2016年12月06日

イスラム法と中国の国内法

11月28日にいつものChina Instituteセミナーに参加しました。

The Impossible Law: Sharia in China
Prof. Matthew Erie (University of Oxford)



甘粛省でのイスラム社会(回族)で1カ月滞在して研究した成果のようです。

概要に入る前に確認しておくと、欧米では多くのイスラム教徒が住んでおり、彼らは彼らの宗教法(シャーリア法)にしたがって結婚や離婚などを行います。ただ中には女性の人権を無視するような法運用があり、その国の男女基本法のようなものと抵触したりします。

一方で国家の法律がイスラム法を厳しく制限する場合もあります。例えば、フランスでイスラム教徒用の水着(ブルキニ)の着用を禁止する法律が公布されたりします。イスラム法と国家法との関係は常に緊張関係にあります。

いわんや中国は漢族を主体として共産主義を標榜します。そして宗教を認可しません。でもこの中で多くの回族がイスラム教徒して生活しています。中国の国家とイスラム法との関係を考えたのが今回の報告でした。

備忘録として。


・イスラム教徒は国内法で認められていない中どのようにシャリア法を守るのか。
・清真(pure and true)という形で食事の禁忌は守っている。1億1700万人の少数民族の中で2300万人のモスリム。憲法第4条で少数民族を規定、寧夏と新疆が法で認められた自治区、回族習慣法を名目的に認める。
・清真寺(モスク)、教法(イスラム法)、UKとは違ってシャリア法は法で規定されていない。中国は宗教は認めず、国家の介入を認める。(今年、法を改正してextreamistを禁止)他の少数民族でも習慣や規範は認められている。
・UK、フランス、USでもモスリムを認めないことはよくある。
・中国ではどうしているのか?モスクに入るとモスリムの教えに従い、モスクを出れば国家に従う。
・清真(ハラル)の概念は国家recognizedされたシャリア法の一部。ハラル証の申請には中国モスリム協会や宗教局の許可をもらう。生産から消費までの過程すべてにおいて各局が許可していく。ハラル食品の輸出がマレーシアやインドネシアなどに始まっている。国内法に従うとともにハラルとして認められなければならない。回族自体は中東などと交渉できない。
・2002年ハラルフード管理法ができる。その中で基本は清真の飲食習慣としつつ「イスラム法」という言葉を使っている。
・海外でのモスリムの活動が過激化、上海で回族が牛肉麵屋を襲う、これは400Ⅿ以内に同じ店は作れない(?)というイスラムの教えに違反している、もう一つの新疆、寧夏が使っているハラルのサインを青海の回族が使用してたという問題もあった。
・禁忌(タブー)をどのように法律にするか。漢族が禁忌を起こすと回族との対立につながる可能性も。
・回族の危機は国家の危機にもつながりかねない。国家は強い態度で臨んでいるが・・・

Q&A
・回族の政府職員のラマダンは認められていない。
・中国イスラム協会は政府側だけども、地元の要望も吸い上げなければならないので、重要な役割。
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2016年11月22日

「張り子の虎、隠れた龍」

11月17日にSOASで開かれたBook Launchに参加しました。

Paper Tigers, Hidden Dragons
Professor Douglas B. Fuller



Fuller教授が上梓した上記の本の概要を話すというセミナーでした。意味深なタイトルですが、要点は

国家が国有企業に資金面等でR&Dを支援しているにも関わらず、技術水準は向上していない(張り子の虎)。それでも中国が技術的に向上してきているのは、海外資本と国内起業家の組み合わせHybridsの活躍がある(隠れた龍)。

です。

話の内容を備忘録として。

・中国は、市場経済制度が不完全にもかかわらず、そして過剰に国有企業に技術改造を応援しているにも拘わらず、技術向上が観察される。その答えは合弁企業(Hybrid)、すなわち海外資本と国内起業家の組み合わせにある。
・技術向上は技術的な学習と技術発明からなる。
・企業タイプは、国内企業(国家資本調達がしやすい)、国内企業(国内資本調達が難しい)、多国籍企業、Hybrids企業がある。
・国内国有企業は金融を支援を受けて技術向上に取り組む→しかし技術向上への貢献は少ない。多国籍企業、Hybridは貢献が大きい。
・開発区の役割ー政治的に投資を呼び込みGDPの上昇が背景。それ以外の要因国内調達などは軽く見られる。
ファンディング制度が弱いーFundが設置されても、アーリーバードの段階やアイデアの段階での投資は行われない。しかし、華人VCや海外VCは技術関連の投資を行う傾向がある。
・LENOVOは最初は資金不足、その後国家サポート(資金面、国家調達(国内市場)面)した結果、低利益のPCにこだわっている。(他の海外企業は多角化しているにもかかわらず)
・しかしHUAWEIは例外だ。民間企業として同じように国家認識はあがったが、海外市場へ展開し自己資金調達にこだわっている。
・多国籍企業は最初は安い労働力から進出してきた。技術漏えいを防ぐためにR&D過程を細分化、人材を集められない。一方でHybrids企業は中国資源を最大限活用、興味ある技術職を提供し、国内人材を受け入れている。 
・中国国内企業のR&D投資は大きいが、Patent申請数は少ない。(Hybridsがトップ)
・外国投資が外国制度を持ち込み、発展のエンジンになっている。ただ人種的なshareは必要だろう。
・グローバリゼーションの進展で、市場モデル、国家モデルではなく、国際ネットワークは技術的な資源配分を可能にしている。

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2016年10月18日

中国経済は脅威となるか

China’s Economy: Powerhouse, Menace or the Next Japan?
Mr. Arthur R. Kroeber (China Economic Quarterly)

今回のSOASのイベントはChina's Economyの本の著者であるクローバーさんの講演。



以下は講演メモ。


中国は成長、貿易、投資でも大きな存在になった。

この成長には以下3つの要因が考えられる。

一つは、他の東アジアと同じように東アジア国家モデルであった。農業における余剰労働力を活かしつつ、政府による政策、インフラ、金融が整えられ、製造業の輸出が大きく伸びた。ただ他の東アジアとは違うのは大量の外資導入と国有企業の存在である。

もう一つは移行経済で効率化したことである。計画経済から市場経済で資源が民間に配分されていく過程があり、一般に民間に資本が移行し高い収益率がもたらされた。国有企業でも民間企業が国有企業を囲み、競争環境を激しくしてきた。少なくとも、民営化よりも競争が国有企業の効率化をもたらした。

三つ目は、統治に特徴がある。中国は中央集権化されているが実際には分権化された状態である。投資については地方政府が決める部分も多い。中央が抑えながらもボトムから競争が発生する。

中国の経済的決断Economic Decisionには二つの制約がある。

一つは内部制約。共産党が中心であることを求めつつ、成長を最大化している。これは経済コントロールと規制緩和が衝突する。

もう一つは外部制約である。他のアジア諸国は米国の保障の下にあり米国の市場を利用できた。中国はアメリカと敵対していたために外国資本を入れることによって世界市場アクセスを改善した。米国に合わせながら中国ルールの確立に向かうのが一つの制約だろう。
 
問題は、資本産出比率が低い(1:1.5、先進国は3:1だという)。資本蓄積のスピードが速くなってしまい、過剰資本の問題を生んでいる。資本を必要なところに配分されるようにすることが中国の経済的挑戦だろう。

