況を授業で話ししても学生にとっては,へ〜というような情報番組をみてちょっと賢くなったという感じを持つか,ちょっとできる学生だったら,やっぱり「だから何?」という疑問を持つでしょう。それぐらいだったらググればわかるんじゃね?と思う可能性さえあります。

インターネットで情報が簡単に手に入る時代です。となると教育も研究もいい問題意識,なぜこうなんだろう,どうしてこうなったんだろう,といった問いと,それに伴う自分なりの解釈(仮説)を持つということが重要になってきます。人は知って満足するのではなく,その解釈やフレームワークを手に入れたときに「わかった」「理解した」感覚を持ちます。

昔から学問では「なぜ」という問いを大切にしてきました。情報が簡単に手に入るだけに,知識欲だけではなく,なぜという疑問と自分なりの答えを常にもって,それを検証するために「ググる」というようなネットの使い方が,必要になってくるように思います。

情報化社会はより一層,いい問いを持つことが問われているように思われます。
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2015年01月13日

『東亜』COMPASSでの連載。第5回目

霞山会の月刊誌『東亜』1月号から,3ヶ月に1回のペースで時評を担当しています。 第5回は 「都市の中の村を再開発する−北京の「城中村」改造」 です。 リードより。

【リード】
北京では都市開発で取り残された村,「城中村」の都市化改造が進んでいる。基本は日本の都市再開発法と同じ方式をとるが,都市農村の制度が分断されているために,集団所有資産,農民の就業問題,社会保障問題の解決が必要となっている。

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2014年12月23日

都市規模を抑制するのは合理的か? 『ERINA REPORT』 12月号

今月刊行された『ERINA REPORT』に

岡本信広(2014)『中国の都市システム−都市規模を抑制するのは合理的か?』『ERINA REPORT』No.121,December,pp.3-11

が公表されました。

【要約】
 本稿では,中国の都市システムをランクサイズルールから検証し,現在中国政府が進めている大都市の抑制は合理的でないことを示す。ただし,地域開発戦略の一環として行われている都市圏や都市群の発展は大都市抑制の代替可能な戦略であることを主張する。
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2014年12月16日

神戸大学「新型城鎮化与中国経済社会動態」研討会

12月13日土曜日,神戸大学大学院経済学研究科で開催された「新型城鎮化与中国経済社会動態」のワークショップに参加しました。

「浙江省新型城鎮化模式研究」(浙江工商大学,張丙宣)の討論者をつとめましたが,四川社会科学院の丁延武による「成都試験区農村土地産権制度改革的主要創新与発展展望」が非常に勉強になったので,その備忘録を以下に。

成都の都市農村一体化試験区として重要な工作は産権制度の確立。農村では経営請負権のみ認められているが,その権利が各農民に付与された結果,農村では農地が分散化して,規模の経済が働かなくなっていた。そのため所有権はそのままにして,農地に対する権利を法律で確定し,土地の流通や払い下げなどを可能にし,流通をよくすることによって規模の経済化をはかる必要があった。

土地の流動性を確保するためには,産権(財産権)を明らかにすることである。権利を与えてもその法律的な保護(権能)が与えられないと意味がない。そこで成都では産権確定運動が展開され,各農村の農民代表大会などを通じて,細かな土地区画の確定,産権の確定が進んでいった。また耕地保護をすることによって補助金を出すことによって農地の無駄な開発を排除し,そして土地の権利を株式と同じように見立てて土地株式合作社を設置していった。

土地株式合作社は,農業サービスを中心とする組織である。共同購入や機械レンタルサービスなどを通じて,農業の生産性を向上させるというものである。

成都は産権確定運動がうまくいった地域である。ただ土地管理法,請負法,物権法との関連では法律のすきまにあるようなところもあり,再度検討する必要はあるし,農地は自由に取引できないなどの制約はある。それでも,取引(交易)プラットフォームを設置して,農地の流通,土地担保による資金融通など農業の現代化に貢献してきている。

大変勉強になりましたが,会議での議論を通じて疑問に思ったのが何点か。

(1)産権確定運動の誘因は村委員会や村長などへの利益供与かどうか。
(2)農地の産権を確定しても流通にはある程度歯止めがないと農地減少につながるのでは?
(3)集団所有建設用地と国有建設用地の共通取引がなぜ実施できにくいのか?

