2014年07月29日

中国の集団指導体制

中国でも有名な経済学者,胡鞍鋼が書いたということで,読んでみました。



中国の独特な政治制度,集団指導制について紹介しています。

本書の主張は,中国の中央政治局常務委員会(チャイナセブン)による集団指導制は素晴らしい,という点に要約されます。

そして集団指導制の特徴を以下の5点に集約します。

(1)分担協働制
 政治局常務委員が党,国家機構などを分担して責任を持って遂行している。もちろん問題については相互に協議している。

(2)交代チーム制
 一度に全員が交代するのではなく,前期と次期の候補たちが混じり合うようになっており,とくに省書記や中央書記処で経験を積むのは重要。

(3)集団学習制
 シンクタンクなどの一線の学者から現状分析を学習し,常に新しい情報を指導部は持っている。

(4)調査研究制
 指導部が現場に入って視察する体制がある。これにより現場の意見をくみ上げる。

(5)集団政策決定
 政治局常務委員は一人一票で責任を負って政策を決定している。情報を交流させる中で民主的な決定が行われているので,独善的な決定や昔のような路線闘争が避けられる。

以上,5点を強調しているのですが,結局,民主集中制の良さがあまり伝わってきませんし,政権賛美のニオイがプンプンします。(あえて言えば,毛沢東時代よりは「規範化」されたよね,という感じ。)

良さが伝わってこないのは日本語訳の問題というよりも中国語の抽象性がそうさせているといえるかもしれません。具体的な事例が少なく,抽象的な言葉で集団指導制の良さを説明されてもおそらく国外の人には伝わりにくいと思いました。

理論的にはまだ「?」というがありますが,第1章の現在の集団指導体制ができあがるまでを毛沢東時代からふりかえっている部分,本書の出版にあたって挿入された第9章は,現政権への交代を事例に集団指導制を具体的に論じているという点は勉強になります。
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2014年07月08日

2014年6月読書ノート

2014年6月読書ノート



新自由主義が注目されるようになって,ハイエクとフリードマンはその代表として論じられることが多いです。市場メカニズムに絶対の信頼をおくという面では,ウィーンもシカゴも同じなのですが,本書は経済学という分野では違うということを整理して示しています。

方法論やマクロ経済学については大きく違うということを改めて認識できました。


<経済>

玉村千治・桑森啓(2014)『国際産業連関分析論―理論と応用 (研究双書)』日本貿易振興機構アジア経済研究所 アジア表を理論的に位置づけ、歴史と特徴を俯瞰。国際産業連関分析の基本として生産波及を紹介。乗数の分解、家計の内生化、垂直分業、価格モデルを応用例として。

大垣昌夫・田中沙織(2014)『行動経済学 -- 伝統的経済学との統合による新しい経済学を目指して』有斐閣 人々が利他的な社会選好を持っていても市場競争下で不平等を変えることができない時はあたかも利己的に行動する。利他的行動は自己内部だけでなく所属集団の規範や価値観も影響。

川越敏司(2013)『現代経済学のエッセンス: 初歩から最新理論まで (河出ブックス)』河出書房新社 市場の分析こそ現代経済学の中心テーマ。一国ないし世界の貧困を撲滅し経済を成長させるには。市場、交換と貨幣、失業とインフレ、情報格差と不確実性下での意思決定、外部性、交渉、経済成長、宗教と経済成長。

マーク・スカウソン(田総恵子)(2013)『自由と市場の経済学: ウィーンとシカゴの物語』春秋社 自由放任の流れを汲むウオーストリア学派とシカゴ派。シカゴは実証を重視しウィーンは定性的、市場の失敗についてウィーンは一貫して自由をシカゴは立場が変化。貨幣,マクロ経済学は対立。


<中国>

小林善文(2014)『中国の環境政策〈南水北調〉-水危機を克服できるのか』昭和堂 黄河の断流こそが南水北調の原点。黄河の水資源管理、河西回廊、新疆、中国西南の怒江、瀾滄江、金沙江、淮河、長江中下流域の湖沼、用水権取引の事例、環境教育、鄱陽湖生態経済特区南水北調の課題と展望など。

齊藤哲郎(2014)『チャイナ・イデオロギー』彩流社 中国共産党のイデオロギーは公式(顕教)としてマルクス・レーニン主義、毛沢東思想があり、その他は密教と位置付けられる。90年代の新左派・自由主義派論争は密教内部の葛藤。思想の抑圧が反体制イデオロギーを生み、これも密教として存在。

林良嗣・黒田由彦・高野雅夫編(2014)『中国都市化の診断と処方-開発・成長のパラダイム転換』明石書店 経済的利益を志向する近代都市化の問題を診断し処方箋を書く環境臨床学。南京市、長春市郊外、農村のゴミ問題、上海田子坊開発、日本の由布院温泉の開発などシンポ報告集。

南亮進・牧野文夫・郝仁平編『中国経済の転換点』東洋経済新報社 日本は60、台湾は65-67、韓国は66-73に転換点を通過。中国は2000代中頃の労働不足が言われながらも転換点は未通過。分断された労働市場、土地制度が妨げる。転換点は格差を縮小させるが中国はそれも来ていない。

張剛(永井麻生子王蓉美王彩麗)(2010)『アリババ帝国』東洋経済新報社 英語教師から対外経済貿易合作部での公式HP開発からB2Bのアリババを立ち上げる。孫正義からの出資、ebayとの戦い、タオパオやアリペイシステムの構築、香港での上場まで。

<社会>

木内信蔵・山鹿誠次・清水馨八郎・稲永幸男(1964)『日本の都市化』古今書院 60年代の3大都市圏への人口集中、大都市の都市化、農民離村、出稼ぎ型流出は低賃金労働の源泉、若年労働力の流出、大企業による吸収、郊外の都市化など。

伊藤善一編(1980)『経済の変動』朝倉書店 55~75までに三大都市圏に三千万から五千万に、地方圏六千万で推移。都市化で公共投資は鉄道、電力、通信などから住宅、ゴミ処理、街路、公園へ変化、GNP比9%にまで上昇。情報の集積と交流のために地方大学の整備を。

青木栄一・白坂蕃・永野征男・福原正弘編(1979)『現代日本の都市化』古今書院 46年に特別都市計画法で被災都市の復旧、55年住宅公団法、59年首都高公団法が成立。62年の全総開発計画で大都市化の抑制へ。68年都市計画法が全面改定、土地の合理的利用の方法を定める。

平野克己(2009)『アフリカ問題―開発と援助の世界史』日本評論社 サブサハラアフリカは多くの農民が農業に従事。土地の生産性が向上せず、穀物輸入になる低投入低収量の農業。経済成長率が低いがゆえに資本装備率が高くなり、低投入低収量がもたらす食糧価格の高さが低雇用高賃金に。

塩田光喜(2006)『石斧と十字架―パプアニューギニア・インボング年代記』彩流社 村同士のもめ事による数々の毒殺の陰謀、白人統治は復讐と陰謀の連鎖を抑えたが、土着儀式消滅の危機に。白人がいなくなると、戦争の怨みはマガリで、新たに発生したトラブルは賠償で芽を摘むようになった。

古松紀子(2013)『教育の経済学』日本評論社 子の教育選好が異なる親によって子の人的資本の格差を導く。この時公的教育を行い私的教育を補助することは望ましい。個人の教育選択が資源配分の非効率を生み出す場合高等教育への補助金も正当化されうる。

濱中淳子(2013)『検証・学歴の効用』勁草書房 大学学歴の効用は増大、大学時代の学習習慣や読書が経済的効用を左右、女子の大学進学は正規非正規、結婚ともに効用をもたらす、専門学校は要資格職のみ効用がある、院卒の効用はかなり低い。しかし社会では効用低下が言われる。

釘原直樹(2013)『人はなぜ集団になると怠けるのか - 「社会的手抜き」の心理学 (中公新書)』中公新書 社会的手抜きとは集団で仕事をする時の方が1人でする時よりも1人当たりの業績が低下する現象。個人評価がない時や努力する必要がない時、他者同調などが影響。罰と報酬、評価方法、集団目標の明確化などが必要。


<その他>

野口悠紀雄(2002)『「超」文章法』中公新書 論述文が成功するかどうかは適切なメッセージがあるかどうか。適切とは一言でいえるもの、書きたくてたまらないもの。序論本論結論で書き、書き出しとおわりは重要。比喩、具体例、引用は自説を補強。

倉島保美(2012)『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)』講談社ブルーバックス 総論から書く、一つのトピックだけ、要約文で始める、補足情報で補強、パラグラフを接続、パラグラフを揃える、既知から未知への流れで、という7つのルールがパラグラフの基本。

伊丹敬之(2001)『創造的論文の書き方』有斐閣 「創造的論文とは、仮説の発想と仮説の論証の二つの創造性が豊かにある論文」この二つの創造性に加えて研究の創造性が伝わるように説得的でわかりやすく書かれたものが創造的論文。

石原武政(2007)『「論理的思考のすすめ-感覚に導かれる論理』有斐閣 複雑怪奇な現実の本質から理論を考える。しかし理論は理論のルールで決められており、理論的には、というと人は萎縮する。論理的に考えているはずなのに言葉にしようとしてできないことがある。論理とは何か?

ちきりん(2011)『ゆるく考えよう-人生を100倍ラクにする思考法』イースト・プレス 経済力、社会的規範、自分のプライドや保身が自由に生きることを妨げる。自由に生きないことと引き替えにそれなりの人生を手に入れた。目標は高くし過ぎない方がラクに生きられる。

ちきりん(2011)『自分のアタマで考えよう-「知識」にだまされない「思考」の技術』ダイヤモンド社 知識は過去の事実の積み重ね、思考とは未来に通用する論理の到達点。なぜ、だから何?と問い、視覚化で思考を踏まえ、自分独自のフィルターを見つけること。

向後千春・富永敦子(2007)『統計学がわかる-ハンバーガーショップで無理なく学ぶ、やさしく楽しい統計学』技術評論社 ハンバーガー店のデータで,平均と分散、データの分布を確認、カイ二乗検定、t検定、分散分析から「違いを調べる」。3つ目の店が出来たら分散分析で。

向後千春・富永敦子(2009)『統計学がわかる 【回帰分析・因子分析編】』技術評論社 アイスクリームと最高気温に関係はあるのか、相関係数、回帰分析。より正確に相関関係を把握する偏相関、複雑なアンケートを相関行列で相関を明らかにし、因子分析を。

宮下裕介(2005)『海外経験ゼロ それでもTOEIC900点』扶桑社 1000時間投資すれば900点は可能、トレーニング日数と時間を記録、リスニングは正しい発音、シャドウイングができれは書き取り、意味理解が可能だしリーディングも伸びる、重要な文書と単語は書く、など。

近藤雅昭(2012)『最短でTOEICテスト900点を超える方法』ベレ出版 できるものできないものの仕分けが肝心。900点を超えても自信があるとは言えないが、実際その状況に置かれれば間違いなく短期間で対応可能なレベルにはなる。出張やプレゼン、旅行で得をすることは間違いない。

鳥飼玖美子(2002)『TOEFL・TOEICと日本人の英語力-資格主義から実力主義へ』講談社現代新書 資格試験は英語を学ぶ目的として成果を測定するもの。しかし数値で表しにくいものがある。所詮スキルじゃないかというのは歪んだ言語観、文化に敬意を払い正当な評価で持って学ぶこと。

小島寛之(2014)『数学は世界をこう見る-数と空間への現代的アプローチ』PHP新書 整数を倍数(イデアル)集合として見ることにより、素数や分数が有限個の要素からなる加減乗除に閉じた代数に。有限の空間は図形を理解しやすくし、群の代数概念へ。図形を素数と同じように扱える。

北条かや(2014)『キャバ嬢の社会学 (星海社新書)』星海社新書 「カオとカネの交換システム」の一形態、キャバクラ。客であること・キャバ嬢であることの前提の上で恋人や友人のような関係が演出される。素人でありながら玄人の技術が必要。客を人として大切にしながら客として割り切る。
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2014年06月17日

『国際産業連関分析論』

アジ研の国際産業連関表を使う人にとって,有益な情報がつまった本が出版されました。

玉村千治・桑森啓(2014)『国際産業連関分析論』日本貿易振興機構アジア経済研究所です。



本書は,アジ研における過去の国際産業連関表の発展史,表の特徴と作成方法,理論的位置づけを整理し,基本的な分析手法をはじめとして,乗数分解,家計内生化,垂直分業,価格モデルの応用面をも紹介しています。

本書の目次はこちら

本書を読んで啓発された部分を紹介。

1.アジア国際産業連関表の作表を理論的位置づける野心的な試みがなされています(第1章)。

地域間産業連関表の理想はアイサード型と言われる地域内取引,地域間取引をデータから収集して作られるものです。しかし,地域間取引データは入手が困難なため,一般にチェネリー=モーゼス型モデルを用いて推計されることが多いです。

アジア国際産業連関表では,国内取引は推計可能なため輸入部分のみをチェネリー=モーゼス型で推計しているため,チェネリー=モーゼス型よりも精度が高いことが示されています。


2.乗数分解について簡便法は地域間スピルオーバーを過大評価している可能性を指摘しています(第2章)。

レオンチェフ逆行列は,Pyatt and Round(1979)やStone(1985)らと比べて,一般に利用される乗数分解法(本書では簡便法と呼んでいる)の違いを明確に整理しています。数値例の結果では,地域間フィードバック,地域内乗数は同じとしても,地域間スピルオーバーは過大評価されるとしています。