もう一つのは人口構造である。社会の高齢化が進み、2020には日本と同じで2人の労働人口が1人の高齢者を支えることになる(アメリカは3人)。日本のように低成長になる可能性がある。

中国はどうするか。楽観悲観が混在している。技術的な成長ができ、資本配分がうまくいけばまだ数10年は成長が可能かもしれない。あとは次の党大会で中央常務員会のメンバーがどうなるか。習近平は経済改革にかなりコミットしている さまざまな社会的要素に党の関与が増えるかもしれない。例えば、競争が激しくなって国有企業、地方の国有企業を退出させなければならないときにどうするか。シンガポールのように一党独裁でありながら経済的な成功する可能性はなくもない。悲観的には金融崩壊の可能性だ。負債が顕在化すれば日本のように経済は長期的に沈滞する可能性がある。

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2016年10月04日

留守児童をみる祖父母の役割

さて、滞在先の大学では、先週新入学の学生登録、今週から学生の授業が始まりました。そして研究セミナーも毎週何かしら開催されるようになり、ロンドンではまさに学問の秋という感じです。

さっそく面白そうなセミナーがあったので、参加してみました。

今日はその備忘録。

Grandparents and Grandchildren in Rural China
Professor Merril D Silverstein (Syracuse University)

高齢化と一人っ子政策で少子化が進む中国人口で、人口構成の変化をミクロ面から探りつつマクロ的な解釈を加えるという面白い研究でした。

内容を簡単にまとめておくと、

1)高齢者人口の伸びは若者の出稼ぎによって農村の方が早いとみられており、将来的な労働力人口の減少、そして政治的には軍隊編成にも影響が出る可能性がある。

2)家族構成の基本は、祖父母4人、親2人、孫1人になってきている。この結果、農村では祖父母が孫の世話をすることになる。農村から出稼ぎに出ることによって6000万人の留守児童がいるという。

3)祖父母が孫をみるという現象について、協力家族corporate family(経済体としての家族、家長が家族資源を配分し家族の幸福を最大化する)?相互援助?保険政策?文化義務?投資戦略?などの仮説がある。

4)農村での調査の結果、孫の世話に対して親世代が祖父母世代に送金するという行為が非常に大きく、その送金によって総父母の健康、長寿が支えられ、さらに世話ができるという。そのためフルタイムで世話をするケースが増えてきている。パートタイムで世話をする家族に比べて、長寿であるという結果もある。

5)情の近接性はやはり高く、祖母の方が祖父より強い。結果、孫が祖父母の面倒をみるケースも調査結果から16.3%という結果もある。

6)結論として、祖父母の存在は出稼ぎに出る家族の物質的な生活の満足にはかかせず、孫の存在は祖父母の面倒をみるという点でも重要な存在である。


ディスカッションを通して、留守児童問題を好意的に捉えているのが印象的でした。確かに中国全体でもみても、農村の労働力を沿海に配分し、農村の祖父母が農村労働力の支えになっているとみれば、十五区全体の人口の年齢別資源配分は有益に配分され、中国全体としての利益(経済成長)は最大化されたといえるのかもしれません。

面白い報告でした。
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2016年07月26日

都市経済における土地の重要性

中国でこんなニュースが。。。

中国、「新都市」開発34億人分 人口の2.5倍、野放図に計画
(西日本新聞2016年7月24日)

==以下引用==
【北京・相本康一】中国全土で計画中の「新城(新都市)」は5月現在で計3500カ所以上あり、定住を見込む人口を合計すると34億人に達する。中国政府は「新型都市化」を重点政策に掲げているが、中国の総人口(13億7千万人)の2・5倍に相当する計画に対し、専門家から「現実離れしている」との批判が出ている。

(略)

 国営通信、新華社によると、省や市、その下部の県レベルも含めた開発構想では住宅開発が優先され、産業育成が間に合っていない。地方政府が開発業者に土地を売却して収入を確保する「土地財政」の構造を背景に、過大な人口増を見込む傾向にあるという。

 開発実績が地方の共産党幹部の「評価」につながる事情もあり、各地に誰も住まない「鬼城(ゴーストタウン)」を生んでいる。

 専門家は「新型都市化は行政主導ではなく、市場メカニズムに任せるべきだ」と指摘している。

==以上引用==

まぁ多くの人が感じていたことが、数字として公表されると、結構無駄な投資がされているなぁと感じます。

ところで、伝統的経済学では、労働と資本が重要な生産要素です。市場が存在すれば、労働と資本は空間的にも産業的にも必要なところに配分されることになっています。労働と資本は「移動」しやすいからです。

もちろん移動のしやすさでいうと、資本>労働です。労働は住んでいるところのしがらみとか、新しく行くところへの不安とかがあるので、仕事があるからと言って、すぐに移動できるわけではありません。一方、お金は、必要なところはもうかる機会があるということですので、銀行がそれを察知すればすぐに投資がされます。

さて、ここで都市とか地域とか「場所」が導入されると、生産要素としての土地が無視できなくなります。

モノやサービスの生産場所、住む場所(住居)として土地が必要になります。土地がないと人は住めませんし、経済活動を行うことができません。

土地需要が高まり、希少性がでてくると、都市で土地取引が発生します。

どこを住宅にするのか、どこに公共施設を建てるのか、道路や鉄道(地下鉄を含む)をどのように配置するか、市場にまかせて取り引きさせるよりも、景観等を含めて政府が都市計画によって配分を行います。

ただし住宅市場については市場取引にまかせてもいいのですが、低家賃、安定した品質を考えて日本も(昔の)住宅公団などのように政府が介入しています。

その意味で、記事にもあるように単純に市場経済に任せればいいといっても、取り引きに騙される人が出てきたり、スラム改造で住んでいた人を追い出したりとさまざまな問題が発生するのため、政府が介入することが多いです。(もっとも典型的な介入は、土地利用の制限)

なぜ、土地取引には政府介入が正当化されるのでしょう。それは住宅、公共用地、交通幹線、鉄道(地下鉄)などは建物建てたら元に戻しにくいという土地の非可逆性があるためです。取引を中止ということが簡単ではないため、計画的な利用が必要ということになります。そのため、都市計画(Urban Planning)がどの国でも行われています。

また土地は都市公共サービスを提供する上での財源ともなりえます。どれだけ占有しているかによって課税することにより、占拠分に相応した負担とサービスをバランスさせられます。これについてはイギリスのCouncil Taxがそれに近いと言えますし、日本の固定資産税がそれにあたるといえるでしょう。

ただ途上国は中国を含めて土地、建物の課税制度が不十分なので都市経営の財源が不足することとなります。そのため、国有地ということを利用して、政府が土地ころがしで財源を確保しようとすることが多くなります。

上記の記事はまさにその結果です。地方政府が財源獲得のために土地ころがしをやり、多くの開発を行った結果、大量の空き家予備軍を作り出しています。

都市の土地経営には政府介入が必要といっても、「政府の失敗」が起こる典型的なケースとなっているといえるでしょう。

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2016年07月19日

中国の都市化の特徴

中国の都市化について、滞在先のSOASのセミナーで報告しました。そこでの議論を通じていろいろ感じることがあったので、ここで今の考えをちょっとまとめておきたいと思います。