などです。産権を確定することによって農民は土地からの収益を自分のものにする,それを担保にお金を借りることができるなど,土地の資産化が可能となります。

となると都市化で土地が必要になると,土地の接収による補償金は今後も高くならざるを得ないでしょうし,国有地とすると今までの収益をどう保障するかという問題も発生するので,土地制度の都市農村一元化はさらに難しくなってきているという感想を持ちました。
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2014年12月09日

中国城郷(都市農村)規劃実施学術研討会

12月6日,7日と広州市広州大厦で開催された第二回中国城郷(都市農村)規劃実施学術研討会(中国城市規劃学会)に参加,報告してきました。私は分科会(3)「村庄規劃実施研究」」において,日本のポスト都市化の農村問題について報告し,質疑応答に答え,学術交流を行なってきました。

本会議の招待講演は,広州,武漢,成都の市規劃局の担当官より,都市や農村の都市化規劃の実施状況についての報告,そして同済大学,人民大学の法律担当の教授より,都市規劃法と農村規劃法の関係について報告がありました。

それらが面白かったので,以下備忘録として。

(1)広州市の都市化の問題は,土地制度の改革である。広州市は1000万人を超える大都市であるが,2/3は農村の集団所有地のまま都市化が行なわれている。このため都市化の土地,社会保険,インフラがすべて集団経済による建設となっている。都市化規劃を実施するためには,すでに集団所有地で生み出されている利益配分をうまく行なわないと,国有地への転換,都市規劃の実施に大きな困難をもたらしている。

(2)武漢市も1000万人を超える大都市である。武漢では農村の観光開発が行なわれているが,都市部ではストックの土地(現在ある土地)の活用が課題になっている。メインの観光道路(中山大道)を文化遺産を守りつつ特色のある町建設が行なわれている。

(3)成都では,2回の大地震の経験を乗り越え,再建と新農村建設が進んでいる。各農村に城郷規劃司を任命し,育成教育を行ない,農村において農民の意見を取り入れつつ,農村建設の規劃を制定,農民ととともに規劃を実施しているという。

(4)法律問題では,2008年に「城郷規劃法」が成立し,これが都市,農村規劃の根拠法となっている。しかし各政府部門(国土部,住宅管理部,建設部など)が規劃に関する行政通知を発令するとともに,各地方でも地方人大や地方部門が規劃に関する規程を公布している。このあたりの行政権限については法的根拠が難しいらしい。また住民に公益地として利用するとしながら規劃局が住宅商品販売のためのマンション建設に走って,裁判になるケースもあるという。
 「規劃」を設定しながら,それがブループリント(青写真)なのか,それとも守るべき行政法規なのか,このあたりの線引きは難しい。

いろいろ勉強になったことがあったので,そのうちまた別エントリで紹介したいと思います。
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2014年12月02日

応用地域学会全国大会in沖縄

琉球大学・沖縄産業支援センター主催で,今年の応用地域学会全国発表大会が11月29日,30日に沖縄で開催されました。

私は「中国の地域間分業と地域の「位置」」と題して発表しました。

内容は,中国の地域間分業は,内陸部が原材料,エネルギーなどを沿海部に供給するという形になっているのか,そして都市化が進む沿海地域は,地域間分業の上流に位置するのかどうかを,地域間産業連関分析(平均波及段階数Average Propagation Length)で検証,その結果,中国内陸部は沿海地域の原材料供給基地であるのはたしかだが,都市化が進む沿海地域は地域間分業の上流に位置しないことをあきらかにしました。

国際的には,日本やアメリカなどの先進国は都市化がすすみ,サービス産業も発展しているために,国際分業では上流に位置しています。つまり先進的なサービスや技術開発が発展途上国に広がっていくというサプライチェーンの上流にあることを意味します。

ところが,中国の先進地域は都市化やサービス産業化が進んでいるにもかかわらず,あくまでインフラなどの「都市建設」がすすむだけであり,地域間分業では上流に位置しない(つまり付加価値を生み出していない)ことがあきらかになりました。

いいかえると,中国の都市化やサービス産業化はあくまで内陸部の産業を需要面で牽引するだけであり,都市集積や都市部の技術開発はまだまだ進んでいないことが計量的にあきらかになったといえるでしょう。

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2014年11月20日

環太平洋産業連関学会第25回年次大会

11月15日,16日と岡山大学で環太平洋産業連関分析学会(PAPAIOS)の年次大会が開催され,私は2日目の「地域経済IIセッション」の座長と討論者をつとめました。

討論者では,陳・山田・井原 「愛知県経済の空間的相互依存に関する研究−中部圏地域間産業連関表に準拠して」 へのコメント を行ないました。

この報告は,私が『中国の地域経済−空間構造と相互依存』で行なった乗数分解法に基づいて,愛知県の中部圏における空間構造をあきらかにしたものです。私は,@推計手法,Aモデル,B結論の読み取り,についてコメントをしました。