3.物量と価格モデルの整理(第7章)

数量表と価格が既知であれば金額表と同じ分析が可能であることが示されています。金額表は物量と価格で構成されているので,裏返せば金額表で価格モデルとしての利用可能性を示しています。今まで国際産業連関表を価格モデルとして使われることはなかったように思うので,今後この分野での拡張が期待できます。


その他,いろいろ考えさせられた点をあげます。

・国際産業連関表では地域間よりも国際間の方が交易係数は不安的ではないかとしています。実際私もそのような気はしていますが,地域間と国際間でどちらが交易係数が安定しているかは今後の実証が待たれます。

・iPhoneが中国で組み立てられ,しかも中国に落ちる付加価値分が小さいことを考えると,現在の表形式による家計内生化モデルでは物足りないように思います。現在の産業連関表の枠組みでは,付加価値は発生地ベースで作られていますから,どこに帰属するかは曖昧です。帰属ベースの付加価値を示す産業連関表ができれば,このあたりの分析は今後おもしろくなると思います。

・3章の付加価値誘発効果分析による国際分業度と国際垂直分業(VS)指標にはなんらかの関係がありそうです。最近はやりの付加価値貿易もそうですが,このあたりの分析モデルを理論的に整理してみたいと最近思っています。

本書は,国際産業連関分析を行う人にとっては分析の道標になりますし,また産業連関のフィールドにいる人には手元に置いておきたい一冊です。
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2014年06月12日

『やってのける』

心理学的実験を通じて明らかになった人の特性から,どのようにより良く生きるか,自分の目標を達成するのか,を解説するいい本を読みました。



目標の設定の仕方,普段の行動の仕方,続けた方などが詳しく書かれているのはこれまでの自己啓発本と変わりません。

その中で本書が良かったのは,2点。

1点目は,計画を立てるときのコツが明確に書かれているということです。具体的で難易度の高い目標の方が,抽象的で難易度の低い目標よりも達成の確率があがるようです。人はやったことのないことを具体的に示すと「何」をすればいいかがわかるので,実行しやすくなります。そしてその行動をとる中で,抽象的に「なぜ」やるのかということを考えてモチベーションアップにつなげるといいようです。

また楽観的に目標達成することだけではなく,目標達成までの難度や困難を計画とともに書き出すと効果があがるそうです。

2点目は,人のタイプによって物事の続け方は変わってくることを示しています。なぜ物事を続ける人とそうでない人がいるのか,心理学でも大きなテーマだったようで,人のタイプによって目標設定ややり方を変える必要性を説いているのが本書の一番の特徴です。

本書では,人を自分の能力を証明したいという証明型,そして成長の進歩や技能の習得をめざす習得型の人がいる,とします。証明型の人はモチベーションが高いのですが,困難に直面すると諦めやすくなり,習得型の人は目標達成の過程を楽しみ,不安に負けにくいという面をもっています。証明型の人には困難を先に考えさせておくことが心の準備を持たせることになりますし,習得型を意識すると達成確率が上がります。

その他,獲得型,防御型にわけて詳細にその心理的特徴が述べられるとともに,その場合の対処方法があきらかにされています。自分を客観的にみてどのようなタイプかを把握し,目標を計画にしてどのように実施していくかが明確になると,成功の確率はあがるかもしれません,

<関連エントリ>
感想『習慣の力』」(2013年10月3日)
エビデンスにもとづいた自己啓発本」(2013年7月4日)
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2014年06月03日

2014年5月読書ノート

2014年5月読書ノート



いろいろ就活本が出ている中で,具体的な学生へのアドバイスが満載のいい本でした。

バイトなどでPDCAサイクルをきちんと回せるようにすること,バイト先で問題を解決できるほど一生懸命取り組んだ体験を持つことの重要性が語られています。

大学のレポート作成と通じる部分があります。仮説をたてて,試行錯誤し,自分なりの解決をみつけて,書いてみる,議論して自分の解決方法を検証し,そしてさらによりよい解決方法を探すというのがレポート作成のキモです。大学教育とPDCAサイクルの結合がうまくできれば,大学教育が就職活動に役立つことを学生にアピールできるんではないかと思いました。

本書は学生へオススメ。

<経済>

野上裕生(2013)『すぐに役立つ開発指標のはなし (アジアを見る眼)』アジア経済研究所 理論なき計測、データなき計測に留意しつつ、開発成果を示す豊かさ、貧しさや不平等、所得や競争力、貿易、金融深化、債務などの指標を、学問的背景と指標の特徴をわかりやすく示す。

川野辺裕幸・中村まづる編(2013)『テキストブック公共選択』勁草書房 公共選択論は経済学的分析を用いた非市場的決定の分析。市場の失敗を補う政府として外生化されていた政府の行動を,政策の策定、実施する主体として経済学的分析を行う。政府の行動が必ずしも効率的ではない。

タイラー・コーエン(高遠裕子)(2009)『インセンティブ 自分と世界をうまく動かす』日経BP社 罰則と報酬をどう活用すべきか。義務に金銭的報酬を与えてもうまくいかないが、セールスマンへの報酬はうまくいく。外交官の駐車違反は文化に依存。法の順守意識のない文化ではうまくいかない。

安藤至大(2013)『ミクロ経済学の第一歩』有斐閣ストゥディア 価格より高い価値を持つと思えば購入し、価値より価格が高いと販売する。合意の上で行う交換によって生み出される利益を最大限に実現させることがミクロ経済学の目的。

柴田章久・宇南山卓(2013)『マクロ経済学の第一歩』有斐閣ストゥディア 課題は経済成長、失業、デフレなど。家計、企業、政府の主体が労働、金融、財市場で取引を行う。産出は労働、資本、技術で決まり、短期は雇用水準を除いた変数は変化しないと考え、資本、技術が変化するのが長期。

青木昌彦(2014)『青木昌彦の経済学入門: 制度論の地平を拡げる (ちくま新書)』ちくま新書 人間社会はゲームとして。人間は自分の行動に対する相手の反応を予想しながら行動。そのやりとりの中からゲームのプレーの仕方と了解されるもの、これが制度。比較制度分析は制度の違いは違う均衡として捉える。

<中国>

楊秋麗(2013)『中国大型国有企業の経営システム改革-中国石油天然ガス集団公司を中心として』晃洋書房 03年に国資委が設立、親会社中国石油集団(国家授権投資機構)-子会社中国石油株式公司-孫会社吉林化工の関係に。子会社に優良資産が集中、上場は民営化ではなく資本調達。

許憲春(佐久間逸雄監修李潔訳)(2009)『詳説中国GDP統計-MPSからSNAへ』新曜社 中国の支出面GDPは93年より開始。サービス産業を拡大、企業改革、物価の二重性など推計に困難が。世銀やマディソンの調整には問題も多く、ロースキーも事実誤認がある。

富坂聰(2014)『中国の論点』角川ONEテーマ21新書 日中関係、中国政治・経済・歴史・文化に対するQ&A。国民の意識を超えた国交回復は「一部の軍国主義者,被害者の一般民衆」ロジックを生み出す、政治家の無意識な一言が謝罪の意味を薄め、中国につけいる隙を与えている。

津上俊哉(2014)『中国停滞の核心 (文春新書)』文春新書 中国の債務比率は主要国と比べて高くない、余力を残す財政、安定を希望する都市住民、民生向上した農村、老いていく人口に動乱パワーはないので短期的中国経済崩壊はない。ただし長期的には土地バブル、地方不良債権がブラック・スワンになるか。

福島香織(2013)『中国複合汚染の正体』扶桑社 河南のがん村、汚染水を出す工場、北京に近い回族の村の水汚染、カドニウム汚染などのルポから、中国の環境汚染は司法、公民意識、NGO、言論の自由など社会システムが関わる複合汚染であることを示す。

鈴木隆・田中周編(2013)『転換期中国の政治と社会集団 (早稲田現代中国研究叢書)』国際書院 中国の国家と社会を理解するために、@労働者出稼ぎ農民の動向、B民営化された国有企業の幹部、C基層社会における「新郷紳」の役割、D社区の存在、E少数民族という複数の社会アクターを中心に最後は群体性事件と統治を分析。

中兼和津次編(2014)『中国経済はどう変わったか―改革開放以後の経済制度と政策を評価する (早稲田現代中国研究叢書)』国際書院 マクロ経済政策、地域開発、価格、財政、土地、貿易、為替、農業のマクロ面、金融、企業、人口労働移動、雇用労働政策、賃金のミクロ面における改革開放の評価。

<自己啓発>

ジュリア・キャメロン(2001)『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』サンマーク出版 意識の流れをありのままに綴るモーニング・ノートを毎日書き、週一回創造的な積極的なイメージ、自分の夢を自分の内部にいる創造的な子どもとデートをする。この二つのツールで創造性を回復する。

ブライアン・トレーシー(門田美鈴)(2002)『カエルを食べてしまえ!』ダイヤモンド社 カエルを食べてしまえ!計画づくり、優先順位の見極め、とりかかるべき仕事は、最も重要なものを見極めること。ひたすら専念することが成果を上げ、生産性をあげるコツ。

ハイディ・グラント・ハルバーソン(児島修)(2013)『やってのける ~意志力を使わずに自分を動かす~』大和書房 目標達成の社会心理学的研究から。具体的で難度が高い目標が有効,思考タイプによって「なぜ」を問い,「何」を問うことによって効果的に行動がとれる。

戸塚隆将(2013)『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』朝日新聞出版 人との飲み会などを大事に、資料作りの前には紙と鉛筆を、健康管理と身だしなみに気を使う、始業1時間前を大事にする、TOEIC900をとりあえずの目標に、自分ノートをつける、など。

<社会>

平野克己(2013)『経済大陸アフリカ (中公新書)』中公新書 中国の発展による資源需要がアフリカ進出を促し、03年以降の資源高が世界からFDIが流入し、開発なき成長を遂げた。資源の呪いは消費は促したが開発は遅らせ政治の質を悪くする。農業の低開発は貧困と人類の食糧供給を脅かす。

ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、アラスター・スミス(四本健二浅野宣之)(2013)『独裁者のためのハンドブック』亜紀書房 独裁、民主国家であっても政治は政治権力を握り、少数の盟友によって守られ、税収と歳出をコントロールして権力を保持すること。リーダーの人を支配する原理を説明。

コナー・ウッドマン(松本裕)(2013)『フェアトレードのおかしな真実――僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た』英治出版 「倫理的」は利益を産む。認証財団は企業から認証費用を取るが、それが途上国の農村に向かわず広告に使われる。大企業は社会的責任に敏感になっているが、実際に農民や貧困層の改善には繋がっていない。

難波功士(2012)『人はなぜ〈上京〉するのか』日経プレミアシリーズ 明治大正昭和と上京は憧れであり社会階層を上がるための熱気があった。団塊以降の世代は平熱化し、業務としての移動に。原因は東京の情報が瞬時に全国へと流布するメディアの登場と上京の動機がより経済的な要因になったから。

久松達央(2013)『キレイゴト抜きの農業論』新潮新書 安全は客観、安心は主観、野菜の味は時期品種鮮度であり有機は関係ない、有機を目的にするのではなく手段としての有機、「かわいそうな」農家を支援するための税制措置は農業生産に寄与していない名ばかり農家の資産形成を助けている。

藻谷浩介・NHK広島取材班(2013)『里山資本主義-日本経済は「安心の原理」で動く』角川ONEテーマ21 木材からエネルギーを取る岡山真庭、周防大島のジャム作り。水と食料と燃料が入り続ける仕組みを作る里山資本主義はお金の循環で構築されたマネー資本主義のバックアップになる。

<その他>

小山薫堂(2006)『考えないヒント-アイデアはこうして生まれる』幻冬舎新書 アイデア体質になるには「勝手にテコ入れ」という習慣。勝手にここは自分ならこうすると考えること。広く浅く様々な仕事をする、当たり前をリセット、日常を楽しくする、ことがアイデアのタネに。偶然は最良の選択だ。

小山薫堂(2009)『もったいない主義-不景気だからアイデアが湧いてくる!』幻冬舎新書 受付しかしない受付嬢はもったいないから生まれた受付兼パン屋。もったいないから桜餅、バラのお風呂などが生まれた。病院をメディアとすれば雑誌が作れる。感情移入し価値を増やすのがブランド。

中村淳彦(2012)『職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)』幻冬舎新書 AV女優志願者は多く供給過剰。労働量は増え収入は減っている。セルメーカーの企業イメージ刷新が反社会的なものを排除。必要とされる成功体験が女性のモチベーションを上げる。裸が急速なスピードで消費され、楽という思い込みがリスクに。

溜池ゴロー(2013)『AV女優のお仕事場』ベスト新書 容姿ではなくファンを獲得するセルフ・プロデュースの力を持つ女優が生き残る。パッケージで売上が左右され数値至上主義のメーカー、現場を和ませる女性ヘアメイク。普通の女性との違いは顔をさらすという覚悟があるかどうか。

芦田宏直(2013)『努力する人間になってはいけない-学校と仕事と社会の新人論』ロゼッタストーン 努力する人が目標を達成できないのは自分の仕事の仕方を変えないから。基礎学力以外の職業教育体系が存在せず、資格を教えても人材像がない。キャリア教育が仕事に結びつかない学校教育に導入。