中国の都市化とは何か?という根源的な問いに対して、私はこう答えておきたい(仮説)と思います。

他の諸国とは違い、中国の都市化は経済政策であり経済体制改革である。

この考えは、現在アジ研で行っている研究会の基本的テーマでもあります。(ここ


まず他国の都市化について考えてみましょう。

他国の都市化とは、自然発生的な人の経済活動の結果であり過程でした。日本でも戦後多くの人が職や教育のために東京をはじめとする三大都市圏に集まってきました。そこで発生するのが、住宅と医療、教育機関の不足、道路、地下鉄などの交通インフラの不足です。そのため政府は「対策として」都市インフラの整備を行い、住宅を供給し、医療や教育などの公共サービスを増強させてきました。それに伴って、いい都市づくりを目指して、都市計画が作られ、都市行政が発展してきました。

他国の都市化に関する政策とは、空間的に集中する人口や企業に関する「対策」であった側面が強いです。

一方、中国は都市化が不自然に抑えられてきたために、一挙に政策として都市化を押し出すことになります。

空間的な人口や企業の一部地域への集中を都市化を「空間的都市化」と定義すれば、中国の都市化は改革開放とともに始まり、多くの農民工が沿海都市部に流入してきました。そのためハード面で都市インフラの拡張は行われてきました。農民の土地を取り上げ、住宅を建築し、道路を拡張し、地下鉄は延伸されてきました。しかしソフト面、とくに公共サービスについては、都市住民には提供されても、流入した農民工には提供されませんでした。彼らはあくまで一時的居住者として扱われていたからです。一時的居住者であって都市住民でない、この取り扱いこそが中国の都市化が遅れてきた原因です。

そこで、現政権から都市化を推進するようになりました。問題はまさに都市化を妨げていた制度を取り除く「制度的都市化」を行わなければなりません。「制度的都市化」とは、一時的居住者として扱われていた農民工たちを都市の制度の中に取り込むこと、そして農村と都市の制度を共通化することによって、都市化をスムーズにすするめることを意味します。

以上のように、他の国では空間的都市化、そしてその対策が一般的に行われてきました。中国は空間的都市化に加えて制度的都市化を行わなければならない、これが中国の都市化の最大の特徴だと思います。

こう考えると、中国の都市化は、空間的都市化については他国との比較研究が有益でしょうし、制度的都市化については、これまでの経済改革の流れの一環として研究することが有益だろうと思っています。
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2016年07月12日

一帯一路戦略

中国の一帯一路戦略は、日本の見方、中国研究者の見方から分析されることが多かったのですが、今回SOASのワークショップに参加して、イギリスや中央アジアからの視点でどうとらえているかがわかって面白かったです。

話を聞いて興味深かったのは「アジアパラドックス」。これはアジアとくに東・東南アジアが中国の市場や貿易という経済的側面の付き合いを深める一方で、安全保障についてはアメリカに頼らざるを得ないことを指します。経済取引と安全保障が一体化する方がすべてにおいて安定するにもかかわらず、また割き状態になることです。

また中央アジアからみると、ロシアが安全保障を提供し、中国が経済的取引を提供しています。しかし中国的には金を出しつつ安全保障も同時に提供したいという意図があるといいます。

中国の一帯一路戦略は、アメリカ等西側諸国のように貿易交渉、自由貿易地域(FTA)の推進というよりは、もう少し緩やかな「関係」を築くことに主眼が置かれており、これが中国式の世界秩序への挑戦だという指摘もありました。

すでに、土地が豊富な中央アジア、ロシアは、労働力と農業技術が豊富な中国に土地を貸し出す契約も進んでおり、人と土地の交換が進んでいるといいます。意外に中国人労働者が順調に受け入れられているようです。

最後に、地域研究はやはり研究者のバックグラウンドが反映してしまうということを認識しました。イギリスや中央アジアの研究者の見方は新鮮でしたが、裏を返せばやはり彼らも自分たちのバックグラウンドが地域研究に反映されているといえます。地域研究の客観性というのは難しく、学問としての客観性を担保するためにはさまざまな背景をもつ研究者との交流が必要だと強く感じた次第です。

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2016年02月09日

なぜ人は嫌中と親中に分かれるのか?

中国に対して日本人はなんとなく二つに分かれるようです。ヨーロッパの国やあまり歴史的につながりのない国には人は比較的中立の立場で論じられると思うのですが、どうも中国に対しては嫌中とか親中というフィルターが入って中国を見てしまうようです。(韓国に対してもその傾向がありますが)

まず、人は中国に対する現実と理想へのウェイトの違いによって嫌中と親中に分かれるように思います。

現実派は、中国共産党が中国を支配している現実を見ています。そうすると共産党という共産主義イデオロギー、そして一党独裁体制という政治体制に嫌悪感を持っているようです。自然と嫌中派の政治的傾向は保守派、右派に分類され、公平と自由という対立イデオロギーでいえば、自由を志向します。つまり反抑圧です。

一方、理想派は、「中国」というざっくりとした歴史、文化にあこがれを持ちます。日本は過去、漢字、食習慣等で中国から影響を受けています。長い歴史、それによって培われた奥深い中国文化への造詣を深めると親近感を持つようです。このような親中派の政治的傾向は、共産主義への嫌悪感がないためにリベラルや左派に同調します。公平と自由という点からは公平というイデオロギーを持ちます。

ただ、どちらも中国研究をやる上では障害になります。これらの立場で中国をみると矛盾をはらむことが多いからです。

嫌中派は、共産党が嫌い、政治的抑圧が嫌いという点がありながら、日本政府による日本企業の保護、農業の保護といった点には信頼を置きます。自由を志向しながら、政府への支配を認めるという矛盾を持ちます。保守派は一般的に愛国という点で政府の支配を認めるので、ただ単純に感情的に共産イデオロギーが嫌いという傾向をもってしまい、客観的な中国分析を不可能にします。

親中派は、左派やリベラル的な政治的な傾向を持ち,人権に重点を置きながらも、他国の人権には無関心です。関心があっても自国の人権には敏感で、他国の人権には無関心という、本来普遍的であるはずの人権概念を都合よく使っています。いずれにせよ一党独裁という政治的抑圧体制については目をつむり、中国と仲良くという単純な感情に支配されています。

どちらも感情論です。感情を越えて、学問的フレームワークをもち客観的に中国を見ていくことが本当の中国を理解する足がかりになるでしょう。

おそらく多くの中国研究者はこのバランスに腐心していると思います。
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2016年02月02日

圧力型体系がもたらすもの

中国の政治体制で大きな役割を果たしているのが、共産党の一党独裁とそれがもたらす圧力型体系(毛里)だと感じています。

地方と中央の関係では、中央から地方へと共産党員の階級がつながっており、中央の指示は地方幹部の絶対服従のものとなります。

それを可能にするのが、幹部選抜システム。会社でもなんでもそうですが、組織に所属する人のモチベーションはその組織社会において認められることです。それが報酬として働くので、昇進こそが地方幹部の働こう、中央の指示に従おう、という動機づけになります。

中央(命令)→地方(服従)
地方(業績)→中央(昇進)

地域経済をやっていると、必ずこの問題に行き当たります。なぜこの地方が習近平が視察にきたことをアピールするのか、開発区が国家級であることをアピールするのか、この都市が国家級の試点(テストケース)であることを強調するのか,これらはすべて幹部として中央に働きかけ,認められたという業績なのです。