セッションを通じて感じたことは,地域経済を分析・政策提言するとなるとどうしても自給率に目が行きがちだということです。地域経済の雇用と発展を考えれば,他地域からの財を移入するよりは自地域で生産できる方がいいです。でもだからといって,農林水産業やら製造業やらを振興支援するような結果になるのはどうかなと感じています。なぜなら経済は成長とともに産業構造は変わるもので,その変化の流れに関係なく現存産業の振興は必ずしも長期的な地域経済の発展にいいとは限らないからです。

このあたりの議論は国際経済学でもいう保護主義と幼稚産業保護論に似通ってきます。国際経済的には自由貿易や経済統合を論じていても,地域経済では保護主義的な議論を展開しやすい,というグローバルとローカルの衝突を改めて認識しました。
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2014年11月13日

中国は都市化の費用をまかなえるのか?

『東亜』に投稿した原稿が掲載されたので,その紹介。

岡本信広(2014)「新型都市化政策の評価−中国は都市化の費用をまかなえるのか?」『東亜』No.569 ,2014年11月号,pp.32-53

【要約】
 中国の新型都市化政策の推進には,都市インフラ建設ための費用のみならず,農村都市一体化のための制度改革費用がかかる。世界銀行と国務院発展研究センターは政府によって都市化の費用はまかなえるとするが,筆者のシミュレーションによれば都市化によって期待される税収は政府負担の三分の一しかない。新型都市化政策の推進には,どのように財源を調達するかが鍵となる。

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2014年11月04日

『うわさとデマ 口コミの科学』

中国経済をやっていると,よくもまあこれだけ中国の否定的な情報が流れるなと感じることがあります。もちろん否定的情報の方がニュース価値として高いのはよくわかっているのですが。

中国情報がデマとかうわさだとかまではいいません。でも一つの現象を見たときにどうして人は中国を否定的にみて,それを人に伝えるのか,「中国バイアス」の存在を理解する上で役に立つ本がこの本でした。

ちなみに「中国バイアス」とは,中国の各地域のGDP成長率が一国のGDP成長率よりも高いと,統計がおかしいとか(もちろんそれは問題),地方政府の盲目的投資拡大とか(もちろんその要素もある)などどうしても否定的にとらえることです。アメリカの経済成長率が州ごとに違ってもそんなにマイナス的な判断にはならないでしょうし,そもそもニュースにもならないかもしれません。中国だからこそネガティブにとらえられ,そしてネガティブに情報が提供されることが多いです。私はこれを「中国バイアス」と呼んでいます。



さて,本書の主張を簡単にまとめると

人は社会的存在であり、世界を理解したいという欲求を持っている。噂は共同で世界を理解し、脅威を取り除く手段でもあるが、人はとんでもないものを信じることがある。たいていの噂は確認されないが、噂が真実になるためには、集団に事実を探そうとする動機があり、事情通が存在し、意見の多様性、活発な議論が必要である。

といったところです。

人間は頭に浮かんだ考えで物事を解釈する傾向があります。これを認識構造活性化の法則というそうです。例えば,東北に旅行して美人をみたら,やっぱり東北美人だなと思うわけですが,これは人から東北美人という言葉を聞き,すでに東北に対して思考のフレームワークを持っています。この時,本当に体験すると,東北美人という思考と現実が一致し,そして人に伝えることになります。この意味で噂は思考のフレームワークを活性化させます。

ところで,噂とは、話し手と聞き手にとって重要か関心が高いとみなされ、真実と証明されずに世間に流布している情報です。中にはもちろん真実はありますが,その真偽を確かめることができていないのが噂です。

噂は,曖昧な状況や脅威に直面しているか,将来の脅威が予想される状況で生じます。災害などがその典型ですが,災害が発生すると曖昧な状況になり,人は情報を必要とします。現在こうであると確定できない状態です。あるいは脅威にさらされているときです。これも災害でよく起こることですが,津波がくる,火事が発生するなどさまざまな脅威が人をして噂を発生させます。

噂は、曖昧な状況の情報の空白を埋め状況を理解する、脅威をとりのぞくためにあります。災害では,必要な情報が足りません。そうなるとその空白を埋めようとして,人々の口に上がっているものを信じやすい状況になります。でもそのような情報を得ることによって,現在の状況を理解して安心することができます。

噂とどのようにつきあうべきでしょうか。ある噂が広まっている社会集団の中で,社会を構成するさまざまな人が自分のもっている情報を提供して、多くの人がその新しい情報を手に入れます。真摯に情報を求め、提供する姿勢がその社会にあると,その社会集団の中で噂は振るいにかけられ、理にかなった説明だけが残り,社会を正しく理解することになります。

この意味で,私も中国情報をできるだけ客観的に説明していき,否定的な情報だけでない,別の中国説明を試みていきたいと思っています。
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