さかき漣(企画監修三橋貴明)(2013)『顔のない独裁者-「自由革命」「新自由主義」との戦い』PHP研究所 大エイジア連邦から自由を旗印にしたライジング・サンが革命で政権を奪取。実施した政策はインフラ、治安、医療、道州制など徹底的な自由化。自由化に反対する革命は…

タイラー・コーエン(2011)『フレーミング-「自分の経済学」で幸福を切り取る』日経BP社 情報の小さなピースを操作しそれらを組み合わせて感情的に満足のいく物語を作る力を人は学んできた。自閉症はその傾向が強くその認知の強みを真似ることでメリットが得られる。

太田芳徳(2013)『リクルートを辞めたから話せる、本当の「就活」の話 無名大学から大手企業へ (PHPビジネス新書)』PHPビジネス新書 アルバイトで「突き抜ける経験」をし、自分でPDCAサイクルを回すことのできる人材になる。社風が大事、自分の得意を考える。面接で聞きたいことは「あなたは誰?」「うちの会社はどう?」の2点。
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2014年05月08日

『独裁者のためのハンドブック』

政治システムを理解するのにまた一つ勉強になりました。



本書は、政治リーダー(企業の組織リーダーにもあてはまる)が、どのように国や人を支配するか、そして政治や公共の選択がどのように行われるか,そのシステム理解のための新たなフレームワークを提供しています。

はしがきや訳者の解説によると,本書の内容は筆者らが主張する「権力支持基盤理論」に基づいているようです。

その内容は,

(1)政治とは政治権力を握りそれを保持すること。
(2)政治的に生き残るためには少数の盟友に依存する。
(3)少数の盟友たちの周りに盟友たちと交代可能な大きな母集団が存在し、そのために歳入と歳出の裁量を持つ。
(4)リーダーは高い税率をかける。

とします。彼らによれば独裁国家でも民主国家でも基本は同じで、盟友たちの数が民主国家の場合は多いとしています。

例えばアメリカであっても、大統領候補は一部の選挙人(一握りの有権者)に選ばれます。これは一部の盟友集団です。そして彼らは多くの有権者から支持を得なければならないので,政党は公共工事や社会保障を訴えてバラマキを行い、政治権力を保持します。

独裁国家はより一層このフレームワークがあてはまります。中国であれば,China Sevenを中心に,共産党(中央委員会)によって支持されて選ばれますし,そして末端になればなるほど党員は交代が効きます。党員に対して見返りを与えることによって中国共産党は独裁権力を執行することが可能です。(例えば,「「中国の特色ある社会主義」の政治制度とは?」を参考。)

民主主義国家と独裁国家の違いは,盟友集団の大きさです。独裁国家では盟友集団は小さくなり,凝縮しています。その盟友集団は見返りがなくなる、あるいはリーダーの権力が長続きしないとなると平気で裏切りますし,一方リーダーは政治権力を保持するために、盟友集団と多数の代替可能な国民たちとのバランスを考えて(緊張感を与えて)歳出をコントロールし,見返りを与えていきます。

このフレームワークは筆者らの実証的学術論文によって裏付けられているようですが,私は原論文を見ていないのでこの理論の有効性がどこまであるかわかりません。それでも本書によって政治を理解する面白い視点を得ることができたのは確かです。
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2014年05月06日

2014年4月読書ノート

2014年4月読書ノート



就活本の中でも本書は,筆者が接してきた学生たちのルポを通じて,就活の実態と就活に上手くいく学生の様子をいきいきと描いています。

社会人や外部の大人との接する機会がある学生,そして自分1人で社会に飛び込む学生は強いと力説しています。地頭が強い学生はすでに行動することが多いのですが,だからこそ一流大学の学生に負けないためには行動が重要であるとします。私も学生と接していてそう思います。

読みやすいので,学生にオススメ。

<経済>

野口哲典(2014)『入門 統計学はこんなに役立つ』宝島社新書 ビッグデータは選挙予測、グーグル翻訳、クレジット不正利用に使われる。グラフにするだけでも説得力が増す。統計学は確率を利用して大量データから性質や特徴、法則を見つけ出す便利な道具。

加賀隆一(2007)『プロジェクトファイナンスの実務-プロジェクトの資金調達とリスク・コントロール』社団法人金融財政事情研究会 プロジェクトファイナンスはプロジェクト会社が借り入れを行いそのキャッシュフローを返済原資とする資金調達。リスク管理のために金融商品を組み合わせる。

小関尚紀(2013)『世界一わかりやすい「ゲーム理論」の教科書』中経出版 菓子メーカー営業職の中村リナがゲーム理論で経営戦略に貢献。スナック事業はプラスサムゲーム、冷凍事業は合理的なブタで、スイーツは同調圧力を。成果を納めたリナはヘッドハンティングで囚人のジレンマに。

<中国>

伊藤嘉基(2014)『チャイナリスク・チャイナドリーム-日本人だから、中国で勝てる!』同友館 中小企業診断士による中国進出ガイド。中国という風土、民族のビジネス環境、社内外取引先の作り方、ビジネス事情や注意点、成功ケース、失敗の原因など。トラブルには関係に頼る前に正攻法で。

シャヒド・ユースフ、鍋嶋郁(2011)『双頭の龍の中国-北京と上海の対照的な発展と今後のメガシティ戦略』一灯舎 上海は商業や製造業を基盤にし、北京はハイテク、高付加価値サービス産業が基盤。どちらもイノベーション能力の開発、教育、R&Dに力をいれる。

呉浙(藤江監修三木訳)(2014)『中国地域経済データブック』科学出版社東京 第12次五カ年計画を中心に東部沿海12省の対外開放、経済集積、産業構造、交通運輸ネットワーク、都市化、国有資産、就業、年金、医療、エネルギーと水資源をデータで。

中国人民大学国際通貨研究所(石橋橋口監修)(2013)『人民元 国際化への挑戦』科学出版社東京 人民元の国際化とは貿易、投資、外貨準備において価値尺度、決済、外貨準備機能を持つこと。2011年は国際化が進展。低付加価値加工貿易、金融市場の脆弱性が課題。


<自己啓発>

奥野宣之(2013)『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』ダイヤモンド社 何でもノートに入れ、前から時系列に使い、目次とフラッグを着けるアナログ索引で9割は大丈夫。ライフログは書く習慣をつけ、思いがアイデアに変わり、人生が楽しくなる。知的生産には手を動かすと考えが前進。

奥野宣之(2013)『読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』ダイヤモンド社 本を読んで気に入った箇所を抜き出し、コメントや感想を残す。記録を前提とすると読み方が「ぐっとくる箇所」を探す作業になる。読書体験の具体化にショップカード、本の帯を貼ると記憶も定着。

<社会>

石渡嶺司(2013)『就活のコノヤロー-ネット就活の限界、その先は?』光文社新書 就活に目の色を変えたくないと言いつつ、就活をする。女子の方が採用時の印象はいいが数年後男子が追い越す、答えを作れる学生は就活も社会人生活も強い、社会人との接点がある学生や授業はよい、など。

山内太地(2013)『大学のウソ-偏差値60以上の大学はいらない』角川oneテーマ21 東大早慶を目指す受験生は米国トップ大学も選択可能であり、質の高い教育が受けられる。普通の学生もフィリピン英語留学が安い。大学は国際競争にさらされており、入試改革と教員の人事制度改革が必要。

山内太地(2012)『東大秋入学の衝撃』中経出版 秋入学は「グローバル化」への東大なりの答え。入学時期だけでなく留学を増加させる意向を持つ。国や財界も秋入学に合わせる意向があるが、支援は未知数。声かけした日本の11大学も足並みはバラバラであり、ギャップタームの過ごし方も課題。

山内太地(2014)『就活下剋上 なぜ彼らは三流大学から一流企業に入れたのか』幻冬舎新書 年々厳しくなる就活。有名大学の学生と知り合う、他人と違うことをやり、インターンシップにも参加し、企業訪問し、大人と会話する、行動組が地頭組を越えられる。大学の就活支援状況も。

福嶋聡(2014)『(018)紙の本は、滅びない (ポプラ新書)』ポプラ新書 本はコンテンツにとって便利な「乗り物」。書物の必要性を支えるのは携帯性、簡易性、コンテンツの堅牢さ、信頼性、ブランド性、典拠性だ。電子媒体が持つ物理的脆弱性、機器依存性、直接不可読性に留意すべき。

宮田昇(2013)『図書館に通う-当世「公立無料貸本屋」事情』みすず書房 図書館は貸与権除外の公立無料貸本屋と批判される。読者層の裾野の拡大には出版社は図書館への販売を通じて再生産の保証を得る。書店と違って貴重本の収集、企画展などが可能。

猪谷千香(2014)『つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)』ちくま新書 無料貸本屋から外部機関との連携の場、ビシネスのセカンドオフィスに、市民の憩いの場に、知的情報を関連付け発信する場に。課題解決型を目指し、本を売る、コーヒーショップを誘致、など変わる図書館像。

渡邉格(2013)『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』講談社 資本主義経済の矛盾は生産手段を持たない労働者が労働力を売ること。今の時代は自前の生産手段を取り戻すこと。天然酵母や自然栽培を武器として岡山県勝山でパン屋を開く。田舎で小商いをし、SNSで発信する。

小山薫堂編(2010)『社会を動かす企画術 (中公新書ラクレ)』中公新書ラクレ 首都高「東京スマートシティ」プロジェクトの裏話。道路はあるものからあってありがたいと感情移入するところから始まった。会長による交通情報など。「企画とはサービスであり、サービスとは思いやり」。東京オリンピック噴水など。

小山薫堂(2009)『人を喜ばせるということ-だからサプライズがやめられない』中公新書ラクレ サプライズは人を喜ばして自分も楽しく生きるために行うもの。企画はどれだけ人を愉快にさせてあげられるかというサービス。サプライズを考え、仲間と「つながり」という感覚を味わえる。

高橋俊介(2000)『キャリア・ショック-どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?』東洋経済新報社 キャリアの将来像が予期しない環境変化によって短期間で崩壊してしまう。自分の動機を知り、世の中の動向を読み流れに賭ける。自分のビジョンとバリューを公言し、社会に提供。

高橋俊介(2013)『ホワイト企業 サービス業化する日本の人材育成戦略 (PHP新書)』PHP新書 企業がサービス業化。製造業時代は序列だったがサービス業時代はフラット型、自律型に。サービス業の本質は個別性と専門性。サービス業の人材育成は感受性と応用力,そして企業の強みをみんなで育てる。

村田裕之(2012)『シニアシフトの衝撃-超高齢化社会をビジネスチャンスに変える方法』ダイヤモンド社 人口動態がシニアにシフトし、企業もシフト。ライフステージ変化を織り込みつつ不安不便不満解消を目指したマーケティングが必要だが、高齢者というラベリングはリスクあり。

<その他>

金沢大学子どものこころの発達センター(2013)『自閉症という謎に迫る』小学館新書 多彩な症状をもつ自閉症の治療は困難、オキシトシンの臨床研究はまだ6本、遺伝は強く関与するも環境因子も影響、脳神経からも言語が弱く視覚的類推は得意、文化社会によって困難は異なる、等。

酒井邦嘉(2006)『科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか (中公新書 (1843))』中公新書 科学者になるには科学が好きで研究をやってみたいという素朴な気持ちでよい。しかし他に迎合しない個の強さが必要、職や経済、扶養などの他の問題がある中で好奇心を維持する強さも必要。

林周二(2004)『研究者という職業』東京図書 研究者八カ条。1ユニークな研究テーマを持つ、2本質的なことをテーマにする、3周到な計画をもつ、4世の役に立つこと、5広い世界で認められるようになること、6優れた師をもつ、7他分野と交流する、8視野拡大のために研究環境を変えること。

杉原厚彦(2012)『大学教授という仕事【増補新版】』水曜社 大学は忙しくてもストレスの少ない仕事ではないか。学科長など組織の管理運営は内部からの突き上げ外からの圧力にさらされるが、外部の関わり、講演、委員、査読や原稿依頼などはあくまで自分で決められる。

村松秀(2006)『論文捏造 (中公新書ラクレ)』中公新書ラクレ ベル研究所のシェーンが有機物と超伝導の論文をサイエンス紙に発表。世界中が驚き追試に追われるが成功しない。3年間不正が見抜けなかったのは不正の立証困難性が原因。本人もアイデアを誰かが追試してくれるのではないかという期待があったのでは。

長井鞠子(2014)『伝える極意 (集英社新書)』集英社新書 伝えるために重要なのは「誰かに伝えたい」と思うコンテンツを持っているか、それを伝える熱意があるか、わかりやすくする論理性・構成力があるか、である。そしてその先にある人の心を動かすことが大事。

松下孝昭(2013)『軍隊を誘致せよ: 陸海軍と都市形成 (歴史文化ライブラリー)』吉川弘文館 経済効果は当然のこと治安や災害対策として期待できる軍隊誘致。土地を献上しても、鉄道、上下水道、物資供給、遊廓など地域発展などの面でメリットが大きい。明治時代の軍隊誘致活動と地域の経済。

夏井睦(2013)『炭水化物が人類を滅ぼす-糖質制限からみた生命の科学』光文社新書 糖質を食べると眠くなるという現象が人類は糖質を摂取していなかったことを示す。糖質は嗜好品。人類と糖質の付き合いは穀物栽培から始まった。糖質が手に入りやすくなって人間は糖質に支配されるようになった。
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2014年04月08日