これは地方をして地方政府が一生懸命働くきっかけにはなりますが,往々にして地方幹部が替わると,次の業績を求めるため,地方経済の政策としては一貫性がなくなることがあります。例えば,国家に認められた開発計画なのに,そのまま野ざらしになっているとか(基本,中央に認められても最近はお金はそんなに流れないことも多い)です。

地域開発を純粋な開発経済体として分析しつつも,地方幹部の業績評価を組み込む形で,拡張した地域経済モデルを考える必要がありそうで,最近いろいろ試行錯誤しています。
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2016年01月12日

中央都市工作会議

昨年12月に中央都市工作会議が37年ぶりに開催されたんですが、中央経済工作会議の陰に隠れて、日本の報道ではほとんど触れられていないですよね。

ということで、中央都市工作会議の件をPlatnewsに寄稿しました。

多くの農民工が劣悪な環境で生活する中国ー7億人以上が都市に集中(岡本信広)(Blogosにも転載)

中国にも都市運営や都市経営の考え方が広がっている印象を持っています。

ところで、なぜ日本では中国の都市化が触れられないんだろうと思っていたところ、Platnewsの編集者と話ししていて気がついたのは、「都市」や「都市化」の内容や意味が一般の人はそんなにわかっていないんじゃないかという点でした。

日本では都市化は過去の事です。日本では東京一極集中とか言われますが、一般の人にとっては、あ〜人が東京に集まっているのね、程度であって、「それ何、おいしいの?」になっているような気がします。それに日本の都市化時代は1960年代がピークで、東京に集まる労働者のために、多摩ニュータウン、港北ニュータウン、千葉ニュータウンの開発が始まった時代です。ある意味過去のことです。

もう一つは、都市化の意味がつかみにくいという点です。都市は人を惹きつける魅力を持っています。多くの人が集まれば、市場が拡大するとともに、経済活動が活発になります。都市は経済活動の「場所」であり、経済発展の中心であることがあまり理解されていません。(むしろ経済成長はいらないみたいな議論もされるぐらいですし。)

今後も都市、都市化の重要性をもう少しわかりやすく語っていきたいと思っています。


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2015年11月24日

美麗郷村(貴州省の新型都市化の取り組み)

11月16日から20日まで貴州省で,新型都市化の調査を行ないました。とくに安順市は国家新型都市化の試点(実験地域)として,農村の小城鎮化に積極的に取り組んでいます。

貴安新区が昨年国家級新区に昇格し,国家による投資が大量につぎ込まれています。これは,2020年までの全面的小康状態への達成に向けて,国家が一番貧しい貴州省の貧困脱出に力を入れているからです。

とくに農村の貧困問題は深刻ですので,安順市でも農村開発の方向は,観光業,生態環境を活かした農業,小城鎮化というように,都市化を一つのキーワードとして,開発に取り組んでいます。

今回は農村でも「美麗郷村」の試点(示範点)をいくつか回りました。国家がお金を投入し,農村の城鎮化を行ない,産業としては観光に力をいれるというものです。

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(今回,一番気に入ったのは龍宮鎮桃子村。とてもきれいです。時間があったらパソコンだけ持って,ここでゆっくり原稿でも書きたい。)

ただ問題もあります。私が感じたのは以下の点です。

(1)極端に政府投入が多い。5千万元から8千万元が政府から投資されています。この政府投資によって建築業雇用を増やしており,これが1人当たりの平均収入を一時的に上昇させている可能性があります。ほとんどの村で1人あたり収入が1万元に到達しています。
(2)観光業が発展するほど観光資源は豊かなのかという問題です。上の写真にもあるような,龍宮鎮には国家級の景点がありますが,観光資源がなければ永続的に観光農村として永続するのは難しいように思います。また観光地は工夫を凝らし続けないとリピーターは生まれません。一回きりになっては永続的な観光農村としては難しいです。
(3)観光業による村づくりを各地が展開すると、似たようなものになります。また市場での競争は激しく、市場から見放されれば、村はまた貧困に陥る可能性があります。

それでも農村が豊かになってきているのは確かなので,これもまた将来的に再度訪問してみたいと思います。
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2015年10月20日

郷村規劃師

10月17日,18日と中国都市規劃学会・中国城郷規劃実施学術研討会の第三回年次大会に参加してきました。

私は山口真美さん(アジア経済研究所)とともに幕張の都市計画とその発展,住民参加の問題などを報告するとともに,さまざまな報告を聞くことができました。この規劃実施学術研討会は学者のみならず実際の都市計画を実施する官僚などが参加するので現場の声が聞けるいい会議です。

今回の大きな収穫は成都の新型農村建設の現場を見ることができたこと,その鍵は成都独自の制度「郷村規劃師」にあるのではないかという仮説を持てたことです。

蒲江県明月村新型社区を見たのですが,その建設をその村の「郷村規劃師」の方が紹介してくれました。

<明月村>
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成都市規劃局は会議で「郷村規劃師」の役割を強調するとともに,全国に展開したいという意気込みを見せていました。

「郷村規劃師」とは,郷,村レベルの都市農村開発の責任を持つ人です。役割としては,郷村レベル政府各部門の意見調整,農民の意見聴衆,開発(保護,改造も含む)プランの制定,はたまた基層レベルで発生する矛盾の解決が求められています。規劃師は村の誰かを任命するのではなく,一般に公募され,一定の訓練を受けたあと村に派遣され,人間関係を築きつつ,村の開発問題に携わります。ブログも開設されているようで,ともに規劃師同士で意見交換できるようにするとともに,2,3年で再訓練のプログラムが用意されています。

この郷村規劃師制度,今後の新農村建設のキー・ロールになるか,注目しておきたいと思います。
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2015年08月18日

一路一帯

一路一帯に関する政府文件が2015年3月28日に発表されました。発展改革委員会,外交部,商務部連合の文件です。地域開発的ビジョンにもかかわらず国際的な政策ということで外交部が入っているのが珍しいといえます。

以下,参考資料としてその文件の要約を紹介しておきます。

「シルクロード経済帯と21世紀の海のシルクロードを共同で推進するビジョンと行動」

前言で,この構想が2013年9月と10月に習近平が中央アジア及び東南アジア諸国を訪問した時に出てきたこと,2013年の中国ASEAN博覧会において李克強が強調したものである,が触れられ,その目的はシルクロード沿線の各国の経済発展と地域経済協力であることが指摘されています。

1.時代背景

各国が抱える問題は大きいものの,一帯一路は世界の多極化,グローバル化,文化の多様化,社会の情報化という流れの中で,開放的な地域協力こそが,グローバルな自由貿易体系と開放的な世界経済に必要という認識が述べられます。

また,中国は一環して対外開放政策を基本国策としており,対外開放の深化および世界各国との協力強化のために中国は責任を果たし,人類の平和的発展に貢献すると宣言しています。

2.共同原則

国連憲章,平等互恵の原則に基づくこと,一帯一路は過去のシルクロードの範囲に限ることなく,多くの国,国際組織,地域組織が参加して成果を広く共有すること,市場ルール,国際通用ルールに従い,市場が資源配分において決定的作用を及ぼすこと,を確認しています。


3.構想のフレームワーク

一帯一路は,経済が活発な東アジア圏と,一方で発展しているヨーロッパ経済圏,そして中間には経済発展の潜在力の高い国々があることを確認し,シルクロード経済帯の重点は,中国から中央アジア,ロシア,ヨーロッパにつながるルート,中国から中央アジア,西アジア,地中海へのルート,中国から東南アジア,南アジア,インド洋へのルートである,としています。一方,21世紀の海のシルクロードの重点方向として,中国沿海の港から南シナ海を経て,インド洋を越え,ヨーロッパに伸びるルート,そして中国の沿海各港から南シナ海,南太平洋へのルートである,としています。

一路一帯の方向は,陸上の国際ルートでは沿線の中心都市を柱として経済貿易産業団地を協力のプラットフォームとし,新しいアジアヨーロッパランドブリッジ,中国ー中央アジアー西ヨーロッパ,をつくるとし,海上ルートでは港湾を結節点として,安全で効率のいい輸送ルートを建設することを提起しています。


4.協力の重点

各国が協力する重点として以下の5つをあげています。

1)政策対話。内容はそのまま。

2)インフラの接続。インフラを通信や交通面で規格を標準化しつつ,ネットワークを結ぶ。

3)スムーズな貿易。国境貿易,税関制度などを標準化して透明度を高めつつ,貿易,投資障壁を除いて自由貿易地域にしていく。

4)資金融通。沿線国家はともに兌換範囲を拡大するともに,債権市場を整備,AIIBをともに発展させるとともに,シルクロード基金などさまざまな資金協力を行なう。

5)民間交流。留学生,観光業,伝染病などの情報共有などの推進。



5.協力のメカニズム


各国がメモランダム(備忘録)の形式などで協定を結び,一帯一路の行動計画を共同で研究していくとともに,現在ある上海協力機構(SCO),ASEAN+1,APEC,ASEMなどの現有の組織を活用していく,としています。


6.中国各地で開放態勢

ここは国内政策の部分です。

西北,東北地域は西側の国に向けた窓口となる,西南地域は東南アジアと接するという地理的優位を活かす,沿海と香港マカオ地域は開放型経済の優位性を発揮する,内陸部は長江上中流域の都市群を発展させ,ヴォルガ河沿岸地域(ロシア)と協力していく,などが述べられます。


7.中国の積極的な行動

国家のトップレベルによる外交・通商対話,メモランダム(備忘録)レベルへのサイン,共通プロジェクトの推進,が述べられるとともに,中国は各種資源を総動員して政策強化に力を入れるとしています。シルクロード基金を設立させ,中国ー欧州アジア経済協力基金の投資機能を強化なども述べられます。


8.共にすばらしい未来を作りあげる

まぁここはキレイゴトなので省略。


あまり具体的な代表的プロジェクトがあるわけではありませんが,いずれにせよ,シルクロード沿線の各国とともに経済協力を推進するという強い意志が表れており,経済のみならず外交面でも中国の発言力が高まっているのは間違いないでしょう。
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2015年03月24日

国家新型城鎮化総合試点方案

2015年2月に国家発展改革委員会より《国家新型城鎮化総合試点方案》が発表されました。内容を簡単に整理して紹介しておきます。(文章の日付けを見てみると2014年12月になっており,中央経済工作会議のあと担当の中央城鎮化工作会議で主要任務を分担した模様。)

1.指導思想と基本原則
 ここでは人による城鎮化を核心とし,質の向上を鍵として,難題を解決するために改革試点を先遣隊の作用とすること,大胆に探索すること,試点先行して創造性を発揮する,ことなどが述べられています。新しい都市化モデルの構築が期待されています。

2.試点範囲と時間
 江蘇,安徽の省レベルから郷鎮レベルまで62の都市地域が試点として選ばれています。2017年までに得た成果を複製可能な形で2018年から2020年までに徐々に全国レベルに展開する予定になっています。

3.試点の主要な任務
 具体的な政策(といってもそんなに目新しいものはない)を紹介。

(1)農業人口の市民化コストの分担メカニズムを作る。居住証による居住年限などと公共サービス提供をリンクさせること,政府,企業,個人がこのコストを相応に負担すること。
(2)都市化の投融資メカニズムの多元化。地方政府の債務を全口径予算管理として,都市政府の資産負債表をつくる。地方政府債権発行管理制度をつくり,債権発行による都市建設を認める,PPPを積極的に利用するなど。
(3)農村宅地制度をいいものにしていく。
(4)行政コストを下げる管理方法の刷新。都市の設置は行政管理組織の簡素化と連動させつつ,鎮を廃止し市にする試点を設けて行政レベルと行政区域の新たな関係を探る。
(5)体制メカニズム改革の刷新。都市農村一体化メカニズム,規劃の編制や管理,農業現代化,環境生態,都市ガバナンスなど新しい体制を構築する。

4.政策支援
 財政移転支出では農民工の市民化人口とリンクさせる制度を確立し,省レベル政府が起債したお金の使用は試点に向かうようにする(地域傾斜),国家開発銀行などの参与や多くの手段で資金調達を行なうことが述べられています。あとは農民工の職業訓練などを支援するなど。

5.実施組織
 各試点で党組織に工作領導小組を設置すること,公安部,民生部,財政部,人力資源社会保障部,住房城郷建設部,農業部,人民銀行,銀監委,標準委などと協調すること,などが述べられています。


実際にどのような具体的な成果がでるか,一度どこかの試点を現地調査してみようと思っています。

<参考>
発展改革委員会の文件オリジナルは中国経済新聞網(2015/2/4)を参照。
http://www.cet.com.cn/sypd/syfxb/1462711.shtml


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2015年02月24日

中国の財政を考える

中国は,政府の役割を再考しています。多くの知識人は政府は産業などから退出すべきであって,都市化でも言われるように公共サービスの均等化に力を入れるべきだという考えが広がっています。

公共サービスを提供するにもお金が必要です。中国の財政から政府の役割を考えてみたいと思います。

(1)分税制

1994年より分税制が導入され,税種ごとに中央税,地方税と決められ,中央の財政力が強くなりました。それまで税の徴収も支出も地方政府に「委託」し,一部を上納させるという地方財政請負制でしたが,それでは中央にお金が集まらず,中央政府によるマクロコントロールができないという事態になっていました。

市場経済化でマクロ経済コントロールをするには中央による財政政策が重要です。そのために中央が財源をコントロールできる体制をつくることが必要でした。これが分税制で,中央に財源が集まるようになったという意味で,成功だったといえます。

(2)問題点ー財力と事権(やるべきこと)のアンバランス

問題は,財力と権限がアンバランスになったということでした。

分税制により中央政府に税があつまるようになりました。したがって中央政府には財力があります。これにより必要な公共財,とくに国家レベルで必要な軍事や治安などにお金を使うことができます。

一方で,省級政府あるいはその下の地市級,区県級にはお金が集まらず,一方で,やるべきことが増加しています。つまり自地域の人々の生活にかかわる教育は福利厚生面での責任や事権(やるべきこと)は多いままですし,その支出圧力は大きいです。