2014年3月読書ノート

2014年3月の読書ノートです。



本書は「売春」について考えさせられる名著です。売春が成立するための条件は男性が支配的な社会であり,みだらな女性を求める一方で妻には貞淑さを求めるという二重規範が売春を強化することが述べられています。

二重規範の社会は,女性に純潔を求め期待に背けば制裁を与えます。支配下の女性に貞操を守らせながらも婚外交渉を求めるならばニーズに応える女性のサービスに市場価格がつきます。これが売春ですし,そして売春は社会から制裁を加えられてきました。

その一方で,貧困によって金持ちの愛人になることや、売春身受けは社会階層の移動であったという事実も指摘されます。

結局,売春が減る条件は,女性が性にオープンになり二重規範社会が崩れた場合だとしています。


<経済>

坂井豊貴(2013)『社会的選択理論への招待』日本評論社 コンドルセの二つの選択肢比較という方法に対し,多数決という意志集約で選択肢を順位付けして加点し和をとる意見集約の方法、ボルダルール。アローの不可能性定理ではコンドルセ方法は意志集約できない程度に解釈すべき。

船木由喜彦・石川竜一郎編(2013)『制度と認識の経済学』NTT出版 正義などの社会的目標を明確にし制度設計とメカニズムなどの規範的側面、限定合理的な主体がどのように意思決定し結果どうなるか事実解明的側面を明らかに。

朝倉啓一郎(2006)『産業連関計算の新しい展開』九州大学出版会 産業連関表の構成と分析手法が有効需要政策という歴史的に特殊な経済事象に方向づけられた。部門統合は投入構造異質化が平均化してしまうこと、質的分析は投入産出の構造解析が可能。環境モデルや産業連関分析の動向など。

河野稠果(2007)『人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか』中公新書 人口問題は少子化、高齢化、人口減少。人口学は出生、死亡、移動の三要素を社会経済政治現象との関係を研究。人口転換理論は多産多死から少産少死を説明。死亡は生命表から、出生は結婚、受胎確率などから人口動態を推測。

加藤久和(2007)『人口経済学』日経文庫 マルサスの人口論から新古典派へ。新古典派は限界生産力から適度人口を議論、出生行動を夫婦の効用最大化として考え、成長モデルは人口増加と所得の豊かさを説明。労働市場と社会保障制度の役割など。

ルチル・シャルマ(鈴木立哉)(2013)『ブレイクアウト・ネーションズ-大停滞を打ち破る新興国』早川書房 新興国はこの10年成長の範囲とスピードが異例だったために不合理なほど期待値が世界中で高まった。ただしすべての新興国がブレイクアウト・ネーションズになれるわけではない。

ケネス・ポメランツ、スティーヴン・トピック(福田吉田訳)(2013)『グローバル経済の誕生-貿易が作り変えたこの世界』筑摩書房 貿易は何千年にも渡って行われてきており、ヨーロッパは貿易を拡大。カカオ豆、コーヒー、砂糖は世界を廻り、時にして暴力的な奴隷貿易が行われた。

ポール・シーブライト(山形浩生森本正史)(2014)『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?―― ヒトの進化からみた経済学』みすず書房 個人が視野狭窄で行動しているにもかかわらず社会はうまく行く。うまくいくのは協力することによるメリットと強い返報性。集団内での協調は集団外では戦闘的に。

ポール・J・ザック(柴田裕之)(2013)『経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学』ダイヤモンド社 オキシトシンが共感を生み道徳的行動をもたらす。取引の効率性と収益性を高め、繁栄がストレスを減らして信頼を高める。これがオキシトシンの繁栄サイクルだ。長期的な繁栄には公正な取引の規則が必要。

大村平(2006)『統計解析のはなし-データに語らせるテクニック[改訂版]』日科技連出版社 少ないデータから得られたものの信頼性を調べる推定、まぐれか実際の因果のものかを決める検定。ばらつきを列、行、誤差の情報に分ける分散分析、相関と回帰、多変量解析へ。

大村平(2002)『統計のはなし-基礎・応用・娯楽[改訂版]』日科技連出版社 代表値を求め、正規分布であれば見本から全体を推定可能。たまたまうまく行ったので仮説を棄却するのがあわてもの(第一種過誤)、うまくいっているのに仮説を採用してしまうぼんやり(第二種過誤)ものの誤り。

レナード・ムロディナウ(田中三彦)(2009)『たまたま-日常に潜む「偶然」を科学する』ダイヤモンド社 物事は偶然の状況から発生していることが多い(ランダムネス)。私たちは並外れた出来事でも因果で解釈しようとする。

吉本佳生(2013)『データ分析ってこうやるんだ!実況講義』ダイヤモンド社 人のデータを使う時には偏りについて慎重にチェック。期間、変化率、グラフの錯覚に注意し多くの試行錯誤で経験を積むことがコツをつかむ近道。凝った計算で得られるジニ係数などは欠点が多いので注意。

ネイト・シルバー(川添節子)(2013)『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』日経BP社 情報量が急増してノイズも増え予測に必要なシグナルは減ってきている。ベイズ的に予測と確率を考える。最初の推定から情報を得て修正していく。

藤澤陽介(2014)『すべては統計にまかせなさい』PHP研究所 統計ツールでリスクを計量化し、リスクを引き受けて生み出される価値、その評価を行うアクチュアリー。計算にはリスクの金額と確率が必要。確率はポアソン分布や正規分布でモデル化。保険金額は大数の法則と収支相等の原則で決定。

<中国>

橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司(2013)『おどろきの中国』講談社現代新書 トップは有能であるべきという公理で支配される中国。天が毛沢東に権力を丸投げし彼に欠陥があってもこれを承認するという。日本は何のために中国と戦争したか、理解できていないので何を謝罪すべきかわからない。

加藤嘉一(2012)『いま中国人は何を考えているのか』日経プレミアシリーズ 腐敗への民衆の不満を、地方政府の役人、サッカー、デモなどへ転化させ、共産党は民衆の味方を誇示。政府への不満をすべて消し去ることは不可能であり、ガス抜きのツールとして「反腐敗」。

若林敬子編(筒井紀美訳)(2006)『中国人口問題のいま-中国人研究者の視点から』ミネルヴァ書房 人口現状と展望(田雪原),一人っ子政策の成果(于学軍),計画出産改革(顧宝昌),人口転換(蔡ム),後期高齢者のニーズ(桂世勲)など。「城中村」も。

黄文雄(2010)『日本支配を狙って自滅する中国』徳間書店 中国の尖閣などの強硬姿勢の裏には国内に抱える問題に関係する。人口圧力と資源不足が強硬に向かわせるが最大の通商国家になり世界の中国に対する反感が増加。

エドワード・ルトワック(奥山真司監訳)(2013)『自滅する中国-なぜ世界帝国になれないのか』芙蓉書房 急速な経済発展と軍事力の増強は周辺諸国の敵対的反応を引き起こす。これが中国政府の威信と影響力を奪う。対抗手段は地経学的なもの、輸出をさせず、天然資源を中国に輸出しないこと。

国分良成・添谷芳秀・高原明生・川島真(2013)『日中関係史 (有斐閣アルマ)』有斐閣アロマ 戦前期の歴史は日中関係の前提。戦後二つの中国との三角関係、貿易面ではLT貿易。70年代に日中国交正常化、天安門事件までおおむね良好。06年に戦略的互恵関係が始まるも歴史、台湾、領土をめぐって摩擦は激化。

<自己啓発>

山崎雅保(2012)『「マイナスの自己暗示」からあなたの心を救い出す本』柏書房 生きる心地は主観次第。主観はそう感じる心のくせ。心のくせを治す自己暗示。「嫌だ」は自分の積極的に拒む感情を明確にし、「大丈夫」は安心と肯定感を培ってくれる最強の自己暗示。

エミール・クーエ(林泰監修)(2009)『暗示で心と体を癒しなさい!』かんき出版 無意識のうちに習慣を作り人生を形作る。意識的に無意識に自己暗示をかける。「私は毎日あらゆる面でますますよくなっている」という暗示が効果的。

リンダ・ローズ(2001)『あなたの人生を変える催眠療法―リンダ・ローズ博士の「潜在意識」活用マニュアル』雷韻出版 顕在意識と潜在意識。潜在意識に体験の痕跡が蓄積され信念になり、行動パターンや世界観に影響を与える。潜在意識を守るクリティカルファクターはボーッとしたり感傷的、感情的な時、ショック時になくなる(非意図的催眠状態)。

前田大輔(2006)『プロカウンセラーの心理の達人マニュアル』秀和システム 心を理解するとは欲求を理解すること。交流分析で自我状態を確認し、現代催眠(NLP)で気持ちを読む。私たちは常識という催眠にかかっている。思い込みという暗示を外せば生きるのが楽になる。

<社会>

大原ケイ(2010)『ルポ電子書籍大国アメリカ』アスキー新書 本が売れるならどんなフォーマットでもどんなルートでもどんな店でも売るというのが米国出版業界。訴訟は起きながらもルールが決まっていくという考え方。日本は出版文化を守るといいながら既得権益を守るだけではないか。

バーン・ブーロー、ボニー・ブーロー(1991)『売春の社会史―古代オリエントから現代まで』筑摩書房 女性に貞淑を求め自由な性を謳歌する男性の二重基準が売春を許容し、処罰対象となる。過去宗教は売春行為には敵意を抱いても売春婦には寛大であった。私生児と性病の蔓延を防ぐため国家管理に。

藤目ゆき(1998)『性の歴史学』不二出版 軍隊による公娼制度,明治期の出産奨励や戦後の産児調節,日本女性の性は政府の都合,女性人権運動の波に翻弄される。

熊本県庁チームくまモン(2013)『くまモンの秘密 地方公務員集団が起こしたサプライズ (幻冬舎新書)』幻冬舎新書 財政難、九州新幹線の逆境の中で生まれた熊本PR作戦。くまモンを関西に神出鬼没させ、ブログとツイッターを開設。失踪事件を演出し、非常勤職員から営業部長に昇格。職員の奮闘記録。

森永卓郎(2003)『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社 小泉政権の構造改革はデフレを生み失業者とフリーターを増加。不良債権処理により勝ち組に資産が集中する新階級社会に。年収が減る中、副業したり、ライフスタイルの見直しを。

茂木誠(2014)『経済は世界史から学べ』ダイヤモンド社 紙幣の発行、国際通貨は銀貨、金貨からドルへ。保護貿易の失敗でナポレオンは没落、金融の歴史は被迫害者の歴史、世界初のバブルはチューリップの球根、借金まみれの藩を立て直した山田方谷の改革など、金融、貿易、財政の解説。


<その他>

中川淳一郎(2009)『ウェブはバカと暇人のもの』光文社新書 ネットに過度な幻想を持つな。企業にとってネットは告知スペースでネットユーザーの嗜好に合わせたB級なことをやる場であり、一般の人にとってネットは便利なツールであり暇つぶしの場である。
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2014年03月20日

『経済は世界史から学べ』

ダイヤモンド社編集部の方からご献本いただきました。



本書の特徴はタイトル通り,世界史の出来事で経済の仕組みを理解しようというものです。

理解できる経済の内容としては主にマクロ経済の分野です。通貨の意味,中央銀行,国際通貨体制と金融システムを理解し,貿易,財政へと話が進んでいきます。

経済を理解している私のとっては経済にまつわる世界史の解釈(仮説)部分が面白かったです。

例えば,

戦国時代に日本銀が世界に流出したため,江戸時代になって幕府は鎖国に踏み切りましたが,その理由はキリスト教のみならず銀の流出を恐れたから,というくだりや,明治政府は一香港ドル銀貨を一円銀貨を発行し銀本位制を採用,その後日清戦争勝利により賠償金で銀を手にいれ、金に交換、金本位制にできたことが日本の独立を可能にした,というくだりは思わずほ〜と感心しました(p.44)。

また,

連合国の戦時国債を買受けたアメリカは,世界最大の債権国になった。イギリスフランスの債権をくずにしないために第二次世界大戦にアメリカが参戦,そして米ドルが国際通貨になった(p.49)。

という経済にまつわる面白い解釈を紹介しています。

その他,

中国王朝交代の法則としては,「官僚機構の肥大化と軍事費の増大→増税と民業圧迫→景気後退と貧困層の増大→農民暴動と軍の離反→王朝崩壊」という案を提示しています。

このように世界史の新たな側面が知れて,ちょっとした飲み屋での雑学ネタにもなりそうな話題が盛り込まれています。

最後にターゲット読者層について触れておきたいと思います。

著者が受験業界の世界史の専門家であることから,もしかしたら受験世界史を終えて大学に入学したばかりの学生が経済を知ろうとして,本書を手に取るかもしれません。

でも,対象世界史は現代史が中心であること,受験業界で世界史専門の筆者が日本経済を説明するときに少なくない日本史を解説している(もちろん日本史も世界史の一部ですが)ので,ちょっと期待はずれになる可能性大です。

古代〜近代を中心に受験世界史を学んできた高校3年生が大学1年になって読んでみると,持っている世界史の知識で経済がさらに理解進むかというとなんともいえません。

したがって,学生ターゲットを越えて,これまで経済の仕組みをほとんど知らなかったけど歴史は好きだったんだというサラリーマンには電車で手軽に読める本だといえます。ついでに経済の知識がある人が読んでも,歴史の「へ〜」がわかる本にはなります。