結局,上級政府にお金が集まっても下級政府にお金はない,上級政府がやるべきことは少ないけど,下級政府がやるべきことは多い,というふうになります。

ある推計によれば地方政府は45%の予算財政能力で75%の事務を背負っている,といいます(下の参考文献)。財力と権限がアンバランスな状態です。

(3)もたらされた弊害

地方政府にお金がなく支出圧力はあるという状態は,地方政府をしてお金の調達に走らせます。これがいわゆる土地財政への過度の依存です。

これはよく言われることなので,ここではおいておいて,もう一つ重要なのは,財政移転支出の増加です。つまり中央財政や主管部門から目に見えない金の流れが発生するということです。

財政移転支出には一般性の財政移転と特定目的やプロジェクトへの財政移転があります。前者は日本でいう地方交付税(ひもなし),後者は国庫交付金(ひもつき)に近いものです。

会計監査報告によると,42%のお金が各級財政や主管部門の口座に残ったままであるし,2%は虚偽流用されているといいます。またサンプル調査では23%のプロジェクトは実施がされていないか遅いままです。つまり特定目的の財政移転支出は一旦できあがるとそのままになってしまい,絶対に必要なプロジェクトでなかったりします。お金を出す方も受け取る方もずぶずぶの関係になり,腐敗の温床になりやすいですし,なにより税の効率的な利用につながっていないという問題があります。

(4)現在の改革方向

第12次五カ年計画間の大きな改革の方向は,中央のやるべきこと(事権)を増やして,地方のやることを減少させ,地方の財政を強化することです。中央政府は公共基本サービス(失業や年金,健康保険)などの責任を持つようにして,全国のナショナルミニマムを補償すべきだということになっています。

また財政移転支出についていえば,国庫交付金のような特定プロジェクト型財政移転支出を減らして一般性財政移転にして,民生,教育,福利厚生,などへの支出に利用できるようにすることが期待されています。

でも地方財政の強化では??となるような改革方向です。営業税の増値税改革が進められていますが,営業税は地方税の柱です。これを中央の増値税に変えていき,中央に入れる,あるいは増値税を中央・地方の共有税にして調整するという方向です。一般性の財政移転支出が増加するのであれば地方財政も強化されるのでしょうが,これも中央集権的な財政システムへの方向であることは疑いありません。(ただし重慶と上海で試行されている不動産税がどう展開されていくかによって、地方税の柱になる可能性も)

その意味では,地方の財政と事権(やるべきこと)を減らして,中央が負担していくという一種の大きな政府の動きのようにも思えます。


<参考>近年の財政改革の歴史

 2001年 国庫単一口座体系を基本とした国庫集中収支制度の試点を実施,2011年には全部の中央予算単位,全部の一般予算,政府性基金,国有資本経営予算資金を国庫に集中させた。

 2006年 農業税の廃止
 
 2009年 増値税の改革,製油の税費改革
 
 2011年 中央各部門の予算外収入を全部予算内管理に

 2011年 個人所得税の控除を月2000元から500元に引き下げ


<参考文献>
「財権要与 事権匹配」『光明日報』2013年8月27日(http://news.12371.cn/2013/08/27/ARTI1377547682298630.shtml
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2015年02月17日

都市化と土地資源の配分

中国の都市化で土地制度改革は非常に大きな問題となっています。土地問題をみてみると市場経済と計画経済がもっともせめぎ合っている場所だなということがよくわかります。

今日は土地問題を経済学から考えてみたいと思います。


(1)市場と土地配分の考え方

市場経済が理論的に成り立っているとすると,土地が都市に配分されるのか,農村に配分されるのかは以下の図で説明されます。

市場化と土地.jpg

ちょっと簡単に図を説明しましょう。

横軸(AからC)はその国に存在する土地の量です。左から真ん中あたりまでが農村に配分される土地の量,右から真ん中あたりまでが都市として利用される土地の量です。

MPRは農村の土地の限界生産性を表わします。つまり農地が生み出す収益です。市場経済では農地の生み出す収益と地代が等しくなります。農地としてたくさん収穫できる土地の地代は高いですし,収穫があまりよくない(土地が痩せている)土地は地代が安くなります。

MPRが右下がりになるのは,農地として一番いいところが耕地として利用され,農地が広がるにつれて周辺の土地の生産性は下がってきていることを示します。

MPUは都市の土地の限界生産性を表わします。つまり都市の土地が生み出す収益です。宅地や工場に使われる,宅地でも高層化する,高い商業ビルを建てることによって土地の収益をさらにあげるなどによって,土地の限界生産性は決まってきます。ここでも市場経済である限り土地の地代はこの限界生産性と等しくなります。

農村の土地が生み出す限界生産性,都市の土地が生み出す限界生産性が等しくなった点,ここではB1ですが,B1から左側(A-B1)が農村で利用される土地の量,B1から右側(B1-C)が都市で利用される土地の量となります。

都市化は土地を都市に配分する過程です。

都市で増加した人々を収容するための場所が必要になってきます。

人が増加するということは都市の土地に対する需要が上昇します。また集積の経済(集まることによる利益)が働くことにより,都市で生み出される生産性は上昇します。つまりMPU1はMPU2と上に移動します。

これにより都市では周辺の土地を必要とします。実際,農家からすると,農地で生み出す収益よりも都市に売り渡した方が収益になるのであれば,農村の土地は都市の土地に変わっていきます。MPUがMPRより上にある以上は,農村の土地は都市の土地に変わっていきます。

その土地配分の変化過程が図のB1からB2への移動です。農地が都市部の宅地となり,都市の土地として利用されていっています。


(2)制度の衝突

完全な市場経済であれば地代によって土地が都市分と農村分に振り分けられます。

ところが中国では,土地が完全に二元化されていました。都市の土地は国有地,農村の土地は集団所有地です。一方で,所有権というものがあいまいなまま都市化が進み,農地が都市建設用地に接収され,都市建設が行なわれてきました。

法律的には都市建設用地を得るために,農地を集団所有地から国有地に変換しなければなりません。しかし国有地にできない場合は,都市化が進む中で一部の農村は農村のまま存在することになってしまいます(城中(辺)村といわれる)。

あるいは,集団所有地のまま宅地建設を行ない,住宅を販売するという所有権があいまいな小産権と呼ばれる土地が存在することとなってしまいます。

これは図中のB1-B2で示される部分です。所有権の違い,所有権転換の難しさから制度が慰留したままのため,土地配分の都市化が順調に進まないところでもあります。



(3)都市計画,農地保存

都市化による土地配分問題は市場経済国であっても,完全な市場経済にまかせてしまうのはためらわれる部分でもあります。

土地流動を自由化すると,都市における土地の乱開発(都市景観を損なう可能性),農村農地の荒廃(農業生産の減少)などを招きかねません。そこで多くの国で政府が都市計画を設置するとともに開発場所を選んでいますし,農地保護のために農地の販売は規制していたりします。

中国でも同じ問題が存在します。中国の食糧を保護するために中国は18億ムーという耕地レッドラインを設けて,農地の減少を防ごうとしています。


(4)どう改革するのか?

農地を保護するには,規制だけではなく経済学的には農地によって生まれる収益をあげるしかありません。つまりMPRの上昇となる施策です。

それは農地への資本投入によって土地の改良を行ない,灌漑整備するなど土地の生産性をあげることです。

もう一つは,農地や農業経営を大規模化することによって,生産性を上げることです。


土地の生産性をあげるためには,制度はどうあるべきでしょうか。

一つは国有化です。国家が農村の土地を国有化して,国家主導で農地を保護し,一方で農業の大規模化を進めるというものです。

もう一つは私有化です。農村農地の権利を確定して,農民自身が土地を所有したという感覚を持つことによって土地の長期的生産性をあげようというインセンティブを期待します。あるいは私有化は高齢化によって農地を手放す人たち,農業に参入した若者たちが農地を購入にして大規模化する,という市場取引が期待できます。

中国では都市建設は国有化の流れになっています。しかし農民へ地代を払って転換するのは財政負担が大変なことになります。城中村改革と小産権住宅の解決がうまくいかないのはすでに存在する既得権益を国家は奪いにくいし,その補償は大変であるということを意味しています。

農業保護では,私有化の動きがあります。実際には農地の所有権は集団所有のままですが,請負権などを土地使用権と同じくらいしっかりとした権利として流通できるようにしようとしています。


制度矛盾と都市計画(その反対の農村保護)という制約の中で,中国はどのようなメカニズムで都市化に必要な土地を配分していくのか,大きな問題となっています。制度と市場化をどうするのか,改革の方向が大変悩ましいことになりますが,「国有化+市場化+法制化」というミックスを強調する学者もいます(魯2010。


<参考文献>
魯徳銀(2010)「土地城鎮化的中国模式剖析」『商業時代』2010年第33号,pp.7-9,40
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2015年02月10日

都市・農村二元構造はなぜ存在するのか?

中国は見た目ではわからなくなってきましたが、都市と農村ではっきりと制度が違っています。いわゆる二元構造と言われるものです。

具体的には,人は戸籍制度によって都市と農村に分断されていますし,土地も所有制によって都市と農村に分かれています。戸籍制度では農業戸籍、非農業戸籍という区分があり、土地制度は国有地と集団所有地という違いがあります。

土地戸籍二重制度.jpg

戸籍制度は,人を「場所」と「産業」に拘束します。農業に従事し,農村にいる人は農業戸籍となります。農業以外に従事し,人が集まっている場所,いわゆる都市にいる人は非農業戸籍となります。

注意しないといけないのは,中国の農村と区分される県レベルにおいてもそこの集積地(「鎮」)では農業を行なっていないので,非農業戸籍になります。でもその県に所在するという意味では,県の戸籍取得者であり,市の戸籍取得者とは空間的に区別されます。

戸籍制度は、労働の地域間、産業間移動を制限します。農村では戸籍登録地での農業就業以外の選択が不可能でした。そこにある人民公社に働き続ける以外の選択肢が存在しませんでした。

戸籍制度が存在した理由は、(1)農業生産を維持すること、(2)都市のスラム化を防ぐこと(治安や思想教育の意味もあるが),の二つが大きいです。工業化にとって農業は原材料供給の上流産業です。貿易を考えない場合,農業があって工業が発展するので,戸籍制度が農業生産に果たした役割は大きいです。

土地制度も似た問題を持っています。都市は国有地ですが,農村では集団所有地です。

このような二元構造になったのは歴史的経緯があります。

そもそも革命で都市の企業を接収するとともに都市という場所を共産党が接収していきました。農村でも同じ経緯で共産党が地主から農地を取り上げます。解放という旗印のもと土地が小作農に分配されます。これが農民の共産党支持につながります。

しかし1952年からの農業集団化においては,一旦配分された農地を集める必要がでてきます。当然,接収するという選択肢もあるわけですが,農民から土地を取り上げるのは大問題になります。その妥協点が農村にいる農民全体で所有するという集団所有制です。

この制度の合理性も戸籍制度と同じように,(1)農業生産を維持すること,(2)農村を守ること(都市化を抑えること),であったと考えられます。

いずれにせよ、この二元制度は、労働と土地を都市・農村、農業・工業と空間的産業的に固定化することによて計画経済を実行する上で、大きな役割を果たしたといえます。

現在の中国で計画経済の色彩が強いのはまさにこの都市・農村二元制度です。戸籍制度はゆるくなりました(あるいは居住証制度に変わった)し、集団所有地も国有地に変換する制度も整ってきました。しかし、実際には今までの二元制度は厳然と残っていますし、現在の都市化はまさにこの制度の二元構造の打破が焦点でもあります。

しかし制度変換には大きな困難を伴います。制度によって既得権益がすでに存在しているからです。農民の流入によって都市住民の快適な生活が変わってしまうかもしれないというのは,都市住民の安定生活という権益をおびやかします。また都市就業での都市住民の有利性、集団所有地によって生まれている農民の利益、などこれらはすべて二元制度によって生み出された権益です。制度が存在する以上,その制度で得をしようと行動した結果,制度で利益を得ている人たちが存在します。

この制度を「変更」することは難しいです。人の利益を奪うわけですし,扱いを誤れば政権批判に向きます。

近年中国は改革の「深化」とか「深水区」といった言葉を使います。これはこれまでの漸進主義的改革がフローの改革(存在する制度には手を付けず、新たに付け加えた部分の改革)であり、既存のストックには手をつけてきませんでした。「深化」という言葉には,このストックの部分の改革がいよいよ本格化したということを意味しています。
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2014年12月11日

土地制度改革の問題は農村集団利益をどうするか,である。

中国の土地は二種類あります。都市部の国有地とその他農村部です。農村の土地は集団所有という形態をとっており,農村に住む農民全員で所有しています。

ただし使用権は国有地のみに取引が認められていますが,農村の集団所有地についてはその取引がずっと曖昧なままです。

1987年に深センで初めて土地使用権の入札が行なわれました。これにより工業地は50年間の使用権を持つことが可能で,長期的な経営が可能になります。

1988年に憲法が改正されました。ここでは土地の所有権の売買やリース,流通を否定するとともに使用権のみ可能であることが明確にされます。

同年,土地管理法が修正されます。国有地,集団所有地の流通が認められます。

1990年「城鎮国有土地使用権譲渡と流通暫定条例」が公布され,国有地の譲渡規定が明確になりました。しかしその後出るとされている集団所有地の譲渡方法については曖昧なままにされています。

これは農村の土地利用が現実に進んでいたためです。

沿海部の農村では,外資がやってきて,村長に工場用地が欲しいと訴えます。村長も村の発展を考えると,外資を誘致したい,しかし土地を貸すのは違法になってしまう,そこで考え出されたのが,合資,合弁,聯営という中外合作方式での企業経営です。現実は中方が土地を提供し,外資が工場を提供して,それで合作経営を行なうというものでした。集団所有地のまま工場用地にしてしまう苦肉の策でした。

これにより沿海の農村は国家級の開発区以外でも工場誘致が可能になりました。沿海部の農村が発展を始めます。

農地が工業用地に変わることを恐れた国は農業用地のレッドラインを設けて,農地保護の方針を出します。村長は住宅地の集約や耕作されていない土地を新開拓地として農地を増やし,その代わりに農地を工業用地に転換する方法を編み出します。

郷鎮企業や内資の進出においても同じ方法がとられ,農村の雇用問題が解決するとともに足らない労働力は外地から来ることとなります。進出企業から生み出された利益は,農村は管理費という名目の地代を受け取り,村は豊かになりました。

農民たちは外地労働者のための住宅を建設しはじめます。彼らに住宅を貸し出し,賃貸料を受け取ることとなります。また請け負った農地についても外地労働者に耕作させることにより,地代を得ることになりました。