ご献本ありがとうございました。
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2014年03月11日

『国家はなぜ衰退するのか』アセモグル・ロビンソン

中国の一党独裁体制による持続的な経済発展は可能なのかどうか,これを考えるのに『国家はなぜ衰退するのか』はとても参考になりました。



本書の主張は,国家の繁栄には包括的な(政治経済)制度が必要だ,というものです。この主張のための根拠として歴史的な事実を多く示してきます。

制度には,政治制度と経済制度があり,包括的な制度と収奪的な制度があるとします。世界の大部分は一部の独裁者が富を収奪する収奪的制度を採用しており,政治権力が多元的でかつ私有財産制,公平な法体系,公共サービスが政府によって提供され,取引は契約によって市場で行われるという包括的な経済制度を採用している国は少数派であるといいます。

制度を整理すると

       政治      経済
―――――――――――――――――――――――
収奪 | 権力の一元化  富を少数者が独占
   |
包括 | 権力の多元化  所有権
   | 法の下の平等  平等な機会
   | 自由なメディア 技術の発展

となります。

アフリカでは収奪的制度が採用されていますし,南米も見た目は民主主義的ですが実際には収奪的制度になっていることが示されます。歴史的には偶然や小さな相違が働いて,社会が包括的な制度を採用し,繁栄してきたとします。その例としてイギリスがあり,アメリカがあります。

国家ができると最初はどこも権力の集中化が行われます。その権力を成長してくるさまざまな社会階層に付与していく過程においては革命的なものもあったり,禅定的なものもあります。そして一旦分配された権力を再集中することが不可能になれば国家は包括的政治制度になります。

権力が各階層に配分されると,各人の所有権という権利が保障されるようになりますし,権利が平等になり,市場という公平な場所での競争が開始されます。包括的経済制度への移行です。そして包括的な経済制度を持つ国では,新しい技術が開発されます。新しい技術を支え発展させる人材をもつ教育制度があります。新しい技術と産業が経済成長をもたらします。

アセモグル・ロビンソンは,収奪的制度であっても中央集権化がなされている国はある程度発展するとします。例えば,ソ連が農業から重工業へ投資を強制的に配分することによって工業成長を可能にしましたし,中国は収奪的政治制度でありながらも中央集権的であり,改革開放によって,包括的経済制度を採用し世界が刮目する経済成長を成し遂げてきました。

ただ中央集権的であり,包括的な経済制度を採用していても,収奪的政治制度だと繁栄は限定的だといいます。一番大きな原因は,新しい技術が発明されると自分の権力が脅かされるのではないか,というおそれが権力者をして技術の普及を拒み,新たな技術革新の芽を摘んでしまうことになってしまうからです。ですから,政治権力の多元化(いわゆる民主化)は国家の繁栄に必要不可欠だとなります。


中国は「中国モデル」という政府独裁的な経済発展モデルを賞賛された時期があります。アセモグルらに言わせるとそれは一時的なものということになります。また民主主義制度が経済発展に本当に必要なのかを提起したコリアーの議論(『民主主義がアフリカ経済を殺す』書評はここ。)にも真っ向から対立します。私も独裁制度は経済発展に中立的でありうるのではないかという意見を持っています(例えば「「中国の特色ある社会主義」の政治制度とは」を参照)。

たしかにメディアに自由がない,意見表明の自由がないは新しいアイデアへの制限になるかもしれません。アメリカで新しい技術が生まれるのはまさに自由だからだということもできます。でも日本は自由だからといってアメリカを超える技術革新がバンバン生まれているかといえばそれは疑問です。

技術やアイデアが新しく革新的になるのは,自由よりも多様性の存在のような気がしています。アメリカでは移民を受け入れ,様々な価値観を受け入れる,そして価値観のやりとりの中で新しい見方が生まれるでしょう。その時に政治的価値観を表明する必要があるのかどうかはわかりませんが,それが多様であってもアメリカを支持するのであれば,それはそれでOKになるような気がします。

シンガポールも独裁国家ですが,自由は感じますし,日本の嫌中派の人々もシンガポールの一党独裁にかみつくことはありません。その意味では,アセモグルらがいうように中央集権的であることが重要で,そして政治権力の一定の歯止めがあれば,経済発展は可能なように思います。

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2014年03月04日

2014年2月読書ノート


今月はいい本がいろいろあって一冊に絞りにくいです。いい本についてはおいおい別エントリで紹介するとして,今月は日本の農業関係,満洲国関係の本が全体的によかったです。

日本の土地,農業,担い手としての農民の状況が新書三冊でずいぶんと理解が進みました。わかりやすさでは本間さんのものですが,生源寺さんのもオススメですし,神門さんのも農業者の技能を主張する,それぞれの特性が出たいい本でした。

満洲についても,植民地構想から建国に方針が転換となった国際・国内政治の流れが理解できましたし,理想と現実が離れていく,とくに五族協和を謳いながら日本人は優遇され現地にとけこまない様子(植民)がわかりました。

これらはほとんど新書ですが,あらためて日本の新書の水準の高さを感じました。

<経済>

吉田寿夫(1998)『本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本』北大路書房 データの特徴を少数の数値を用いて記述し(記述統計)、主張したい理論や仮説を支持するかどうかを吟味する(推測統計)。データ数が多いと有意になりやすい。

柏木吉基(2013)『「それ根拠あるの?」と言わせないデータ・統計分析ができる本』日本実業出版社 伝え手と受け手が共に理解している統計分析が説得力を持つ。平均、ヒストグラムと標準偏差、相関、単回帰。目的→仮説→手段の思考パターンで。伝えたいポイントを吹き出しで。比較も理解に有効。

三宅秀道(2012)『新しい市場のつくりかた』東洋経済新報社 トイレでお尻をどうするかという問題開発から温水器、ポンプという技術開発、トイレに電源を用意する環境開発、社会に良さを広める認知開発、社会的な生活習慣になって新たなライフスタイルに。問題設定が新しい市場を作るカギ。

ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン(鬼澤忍)(2013)『国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源』早川書房 国家が衰退するのは収奪的な政治制度に支えられた収奪的な経済制度を持つ時。収奪的な制度のもとで成長が起こるケースは中央集権化がされていること。

ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン(鬼澤忍)(2013)『国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源』早川書房 包括的制度は所有権を強化し平等な機会を創出し新たな技術への投資を促す。収奪的制度は資源を少数が独占、所有権は保護されず経済活動の誘引がない。

ダニエル・コーエン(林昌宏)(2013)『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』作品社 人類はマルサスの法則に支配されていたが、欧州は国家間競争によって技術の進歩を基盤とする成長を可能に。ただし物質文明に満たされることがない。電脳世界の発展で非物質グローバリズムが進展。

ティモシー・テイラー(池上彰監訳)(2013)『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門ミクロ編』かんき出版 経済学の基本的問いは、何を社会は生み出すべきか、どうやってそれを生み出すのか、生み出されたものを誰が消費するのか、である。分業、需給、価格統制、労働・資本市場、独占など。

ティモシー・テイラー(池上彰監訳)(2013)『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門マクロ編』かんき出版 マクロ経済政策の目標は高い経済成長、低いインフレ、低い失業率、持続可能な国際収支。分析枠組みは総需要・総供給モデル。短期的には需要が長期的には供給が重要。

<中国>

小島麗逸編(1978)『中国の都市化と農村建設 (1978年)』龍渓書舎 一五計画で毎年2、300万人が農村から都市に流入。重工業は雇用の増大によって不利であり、それを救う方法が1958年の人民公社化であった。大躍進期に「小集中、大分散」という都市建設の方針が生まれ文革の中で定着した。

吉田忠雄(2009)『満洲移民の軌跡 (人間の科学叢書)』人間の科学新社 明治初めに35百万人だった人口は昭和10年代に7千万人に。産児調節論は影をひそめ,軍人と貧困農民を救うユートピアとして満洲があった。満洲国は新国家に帰化することを目的とせず自国の文化や生活を持ち込む「植民」であった。

小林英夫(2008)『〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)』講談社現代新書 日露戦争で満洲におけるロシアの鉄道と付属利権を手に入れ満鉄が発足。満洲統治は領事館、関東軍都督府、満鉄の三者によるもの。東北の張作霖軍閥を支援し、占領方針から満洲建国方針へ転換。理想論と現実の狭間で13年の歴史を終える。

山室信一(2004)『キメラ―満洲国の肖像 (中公新書)』中公新書 「民族協和、安居楽業、王道楽土を謳った満洲国は、民族差別、強制収奪、兵営国家という色彩を。国家は国民なき複合民族国家、モザイク国家ともいうべき。(略)支配機構、統治組織だけからなる装置としての国家」p298

<自己啓発>

狩野みき(2013)『「自分で考える力」の授業』日本実業出版社 自分の意見の作り方は、@その事について自分はどれだけ知っているか確認し、Aわからないこと、知りたいことを調べる、B自分の意見を持つ、の3ステップ。

戸田山和久(2012)『新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)』NHK出版 論文はぼんやりした問題意識からアウトラインをひねり出し、それを種として育てるもの。自分の答えがない場合、本当に?どういう意味?いつどこで誰?いかにして?どんな?なぜ?どうやって?他はどう?などで考える。

<社会>

梶山恵司(2011)『日本林業はよみがえる―森林再生のビジネスモデルを描く』日経新聞出版社 皆伐による民間による木材生産、植林する森林組合というモデルは崩壊。保育林の維持が必要で、持続可能な間伐・木材生産が進むシステムに。路網の整備、間伐、木材生産、バイオマスなど幅広い産業へ。

神門善久(2012)『日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)』新潮新書 農地利用が乱れ、地権者エゴをもつ農家などが宅地に転用する。技術ではなく技能を磨く人が減り、技能集約型農業が不可能に。農地基本台帳を整備し、消費者は本当の農作物に敏感になるべき。

生源寺眞一(2011)『日本農業の真実 (ちくま新書)』ちくま新書 迷走する農政。ポイントは人づくりと生産調整。耕作放棄地の増加に伴い自給率目標の設定。担い手を盛り立てる認定農業者制度、経営安定化のための所得補償。供給過剰にともなう生産調整と参加者へのメリット措置の問題。

本間正義(2014)『農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書)』ちくま新書 農業問題は構造調整問題。生産性の低い資源を他の分野へ移動させること。問題はコメの減反政策が集団カルテルとなり高価格を形成、農地の所有制限を通じた参入制限、競争が制限・優遇されている農協、これが調整を困難に。

<その他>

葉室麟(2012)『風渡る』講談社新書 軍師官兵衛はキリシタンとして信長を打つために秀吉、光秀につく。キリシタン大名の子であることがわかった南蛮風情を持つジョアン。キリシタンの居場所を求めて、戦国時代を生きる人々。

葉室麟(2013)『陽炎の門』講談社 平侍から37歳の若さで執政にまで出世した桐谷主水。20年前に後世河原で起きた藩士20子弟数名の決闘騒ぎの責任で切腹を命じられた綱四郎は、主水の仕業であったとされた。仇討ちをせんとする僑之助、それを楽しむ主君興世。主水ははめられるのか?

奥山清行(2013)『100年の価値をデザインする-本物のクリエイティブ力をどう磨くか』PHPビジネス新書 目に見えない日本人のセンスを生かしたからこそ世界的デザイナーになれた。本質を見極め枝葉を大胆に削ぎ落とす。

梅原猛(2002)『梅原猛の仏教の授業』朝日新聞社 宗教が文明の基礎。神がなければ文明はなかった。仏教は慈悲の心が大事で、平等と知恵を合わせた3つが原理。国家主義で天皇崇拝を真ん中におき、仏教を排除した。無神論者として生きてきたが宗教の説くあの世に寛容になった。

キャロル・タヴリス、エリオット・アロンソン(戸根由紀恵)(2009)『なぜあの人はあやまちを認めないのか』河出書房新社 自尊心、心情と行動の結果が違った時不認知が発生しそれを協和させるために自己正当化を行う。人は間違いから学習して成長していく意識を。

林貞年(2012)『誰にでもできる催眠術の教科書』光文社新書 新書 人間は現実の物事をそのまま認識しない。思い込んだものを脳に伝える。間違った認識、錯覚という能力を引き出すのが催眠。催眠は人をコントロールするのではなく持っているものを引き出すこと。

レナード・ムロディナウ(水谷淳)(2013)『しらずしらず――あなたの9割を支配する「無意識」を科学する』ダイヤモンド社 現代の神経科学は人間の知覚は錯覚であると。知覚を処理するのは無意識が行い世界のモデルを作る。自分自身に対する前向きな錯覚をもつことが個人と社会に利点となる。

中川信子(2009)『発達障害とことばの相談-子どもの育ちを支える言語聴覚士のアプローチ』小学館101新書 コミュニケーション意欲は言う側の能力ではなく、受け取る側が聞く意欲を持っているかどうか。周りにいる人が「聞くよ」という姿勢が大事。

千住淳(2014)『自閉症スペクトラムとは何か: ひとの「関わり」の謎に挑む (ちくま新書)』ちくま新書 自閉症の人の人や社会との関わり方の違いの研究成果を示す。自閉症の基礎研究から、個人の育ちと社会の働きかけを変えることで個性が障害につながることを防ぐ可能性を語る。
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2014年02月27日

『しらずしらず』

私たちの普段の行動を決めるのは無意識だった。



私たちがいかに無意識の力によって行動を決めているかということがよくわかる一冊です。顕在意識とか潜在意識とかいうとどうしてもフロイトやユングの非科学っぽいイメージがわきますが,行動経済学でもあきらかになってきているように(以前のエントリ「行動経済学の基礎」),私たちは無意識や潜在意識によって行動が決められているようです。

この本ではさまざまな実験紹介を通して,

(1)人間が知覚する世界は自分の無意識が構築したもの
(2)社会的な無意識は共鳴する。
(2)前向きな錯覚の存在で人は生きていける

ということが学べます。

(1)無意識が現実をつくる

例えば,意識的にはコカコーラが美味しいと思っている人でも,ペプシとコカコーラで美味しい方を選ばされると多くの人がペプシを選んでしまうという結果になってしまうそうですし,10$のワインを高級ボトルに入れて90$で売るとおいしさは倍増するそうですし,ただのキュウリというよりも「しゃきしゃきキュウリ」とするだけで美味しく感じるそうです。またアメリカでは同姓での結婚割合が有意に高いようで,無意識に同姓の人に親しみを感じるようです。

このように私たちは無意識が構築したフレームワークで行動しているようです。

(2)無意識の社会的共鳴

社会的にも,コピーの割り込み実験では,急いでいる理由を付け足すとその理由が矛盾していても人はゆずってくれる確率があがるそうです。女の子をデートに誘うときに,(さりげなくですが)タッチするかしないかでも成功確率は違うそうです。学生がマウスに実験を行うときにマウスが優秀だと思っているチームは実際にマウスの成績はよくなるそうですし,学校でも教師が生徒への期待が高いと生徒の成績もあがるようです。

つまり私たちの無意識で思っていることは社会にも影響を与えています。

(3)人は本来楽観的

人の記憶はあいまいだそうです。実験によれば人は記憶を要点として記録しているだけで,細部になると無意識に記憶の間を埋めていくそうです。大学生に高校時代の成績を聞く実験をすると,Aの数を正確に答えられる人は多いのですが,Dになると多くの人が思い出せないそうです。それに加えて,高校3年生に実施した実験では自分を平均以上だと思っているのは100%,大学教員であっても94%はそう思っているようです。

したがって,人は自分の都合の悪いことを忘れて前向きに生きられるようです。

このように本書は無意識の働き,あるいは行動経済学でいう不合理性について理解が進む良書です。
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2014年02月18日

『自閉症スペクトラムとは何か』

久しぶりに自閉症に関していい本を読んだので,紹介。



本書は自閉症の基礎研究を行う若手研究者が一般向けに最新の研究成果をわかりやすく紹介しています。

自閉症の原因がわかるとか治療法があるとかいったセンセーショナルな書き方をせず、「このような報告がある」という抑えをきかした書き方に,学者としての謙虚さを感じ好感を覚えます。

例えば,自閉症に影響を与える遺伝子は数多く存在するが、自閉症になるかどうかを決める遺伝子は存在しない、とし、決定論は現実から目をそらした理想論だとしています(pp.73~76)。

一方で,自閉症は病気かという問いには答えにくいものの、「「脳」の働きに基づいていることについてはかなりの「自信」を持って「そうだよ」ということができ」るそうです(pp.125~126)。

そして,オキシントンというホルモン吸入によって相手の微妙な表情を読み取ったりすることに敏感になることが報告されているとしながらも、まだ決定的な臨床研究の結果はないとして(pp.131~133),安易なオキシントンによる治療に走ることをいましめています。


では,原因や治療法を提示できない中で,自閉症と関わりのある人たちに本書は何を提供するのでしょうか。それは、「個人と社会の関係あるいは関わり」についていろいろ考えさせられるという点だろうと思います。

例えば著者は言います。「個人が持つ「個性」が「社会」と出会い、そこでの関係性がうまくいかない場合、その個性を持つ方々が社会参加を阻まれる「障害」が生まれ」ます。「だとすれば、個人の育ち、社会の環境にそれぞれ働きかけることで、「個性」が「障害」につながることを防ぐことも可能なはず」だ,と。(p.216)

つまり,多くの定型発達の人間であっても社会に馴染む,あるいは溶け込むのは難しいです。そのような中で社会的認知に困難がある自閉症の人にとってそのハードルはさらに高くなります。でも,人によっては外部からの介入によってハードルを超えること(あるいはハードルを下げること)が可能になりますし,社会的環境もそれを提供することが可能です。

となると,私たちは自閉症の方々のみならず社会生活を困難をきたす方々に対して,「努力が足らない」とかの言葉では片付けられないでしょう。また偏った思い込みの強い人々がその思い込み(認知の歪み)のゆえ社会生活が困る場合,やはり何かしら彼らの個性を認めていくということ,あるいは受け入れていくことが必要でしょうし,さらには認知療法などの介入も必要になるかもしれません。

いずれにせよ,本書は自閉症と関係ない人も、どのように社会に参加するのか、社会は個人の個別要素(いわゆる個性)をどのように受け入れるべきかを考えるきっかけになると思います。
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2014年02月11日

2014年1月読書ノート

2014年1月読書ノート



ちょっと難をいえば,学術的な根拠を示さずに論じているのですが,新書ということでまあしょうがないかなと。

でも人の生き方で示唆に富むものがありました。ヒトの脳は,10〜20代に入力,30代は失敗などで経験を選別し(不要な信号を削除),40代で成功体験になぞった生き方になるので楽になるそうです。

50代になると連想記憶力(経験によった知識をつかい素早く的確な出力をする)のピークを迎えるそうです。この説が正しいとすれば,人生40代50代を輝かせたいものです。

共感した文章を紹介。

「他者に依存して生きてきた人は「愚痴と堂々巡り」の達人になり,無難に生きてきた人は「心配と依存」の達人となり,自分の足で歩いてきた人は「発見と発想」の達人となり,エリート街道を順調に歩いてきた人は「知識の踏襲と選別」の達人となる。」(p.192)


<経済>

山本健兒(2005)『経済地理学入門 新版』原書房 経済地理学は格差の理由に迫り、場所、領域、地域が抱える課題を明らかにする。場所による差異を、経済学的に解明するだけでなく、自然条件などの環境や価値観、技術体系、社会組織の3要素とも関係する。

富田和暁(2006)『地域と産業 新版』原書房 古典的産業立地論、チューネンの農業立地論は農業のみならず土地利用を理解する原理として、ウェーバーの工業立地論は工業の集積や分散現象を、クリスタラーの中心地論は都市の商業集積,オフィスの立地を理解するのに役立つ。

矢田俊文・松原宏編(2000)『現代経済地理学-その潮流と地域構造論』ミネルヴァ書房 主要な経済地理学理論を、世界経済は世界システム論(ウォーラーステイン)、情報経済は都市システム論(プレッド)、地域経済は新産業空間論(スコット)プロフィットサイクルモデル(マークセン)に整理。

水岡不二雄編(2002)『経済・社会の地理学―グローバルに、ローカルに、考えそして行動しよう (有斐閣アルマ)』有斐閣アルマ 経済・社会の主体は空間という容器を必要とする。無限の広がりを有界化し権力と富の領域を設定。グローバル化という空間統合は集積が存在し不完全であり、距離は残る。

黒田辰朗・田渕隆敏・中村良平(2008)『都市と地域の経済学 新版 (有斐閣ブックス)』有斐閣 都市、都市の集積、都市の適性規模、都市システムの解説。住宅、工業立地の理論、土地とバブル、地域の開放性、格差、人口移動と空間経済学。交通、公害、地方公共財も。旧版を大幅改訂。


<中国>

内藤二郎(2004)『中国の政府間財政関係の実態と対応-1980~90年代の総括』日本図書センター 中国の改革は政府から企業へ中央から地方への分権という二重のプロセス。政府間関係も中央の財政一元管理から財政請負制へ。分税制、下級政府への補助、積極財政政策によって中央が強くなる。

岡本隆司編(2013)『中国経済史』名古屋大学出版会 中原の開発と経済力の伸張と開発の遅れた江南。人口希薄で未開地の広がる江南の開発と経済力の増進が歴史の主旋律。江南の水田稲作の普及、傭兵の保持の財力、農業技術と内陸水運の開発が人口の増加をもたらした。

福島香織(2013)『現代中国悪女列伝 (文春新書 946)』文春新書 薄熙来の妻・谷開来、温家宝の妻・張培莉、習近平の妻・彭麗媛から江青まで。悪女は単体で存在せず、権力を持つ男を軸にして初めて存在。男尊女卑という風土の中で、一部に権力・富の集中がある社会では金と権力のある男に取りいるのが一番。

吉岡桂子(2013)『問答有用――中国改革派19人に聞く』岩波書店 改革派の重鎮・呉敬lなどの経済学者、郭樹清(現山東省長)など政府要職者、馬軍(NGO)など民間の改革派たちが、中国に必要な経済、社会、政治の改革を主張する。

吉岡桂子(2008)『愛国経済-中国の全球化』朝日新聞出版 「経済の相互依存が「国家」を侵食する一方で、中国のカネは時に剥き出しの「国家」を意識させる」。人民元、資源を求める中国の援助、技術の自主創新と愛国、環境問題と戦うNGO、中産階級の就職、安い労働力、反日デモなど。

加藤弘之編(2012)『中国長江デルタの都市化と産業集積 (神戸大学経済学叢書)』勁草書房 都市農村一体化政策を評価し、地方政府、企業、農村幹部の役割を明らかに。産業集積の実態を統計的に整理。労働力と土地の流動化の実態、農村の変化を検討。

小林弘二(1974)『中国革命と都市の解放:新中国初期の政治過程』有斐閣 1949年3月の共産党第七期二中全会において1927年井崗山で革命根拠地創設以来の農村主導型革命を放棄、都市主導型革命へ移行した。


<自己啓発>

矢作直樹(2011)『人は死なない-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索』バジリコ出版 「人間の知識は微々たるものであること、摂理と霊魂は存在するのではないかということ、人間は摂理によって生かされ霊魂は永遠である、そのように考えれば日々の生活思想や社会の捉え方も変わるのでは」。

野口嘉則(2012)『人生は「引き算」で輝く 本当の自分に目覚める話』サンマーク出版 人やモノ、地位、名誉は所有できず、コントロールできない。人は命ひとつで生まれ、生き、去っていく。失うことによって、命の喜びと愛する力に耳を傾ける。


<社会>

正井泰夫監修(2013)『今がわかる時代がわかる世界地図 2013年版 特集:70億人の地球 日本経済の立ち位置 (SEIBIDO MOOK)』成美堂出版 70億人口の食とエネルギー、都市を特集。国際政治、社会、産業経済、資源・エネルギー、環境・自然、文化・スポーツのテーマで世界で起きていることを地図で整理。見ているだけで楽しい。

石川幸一・清水一史・助川成也編(2013)『ASEAN経済共同体と日本-巨大統合市場の誕生』文眞堂 2007年ASEAN経済共同体創設行動計画のブループリントが発表。実施状況はスコアカードで評価。単一輸送市場、エネルギー相互供給、インフラ建設、格差是正などの壮大なプロジェクト。

斎藤貴男(2010)『消費税のカラクリ (講談社現代新書)』講談社現代新書 消費税は負担対象は広いように見えて自営業者や零細事業者を圧迫し、大企業は仕入れ税額控除を利用し、非正規雇用を拡大する動機となる。滞納額はワーストワンであり無理な取り立てが犠牲者を生み出す。


<その他>

浅見康司・福井秀夫・山口幹幸編(2012)『マンション建替え-老朽化にどう備えるか』日本評論社 区分所有法の建替え決議要件が過大、売り渡し請求の補償が反対インセンティブを持つ、土地と保留床の売却ができないマンションの金融融資のハードルが高い、などの問題がある。

村上佳史(2006)『マンション建替え奮闘記』岩波書店 兵庫県南部地震で被災した渦森団地17号館。建替え決議後も買取り請求や売渡し請求のリスクがある。建替え決定後も業者の選定、一時居住地域でもマンションコミュニティの維持が必要。新居住者と旧居住者との折り合いなど。

中野雅至(2013)『テレビコメンテーター - 「批判だけするエラい人」の正体 (中公新書ラクレ)』中公新書ラクレ コメンテーターの仕事は多様な意見・見方を示すこと。ギャラは55550円で売込みは通じない。歯切れの良さを求めて個性化するとブレイク可能性は高まるが公共放送という枠内のバランス感覚も必要。

吉田たかよし(2012)『元素周期表で世界はすべて読み解ける』光文社新書 元素は最も外側の電子の数で性質が決まり、その性質がよく似たものが縦一列に並んでいるのが周期表。性質が似ていると体が取り込みやすい。左上の元素が宇宙に最も存在。レアアースは中国の鉱床が安価で採取しやすい。

南川高志(2013)『新・ローマ帝国衰亡史』岩波新書 ローマ帝国はローマ人であるというアイデンティティによる国家統合。ローマ人以外の外部部族も重用されるようになり、辺境ではローマ人たらんとする生き方は薄れていった。地方はローマ軍ではなく地方の有力者によって統治されるようになった。

青木薫(2013)『宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)』講談社現代新書 広大な宇宙を描くビッグバン+インフレーションモデル。ミクロの物理学として登場したひも理論。共に多宇宙ヴィジョンを生み出す。私たちの宇宙はたまたまこうだということになりかねない。

黒川伊保子(2012)『キレる女 懲りない男-男と女の脳科学』ちくま新書 女性脳は左右脳の連携がよい。お互いの脳の良さを互いに補うことが必要。女性脳は「察する」脳。男性が察する能力を得るとうまくいく。男性脳は目の前のことに頓着しない。女性が男性に思いやりや愛を測らないこと。

井上昌次郎(2012)『ヒトはなぜ眠るのか (講談社学術文庫)』講談社学術文庫 睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠がありそれぞれ大脳の発達過程でできたもの。睡眠調節のメカニズムは一日を単位とするリズム、大脳の状況に対応して眠りの量と質を決める。

柳下記子(2013)『発達障害がある人のための みるみる会話力がつくノート (こころライブラリー)』講談社 自分について20項目用意して自己紹介。相手を見て自分の話を入れず体を少し前に傾け時々うなずく聞く姿勢。相手の情報から5W1Hで質問を。上手なお願い、報告・連絡・相談。会話テーマカードでロールプレイ。

平澤紀子(2010)『子ども観察力&支援力養成ガイド』学研 その場で求められる適切な行動をとることができないのが行動問題。これは未学習、不足学習、誤学習からもたらされる。理由はその行動をとることによって注目や欲しいモノが得られる。先行条件、行動、結果を記録し適切な支援をする。

吉崎静夫編(1997)『子ども主体の授業をつくる-授業づくりの視点と方法』ぎょうせい 新しい授業づくりの特徴とは「ひらく」「つなぐ」「あらわす」である。自由な空間で人と関わり物を利用して学ぶ。教室と外の世界をつなぎ、表現活動の機会を与える。

岡本裕一朗(2013)『思考実験-世界と哲学をつなぐ75問』中公新書 思考実験とは「もし?だったら?どうなるか」という仮定的推論であり、今までとは違う発想のためのマップ。自己、他者、倫理、社会、人間、生きることを思考実験から考える。

竹内薫(2007)『もしもあなたが猫だったら-「思考実験」が判断力を磨く』中公新書 脳内シミュレーションである思考実験。「もしも?だったら」と考えることによって個人の見方、宇宙は多様化。思考実験からモノは曖昧で最終的にはコトになることがわかる。
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2014年01月06日

2014年12月読書ノート

たまたま図書館で見つけた以下の本がおもしろかったです。



異文化とかがどのように学問されるのかということもわかりましたし、良く使われる多文化共生について考えるきっかけとなりました。

<自己啓発>

松島修(2010)『聖書に隠された成功法則』サンマーク出版 人間は最初から最高のステータスを持つ。自己実現ではなく神が与えている目的に向かって進むこと、本来のステータスを回復する。

<社会>

石井敏ほか(2013)『はじめての異文化コミュニケーション-多文化共生と平和構築に向けて』有斐閣選書 異文化感受性発達モデルでは否定→防衛→矮小化→受容→適応→統合となる。異文化の障壁はステレオタイプの認識,偏見,差別,心理的な自己優位性にもとづく。

リチャード・ムラー(二階堂行彦)(2014)『エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義』楽工社 エネルギー問題の原則はエネルギー安全保障と温暖化対策のバランスである。代替エネルギーとして期待されるのは天然ガス、シェールオイル。先進国の温室効果ガス削減は進むが,中国など途上国の削減が課題。

三木義一(2012)『日本の税金 新版 (岩波新書)』岩波新書 個人や法人の所得税、消費税、相続税、酒税などの間接税、固定資産税や都市計画税などの地方税の根本的問題の解決がなされずに毎年改定されている。人や法人の移動により一国課税主義は限界。

田中秀明(2013)『日本の財政 (中公新書)』中公新書 予算編成は共有資源問題。日本は編成に関与するプレーヤーが多く財政規律が働かない。財政法は補正予算が予定されており規律がない。中期財政フレームに基づき各省庁が予算見積もりと執行を責任持つようにする。政府内閣に権限を委譲するシステムが必要。

駒村康平(2014)『日本の年金 (岩波新書)』岩波新書 年金制度の課題は、少子高齢化社会での年金財政持続安定性、非正規労働者増加による未納者数の増加、低所得高齢者への生活保障、である。見直しがあるのは,年金制度が問題というより、その健全な持続のためである。

船瀬俊介(2013)『日本の真相』成甲書房 偽りの栄養学で食品は危険、化学肥料漬けの農産品、電磁波、輸血の問題、コンクリートや化学建材が健康と景観を破壊、都市は世界で一番アブナイなど、マスコミが報じない問題を。

<その他>

小林雅一(2013)『クラウドからAIへ-アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』朝日新書 機械と人間の関係を変えるインターフェース革命、AI人工知能。アップルはSiri、グーグルはセマンティック検索、フェイスブックはグラフ検索でモバイルへの入り口を押さえる。

小池良次(2012)『クラウドの未来-超集中と超分散の世界』講談社現代新書 クラウドは超集中と超分散が進むビジネスモデル。アプリやデータはセンターに集約され、多彩な端末で利用。通信網や放送分野の制限、個人情報保護などか制約。クラウドは情報の発信、消費を区別しない。

岡本茂樹(2013)『反省させると犯罪者になります (新潮新書)』新潮新書 加害者が持っている被害者への否定的感情を抑圧して反省させても反省にならない。頑張るしつけや立派なしつけも抑圧と我慢を産むだけで否定的感情を持ったまま。小さい頃の親との関係を振り返り自分への内省が人を更生に向かわせる。

ダグラス・ケンリック(山形浩生森本正史)(2014)『野蛮な進化心理学』白揚社 私たちの行動の奥深くには遺伝子を残す交配戦略が関わっている。経済学の非合理的行動も交配戦略からは合理的(深い合理性)が見られる。
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2013年12月12日

『大団円』

著者の山本要氏より勧められて『大団円』という小説を読みました。



中国に関する小説は中国で流通していて翻訳版でそこそこ面白いものはあるものの(例えば四面埋伏とか),日本人が書く中国小説で面白いのはなかなかありません。

でも,真山仁の『ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)』は,原発を扱いながらも中国の「関係(グワンシ)」や政府役人のふるまいなどが結構丁寧に描かれています。。

でも日本人目線から中国人の心情を描くわけですから,どうしても疑似日本人化されてしまうので,「中国人ってそう感じてこう言うかな〜?」と思うことがあります。

本書『大団円』は,著者の経歴(広東系マレーシアと日本人のハーフ)が物語るようにそれを払拭しようとしていること,その違いを会社への「忠」を尽くす日本人と家族や血縁への「孝」を大事にする中国人の違いを,広東で繰り広げられる日系企業を舞台にして明らかにしようとしています。

感想は一言。エンターテイメントとしてもおもしろかったです。駐在を経験した日本人であれば,「あるある」がストーリーとして含まれています。(例えば,日式カラオケにはまる日本人とか,現地採用中国人によるキックバックとか)

中国駐在を控えた日本人サラリーマンに一読をオススメです。駐在現場での日中間の違いを先に予習できるでしょう。
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2013年12月10日

2013年11月読書ノート

2013年11月読書ノート



今回のオススメは,『ものづくりの科学史』。

互換性や標準仕様が発明されたのは,戦争の需要のためというのも1つ発見でしたが,ものの標準化は,生産工程の管理,人の行動の管理,検査体制などものづくりに関わるシステムの標準化につながります。これが現在のISO14000などにつながっていて,なるほど,そうだったのか,と納得の一冊でした。

紙のABサイズ,パイロットの資格,コンテナ輸送,通信のTCP/IPなど,豆知識も満載です。


<経済>

間宮陽介(1999)『市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか (中公新書)』中公新書 経済思想は自由をめぐる循環の歴史。個人の経済的自由と競争が繁栄をもたらすとする古典派,歴史学は国家の優位を主張,マルクスは自由は搾取とみた。パレートは市場を擁護,ケインズは批判。合理的期待学派やマネタリストは再度市場経済を主張。

佐和隆光(2000)『市場主義の終焉』岩波新書 1970年代末に復古した市場主義。市場主義で適応できない環境、格差などにはブレア元首相のいう「第三の道」が必要。第三の道はモラルハザードを生む福祉の矛盾を理解しつつ、リスクを共同管理するポジティブな福祉国家の建設である。

根井雅弘(2009)『市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影 (中公新書)』中公新書 市場経済至上主義として見られるシカゴ学派だが、現実はフリードマン学派。『合衆国の貨幣史』によって貨幣数量説を意識するようになり、X%ルールを提唱。貨幣供給により短期的には生産と所得に影響を与えるが長期的には物価にしか影響しない。

服部茂幸(2013)『新自由主義の帰結-なぜ世界経済は停滞するのか』岩波新書 新自由主義は効率的であるはずの金融市場で危機を生んだ。グローバルインバランスを生み,変動相場制は不均衡を是正していない。金持ち減税を行い生まれた財政赤字を政府支出の減少で相殺する政策は経済を不況にする。

中山智佳子(2013)『経済ジェノサイド-フリードマンと世界経済の半世紀』平凡社新書 市場の自由を原則とするフリードマンの経済学が市場の例外と考えられていた企業と貨幣に関わる利害関係者に利用された。社会保障などが切り落とされ,自由は自己責任のもと堪え忍ぶものとなった。

ダン・アリエリー(櫻井祐子)(2012)『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』早川書房 人は好ましい自己イメージを保ちたい、それでいてごまかしから利益を得たいという二つの矛盾する欲求の微妙なバランスをとっている。矛盾のつじつま合わせ係数の大きさで,行動はごまかしと正直の間に。

イツァーク・ギルボア(松井彰彦)(2013)『合理的選択』みすず書房 自分にとって心地よい選択をする合理的選択。リスクは確率で示して期待効用に。集団の意思決定は無理があり理論的にも解決法はない。自由市場はパレート最適になるが囚人のジレンマ、外部性、公共財などの問題も。

坂井豊貴(2013)『マーケットデザイン: 最先端の実用的な経済学 (ちくま新書)』ちくま新書 お金と交換できないもの(臓器、学校、就職など)を上手に配置するメカニズムを考えるのが「経済学的ものづくり」であるマーケットデザイン。人と箱にはTCC方式、人と人には受入保留方式アルゴリズムが安定的。

根岸隆(2008)『経済学の理論と発展』ミネルヴァ書房 新古典派経済学の理論的基礎はワルラス流の一般均衡。マーシャル流部分均衡分析によるケンブリッジ学派のこと。根岸の定理とは,一般均衡の存在を,競争均衡はパレート最適であるという厚生経済学の第一定理を使用して証明したもの。

浦井憲・吉町昭彦(2012)『ミクロ経済学-静学的一般均衡理論からの出発』ミネルヴァ書房 生産者、消費者という価格調整者、各商品の価格集合、各消費者の予算制約、超過需要の価値額最大化を通じて成立する均衡。静学的一般均衡とはより規範的であり、世界を望ましいものとして捉えられる。

林貴志(2012)『マクロ経済学-動学的一般均衡理論入門』ミネルヴァ書房 ソロー・スワンモデルで代表的消費者の消費と貯蓄、代表的企業の資本と労働で生産を記述し、貯蓄・投資市場を内生化するのが動学的一般均衡理論。不確実性を導入するとRBC理論、人的資本の内生化が内生的成長理論。


<自己啓発>

布施克彦(2013)『年金に頼らない生き方』PHP新書 本格的な長寿時代を迎え、還暦、定年は一つの通過点。働いてきた実績と自信をもとにしながら再就職やライフワークを。プライドと地位は捨てる。人生のリセット準備を早めに。社内出世よりも目指す仕事の技量を磨く。

木暮太一(2013)『ずっと「安月給」の人の思考法』アスコム マルクスの価値論と同じく給料はその労働力を作るために必要な要素(食費、住宅費、衣服など)の合計。使用価値が高くても給料ではなく継続雇用に反映するだけ。労働力として代わりのない価値を持つようにしなければならない。

木暮太一(2013)『カイジ「命より思い!」お金の話』サンマーク出版 生き抜くためにはお金の「使う」と「守る」を知ること。お金を使うと1円1万円の重みが薄れ浪費につながる。ギャンブルと同じく投資も胴元が儲かる、借金は将来の自分から借りること、買い物は自分の労働と引き換え、など。

午堂登紀雄(2013)『貧乏人が激怒する新しいお金の常識』光文社 運用の基本は長期投資?損切りが重要?一生賃貸のほうがいい?など旧常識を疑うこと。資格と読書貧乏になり、モノにお金を使い、家計簿をつけて貧乏になる。自分の価値観に固執せず変化を感じて取り入れて行くことが大事。

伊藤邦生(2013)『年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ち』中経出版 自分のために働き自分のお金をつくる、自分のお金を働かせてお金をつくるという二つの法則。損失を覚悟すること、投資対象をよく知っているという優位性がないと投資家にはなれない。

バーバラ・ミント(山ア康司)(1999)『新版 考える技術・書く技術-問題解決力を伸ばすピラミッド原則』ダイヤモンド社 トップレベルにメッセージがあり、そのピラミッドの下位はメッセージの要約でなければならない。下位のグループは演繹、時間、構造、比較の順序にならなければならない。

エドワード・B・バーガー、マイケル・スターバード(中里京子)(2013)『限界を突破する5つのセオリー』新潮社 変化する社会に対し、新しいスキルと知識を手に入れる。基礎と重要事項を深く理解し、間違いから学び、常に問いを抱いて、思考の流れを追う。自分の学び方と考え方を変えていく。

林真理子(2013)『野心のすすめ』講談社現代新書 悔しい気持ちや屈辱感を心の中で「飼わざるにはいられない」状況下で、悔しさを溜めて醗酵させ、温めて孵化させた人たちが野心を実現できる。

ポール・ジョンソン(2013)『チャーチル-不屈のリーダーシップ』日経BP社 戦争に行き記事を書き本にして資金と名声を蓄え、26歳で下院議員に当選。34歳で閣僚に就任。チャーチルの特質は、高い目標、勤勉、失敗や不幸に対する回復力、恨みや復讐などには関わらなかったということ。

<社会>

橋本毅彦(2013)『「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》 (講談社学術文庫)』講談社学術文庫 18世紀フランスで銃や砲車の修理を目的として互換性技術が誕生。第一次大戦の武器生産の効率化から全米で標準規格が普及。今日ISO規格は世界の標準になりつつある。

佐々木信夫(2010)『道州制 (ちくま新書)』ちくま新書 広域自治体を設定する道州制。画一でない分権的国家作りが可能、環境、防災などの広域対応、行財政の効率化というメリットがある反面、自治体間格差、自治体に住民の声が届きにくい、国としての統一性を失うなどのデメリットも。

北村亘(2013)『政令指定都市 - 100万都市から都構想へ (中公新書)』中公新書 47年の特別市規定をめぐる旧五大都市と道府県との妥協の産物として56年に出来たのが政令指定都市。日本経済が発展している時は道府県の8割権限でも機能したが財政が悪化。市町村合併の流れで2000年代に政令指定都市が増える。

根本裕二(2013)『「豊かな地域」はどこが違うのか-地域間競争の時代』ちくま新書 地域を人口から読み解く。長期人口推移、コーホート(世代)増減分析、従業・通学分析を通して日本の基礎自治体11を分析。移動の多い高校世代、大学世代、30代の動きを見ることで、就学・就業機会を分析。

日端康雄(2008)『都市計画の世界史』講談社現代新書 城壁都市、格子割の都市、バロック都市、社会改良主義者の田園都市、公衆衛生、建築規制、開発規制から近代都市の都市計画へ。アメリカのゾーニング制、過密、不衛生、貧困、住宅不足などの都市問題から都市政策の策定へ。

鳥塚亮(2013)『ローカル線で地域を元気にする方法: いすみ鉄道公募社長の昭和流ビジネス論』晶文社 「ここには何もない」というのを売りにしたいすみ鉄道。観光路線化して乗車人員を増やし、テレビや雑誌で知ってもらうことで地域も全国化して地盤沈下している地域も全国区化する。

高岡望(2011)『日本はスウェーデンになるべきか』PHP新書 冬の厳しい環境が自立した強い個人を生み,秩序を守る規則に基づく組織性をもつ。社会福祉では公平性を重んじ,働いたら働いた分だけ年金がもらえるようにモラルハザードにも対処。大きな政府と市場原理を両立。

北岡孝義(2010)『スウェーデンはなぜ強いのか-国家と企業の戦略を探る』PHP新書 伝統的家族が崩壊し女性の就業率が向上,自殺率,離婚率,アルコール依存症が高い。一方で自立心の高い国民性が生まれ,国民と政府の厚い信頼性が高福祉を生む。個性化と多様性がH&M,イケアの戦略に。

<その他>

水谷英夫(2013)『感情労働とは何か』信山社新書 「自己や他者の感情管理を核心的もしくは重要な要素とする感情労働」。労働におけるコミュニケーション領域の拡大、労働者の顧客に向けた感情のコントロールが使用者の指揮命令の対象になるため、多くの問題を生んでいる。

ゴールドスタイン、マーティン、チャルディーニ(安藤清志監訳)(2009)『影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣』誠信書房 望ましい行動をとっている人たちに肯定的メッセージを伝える(社会的規範),小さなことの承諾を先に得る(コミットメントと一貫性),先に便宜を図ると人は反応する(返報性の原理)。
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2013年12月03日

『協力がつくる社会』

ヨハイ・ベンクラーの『協力がつくる社会』,面白い本でした。



本書の主張は,

人は利己性で生きている(リヴァイアサン)とするが,人はもっと共感的,道徳的な生き物であり(ペンギン),協力して社会をつくっている

というものです。

経済学が典型ですし,ホッブスの『リヴァイアサン』でも人は利己的であると考えられ,そのため社会を動かすには政府が人の利己性を抑制させる必要があります。一方で別の見方もあり,アダム・スミスの見えざる手は,人の利己的行動が共通善を成し遂げるという側面を持っています。いずれにせよ,個人は利己的であるということを前提としています。

ベンクラーは「人は利己的である」ということを批判し,むしろ人は「協力的」である,人は条件があれば協働する生き物であり,生産的な目標に向かって協働が動機づけられる,としています。さまざまな過去の研究から人は過半数が協力する振る舞いをし,約3割程度しか利己的な人間はいない,とします。

その根拠として以下のことが指摘されています。

(1)進化生物学では,ドーキンスが利己的遺伝子を主張したけれども,自分の肉親を守ろうとする「包括適応」,将来的な見返りを意識しながらの「互恵性」,集団の遺伝子を守ろうとする「群淘汰」などの現象がみられ,社会は協力するようになっている,とします。

(2)社会心理学の実験から,フレーミング,評判,共感,コミュニケーション,公平,報酬・処罰,などが人を協力に向かわせることがわかってきたといいます。

フレーミングとは人はものを見て判断するときに何かしらの枠組みでもってものを見てしまします。このフレーミングを調整すると人は行動を変えるといいます。例えば,囚人のジレンマを体験する実験で,被験者に実験を「コミュニティゲーム」として紹介するか「ウォール街ゲーム」として紹介するかによって結果が有意に変わるようです。「コミュニティゲーム」として紹介された被験者はゲームに参加した結果,協力する振る舞いが増加するそうです。

評判は,その人のもつソーシャル・キャピタルです。ニューヨークのホテルのドアマンは紹介でその職につくことが多く,そのほうが信頼されているからといいます。

共感は,人はそもそも共感や連帯感を持っているそうです。心理学の実験で,Aグループが持っている10ドルのうち何ドルかを封筒に入れて,Bグループに渡すというものがあります。Aグループが利己的であるとするならゼロでもいいのですが,実際にはそうはなりません。まったくAグループがBグループのことを知らない状態であると,封筒に入れる金額は少ないようです。でもAグループにBグループの趣味とか専攻とかを教えて人間化する,あるいはBグループが封筒を開けている姿をみる,などをするとAグループの封筒に入れる金額が上昇するようです。

コミュニケーションも重要だとします。100以上の過去の囚人のジレンマに関する実験結果では,参加者同士が「話す」ことを経験すると協力水準が45%アップする結果になるそうです。

公平性という概念も人は生まれつき持っているようです。何を公平とするかは人によって違いますが,最後通牒ゲームの実験結果によると先進国では3割以上を相手に渡すということですので,やはり人はある程度の公平を重んじるようです。

規範意識は人を社会的にしています。「共有地の悲劇」は人は利己的な結果,共有地では資源が枯渇するという事例ですが,『コモンズの統治』という本では,社会が共有地をうまく管理している事例をあげているそうです。中でもお互いが監視し,共有地のルールに違反した者に対して集会で呼ぶなどを行う共同体では,共有地をうまく管理することができるそうです。

経済的な報酬と処罰でも面白い結果があります。報酬あるいは処罰が高すぎる(キツすぎる)とモラルがクラウディング・アウト(追いやられる)されるそうです。CEOに高すぎる報酬を支払っても行動は改善しませんし,子どもを迎えにくる親に対して幼稚園が罰金を導入してもより遅刻するようになったりします。

以上,逆に言えば上記のような条件が整えば,人は利己的ではなく,協力的に行動するということになります。

経済学でも人の合理性や利己性を前提としています。人の行動原理を考える上で,自分勝手なのか,協力的なのか,考えるかについて,非常に参考になりました。また囚人のジレンマを解決するための方法として読むと,より示唆的のように思います。
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2013年11月28日

『日中対立』

天児先生のアツい本です。改めて日中関係について考えさせられました。



後半の尖閣紛争の想定は議論のわかれるところでしょうが,前半の中国分析は面白いです。

日中関係が中国の大国意識とともに変化してきたという分析について紹介。

日中関係は日本がイニシアチブをとっていた時代から中国がイニシアチブをとる時代に変化しているといいます。以前は日本が中国の改革開放をODAで支援するという側面がありましたが,2010年には中国のGDPは日本を超え,国防費も2011年に1000億ドルを超えるなど大国意識が育ってきました。

ターニングポイントは2009年-2010年であるとしています。まず海洋権益を主張する論文が増加したこと,核心的利益は台湾,チベット,新疆の範囲であったのが南シナ海が含まれるようになったこと,ケ小平からの韜光養晦路線に積極的有所作為(なすべきことはなす)という点が強調されるようになったこと,があげられます。

中国を理解する上で,3つのジレンマが紹介されています。

1つは中国国内の格差問題。とくに一般大衆と官僚・党員などとの乖離です。

2つめは外交路線です。台頭する対外強硬路線と今までの対外協調路線の間のジレンマです。

3つめはイデオロギーです。中国は中国モデルに代表されるように中国の「特色」を全面に出しますが,それと自由や民主といった世界的な普遍主義的イデオロギーとどのように折り合いをつけるかという点です。

わかっていたようでこの指摘はその通りだなと思いました。中国が国内,国外で発生する摩擦はまさにこのジレンマが引き起こしているといえるでしょう。

他にも本書では,尖閣問題について中国側の主張を客観的に分析していますし,また尖閣で紛争が発生するとどうなるか,シミュレーションも行っています。この辺りは立場によって読み方が異なると思いますので,日中関係に興味がある方にはぜひ手にとってもらいたい一冊です。

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2013年11月19日

『服従の心理』と中国

心理学ではあまりにも有名な本ですが,山形さんによる訳ということで読んでみました。



いわずもがなのミルグラムによる衝撃的な実験です。実験内容は,実験者が被験者に対して,学習に関する実験と称して,学習者が答えを間違えたら電気ショックを与える役をお願いし,間違いが増えるにしたがって電気ショックを強くしていく指示を与えます。その時に被験者は学習者が苦しむ姿をみてどのような反応をするのかという実験です(学習者は役者さん)。

実験結果は,人は権威に服従する,というものです。

学習者が問題への回答を間違え,電気ショックを受けます。学習者は大げさに苦しむ様子をみせます。被験者は苦しむ姿をみてこの実験をやめたいと思いながらも,権威者(実験者)のいう電流を強くするという指示にしたがって学習者に電気ショックを与えていきます。この実験は,やりたくなくても権威者の命令には従ってしまうという人の心理形態を明らかにしました。

実験を踏まえて,ミルグラムは解説しています。

人の社会システムはヒエラルキーになっています。社会組織がヒエラルキー化することによって組織は力を発揮し,外部の敵からその集団を守ってきました。命令に従うことによって社会組織は発展してきたので,人は命令をきくことになっているとします。

ヒエラルキー社会では,人は個人の方向性を制御します。つまり自律的な個人から命令に従うエージェントへと変化します。エージェントになるには条件があります。家族という組織で親に従うことを習います。社会制度において人の指示に従うことを学びます。そして社会では報酬を与える人に従います。社会的な学びの過程で人はエージェント状態になってきます。また,その他にも権威を認識する必要があります。どの人が権威者かわかっていないと権威は発生しませんし,その権威システムに自らが参加するという形をとる必要があります。その権威はイデオロギーによって正当化されます。

一方,エージェント状態になった個人は悩みます。道徳と非道徳の間で心理的な緊張状態に入ります。そのために以下のような心理的変化を経験します。

一つはチューニングです。自分の認識を調整するということです。学習者が苦しんでいる姿から目を避けることによって,自分の認識を調整します。

もう1つは解釈を変えます。権威の命令に従っているだけだ,私は従順ないい人だと解釈を変えていきます。

次は喪失です。学習者が苦しんでいるのは,自分のせいではない,責任は私にはない,とします。

最後は自己イメージの変化です。学習者に電気ショックを与えるときに実は電流をあまりあげないようにしていた,学習者に答えがわかるようにイントネーションを変えていた,など自分の正当性を強調するようになります。

この実験は人は権威に刃向かうのではなく,権威に従いやすいことを示しています。

中国をみてみると,私たち日本あるいは西側諸国の人々は,民主化について声をあげる中国国内の知識人に対して期待をしたりします。でもこの心理実験から考えると中国で民主化運動が起こることは相当難しいといわざるを得ないでしょう。権威に従う事例として,悲惨な文化大革命があげられます。当時の権威,毛沢東によって指示された紅衛兵たちは革命という旗印のもと多くの人々に暴力を振るっていきました。おかしいと思ってもなかなかそれに対する声はあげられなかったのです。

また党員になるということで権威システムに自らが参加しています。しかも党員は8000万人を超えています。

反日デモでも政府の管理のもとで行われています。多少の暴徒化があったとしても,あるいは矛先が地方政府に向いたとしても,中央政府への信頼は高いです。また政府管理のデモに参加すること自体が権威への服従,あるいは権威へのコミットメントになっていますので,権威を認識する自己強化が行わているとみるべきかもしれません。

権威に対抗して新しい権威を打ち立てるのはそう簡単ではないということを,この本から改めて感じさせられました。
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