村全体が「地主化」しました。村が地代で食べている以上,彼らの飯の種(集団所有地)を取り上げて国有地に変更することは大変な困難を伴います。


今度は都市周辺の農村に目を向けてみましょう。都市化が進む中で,都市辺境の農村にも開発の波がやってきています。しかし農村の集団所有地はそのままで,住宅建設や工場建設が進みます。住宅では一部を農民に等価交換するとしても,農村に地代を払うあるいは地代を賃貸住宅に変更することによって農村の収入を確保するという点では,先ほどの事例と同じです。

しかし都市部では多くの住宅地が集団所有地にたっており,いわゆる「小産権」物件として販売されました。集団所有地における住宅建設は違法です。法律では国有地のみに住宅建設が可能であり,それによってはじめて物件の使用権が譲渡,流通することが可能です。しかし小産権物件は法律保護がないものの,価格が安いのが魅力です。流通が無理,としても売買方双方が同意すれば実質的に売買可能です。

北京では報道によると少なくとも20%は小産権住宅です(識者はもっと多いという)。珠江デルタ地帯の都市化では都市の2/3は集団所有地のままです。

さて,土地制度改革の基本は都市農村の土地(建設用地)取引の一体化です(第18三中全会)。集団所有地のままになっているのを国有地に変更して取引を可能にするのが目標です。

しかし上記で見たように集団所有地はその場所にいる(いた)農民たち農村全体の利益の源泉です。彼らは働かずして地主になれ,企業や工場,住宅が生み出す地代(管理費)収入は莫大なものになっており,改革開放後すでに35年が経過しており,利益は固定化してきています。

彼ら農村集団の利益を取り上げて国有地にするのは至難のわざです。何かしら再開発するときに発生する利潤を農村農民に分配しなければなりません。

2008年末から北京では50の城中村が改造対象になりました。しかし現在でも解決していない村が相当数にのぼるといいます。広州市でも1000以上の集団所有地が残っており,今年ようやく1つ改造が終わったと言います。このままでは集団所有地の国有地化は難しいですし,利益を生み出す集団所有地を村が喜んで放り出すわけもありません。

利益を生み出す土地を農村が持っている以上,国が法律通りに国有地にして工業用地として提供するためには,そのための補償が必要です。そのコストは年々高くなっており,国家が都市の中にある集団所有地を国有地に変換することは不可能でしょう。

珠江デルタ地帯は経済発展の最も速い地域の一つです。土地が利潤を生み出してきた以上,改革の利益分配は至難のわざになっているのです。
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2014年11月25日

公共資源の市場経済化

中国でおもしろそう,と思った場所があります。最近出張行くたびにどの都市でもみかけるようになったものです。

それは「公共資源交易中心(公共資源取引センター)」です。

管理中心四川省公共資源.jpg
四川省人民政府の報道から

参観はしたことないのですが,百度などネットで調べてみると

主に「政府調達」「プロジェクト建設」「国土資源」「産権交易」「国有企業調達」などの分類にわかれています。取引の8割は政府調達とプロジェクト建設が中心のようで,政府が税金で物品を調達する際の入札情報を提供したり,公共事業の入札条件などが公開されているようです。

日本でいう内閣官報みたいなものですが,「公共資源交易網」(2013年8月開始)では全国4500もの各地の交易中心の情報を扱っているのが特徴です。一般の企業が中国全土の入札情報にアクセスできるわけです。

日本の地方自治体も公共の健康センター,体育館,保育園などを民間の運営にまかせています。その際の公募情報などは個別に提供されているのが実情で,このような情報を日本全土で共有できれば,日本の公共施設などの公共資源を有効に活用できるのではと思いました。

国有企業改革で国有企業資産の取引を目的として2000年代に各地に産権取引所ができましたが,現在では都市化で土地のさまざまな権利を取引できる産権交易所も各地にできてきています。

権利売買のシステム,プラットフォームをつくるというのは中国の得意なところといえるでしょう。これで各種土地や資本が有効に活用でき、かつ取引が透明になって腐敗が減少するのであれば,これはいいシステムだと思っています。


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2014年09月09日

アリババ(阿里巴巴)とは?

今週,中国で注目されているIT企業アリババがニューヨーク市場で新規株式公開(IPO)を行います。(新聞報道によればAmazonよりも時価総額が大きいとか。ちなみに現在ソフトバンク,アメリカYahoo!が大株主です。)

先週,抗州でアリババを訪問してきたので,簡単にアリババについての情報を整理・紹介しておきたいと思います。

写真 (15).JPG
(濱江園区:建物のデザイナーは北京オリンピックのメインスタジアム・鳥の巣の人と一緒らしい。)

アリババは中国で最も成長の速く,シェアトップのEコマース企業です。もともとはB2Bのプラットフォームから業務を展開し,今では陶宝や天猫というB2CやC2Cプラットフォームで最も有名な企業です。Eコマースだけではなく,電子決済の支付宝(アリペイ)やお金の運用を行う余額宝を運営しています。

企業は抗州にありますが,現在は業務をEコマース(B2B)とその技術支援を濱江園区で行い,天猫や陶宝などB2Cプラットフォームや物流を統括する西渓園区,支付宝や余額宝などの金融を扱う西渓谷園区の三つの集団に分かれています。すべてが本社扱いのようですが,企業創始者であるジャック・マーは西渓園区にいるようです。

アリババは1999年に18人の仲間で始まったIT企業です。当初はB2Bのプラットフォームを提供する業務でしたが,赤字が続いていました。アリババが大きく成長するのが陶宝(B2C)です。2003年のSARSをきっかけに外に買い物に出かけることが減った人たちから絶大な支持を受け,ネットで買い物をすることが普遍的になり,業務が拡大していきました。2007年には香港に上場し,現在ニューヨーク市場でのIPOを待っている段階にまで発展してきました。

現在の業務の中心は,商業,金融,物流です。商業ではB2Bプラットフォームを中心にアメリカ,イギリス,インドが上位3位の取引先になっています。物流では,物流企業と協力し物流コスト低下と効率の向上を目指して,アリババが持つ取引情報を物流企業に提供しています。2020年には中国全土を24時間で配達可能にすることを目指しています。金融では,中小企業向け少額貸出を行なっているのが特徴です。アリババの信用を利用して銀行から資金を調達,あるいは陶宝を利用する消費者などがアリババに預けている資金(余額宝)などを利用して,企業に貸し出すモデルです。中小企業には連帯責任者を求めていましたが,現在はB2Bプラットフォームでの利用を信用情報として貸出を行なっているようです。

やっぱり注目すべきは金融への進出でしょう。中国では四大国有銀行の寡占状態であり,その間隙をついて発展空間を中小企業金融に見出しています。その上余額宝を利用している消費者は銀行よりも高い金利を受け取ることが可能になっていますので,ネットを通じた金融仲介業を行っています。銀行監督委員会から目をつけられたこともありましたが,純粋な民間企業としてのアリババが国有企業が主要なフィールドである金融業にどこまで食い込めるか,国有企業改革とともに注目しておきたい存在です。

さすがIT産業だけあって,自由な雰囲気でした。フレックスタイム制を採用しており,自分のデスク以外でも自由に仕事ができるようです。

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(スーパー)
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(図書館)
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(食堂)
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(ジム)
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(スタバ)
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 岡本式中国経済論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする