2013年11月05日

2013年10月読書ノート

2013年10月読書ノート



今月の一冊は『影響力の武器』です。私が読んだのは第1版ですが,非常に勉強になりました。

経済学では合理的な人間を前提としています。合理的な人間は人の意見や周りの環境に左右されることなく,損得を考えて意志決定をしていると考えます。

でも私たちは他人の影響を何かしら受けています。むしろ周りの状況に依存して常に意思決定しているといっても過言ではありません。どのようにして私たちは意思決定しているのか,わたしたちはどのように周囲から影響を受けているのか,本書はそれが整理されてよくわかる一冊です。


<経済>

スタンレー・ミルグラム(山形浩生)(2008)『服従の心理 (河出文庫)』河出書房新社 実験者に指示されると道徳的矛盾を感じながらも多くの人が残虐な行為をとる。権威に服従してしまうのは人がヒエラルキーの中で機能しているから。自律的な判断よりも調和のためにヒエラルキーの命令を守る方がよい。

ロバート・B・チャルディーニ(社会行動研究会)(1991)『影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか』誠信書房 承諾を誘導する信頼性の高い方法は、コミットメント、返報性の原理、類似した他者への承諾反応、好意あるいは友愛の感情、権威からの命令、希少性に関する情報である。

A.M.オーカン(新開陽一)(1976)『平等か効率か』日経新書 社会の権利は原理の上で平等を重視。市場経済は効率が優先され大きな不平等が許容されている。所得の再分配にはバケツの漏れ(誘因の低下など)があるが、所得階層の下の5分の1に援助を与え、豊かな社会の主流に入らせるべき。

ヨハイ・ベンクラー(山形浩生)(2013)『協力がつくる社会―ペンギンとリヴァイアサン』NTT出版 ピラミッド型組織、利己的利益に基づく市場。ともに人は協力しないものととらえるが、人は協力したがるもの。コミュニケーション、仲間意識、規範・道徳、公平性、評判、処罰・報酬などが重要。

シルヴィア・ナサー(徳川家広)(2013)『大いなる探求(上)-経済学を創造した天才たち』新潮社 社会の仕組みを分析する装置や道具を探していた経済学者たち。労働賃金は上昇しないとしたマルクス、企業競争が賃金を上げると考えたマーシャル、ナショナル・ミニマムを主張したウェッブなど。

シルヴィア・ナサー(徳川家広)(2013)『大いなる探求(下)-人類は経済を制御できるか』新潮社 「全体に関する経済学」を考えはじめたケインズ。フィッシャー、ケインズ、ハイエクは経済を制御する道具立ては存在すると信じた。戦時経済はケインズ主義の有効性を証明。


<中国>

園田茂人編(2013)『はじめて出会う中国 (有斐閣アルマ)』有斐閣アルマ 中国がどのように統治され、市場経済化でどのように変化し、中国は世界から尊敬される国になるか、という問いから中国の社会と政治を解説。共産党、地方政府、少数民族、戸籍、格差、学歴社会、華僑、ナショナリズム、外交、日中関係。

富坂聰(2013)『習近平と中国の終焉』角川SSC新書 薄煕来が残した人民の平等への支持という爆弾を抱えながら、上層部のストレスの少ない人物として選ばれた習近平。格差と民主化という課題に向かう習近平政権は胡耀邦からの歴史の影響を受けている。

加藤隆則・竹内誠一郎(2013)『習近平の密約』文春新書 ソ連の経験から毛沢東批判を抑え、軍は党の支配下におき、中国独自の民主を求める習近平。急進的改革を求めていない庶民、南方週末事件は言論封鎖というより体制内の紛争。安定のために,より集権化していく。

<自己啓発>

長谷部誠(2011)『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』幻冬舎 就寝前に心を鎮める30分間を持つ、負の言葉は現状をとらえる力を鈍らせる、恨みを貯金せずボールを蹴るなど建設的に、1人温泉でリフレッシュ、苦しい練習が自信になる、監督の行間を読む、などサッカー日本代表長谷部のこだわり。

甲斐祐樹(2013)『スマホ&タブレット“二刀流”仕事術』インプレスジャパン スマホをシンプルな作業に、多少複雑な作業にタブレットを活用。メール、カレンダー、連絡先はGoogleで同期、データはEvernoteとDropboxをメインに利用。テキスト入力とエディタを工夫。


<その他>

丸山里美(2013)『女性ホームレスとして生きる-貧困と排除の社会学』世界思想社 女性ホームレスが見えにくいのは労働市場や社会保障政策が近代家族をモデルにしているので、あてはまらない女性世帯が形成されにくいから。女性野宿生活者の意思はパートナーや回りとの関係と切り離せない。

天野郁雄(2013)『大学改革を問い直す』慶應義塾大学出版会 大学はエリートから、マス化、ユニバーサル化(トロウ)の段階に。80年代から多様化、個性化が叫ばれ、一般教養が廃止、新名称学部の設置、入学試験の多様化へ。近年は機能別分化。私大は「幅広い職業人育成」の意識を持つ。

田中智志・橋本美保(2012)『プロジェクト活動-知と生を結ぶ学び』東京大学出版会 教育は自己創出への支援であり、子どもを意図的に操作することではない。プロジェクト活動は有用性だけでは語り得ない。現代社会の機能的分化は有用性志向をもち、プロジェクト活動を構造的に阻んでいる。

ケン・ベイン(2008)『ベストプロフェッサー』玉川大学出版部 最優秀教師は、担当教科を深く理解し、学生の学習目標を明確にし、学生へ多くを期待、深く信頼。自然で批判的な学習環境を提供し、常にティーチングを自己評価する。最優秀教師でも失敗することはあるが、学生を非難することはない。

今野浩(2011)『工学部ヒラノ教授』新潮社 筑波、東工大、中大と歩んできた工学部の教授が語る工学部風土。工学部の教え7ヶ条は、納期を守り、信頼を勝ち取る、専門以外は口出ししない、仲間の頼みは引き受ける、他人の話は最後まで聞く、学生や仲間をけなさない、拙速を旨とする、である。

今野浩(2012)『工学部ヒラノ教授と4人の秘書たち』技術評論社 ORの「秘書選び問題」は1人目の候補はパスするに限る、である。ミセスKは口が堅く、正義感が強い。学群主任業務、シンポや学会運営に力を発揮。ヒラノ教授の中大転出に伴い一旦は「離縁」するも数年後退職まで仕事を支える。

今野浩(2013)『工学部ヒラノ教授と七人の天才』青土社 哲学・論理学、物理学・数学もこなす文理両道の吉田教授、30年近くの助手生活から学長にまで登りつめた藤川教授、巡回セールスマン問題に取り組んだ冨田教授など、個性的な東工大の教授陣。

今野浩(2013)『工学部ヒラノ教授のアメリカ武者修行』新潮社 修士修了で研究所勤務になったヒラノ青年に降ってきた幸運はスタンフォード大への留学。一日14時間勉強してPhD取得。しかしウィスコンシンで敗者の辛さを実感。パデュー大学での客員時代に講義を経験し、論文の量産法を学ぶ。

上山隆大(2010)『アカデミック・キャピタリズムを超えて-アメリカの大学と科学研究の現在』NTT出版 大学が生産する知識の性格がパテント化や私企業からの資金提供によって、公的なものから私的なものへと変貌。知の市場取引化は社会に必要な知識の進歩,質の保証になるが,知の性格とは?

伊豆見元(2013)『北朝鮮で何が起きているのか-金正恩体制の実相』ちくま新書 金正日の死後半年でトップになった金正恩。国内権威の確立と米国を交渉のテーブルにつかせるため強硬路線に。2012年の衛生打ち上げは金正日の遺訓、13年2月の核実験で米国に「懲罰」など。

平岩俊司(2013)『北朝鮮――変貌を続ける独裁国家 (中公新書)』中公新書 中国、ソ連(ロシア)、アメリカの中で北朝鮮の「主体」を確立するために自らの外交空間を確保する。92年中韓国交正常化、98年金正日体制が始めたミサイル発射問題。南北融和、六者協議の不調。金正恩は「遺訓政治」を行う。

オープロジェクト(2008)『軍艦島全景』三才ブックス 長崎の沖にある端島。明治23年に三菱に買収され本格的炭鉱施設として発展。昭和30年代は五千人以上の人が住み、昭和49年の閉山まで、国内初の鉄筋コンクリートアパート、海底水道、屋上庭園などが設けられ近未来都市の様相を持つ。

松下明弘(2013)『ロジカルな田んぼ』日経新聞出版社 青年海外協力隊でエチオピアに。手をかけなくても植物は強く育つ農業を知る。帰国後専業農家に。そこから実験の日々。有機肥料は可能か、どれだけまくか、どう耕すか、農業では人間の欲を押しつけず、どれだけ自分を抑制できるかが重要。

パオロ・マッツァリーノ(2013)『ザ・世の中力-そのうち身になる読書案内』春秋社 地球温暖化はホント、住宅賃貸は老人相手に、お金持ちはオーナー社長、おいしくない公務員、統計でスカウトする米球団、文書書くのに演劇入門を、科学者かどう人をだますか、など会話形式の書評。

田岡大介(2013)『「空き巣」なう-プロの空き巣がこの道半世紀を語る』第三書館 空き巣の心構えは人様に危害を加えないこと。得た金額を服役した日数で割ると稼ぎは少ない。それでも空き巣をするのは誰にも発見されることなく屋内に侵入した時の陶酔感である。実際の空き巣体験を語る。

レイチェル・シュタイア(黒川由美)(2012)『万引きの文化史』太田出版 万引きは歴史上なくなったことはなく、罰則など社会の取り組みは文化を反映。万引きの理由は精神的な障害、育ち、性、人種などが議論。小売業の万引き防止対策が高額化し価格に反映、客は万引き容疑者として扱われている

金子雅臣(2006)『壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか (岩波新書)』岩波新書 セクハラは男性問題。女性に「なぜその気にさせた」と説明を求めるのではなく、なぜ行為をしたのかを男性側が説明するべき。セクハラをする人しない人の違いは男の性はだらしないものと受け入れられるかどうか。

永井孝尚(2011)『100円のコーラを1000円で売る方法』中経出版 製品志向ではなく市場・顧客志向で。顧客の期待より大きい部分が価値であり、顧客が望み他者が提供できず自社が提供できるものを。プロダクトを売るのではなくバリューを売るから価格勝負にならない。

永井孝尚(2012)『100円のコーラを1000円で売る方法2』中経出版 全部の問題を考える網羅思考をやめ、仮説・論点思考にする、すべてやるのではなくやらないことを決断、成功体験にとらわれない多様な集団で。企業経営に関わるメソッドを簡単に。

恒川光太郎(2005)『夜市 (角川ホラー文庫)』角川書店 子供の頃に弟と迷い込んだ不思議な夜市。何かを買わなければ夜市から出られない。弟を売って野球の能力を買った裕司は10年後弟を買い戻すために夜市に戻る。弟はどうなっているのか。第12回日本ホラー小説大賞作品。
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2013年10月08日

2013年9月読書ノート

今年6月末から7月にかけて,理財商品やらシャドーバンキングやらが中国ニュースの中心でした。2008年の4兆元対策以降,地方政府のインフラ開発は地方融資平台などが注目されていましたが,その金融面の資金調達の仕組みが明らかになった形です。

フタをあけてみると,キャッシュフローを生み出すインフラを信託公司が地方融資平台と組んで証券化して家計に販売したというが実情でした。私は金融が弱いので言葉をきちんと理解しようと思い,手にとったのが以下の3冊です。やっぱり日経文庫はわかりやすくて網羅的なのでオススメです。




<経済>

安西正鷹(2012)『お金の秘密-国際金融資本がひた隠しに隠す』成甲書房 金と兌換できるという安心感から預かり手形が紙幣になる。その何倍ものお金が発行され(信用創造)、そのお金は利子を生み出す。この預証紙幣の終着点が中央銀行となり、通貨発行益を得る。

久保田博幸(2012)『図解入門ビジネス最新短期金融市場の基本がよ〜くわかる本』秀和システム 銀行券の発行,物価と決済システムの安定を図る日銀。金融恐慌をきっかけにコール市場が誕生,仲介役として短資会社が出現し短期金融市場が発展。

久保田博幸(2013)『図解入門最新債権の基本とカラクリがよ〜くわかる本[第2版]』秀和システム 借用証書としての債権は資金運用先,中でも米国債は影響力が大。債権は店頭取引が中心で価格ではなく利回りで売買。日銀は短期金利に影響を与えられるが,長期金利は国債の市場取引で決定。

日本経済新聞社編(2011)『金融入門[第7版]』日経文庫ベーシック 資産価格の上昇を人は信じ金融危機を引き起こす。金融とはお「金」を「融」通することであり,仲立ちするのが金融機関。お金の値段・金利を決めるのが金融市場。日銀,銀行,証券会社や商品である国債,株式,為替の仕組み等。

国際通貨研究所編(2012)『外国為替の知識[第3版]』日経文庫 為替とは地理的に離れた場所で現金輸送せずに決済すること。決済通貨を決めて商品の輸出入や投資が行われる。為替リスクにさらされる外貨建て資産・負債をエクスポージャーといい,企業にとってエスポージャー管理は重要。

竹内浩二(2012)『債権取引の知識[第3版]』日経文庫 借り手が期日に支払うことを約束しているのが債券。期日前に取引するのが債券市場。債券の信用性は格付会社の格付と安全な国債利回りとの格差(クレジットスプレッド)で。日本の債券市場は国債、米ではモーゲージ(住宅ローン)担保証券。

大橋和彦(2010)『証券化の知識[第2版]』日経文庫 住宅・自動車ローン,クレジット,手形などキャッシュフローを生み出すものは特定目的事業体に移行して,そのフローを利用して証券を発行するのが証券化である。メリットはリスクをコントロールすることができること。

井上聡(2007)『信託の仕組み』日経文庫 リース会社は土地建物などの財産を銀行などに託し管理運営を任せる。リース会社は財産から生み出されるお金の受益権を第三者に販売し,第三者は信託財産からの配当を信託銀行から受け取る。受益権は証券として売買も可能。

野田由美子(2002)『PFIの知識』日経文庫 民間(Private)の経営ノウハウと資金(Fincance)を活用する施策(Initiative)。公共が事業計画を立案し,設計,建設,運営,維持管理は民間が遂行する。公共は水準を満たしたサービスを購入する。

町田裕彦(2009)『PPPの知識』日経文庫 公民が連携して公共サービスを行うスキーム,PPP(Public Private Partnership)。PPPはPFIや指定管理者制度,独立採算型BOTなどを含む概念。背景に財政赤字,高齢化,インフラの老朽化などがあげられる。

厚谷襄児(2012)『独占禁止法入門[第7版]』日経文庫 私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法、事業支配力の過度な集中を禁止し、市場メカニズムを健全にする独占禁止法。ただし知的財産、協同組合、再販価格維持などが適用除外され、政府規制制度も批判に。

W.ブライアン・アーサー(有賀裕二)(2003)『収益逓増と経路依存-複雑系の経済学』多賀出版 立地は歴史的偶然性も作用する。鉄鋼業は原材料供給の近くにいる必要があるが(空間経済の必然性)、企業は企業の近くにいる必要があるという凝集性によって歴史の偶然が重要になってくる。

ポール・オームロッド(塩沢由典)『バタフライ・エコノミクス-複雑系で読み解く社会と経済の動き』早川書房 二つの場所のどちらにアリは向かうのかというアリモデルは、アリ相互の影響力に依存する。景気循環も片方に自己強化する傾向を持ち、個人の相互依存によって変化する。

<中国>

中條誠一(2013)『人民元は覇権を握るか-アジア共通通貨の実現性』中公新書 基軸通貨がドルなのはアメリカが発達した金融システムと巨大な最終財市場であるから。アメリカ経済力の相対的低下と過剰なドル垂れ流しはアジアの持続的発展に不利。アジアに共通通貨制度を構築する必要がある。

岡本隆司(2013)『近代中国史 (ちくま新書)』ちくま新書 士と庶、官と民の二元構造に公的な教育、政治の不在、一方的な収奪が明清時代の基本的構造。現物主義的財政が銀納に代わり、茶の輸出銀の輸入となる。人口が増加し開港場市場圏に。政府は信用、法制を供与せず産業化は失敗に。

渡邉真理子編(2013)『中国の産業はどのように発展してきたか』勁草書房 中国産業の特徴は「旺盛な参入と低い価格」である。固定費を回避したい企業は垂直分裂志向の取引を選択。技術的プラットフォームの存在、分化した市場、公共財的な技術がそれを可能に。食糧、労働、エネルギーは上昇へ。

丸川知雄(2013)『現代中国経済 (有斐閣アルマ)』有斐閣アルマ 変化の激しい中国経済を工業化という側面から2020年を意識し必要なものだけを整理する。中国経済の発展経緯を国有企業,民間企業,外資企業を主役に,労働市場と財政金融システムを補完しつつ明らかにする。

大西康雄編(2013)『習近平政権の中国-「調和」の次に来るもの』アジア経済研究所 習近平政権発足後の中国が抱える課題と展望を政治,経済,外交,軍事,公有制,社会保障の観点から明らかにする。習政権の独自路線は13年秋の三中全会以降に明らかになる。

石平(2013)『「歪んだ経済」で読み解く中国の謎』ワニブックス【PLUS】新書 中国は成長のための公共投資とインフレの板挟みに。経済が衰退すればケ小平マジックは消え社会は不安定に。習近平は、軍の視察強化など自分のカラーを出して国内の不安定を海外に背けようとしている。

沈才彬(2013)『大研究! 中国共産党 角川SSC新書』角川SSC新書 中国共産党の強さはイデオロギーに拘泥せずリアリズムに徹したため。共産党トップは下からの選抜、地方視察の現場主義、若手の育成や登用が強み。危機対応は強いが国内政変に弱い。保守派に配慮しつつも民主主義体制にいつかは移行する。

日経新聞社編(2013)『習近平に中国は変えられるか』日経新聞出版社 石油閥、機械工業閥などから見る新政権、土建国家と影の銀行、経済を支える中国企業の現状、米中外交、反日デモの裏側、小民主と呼ばれる民主化、言論統制の国、など。12年2月から13年3月までの企画連載のまとめ。

天児慧(2013)『日中対立: 習近平の中国をよむ (ちくま新書)』ちくま新書 12年以降の強硬姿勢の背景は日中関係の変化、対外戦略の強硬化がある。日本イニシアチブの日中関係が中国イニシアチブへ、対外戦略は09-10頃から海洋権益、核心的利益に南シナ海を含め、「積極有所作為」を主張し始める。

<自己啓発>

ジッドゥ・クリシュナムルティ(中川吉晴)(2013)『スタンフォードの人生観が変わる特別講義-あなたのなかに、人生がある』PHPエディターズグループ 先入観や偏見が「私」と「私以外」に分裂させ、思考が壁を作る。恐怖、絶望を見つめ、真実をみて権威や体系の間違いを見れば心は静かに。

チャールズ・デュヒッグ(渡会圭子)(2013)『習慣の力 The Power of Habit』講談社 毎日の人の行動の4割が習慣。習慣のループとは、欲求に基づき、何かのきっかけでルーチン行動が発生し報酬を得る、というもの。きっかけ、ルーチン、報酬を理解するとともに、変われると信じること、社会の目なども重要。

マリオ・アロンソ・ブッチ(山本泉)(2013)『ハーバード流 自分の限界を超える思考法』アチーブメント出版 過去に達成できたことと将来達成できそうなことは全然違う。現実を違った目で見ることができればまったく違った決断が下せる。

山ア拓巳(2006)『山崎拓巳の道は開ける』大和書房 悩んでいる人は努力することを保留している、決めてやってみること、感じるということはその事が起こる事を受け入れる準備ができたこと、意識すること、そうしようとすること、そしてある程度のストレスは幸せに関係している。

椋木修三(2013)『「顔と名前」の記憶術』PHPビジネス新書 自分の人生に重要でないものは忘れる。相手の名前や顔の特徴を意識し、メモを取る、イラストを書く、反復する、意識的に相手の名前を呼ぶ、会う前にメモを見直す、などの工夫。

<社会>

五十嵐泰正+「安全・安心の柏産柏消」円卓会議(2012)『みんなで決めた「安心」のかたち-ポスト3・11の「地産地消」を探した一年』亜紀書房 全国的な生産高を誇る柏のカブ、ネギ、ホウレンソウ。消費者、生産者、流通者が協力して放射能測定、安心農業の取り組み、消費者意識への働きかけ。

<その他>

中島岳志・森あゆみ(2012)『帝都の事件を歩く-藤村操から2・26まで』亜紀書房 東大の周りに下宿、旅館が集まり世を憂う煩悶青年が集まる本郷、浜口雄幸暗殺が起こる東京駅周辺、血盟団事件の日本橋、明歴の大火のあとに発展する両国、など、近代史に関連つけながら東京の街を歩く。

蜂屋邦夫(2002)『荘子=超俗の境へ』講談社選書メチエ 天空の高みに身をおけば俗世の争いごとは矮小に見える。すべてを天地自然の道に任せて、人為的な価値判断を超越することこそが荘子の思想。
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2013年10月03日

『習慣の力』

前に「エビデンスにもとづいた自己啓発本」というエントリを書いたあとにまた面白い本を読みました。

『習慣の力』(チャールズ・デュヒッグ)です。



毎日の人の行動の4割が習慣だそうです。

松井秀喜(2007)『不動心 (新潮新書)』によると,星陵高校のベンチにはこう書かれてあったそうです。

「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。」

いい言葉です。習慣が変われば人は成功しそうです。でも,習慣を変えるのは難しいのが私たち一般ピーポーなわけです。本書はいい習慣を身につけたいという人に,習慣に関する科学的成果を提供し,そのエビデンスにもとづいた習慣の改善を提案しているというスグレモノです。

習慣とは,脳が楽をするために編み出した手順,です。そして習慣はループ化されています。

その習慣のループとは、欲求に基づき、何かのきっかけでルーチン行動が発生し報酬を得る、というものです。そしてその報酬がまたきっかけとなってルーチンな行動を引き起こしていきます。

さまざまな事例があげられています。ラットが餌を探す実験では,餌を探しだしたあとルートが分かってしまうと脳の底核の反応が下がります。餌までの道筋はルーティンな行動になり,脳への刺激が減ります。

マーケティングにおいてもアメリカで歯磨き粉が開発されたときにそれを人々の習慣として根付かせることは大変でした。歯についた粘膜が取れる!という報酬が用意されることによって人は歯磨き粉を使う習慣がついていったようです。

ファブリーズもアメリカではなかなか浸透しなかったようです。最初は「臭い消し」というが謳い文句だったのですが,誰も自分の家が臭いとは思っていません。そこで宣伝文句を「いい香り」になることを強調することによって徐々に売れていったそうです。

たしかに,ビオレの毛穴すっきりパックなんかは,鼻の黒ずみが取れると気持ちいいのでついつい買うようになります。このように報酬が新しい習慣を定着させます。

さて習慣を変えようにもやはり意志力が要ります。

クッキーとラディッシュ(大根)が置かれた部屋に入り,一つのグループはクッキーを食べる,もう一つのグループはラディッシュを食べるという実験が行われました。当然クッキーを食べる方が楽しいので,意志力を使いません。反対にラディッシュを食べる方は横にあるクッキーを横目にラディッシュを食べ続けないといけないので,意志力を使います。

二つのグループに簡単なテストを行うと,ラディッシュを食べさせられたグループは悪い結果となったそうです。つまりクッキーを我慢してラディッシュを食べ続けるという自制心を使ったので,能率が下がったというわけです。

となると意思力ではなかなか習慣をつけることは難しいかもしれません。でも大丈夫です,ここで重要なのがさっきもみた「報酬」です。報酬をうまく設定すると人は習慣化することが可能になります。(でも自分が身につけたい習慣の行動後にどのような報酬を用意するか,実生活では難しいかも。)

その他にも本書では,変われると信じること,社会の目なども重要だと指摘しています。

習慣を変えたい人には手元においていろいろ挑戦してみてください(笑)

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2013年10月01日

『習近平政権の中国』

編者の大西さんよりご恵投いただきました。アジ研の情勢分析シリーズの1冊として刊行され,中国の最新の動向をわかりやすく紹介しています。

2012年に習近平が党書記になり,2013年の全人代で習近平国家主席・李克強首相コンビによる新政権がスタートしました。胡錦濤前政権時代を振り返りながら,新政権下の課題について分析,紹介しています。

簡単に内容紹介。

政治:新政権の人事を見てみると,経済通が少ない印象で,国土資源部の徐紹史が国家改革発展委員会主任に収まったところをみると,都市化,資源開発の国有企業に有利といえるかもしれません。大きな課題は既得権益層とのバランスだと指摘しています。

経済:マクロ的には4兆元の財政政策の出口戦略,とくに地方融資プラットフォームの不良債権の取り扱い,地域バランス,所得格差が大きな課題です。昨年12月の中央経済工作会議の結果をみてみると,都市化,民生(社会保障)に力点がおかれ,体制改革が一番最後になっていたと指摘しています。

外交:経済大国化,ナショナリズムなど5つの要因によって新政権の強硬路線を説明しています。新政権は平和を謳いながらも海洋権益の主張は強いです。

軍事:習近平は軍を積極的に把握しようとしていますが,これは軍の膨張と周辺諸国への脅威につながり,バランスが問題になってくると指摘されています。

国進民退:「国有経済の堅持」により民間企業との不平等競争が問題になっています。鉄道部の解体に見られるように公有非公有のバランスがとれるかどうかがカギであるようです。

社会保障:社会保障改革は都市部の社会保障制度に農民工や農民を取り込んだ増分改革的なもので,これにより体制的には皆保険制度となりました。ただ保険制度の実質化と格差の是正がこれからの問題だと指摘しています。

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2013年09月26日

『現代中国経済』

「いやぁ,さすがですわ,丸川さん。」これが初読の感想です。



丸川さんよりご恵投いただきました。丸川さんの産業研究を基礎にした新しい中国経済の教科書です。

本書の特徴は,中国経済を「工業化」という側面に焦点をあてていること,移り変わりの激しい中国経済を2020年の段階でも必要と思われるもののみを盛り込んでいるということ,です。

感想を一言でいうと,今までのご自分の産業研究と中国経済の発展を調和させているなあ,と思いました。私も『中国―奇跡的発展の「原則」 (アジアを見る眼)』で中国経済の教科書を書きましたが,私の研究成果は一部しか取り込んでいません。研究成果というある意味特化したところと教科書という全体像のバランスは難しいように思いますが,この本はそれをうまく乗り越えているというのが印象です。また随所にご自分の主張が展開されており,単調になりがちな「ただの」教科書に終わらないようにも工夫されています。

全体の流れをみてみましょう。本書は大きく分けて,工業化をもたらした制度,労働,資本,技術に焦点をあてている部分,そしてその環境の中で工業化を推進した経済主体である国有企業,外資系企業,民間企業に焦点をあわせます。最後に中国経済の「罠」として@需要不足,A格差の存在,B環境問題,C対外不均衡の問題を指摘しています。

まず前半です。中国の経済成長を生産要素別に分解し,1980年代以降TFPが2.3-6.9%と他と比較して高いこと,資本の貢献も10%あることが示されます。このような成長を支えた背景には計画経済から市場経済へ転換した制度的変革があったとします。とくに市場経済への変遷では,商品経済から土地,労働,資金,知的財産権などさまざまな権利が取引対象になってきたことを示しています。

労働市場では,歴史的な変遷をおうとともに失業の局地化,労働供給が不足するというルイスの転換点,大学生の就職難などにも触れています。資本については工業化,とくに企業の資金調達という側面から財政金融制度の変遷を分析しています。政府投資から銀行融資に変わり,そして株式や自己資本調達など企業の資金調達が多様化していくさまを描き出します。技術については,外資導入や自主イノベーションの状況からキャッチアップを論じるとともに,丸川さんの研究成果からゲリラ携帯や電動自転車などを事例に「キャッチダウン」に関する議論を展開しています。

後半は企業の分析です。マクロ的な工業化を論じるのではなく,工業化を推進した経済主体である企業に焦点をあて,具体的な事例を示しながら論じているところに,まさに本書の特徴があります。

国有企業改革は優良資産を株式化するとともに,産業政策や国家戦略を背負う存在であることから,「大家さん」的な存在(子会社の株配当を受ける)であることが示されます。外資系企業については委託加工や技術移転の役割を果たしたことを描き,民間企業は『チャイニーズドリーム』(私の書評はここ)の成果から「大衆資本主義」である様子を分析しています。

先にも述べたように本書の特徴は教科書でありながら丸川さんの研究成果が豊富に利用されており,新しい中国の産業研究の成果を学びながら,中国の工業化を理解することができるスグレモノだと思います。



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2013年09月24日

『中国の産業はどのように発展してきたか』

アジ研の渡邉さんを中心にして,多くのアジ研研究者を組織した産業研究の集大成が出版されました。本書の骨格についてはすでにアジ研の夏期公開講座(内容については前のエントリココを参照)で公開されていましたが,研究会の成果の全体像が本書で明らかになりました。(ご恵投ありがとうございました。)



本書の主張は

中国産業の特徴は「旺盛な参入と低い価格」である

というものです。もちろん詳細な分析がされているのですが,主張はシンプルなので非常に読者に伝わりやすいです。

まず,中国はインドと比べて産業内の企業数が多く,企業シェアが小さいです。中国は日本と較べても上位企業の市場集中度は低いですし,ブランドシェアも低いという事実があります。

中国政府はこのような状況を「規模の経済が発揮できない」と批判的に見ていましたが,編者はこれを「旺盛な参入と低価格」として積極的に評価しています。

それではなぜ旺盛な参入と低価格になるのか?この理由を本書は,参入費用が低いということ,とくに中国では部品調達において技術や取引の「プラットフォーム」があるからだとしています。

本書は3部に分かれています。

第1部は産業です。丸川さんは自動車産業,太陽電池産業を事例に主導産業がサプライヤーから基幹部品を調達する「支持的バリューチェーン」が存在するために,旺盛な参入が起きていることを指摘しています。

渡邉さんはテレビとエアコンという成熟産業を事例に旺盛な参入の結果,プロダクト・イノベーションが起きていることを示しています。

丁さんは携帯電話と専業市場の分析から技術と取引プラットフォームの存在を指摘し,企業の参入費用が低いことを例証しています。

堀井さんも風力発電という政府規制が大きい産業であっても旺盛な参入が起きていたことを示しています。

第2部は需要と技術です。大原さんは国内市場が階層化されており,そのため下位企業であっても参入の余地があること,キャッチアップ的な苗床になっているとしています。

木村さんは中国では技術が公共財的であったと指摘しています。

第3部は低い価格です。寶劒さんは食糧を,明日山・山口さんは労働を,堀井さんはエネルギーを中国産業のコスト面として整理し,低い価格を説明しながらも今後の上昇可能性を指摘しています。

多くの専門家が関わった本にも関わらず,「旺盛な参入と低い価格」という言葉でくくることが可能なために,比較的まとまっている本だと思います。

でも読了後なんかモワッとした感じが残りました。それが何か最初わからなかったのですが,何回か目を通してはっきりしてきたのは,

結局,「旺盛な参入と低い価格」という中国産業の特徴は中国の経済発展に寄与したのかどうか

という点がわからなかったということです。

もし,この中国産業の特徴が発展に有利ということであれば(あるいは経済発展に効率的であるするならば),途上国にとって発展の制度設計に役立つことができます。企業に旺盛な参入意欲をもたせるためのインセンティブ設計,安い価格を実現するための政府主導での技術導入や取引場所の設立などの政策提言が得られることになります。

本書では@産業の分析,A結果から得られる特徴がまとめられていますが,そこからB政策提言にまで展開されていなかったので,何かもやっとしたものが残りました。

この辺はまだ今後の課題かもしれませんし,安易な政策提言は研究者にとって「政策ありき」の分析に陥ってしまうので,編者はその辺を戒められているのかもしれません。

とはいえ,各章の水準は高く,それぞれから学ぶものも多いです。本書は中国産業研究のマストアイテムになることは間違いないでしょう。
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2013年09月03日

2013年8月読書ノート

2013年8月読書ノート



三輪先生は,政府ではなく市場への信頼をよく主張されています。この本は,日本の産業政策が日本経済を発展させたという定説を覆す主張をしています。つまり産業政策という政府の政策が有効だったために日本の経済が成長したのではなく,そもそも政府の実施した産業政策は機能していなかったとします。

「産業政策は、政策目的の実現よりも業界団体が特定産業の具体的な個別支援を求めるのが実情」(p.184)です。そして「具体的な政策の決定は多くの人間が直接・間接に参加」しますが,政府が「それら利害関係者の同調を獲得するための条件にかけていた」(p.283)のです。

そもそも政府は政策を実行できる能力はないのではないかという疑問があります。

政府が「ミクロベースの詳細な情報を収集し、各経済主体の適切な反応を引き出すための調整機能を有効に果たすことが必要だが、集権化されたシステムでは複雑で柔軟な対応をすることは不可能」(p.78)です。計画経済がうまくいかないのはまさに政府が経済主体の情報をすべて手に入れることができないというところにありますが,市場経済においてもそれは全く同じで,政府が合理的意思決定する各経済主体をコントロールできるというのは幻想かもしれません。


<経済>

高村学人(2012)『コモンズからの都市再生-地域共同管理と法の新たな役割』ミネルヴァ書房 小公園、集合住宅や共用施設、まちなみ景観という地域共同空間の最適な利用は、所有権の設定という市場システムよりも、住民自治組織の自発的な共同管理によってコモンズの悲劇を避けることが可能。

アンドリュー・ヴィッカーズ(竹内正弘監訳)(2013)『p値とは何か-統計を少しずつ理解する34章』丸善出版 統計学とは推定(大小を答える)、推論(仮説から結論を導く)、実験をデザインすること。p値とは観察されたデータが少なくとも同じか、もっと極端である確率。

東谷暁(2013)『経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語 (朝日新書)』朝日新書 不況を分析したケインズの経済学に対しアメリカではサミュエルソンなどのケインズ主義者を生み、フリードマンら新古典派を生んだ。また新たなケインズ経済学としてクルーグマンらがいる。

三輪芳朗(1998)『政府の能力』有斐閣 戦時統制下の工作機械、戦後の機械工業振興臨時法(機振法)、中小企業政策を焦点に政府の政策を検討すると、産業に対する政府の働きかけは積極的でも強力的でもなく、政策の効果はなかった。

高橋洋一(2007)『財投改革の経済学』東洋経済新報社 政府の金融活動は郵貯や公的年金の金利上乗せ、量的拡大が問題に。公共投資のファイナンスにとどまらず財投システムの維持コストが巨額になり、郵貯の市場での自主運用(民営化)、特殊法人(道路公団)改革、政策金融の改革が必要になった。

<中国>

Tokyo Panda(2013)『《80后・90后》中国ネット世代の実態』角川SSC新書 瀋陽の医学部に留学した筆者が「淘宝」のファッション買い物に興味を持ち、ブログを開設。卒業後は淘宝でセレクトショップを開業。肌で接する中国の若者の感覚、流行を語る。

丸川知雄(2013)『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える (ちくま新書)』ちくま新書 お金のない人々が資本家を目指して起業する。携帯電話、太陽電池、電動自転車、レアアース。産業の成長期には大衆資本家が参入。他の資本主義国家が経験したことがないほどの規模とスピードで拡大している。

徐友漁・鈴木賢・遠藤乾・川島真・石井知章(2013)『文化大革命の遺制と戦う-徐友漁と中国のリベラリズム』社会評論社 文革は中国に損害をもたらしたのになぜ重慶モデルが支持されるのか。社会を変える唯一の政治体験が文革だった。しかし文革は民主化運動を生み出す力がある。

<自己啓発>

午堂登紀雄(2009)『頭のいい人だけが知っているお金を稼ぐ読書術』ビジネス社 お金に変える技術とは本から得たことをどれだけ深く考え、どれだけたくさん実践したかである。比較し、筆者と対話し、自分ならどうするを考え、アウトプットし、実践してみる。

午堂登喜雄(2008)『脳を「見える化」する思考ノート』ビジネス社 B5ノートに仕事、プライベートすべての情報を書く。目標、やることリスト、打ち合わせ、読書、アイデアを書き留め、キーワードを矢印で関連性を持たせる。後から何度も見直し加筆する。

午堂登喜雄(2008)『「突き抜ける!」時間思考術』インデックス・コミュニケーションズ 何のためにそれをやるかという目的と目的達成に向けたクオリティを追求すること、優先順位を考えると時間が作り出される、期限と目標、睡眠が時間密度を高める。

山崎将志(2010)『残念な人の仕事の習慣』アスコム 面白いことは転がっている。ゲーム化、日常へのフィードバックを行い、勉強への接点を考え、自分のポジションを構築。面白い仕事はつまらない仕事の積み重ねで成り立っている。一年前と同じ仕事をしているのか、惰性でするのは残念である。

ハワード・ビーハー、ジャネット・ゴールドシュタイン(関美和)(2009)『スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則』日経新聞出版社 自分に正直に、この会社で働く理由、自主的に考え、信頼を築き、真実に耳を済ます。責任を持ち、行動し、困難に立ち向かう,など。

<社会>

辻太一郎(2013)『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』東洋経済新報社 大学生、大学、企業が大学の成績を評価しない負のスパイラルに。企業に大学の授業情報を提供し、採用活動の参考に。学生が真剣に勉強するようになり、大学も授業改善に取り組むようになる。

W・ブライアン・アーサー(有賀裕二監修日暮雅通訳)(2011)『テクノロジーとイノベーション-進化/生成の理論』みすず書房 特定の目的を達成するために現象を取り込むテクノロジー。テクノロジーは新しい組み合わせで進化し,テクノロジーは自己創出している。

エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー(村井章子)(2013)『機械との競争』日経BP社 「コンピュータが人間の領域を侵食することにより、雇用は減り、その減った雇用は、高所得を得られる創造的な職場と、低賃金の肉体労働に二極化する」。

エリック・スティーブン・レイモンド(山形浩生)(1999)『伽藍とバザール-オープンソース・ソフトLINUXマニフェスト』光芒社 組織で開発する伽藍方式、ハッカーが自発的に参加するバザール方式。ハッカー文化にはロックの土地所有権的な規範と贈与文化がある。

上野千鶴子(1989)『スカートの下の劇場―ひとはどうしてパンティにこだわるのか』河出書房新社 女性がパンティを選ぶ基準はセックス・アピールとナルシズムである。男たちはパンティを性的なものと勘違いし、女は自分のボディを自分自身で客体化する。

上野千鶴子(2010)『女ぎらい――ニッポンのミソジニー』紀伊國屋書店 女性嫌悪(ミソジニー)は男にとって女性蔑視であり、女にとっては自己嫌悪である。男は性的主体であろうと連帯し、女を性的客体化する。女が客体から脱出するのは男性側(エリート)になるか女をドロップアウトすること。

上野千鶴子(2012)『みんな「おひとりさま」』青灯社 1960年代に累積婚姻率がほぼ100%だったが有配偶率は減少。シングルのまま、離婚や死別でシングル・アゲインが増えている。孤立を避ける人間関係のネットワークを維持し、社会の評価軸ではなく、自分の評価軸で生きる。

上野千鶴子(2002)『サヨナラ、学校化社会』太郎次郎社 現在を未来のための手段とし、偏差値で評価する学校的価値観が学校空間からあふれだしているのが学校化社会。偏差値身分制は自己評価の評価軸が学校的価値と同じになる。敗者の不満、勝者の不安が蔓延する。

吉成真由美(2012)『知の逆転』NHK出版新書 『銃・病原菌・鉄』のダイアモンド、アメリカの覇権主義を批判する言語学者のチョムスキー、音楽の力を大事にする神経科医のサックス、ロボット工学が人真似に陥っているとするミンスキー、個人を尊重すべきという二重らせんのワトソン,など。

ナシーム・ニコラス・タレブ(望月衛)『ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質』ダイヤモンド社 普通は起こらない、大きな衝撃がある、事後には予測可能である、という三つの特徴を持つ事象ーブラック・スワン。人はプラトン性という純粋で扱いやすい「型」で思考する傾向がある。

ナシーム・ニコラス・タレブ(望月衛)『ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質』ダイヤモンド社 ベルカーブはまやかし。白鳥を灰色にしたのはマンデルブロだ。とても稀な事象の確率は計算できないが、その影響を想像することは可能。確率よりも影響に焦点をあてて意思決定するべき。

<その他>

安藤祐介(2010)『営業零課接待班』講談社 営業で成績の出ない真島は退職を勧告される。それを救ったのは営業担当の井岡専務。井岡は飲みの接待を中心とする新たな営業零課を作った。一年で50億の売上を目指すがなかなか目標に到達しない。最後の起死回生をかけて営業零課が団結する。

安藤祐介(2008)『被取締役新入社員 (講談社文庫)』講談社 小学校入学式でお漏らしから最悪の人生がスタートした鈴木信男。会社勤めも続かず、冗談で受けた世界十指の広告代理店に採用される。条件はダメ人間として周りの人のハケ口になる「被取り締まられ役」になること。自分の誇りと仕事はどうなるか…

吾妻ひでお・西原理恵子(2013)『実録!あるこーる白書』徳間書店 依存症は妊娠と同じ。一ヶ月でも二ヶ月でも妊娠は妊娠(軽い、重いはない)。途中で戻れず必ず出産に至るのと同じように始まったら進行するだけ。アルコール依存症は病気という自覚が必要。

吾妻ひでお(2007)『逃亡日記』日本文芸社 2005年に発表した漫画『失踪日記』に基づいたインタビュー。仕事からの逃亡、路上生活の実際、水道管工事の体験、アルコール中毒者、治療としてのアルコール病棟の体験、そして『失踪日記』表彰後の生活を語る。

川上徹也(2012)『独裁者の最強スピーチ術 (星海社新書)』星海社新書 人を動かす演説にはストーリーの黄金律がある。それは「欠落したもしくは欠落させられた主人公」と「無理かと思うほどの遠く険しい目標に向かう」というものだ。

菊池省三・関原美和子(2012)『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』講談社 言葉が児童を変える。みんなで褒め言葉を言う。「成長ノート」(運動会で輝いていた友達、友達から学んだこと、など)、「私の本」(自分のテーマで書いてクラスで発表する)など。
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2013年08月27日

『機械との競争』

『機械との競争』は,技術が発展し機械やパソコンが人の仕事を奪っている中で,人はどの分野で仕事をすることができるのか,を考えさせられる良書です。

近年の技術の発展によって雇用は増加していない,所得の中央値も増えていないという現実があります。この原因としてコンピュータ,つまりパソコンによって仕事が奪われているということが主張されています。

じゃあコンピュータができない仕事は何でしょうか,それは肉体労働と創造的な仕事です。配管工,看護師は肉体を使いますし,現場で創造的な対応が必要になるという意味で,人間がやるべき仕事です。このような仕事では,パターン認識能力や複雑な問題解決能力が必要ですし,看護師などの人を相手にする職業では,複雑なコミュニケーションを必要とします。

それでもコンピュータは進歩し続けています。自動車の運転は人間しかできないと思われていた仕事です。運転では道路や街などのパターンを認識する必要があります。これまでコンピュータはパターン認識はできないと思われていましたが,現在では運転も自動運転の技術が向上しています。

また翻訳のようなコミュニケーション能力についてもコンピュータ技術は進歩してきました。パソコンの翻訳能力はかなりの程度まで上昇してきました。

でもまだ医者,セラピスト,マネージャー,セールスマンのような仕事ではコンピュータ以上のコミュニケーション能力やパターン認識が必要です。周りから複雑な情報を収集し影響を行使しなければなりません。

私たちの社会では,コンピュータやインターネットは現代産業の汎用技術,汎用機械になっています。このような技術の進歩は社会のすべての人に自動的に恩恵を与えたわけではありません。現在,所得と雇用は格差が大きくなっています。コンピュータの汎用技術化によって,パソコンではできないある種のスキルを持った人に特に有利になるようになっています。スーパースターを生む一方,何もスキルない人は仕事がないということになります。

著者たちはコンピュータの発展によって仕事が奪われるということについて楽観的な結論を導きます。

所得の中央値が伸び悩んでいるのはイノベーションが停滞しているからではなく,人間のスキルや組織制度が技術の速い変化についていっていないのだ,人間のスキルアップをはかるための教育は重要だし,組織革新も必要だと主張しています。組織革新について例えば,イーベイやアマゾンのマーケットプレイス,アップルストアのアプリでは多くの人の仕事の参加を可能にし,雇用を生んでいると主張しています。

今後もパソコンやインターネット技術は向上していきます。このような中でどのような仕事をするべきか,考える材料として本書はオススメです。

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2013年08月22日

『ブラック・スワン』

『ブラック・スワン』は危機について科学的に考察した本です。複雑系,とくにフラクタルの概念を用いて(数学を使うことなく)説明している良書です。

まず,「ブラック・スワン」は名前の通り黒い白鳥のことです。危機やリスクを私たちは白鳥と思っていますが,実は真っ黒な白鳥であることを指摘するために,象徴的なタイトルがつけられています。

ブラック・スワンという現象は,次の特徴を持ちます。

普通は起こらないこと、大きな衝撃があること、事後には予測可能であること、です。

しかし私たちはこのブラック・スワンを扱いやすい「型」で思考する傾向を持っています。私たちは,歴史的に起きた事件を,あとでわかりやすい形で説明しようとしますが,歴史の本質は,流れるものではなく移行するのだと言っています。

私たちは複雑なものを簡単なものとして取り扱いたがります。例えば,体重や身長,カロリーなど物理的な数値を扱いますが,これらは一つのデータが全体に与える影響は小さいです。(これらの数値は正規分布する!)

一方で社会的な情報は複雑です。所得,売上,引用回数,企業規模などは格差が大きくです。データ一つが集計量や全体に圧倒的に影響を与えます。(これらはべき乗分布になるし,私たちの世界ではこちらの情報が圧倒的に多い。)

しかし私たちはリスクを捉え間違えているようです。さまざまな社会のリスク現象を正規分布(ベル・カーブ)で把握しているからです。でもリスクや危機はフラクタルな現象である,と本書は説明しています。

本書の説明の仕方で感心したのが,七面鳥モデルです(私が勝手にモデルとしています)。

七面鳥は,毎日飼い主から餌をもらいながら成長していきます。そうすると七面鳥は予測します。明日も餌を貰えるだろう,と。

ところが,感謝祭の前日に悲劇が発生します。それは感謝祭に捧げる食事に供されるため殺されるのです。

この瞬間,七面鳥は今までの予測が間違えていたことを知ります。

私たちの日々の生活はこの七面鳥モデルです。予測が違って危機が発生し右往左往しています。

なぜでしょうか。それこそ私たち人間の性質が問題です。生まれつき人は、外れ値、黒い白鳥を過小評価する性質が備わっているとします。

リスクを正規分布としてとらえると過小評価してしまいます。リスクはフラクタルだと言われても,はあ,そうですかにしかなりません。

複雑系は複雑な現象を複雑なままで把握します。その結果複雑系では説明できたように見えて説明できていないという結果になりがちです。

本書もその枠からはみ出てはいません。

でも不確実性やリスクについてどう対処するかを述べてはいます。

とても稀な事象の確率は計算できませんが、その影響を想像することはできます。確率よりも影響に焦点をあてて意思決定するべきで,不確実性の本質はまさにそこにあると言えます。

彼の言い方でいえば,「電車を逃して残念なのは、捕まえようと急いだ時だけ(p.217)」なので,電車を逃したあとの影響について意思決定するべきだということでしょう。


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2013年08月06日

2013年7月の読書ノート

2013年7月の読書ノートです。



先月の終わりから会社再生や組織変革の本を読みました。先月の柴田昌治(2010)『なぜ社員はやる気をなくしているのか(日経ビジネス人文庫)』日経ビジネス人文庫とか引頭麻実(2013)『JAL再生』日経新聞社も面白かったのですが,この『なぜ会社は変われないのか』はもっとも面白かったです。

会社や組織が変わるためには,社員間の「コミュニケーション」が重要だということです。人は他部署や経営陣の考えていることがわからないために疑心暗鬼に陥りがちです。自分たちで何ができるのか,自らが組織変革の中心になるには,社員同士がお互いを理解し,会社の方針について自分の意見を持つようになると自分がやるべきことがわかります。引頭(2013)でも稲盛イズムの浸透の幹部研修,幹部や社員の私的な勉強会などが活発になってきて,社員一人一人が会社を変えるという意識につながったようです。

当校でも,大学の社会的責任について考えるというプロジェクトがありましたが,各部署各教職員のもっとも共通した当校の問題点は他部署,他学部との交流がない,自部署や自学部であってもコミュニケーションがとれていないというヒアリング結果が出てきていました。

組織の改革には,「真面目に」雑談する機会を意識的に持つ必要がありそうです。


<経済>

ジョン・デ・グラーフ、ディヴィッド・K・バトカー(高橋由紀子)『経済成長って、本当に必要なの?』早川書房 人の幸せのために経済はある。家族と過ごす時間、医療保険が欲しい、安定した仕事が欲しい、子供を大学に行かせたい、健全な環境が欲しい。私たちが経済に求めているものを話し合うべき。

三輪芳朗(1997)『規制緩和は悪夢ですか』東洋経済新報社 秩序、安定、混乱の回避、安全、文化、伝統というスローガンで我々は膨大なコストを支払っている。強い政府への信頼と日本は政府によって産業的成功を納めたなどの誤解が拍車をかける。必要なのは情報開示による透明性。

鶴田俊正(1997)『規制緩和―市場の活性化と独禁法 (ちくま新書 (096))』ちくま新書 日本の経済諸制度は産業の保護・育成という視点からのものが数多く存在している。参入や価格を規制する政府規制、市場がゆがむことを防ぐルールとしての独禁法は表裏の関係。裁量型行政からルール型行政に転換する必要がある。

吉田和男(1995)『行革と規制緩和の経済学 (講談社現代新書)』講談社現代新書 財政が経済に悪影響を与えるのは限界税率の高さ。防衛、警察、司法、外交の純粋公共財は一般会計予算の一割の8兆円。政府が起こす所得移転は既得権益、レントとなって特定グループの利益導く政治的手段になりやすい。


<中国>

福島香織(2013)『中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実』PHP研究所 今の工場は昔より条件は改善しイベントも充実。賃金よりも自由な労働環境を望む第二世代農民工たち。都市住民との壁は厚く自己実現や自己表現の欲求がストライキ、暴力などの潜在的リスクに。


<自己啓発>

ロイ・バウマイスター、ジョン・ティアニー(渡会圭子)『WILLPOWER 意志力の科学』インターシフト 自制心が働く人は成功する。意志力は消耗するのでグルコースを補給する。計画を立てることにより脳の負担を減らし、記録することで自己認識を高めると意志力は強くなる。

ジョセフ・ジャウォースキー(金井壽宏野津智子)(2013)『シンクロニシティ[増補改訂版]-未来をつくるリーダーシップ』英治出版 リーダーシップを取ることになった事業の立ち上げの自伝を通じ、何かを必要とすればそれは偶然にほぼ時を同じくして現れる(シンクロニシティ)、と。

ジョセフ・ジャウォースキー(金井壽宏野津智子)(2013)『源泉-知を創造するリーダーシップ』英治出版 起きていることを判断せずに観察する。現在持っているメンタルモデルやものの見方を手放す。経験やプロセスにどっぷり浸かると新たな啓示が得られる。そのひらめきを即座に行動に移す。

橋本陽輔(2013)『悟る技術』ヒカルランド 「私は自分自身を愛しています、受け入れています、周りから愛されています」という言葉を使いながら湧き上がるいやな感情をピンク色の服、タッピング、伊勢神宮の言葉で透明化する。これが幸せに生きる技術。

柴田昌治(2003)『なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ (日経ビジネス人文庫)』日経ビジネス文庫 言っても無駄という風土・体質を変えるには意識的に質を高めた「気楽にまじめな話をする場」をつくる。危機に対する創造は会議という収束の場ではなくまじめな雑談の場、発散の中で発生する。


<社会>

日経産業新聞(2012)『新産業連関図-急成長する5大市場を読む』日経新聞出版社 日本の最終製品メーカーが地盤沈下する中で素材・部品産業ではまだ強さと広がりを持つ。スマートフォン、エコカー、航空機、スマートハウスでは素材の技術開発が進み、テレビ産業でも部品・技術+αで活路が。

ベノワ.B.マンデルブロ、リチャード.L.ハドソン(高安秀樹監訳)(2008)『禁断の市場』東洋経済新報社 金融市場の価格変化はフラクタルモデルで説明できる。今までの金融工学は変動を正規分布で考えていたためにリスクを過少評価し、暴落や暴騰を説明できない。

清水洋(2013)『国家が個人資産を奪う日』平凡社新書 人口が減り土地が余る。土地・不動産が上がる要素はない。国債発行が続く中で金融緩和は金利と物価をあげるだけ。日本人の資産は収奪が始まっている。世界の為替、実物経済を合わせたポートフォリオの構築を。

河野哲也(2011)『道徳を問いなおす リベラリズムと教育のゆくえ (ちくま新書)』ちくま新書 道徳教育の基本は民主主義を維持・発展させていく(自由と平等)教育である。必要な徳性はシチズンシップであり、道徳的に善きものであるためには同質の強要ではなく、他者のニーズを発掘しようとする態度。

J.S.ミル(竹内一誠)(2011)『大学教育について』岩波文庫 文化と文明をもつ他の国民の言語と文学を知ることは有意義。真理発見に有用な観察と推論、モデル、規則、実践という科学は正しい判断に必要。真理にもとづいて行動する人を育てるには道徳教育、宗教教育が必要。

J.S.ミル(山岡洋一)(2011)『自由論 (日経BPクラシックス)』日経BP社 人が誰かの行動の自由に干渉できるのが正当だといえるのは、自衛を目的とする場合だけである。思想の自由、嗜好と目的追求の自由、個人間の団結の自由が尊重されていない限りその社会は自由ではない。

関嘉彦責任編集(1967)『世界の名著38 ベンサム J.S.ミル』中央公論社 ベンサムは、道徳で重要なのは苦痛より快楽を重視する功利の原理を主張。立法の目的は道徳と同じく最大多数の最大幸福を増進することと考えた。ミルはこれを引き継ぐ。ベンサム、ミルの主著を含む。

児玉聡(2012)『功利主義入門 : はじめての倫理学 (ちくま新書)』ちくま新書 社会全体の幸福を増やす行為が人のなすべきことという功利性の原理、最大多数の最大幸福を指針とする功利主義。功利主義を基本としながらも規則と義務も大事であり、分配的正義や個人の自由にも配慮しなければならない。

西尾幹二(2007)『個人主義とは何か』PHP研究所 ヨーロッパと日本とを進歩の尺度で述べることは無意味になった。日本は仲間社会の調和を大事にし、西洋は個人の価値を大事にするとされるが、個人、自由、民主主義は社会の文脈で成立する。

長山靖生(2013)『バカに民主主義は無理なのか? (光文社新書)』光文社新書 政治不信は民主主義の未成熟から説明されてきたが近年は改革のためには改憲が必要という議論に。民主主義は国民のオレの話を聴け!状態。古代ギリシャでは民衆はバカだと思われており、そのバカが口を出す政治のため悪政扱い。

森村進(2001)『自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書)』講談社現代新書 リバタリアニズムとは経済的自由と財産権、精神的・政治的自由も共に最大限尊重するもの。背景には、自分の人身への所有権、労働あるいはその代価としての財産の権利を含む自己所有権テーゼがある。

蔵研也(2007)『リバタリアン宣言』朝日新書 国民生活の向上のためにすべての制度を「国がキチンと」整えるという考えは、経済的自由を束縛するだけでなく、社会の集権的資源配分を肯定することになり結果的に精神の自由を束縛する。

ロバート・ノージック(嶋津格)(1992)『アナーキー・国家・ユートピア-国家の正当性とその限界』木鐸社 無政府状態から誰の権利も犯す必要のない過程で最小国家ができあがる。最小国家こそが正当であり,分配的正義を批判。


<その他>

真山仁(2005)『虚像(メディア)の砦』角川書店 民放放送局PTBのビデオにより1人の優秀な弁護士が殺されたという。イスラムで日本人が人質になり政府や世間は自己責任として突き放す。ニュース番組Pの風見が政府与党の権力、放送局内部の権力闘争にせまる。

碧野圭(2012)『書店ガール』PHP文芸文庫 書店大手ペガサス書房吉祥寺店の副店長理子とその社員亜紀は、業界の中でも恋愛も対照的、全く合わない天敵だった。吉祥寺店の店長に昇格した理子は店舗閉鎖を聞かされ、亜紀と共に書店の売り上げ増に邁進する。半年後の結果は…

江上剛(2013)『起死回生』講談社文庫 社長の座を狙う東亜銀行頭取の北川が女でつまづく。その尻拭いとして政治家秘書、怪しいゴロツキへ京都支店長の臼井が融資へ。焦げ付いた債権は住専や黒川建設に移動させられる。銀行マンとしてのモラルを問う臼井が最後にとった行動は。。。

津村俊充(2012)『プロセス・エデュケーション: 学びを支援するファシリテーションの理論と実際』金子書房 設計されたグループ体験、コミュニケーション体験を通して学習者がプロセスに気づく。そのプロセスを素材にして自分と他者の成長を探求するラボラトリー式体験学習。

小野田博一(2010)『13歳からの作文・小論文ノート』PHP研究所 「要するに何」の部分を決めて、事実と理由でそれを支えるのが基本。小論文の形式はintroduction概要紹介、development詳しい説明、conclusion結論になる。

坂口恭平(2012)『独立国家のつくりかた』講談社現代新書 路上生活者のブルーシートハウスから家、土地、パブリックとプライベートの境界などの捉え方で新たなレイヤーがある事に気づき、1人で新政府を立ち上げる。福島の子どもを熊本に三週間招待するなどの活動を展開。
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2013年07月09日

2013年6月読書ノート

2013年6月読書ノート

今月の一冊はこれ。



私たちの人間関係は,親子関係を引きずっています。それは親から子へ,「心理的な脅迫」(ブラックメール)が発信されているからです。

心理的脅迫をする人は無意識に恐怖心、義務感、罪悪感という武器を組み合わせて人を屈伏させています。このような人と接していると,脅迫を受ける側は,失う恐れ、やらなければならない、私が悪い、という感情が先に立ち、自分の健全な自我、統合性を失ってしまうそうです。

本書はそのためにどうしたらいいのか,一歩下がって冷静に相手のメッセージを解析することを勧めています。そうすることによって自我を守ることができます。

筆者のスーザン・フォーワードの書籍では下記もオススメです。




<経済>

マイケル・テーラー(松原望)(1995)『協力の可能性―協力,国家,アナーキー』木鐸社 国家が存在するのは国内の治安を守り外敵から国民を守ること。これは一種の公共財供給問題であり、集合行為問題である。囚人のジレンマから人々の協力可能性を探る。これはホッブズ、ヒュームの政治理論にも通じる。

飯田泰之(2012)『飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)』光文社新書 価値判断から一歩身を引いて個人の選択が積み重なって社会ができると考える(方法論的個人主義)。社会的に望ましいことはより多くの個人がより満足な状態にあること。これが経済学の思考の基礎。

西内啓(2013)『統計学が最強の学問である』ダイヤモンド社 統計学はデータを集めて分析することによって最速最善の答えを出すことが可能。教育、医療、心理、経済など多くの学問がエビデンスを求めて統計学を使わざるを得ない。

本川裕(2012)『統計データはためになる!』技術評論社 大きさなど数量を直感的に示す棒グラフ。時系列推移、ランキングなど数字を「実感」するのに力を発揮。日本の公務員数、犯罪などの世界比較、都道府県別の自給率、大企業への就職率、就職者数、人口ピラミッド、避妊などを棒グラフで実感。

J.M.ブキャナン、G.タロック、加藤寛(1998)『行きづまる民主主義 (公共選択の主張)』勁草書房 民主主義は再分配手段として利用される。全員一致よりも費用がかからない不安定な結論を導く多数決を採用するために利益誘導をもたらし、政府を肥大化させる。(中村まづる「解題:ブキャナン、タロック〜」)

マンサー・オルソン(加藤寛)(1991)『国家興亡論―「集合行為論」からみた盛衰の科学』PHP研究所 安定的な社会は集団行動の組織を増やしていく、特殊利益組織や共謀は社会的効率や総所得を減少。分配結託は意思決定に時間がかかり、排他的になる。分配結託が増えると社会発展の方向が変化。

岩田規久男(2012)『インフレとデフレ (講談社学術文庫)』講談社学術文庫 デフレ予想は貨幣の資産需要を増加させ、貨幣が取引に使われないが、インフレ予想は株式購入や外貨預金の購入など貨幣が取引に向かい総需要の増加をもたらす。日銀による政策レジームの転換が人々の期待を変化させる。

岩田規久男(2012)『日本銀行 デフレの番人』日経プレミアシリーズ 日銀がインフレ目標にコミットし、マネタリー・ベースを増やすと予想インフレ率を上昇させ、円安、株高、予想実質金利の低下をもたらし、総需要を拡大させ、デフレに終止符が打たれる。

片岡剛士(2013)『アベノミクスのゆくえ-過去・現在・未来の視点から考える』光文社新書 長期停滞の主因はデフレと円高という貨幣的現象。アベノミクスは実は一本の矢であり、それは大胆な金融政策。これにより機動的な財政政策や民間投資を喚起する成長戦略につながる。所得再分配視点はない。

<中国>

津上俊哉(2013)『中国台頭の終焉 (日経プレミアシリーズ)』日経プレミアシリーズ 成長の富は様々な形で官に留保されてきた。国家資本主義を打破し、成長の富を民間へ還元し、都市農村の二元化を解決していくのが新政権の課題。長期的には生産年齢人口が減少していく中、中国がGDPで米国を抜くことはない。

興梠一郎(2013)『中国 目覚めた民衆 習近平体制と日中関係のゆくえ』NHK出版新書 無数の社会問題は党・政府を悩ましている。出稼ぎ農民による反日デモ、城管への反感、土地収用、環境破壊への集団抗議などが新政権の課題。尖閣問題への意識の違い、政治体制への不信などが日中対立へ。

<自己啓発>

南壮一郎(2010)『絶対ブレない「軸」のつくり方』ダイヤモンド社 金融機関をやめてスポーツビジネスへ。アメリカのスポーツエージェント事務所に飛び込み、楽天イーグルスの立ち上げに関わる。やりたいことを書き出しそれを軸にする。本当にできないのかを検証し、小さな一歩を踏み出す。

柴田昌治(2010)『なぜ社員はやる気をなくしているのか(日経ビジネス人文庫)』日経ビジネス人文庫 対話を繰り返しながら知恵を生み出していく創造的な時間が働く喜びを取り戻し組織に活力をもたらしていく。黒子的な役割をするスポンサーシップで問題意識を持つ社員の孤立を防ぐ。

<社会問題>

橘玲(2012)『不愉快なことには理由がある』集英社 進化心理学は,幸福よりも不安や絶望をより多く感じるようになっている,という。貧困や失業などは人の不合理な行動や遺伝によって生み出されている。問題解決には市場、価値観の多様化、進化に則した制度設計が必要だ。

マネー・ヘッタ・チャン(2012)『ヘッテルとフエーテル-本当に残酷なマネー版グリム童話』幻冬舎文庫 自己啓発系はセミナーを続け、本を書き続けないと儲からない、人が逆らいにくい寄付援助のサギ、無料や偶然を装いカモにするビジネス、国家側にたてばインチキ情報で儲け放題。

デヴィッド・ハーヴェイ(森田大屋中村新井)(2013)『反乱する都市-資本のアーバナイゼーションと都市の再創造』作品社 資本主義は剰余生産物を吸収し続ける都市空間の形成を必要とする。労働者は略奪と搾取を受けている。都市コモンズを奪回し都市形成過程の集団的管理が課題となる。

引頭麻実(2013)『JAL再生』日経新聞社 衆目にさらされた再生への圧力、稲盛氏によるリーダーシップとリーダー教育、リーダーの価値観と考え方を変えるとともに、JAL企業理念、フィロソフィー共有の活動を行う。現場での採算制度を導入するとともに、社員一人一人が自ら考えて動く。

<その他>

坂口菊恵(2009)『ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略』東京書籍 ナンパによくあう女性は短期的配偶戦略への指向が高く、そのような人は周囲の期待に合わせて感情表出を調整するセルフモニタリングの傾向が強い。短期的配偶戦略は男性的であり、テストステロン濃度の高さとも比例する。

デヴィッド・M・バス(三浦彊子)(2001)『一度なら許してしまう女 一度でも許せない男 嫉妬と性行動の進化論』PHP研究所 嫉妬は配偶関係の脅威に対する適応的シグナル。嫉妬の感情を隠すのは配偶市場において相対的価値が低いことを悟られないようにするためである。

ヘレン・フィッシャー(大野晶子)(2005)『人はなぜ恋に落ちるのか?恋と愛情と性欲の脳科学』ソニー・マガジンズ 恋愛感情は脳内の動機システムであり、人間の根本的な交配衝動。恋愛は性的衝動を刺激。恋愛、性欲、愛着は男女の安定的関係維持と別の交配機会との間で進化。

ランディ・ソーンヒル、クレイグ・パーマー(望月弘子)(2006)『人はなぜレイプするのか―進化生物学が解き明かす』青灯社 雄雌の性淘汰の働き方は養育投資の違いによって決まる。男性は養育投資が小さいので性淘汰では多数にアプローチする。進化理論はレイプの至近要因を解明するのに有効。

鈴木鎮一(1966)『愛に生きる』講談社現代新書 すべての子どもはよく育つと信じ、「才能教育」という落伍者を出さない教育運動を展開。子どもは環境の中で言語を身につけるのと同じように、成長するもの。教えるのではなく育てる、育つ生命を基本に教える教育から育てる教育へ。

貫井徳郎(2010)『灰色の虹』新潮社 あいまいな目撃証言のみで殺人犯にしたてあげられた江上雅史。証言を強要する刑事、適当な目撃者、曖昧な弁護士、警察の事件をそのまま処理する検察、様々な要因が重なり最高裁でも冤罪は晴れなかった。家族と婚約者を失った江上が出所後とった行動は…

伊賀泰代(2012)『採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの』ダイヤモンド社 リーダーシップとは、成果を求めるもの。リーダーシップはスキルであり、マッキンゼーでは、バリューを出す、ポジションをとる、自分の仕事のリーダーは自分、ホワイトボードの前に立つ、で学ぶ。

スーザン・フォワード(亀井よし子)(2012)『となりの脅迫者 (フェニックスシリーズ)』パンローリング 人に心理的恐喝を与える「ブラックメール」。発信者は恐怖心、義務感、罪悪感という武器を組み合わせて人を屈伏。受信者は自分の健全な自我、統合性を失ってしまう。

ジョー・ナヴァロ、マーヴィン・カーリンズ(西田美緒子)(2012)『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』河出文庫 大脳辺縁系が感じる快適、不快がノン・バーバル行動に現れる。いやなこと、驚異を感じたあとはなだめの行動,顔、首を触る,がでる。足は体の中で最も正直な部分。

A.R.ホックシールド(石川准室伏亜希)(2000)『管理される心―感情が商品になるとき』世界思想社 客室乗務員は自己の感情を管理し笑顔を売るという感情労働である。資本主義社会とサービス産業の発展により人々は感情から疎外される。感情管理が私的生活で自然な感情を失わせる可能性も。

池谷裕二(2012)『脳には妙なクセがある』扶桑社 笑顔をつくるとドーパミン系の神経活動が活発化し楽しくなる。睡眠は記憶力を改善。瞑想は脳を効率化する。私たちは自分の意志で決めていると思っても環境による反射にすぎない、だからよい経験がよい反射を生む。

中村うさぎ(2008)『私という病』新潮社文庫 目の前の女が自分の欲望を刺激する存在であろうとなかろうと、その女を断罪したり罰したりする権利は男にはない。女の存在や肉体はその女自身のものである。女は性的客体ではなく売春という行為で性的主体性をもつことができるのではないか。

山崎朋子(2008)『サンダカン八番娼館』文春文庫 明治初期から始まった東南アジアの日本人娼館とからゆきさん。天草のおサキさんが高浜の女衒田中太郎造に売られたのは10歳の時だった。ボルネオ島サンダンカンで娼売させられる。借金返済と故郷への送金で身をすり減らす。
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2013年07月04日

エビデンスにもとづいた自己啓発本

自分を変えようとして失敗することはよくあります。語学の勉強を続けようとしても続かないとか,ダイエットを決意しても3日で終わるとか,部屋をキレイにすると決意しても3日も経てば汚くなっているとか,決意しても決意倒れすることはみなさん経験があると思います。

自分を変えるための本は,一般に自己啓発本と呼ばれます。自己啓発本は気合いを注入するもの,出来もしないけどなんかできるようになった気にならせるもの,さまざまです。

自己啓発も科学的なエビデンスにもとづいた時代になったな〜と思わせる本が

『スタンフォードの自分を変える教室』



です。この本は心理学や行動経済学などの実験結果にもとづいて,自分をどのようにコントロールするか,人間がもつ行動の癖を科学的に把握し,それを理解してコントロールしようとするものです。

人の意思決定は,本能で行うもの,意志力で行うものがあります。カーネマンの『ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?』でいうヒューマン(ファスト)とエコン(スロー)の二つです。

私たちは,何を決めて行動に移す時に,深く考えて判断する時と反射的に判断する時があります。一般に深く考えて行動する場合いい結果をもたらす(合理的な行動をもたらす)のですが,反射的に反応する場合は大体不合理な結果に陥ってしまいます。

しかし私たちはほとんどの行動を無意識で反射的に行なっているところがあります。

例えば,私たちは野菜を食べると体にいい感じがするので,その分肉を食べ過ぎてしまいます。ステーキ専門店でサラダが無料なのは,体にいいサラダを食べているのだから,今日は肉を一杯食べてもいいだろうと思わすためです。この判断は反射的・本能的に行なっているため,私たちは意識していません。

いいことをしたあと,多少悪いことしてもいいだろうと本能が考えることをモラル・ライセンシングといいます。このモラル・ライセンシングは私たちが何かを決めてやろうとした時に大きな障害になります。いいことを3日続けたらすぐにご褒美と称してダイエットを台無しにする行動(お菓子やケーキの食べ過ぎとか)をとるように仕向けられてしまうからです。

いいことをやっていなくても,想像するだけで人は次の悪いことを行う準備ができるようです。例えば,ボランティアをやっていないけど,参加する,と決めた時に人はすでに自分への褒美を考えてしまいます。つまり決意した瞬間からもうその決意を覆すための準備がされていることになります。

「偽りの希望シンドローム」というのがあるそうです。それは何かいいことをする,自分を変えるために何か新しい行動をとると決めると,それを想像して自分の気持ちが良くなります。でも実際に行動を始めるとつらくなってやめたくなります。先にいい気持ちになったために実際の行動の時にツライ気持ちが増幅されてしまい,続けることができないという結果に陥ります。

さて,ダイエットとか部屋掃除とか何かを決めてとりあえず続くようになったとしましょう。でもそれを妨げることが発生します。

それが「どうにでもなれ効果」というものです。一度ハメを外してしまうと,そのあと落ち込んでしまいます。でもその後まあいいかとなってしまいさらにハメを外してしまうということが人間にはあります。

この場合,自分を「許す」ということが重要だそうです。試験勉強をサボった学生への実験では,前回試験勉強にまじめに取り組まなかった学生の中で,そういう自分を受け入れた人とそうでない人では次の試験での取り組みが違うそうです。反省という自己嫌悪感に浸るのではなく,自分はさぼるときもあるんだなと受け入れることによって,次の試験は頑張れるという効果があるようです。

私たちの脳や心理は,決意が続かない,ように仕組まれているようです。ですので,反射的に行動するのではなく一呼吸おいてから行動することが重要なようです。

 
『やる気の科学』は,人の行動の問題を把握した上で,続ける工夫を紹介しています。



私たちはそもそも将来のことよりも現在の問題が大きく感じてしまいます。将来的な体重50kgよりも現在のケーキの方が重要に思えます。このように現在のことを将来のことよりも大事に思う心理を行動経済学では双極割引としてとらえます。現在の方が価値があるように感じ時間が未来になるにつれて価値を感じなくなってくる現象です。

将来の目標達成のために現在の行動をどのように管理するか,それを経済学用語ではコミットメントといいます。簡単に言うと,自分の現在の選択に制限をかけてしまうということです。インターネットを立ち上げるとすぐにネットサーフィンををはじめて時間を無駄にしてしまう場合,パソコンの立ち上げと同時に一定の時間インターネットに接続できないソフトを活用する方法があります。このように自分の選択を狭める工夫がコミットメントです。

(ちなみにインセンティブは値付けによって行動を誘導することです。インセンティブがアメだとするとコミットメントはムチの側面を持ちます。)

ダイエットしているというのを公言するのも,後に引けなくとなる(周囲から監視を受ける)という意味でコミットメントですし,毎週決まった時間に体重計に乗る(定期的にモニタリングする)というのもコミットメントです。このように自分の選択を縛ることで私たちは決めたことを続けることが可能になります。

でも,自分の選択を狭めて頑張っていると,先ほどみたように人は自分を甘やかそうとする誘惑が働きます。急に自制心を発揮しようとするとがんばっている自分に酔ってしまい,「どうにでもなれ」になりかねません。

エアーズは,自制心というリソース(資源)には制限があるといっています。私たちの自制心は制限された量しかないので,がんばって使いすぎると枯渇してしまい,自制心がなくなってしまいます。ですから頑張りすぎるのも考えものです。実験によると,好きなもの(クッキーや映画)を我慢した学生にある作業を行わせると効率は低下するようです。我慢したり自制心を発揮したりするのは必ずしもいい結果にはなりません。日本語的には「自我蕩尽(じがとうじん)」(自分を使い果たしてしまうこと)になってしまうのです。


以上の2冊もいい本でした。さらにその上を行くのが

『WILLPOWER 意志力の科学』です。



心理学で有名なマシュマロの実験で我慢ができた,できなかった5歳児を追跡調査した結果,我慢ができた自己コントロールの強い子供は大きくなっても成績がよかったり,高収入な職業についていることが判明したそうです。つまり成功の鍵は自分をコントロールする自己抑制力であり,意志力です。

実際に意志力は時間の関数的なところがあります。先にもみたように,現在をがまんして将来的に得する行動を今行うという性質があります。あるいは時間をかけて行動を完成させていく気持ちが意志力です。

この本でも意志力は消耗することが示されています。保釈申請をした囚人の保釈を認めるかどうかという判事の実験では,意志力が消耗している時(仕事で難しい判断をたくさんしたあと)は安易に保釈を認めない方向に判断しがちだそうです。

意志力を取り戻すにはグルコース(糖分)を補給する方がいいです。判事の実験でも昼食やおやつのあとは保釈の確率があがるそうです。だからといって糖分のとりすぎはダイエットにはよくないので,果物や野菜,GI値を急激にあげないものを口にするのがいいでしょう。

さて,意志力は将来的な目標を成し遂げる力です。そのためには現在やりたいことを我慢してやるべきことをやらないといけません。その時に効果があるのが「計画」です。児童や生徒を対象にした実験では,長期であっても短期であっても「計画」をたてると成績がよくなる結果があります。

計画のメリットは,頭の中に引っかかっていることを追い出すことです。ザイルガルニック効果というものがあります。やらなければならないことを漫然と頭に抱えていると,脳みそがそれを考えることに使われてしまいます。つまり何もやっていないのに意志力が消耗するわけです。それなら,計画にしてしまって紙に書いてしまえばそれが消えてしまうので,逆に効果があるようです。

また「書く」という点では,記録を残すのはいいようです。書くと自分を客観的に認識できるとともに,やったことを書くことによって自尊心が高まります。自己認識の重要性は,鏡で自分が写っている人と,写っていない人では,鏡に写っている人の方が誘惑に勝つ傾向があるという実験もあります。

とはいえ,私たちは今やらなければならないことを先延ばしにする傾向があります。ダイエットの時には,食べることを先延ばしにするのは効果があるのですが,勉強やトレーニングでは先延ばしはあまり良くありません。実際に,大学での実験では「先送り」する傾向のある学生は論文や試験の評価が低いそうです。(ただし先送りする学生は健康であるという結果も。)

対処方法は二つあります。一つは書き出した目標が対立しないように優先順位をつけてしまうこと,二つ目はやらなければならないことの代わりをしない,ということです。一つ目は今日やろうとしたTO DOリストの中で心が葛藤するリストがあったりすると,意志力は消耗してしまいます。この場合,今日やることを決めれば,その葛藤から逃れることができ,意志力も消耗しません。もう一つは,パソコンで原稿を書かないといけないのに,メールを返信してしまうという場合,原稿以外は書かないと決めることです。つまり代替行動を断ち切ります。人はやることがなくなると何かをやろうとするので,他の行動をシャットダウンすることにより目的の行動に向かわせることができます。

もっといろいろあるのですが,ぜひ手にとって見て下さい。この3冊はオススメです。
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2013年06月04日

2013年5月読書ノート

2013年5月読書ノートです。

今日の紹介は奥田先生の本。



奥田先生はABA(応用行動分析)の専門家です。ABAは一般的に自閉症児などの障害児教育に使われる手法ですが,本書ではABAにもとづきながらも,ABAを一切表に出さず,科学的な根拠に基づく子育て論を展開しています。

例えば子どもが片付けしない場合は,まず1個から片付けたら褒めるということを推奨します。できればすぐに褒めるが基本です。

子どもが友だちを叩くなどの行為をする場合は,その場所からすぐに離し,楽しいことから遠ざかるという経験をさせます。鼻くそをほじる癖をやめさせる場合はすぐに手を洗わさせるなど面倒な手間をやめさせたい行為にプラスすることを薦めています。

電車で飛び跳ねたりするなどルールを守らない場合は,電車を降りて家に帰るということします。親もつらいですが,ルールを守れなかった場合は,楽しい経験ができないことを体にしみ込ませるわけです。

不登校においても,嫌なものから逃げているか,不登校によって何かを得ている可能性があります。この場合は,嫌なものを除去するようにする,家にいて得るものをなくす工夫が必要になります。

また最後には親の子育てビジョンにも触れます。将来的に子どもがどのような行動をとるのがいいのか具体的にすると親の行動にも変化が現れるといいます。中学校になったら自分の部屋の片付けができているといった具体的な行動のビジョンをもちその行動がとれるように取り組むというようにします。ビジョンを持つと子育てに迷った時に,その原点に戻ることが可能です。



<経済>

ダニエル・カーネマン(村井章子)(2012)『ファスト&スロー (上)』早川書房 繰り返された経験、見やすい表示、プライムのあったアイデア、機嫌などが認知容易性を生み、親しみ、信頼、快楽の判断をする。少数のものや利用可能な代表的なものから判断。

ダニエル・カーネマン(村井章子)(2012)『ファスト&スロー (下)』早川書房 効用は参照点に依存し、損失は回避しようとする(プロスペクト理論)。保有効果で高く評価し、死亡率生存率など提示の仕方(フレーミング)で判断は変わる。

池田新介(2012)『自滅する選択』東洋経済新報社 目先の利益が遠い先の利益よりも大きく見えてしまう双曲割引。肥満の人は負債が多く自滅的な選択の傾向が強い。目先の誘惑に負けないために断食道場に参加するなどコミットメントを。人の意思決定に影響を与えるリバタリアン・パターナリズム。

イアン・エアーズ(山形浩生)(2012)『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』文藝春秋 人は先のことよりも今を重視。待てば得するように選択制約をかけるコミットメント。インセンティブは行動に値付けし選択肢に誘導する。極端なムチ、人からの評価、定期的な意識化が続けるのに有効。

野口悠紀雄(2013)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社 今までの金融緩和が効果なかったのは投資需要がないから。日銀による国債購入は国債の貨幣化をもたらしインフレになり、財政規律は弛緩する。インフレは財政赤字を実質減少させるが資本流出、円安をもたらし日本経済の体力を奪う。

浜田宏一(2013)『アメリカは日本経済の復活を知っている』講談社 金融緩和はデフレ解消にはつながらないとする教え子白川・日銀を批判。金融緩和を実施し、名目所得を高めて税収の自然増に期待し、その後消費税率のアップが可能に。金融緩和によって円安、輸出の回復、景気の回復につながる。

吉川洋(2013)『デフレーション』日経新聞社 議論は不景気や人口がデフレを引き起こすのか、デフレが不景気をもたらしているのかである。ゼロ金利では貨幣数量説は成り立たない。設備投資の循環、貸し剥がし、イノベーションの欠乏がデフレをもたらした。古いマクロ経済学がデフレを救う。

小幡績(2013)『リフレはヤバい』ディスカヴァー携書 リフレ政策でインフレは起こらない。需要がない中のマネー供給は資産バブルはありうるが、インフレは起きない。合理的期待は仮説。円安をもたらし国債が下落し、日本経済を危機に落とし入れる。

<中国>

莫邦富(2010)『莫邦富が案内する中国最新市場 22の地方都市』海竜社 直轄市、副省級市、省会市、地級市、県級市にランク付けされる700近い都市から新区に沸く天津、重慶、華僑の里厦門、油田のある東営を。中部から奇瑞のある蕪湖、平和堂のある長沙、デパート戦争発祥の土地鄭州を。

何清漣(坂井臣之助中川友)(2002)『中国現代化の落とし穴―噴火口上の中国』草思社 改革の本質は権力の市場化であり富の分配方式を変えたこと。国有企業の民営化、開発区の囲い込み運動が官僚のレントシーキングを生んだ。契約の不履行、偽物の氾濫とモラルが崩壊し、貧富の格差が拡がる。

遠藤誉(2012)『チャイナ・ジャッジ-毛沢東になれなかった男』朝日新聞出版 文革時代に父・薄一波の肋骨を折り革命分子として振舞った薄煕来。権力乱用と残虐行為はその時養われ遼寧、商務部、重慶でも発揮。最後の打黒唱紅運動は共産党体制の危機となった。

ロナルド・コース、王寧(栗原百代)(2013)『中国共産党と資本主義』日経BP社 中国の市場改革は国有企業という特権を付与された経済主体ではなく、国家計画から締め出され、社会の辺境に追いやられた人たちであった。経済に民間の行為者が復活し辺境革命によって資本主義となった。

朝日新聞中国総局(2012)『紅の党 習近平体制誕生の内幕』朝日新聞出版 薄煕来の「打黒」で重慶第二位の富豪は極悪マフィアに、5万人を拘束、中央との路線対立に。ハーバード大ケネディスクールは党高官子弟か多い。習近平の地方からの叩き上げ、李克強の背景,など。

<自己啓発>

樋口健夫(2004)『企画がスラスラ湧いてくるアイデアマラソン発想法』日経ビジネス人文庫 自分の頭に浮かんだ発想をアイデアとしてノートに記録する。毎日の習慣としてアイデアを出し続けると創造能力を拡大し、人生が豊かに。

樋口健夫(2011)『図解仕事ができる人のノート術 新版―アイデアマラソンが仕事も人生も豊かにする』東洋経済新報社 議事録、打合せ、計画、日記、感想、エッセイ、発想を毎日ノートに書くことで人生の芯が出来てくる。毎日の発想をノートに書きとめるのがアイデアマラソン。

美崎栄一郎(2009)『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』Nanaブックス 社会人のノートは学生のノートと違い、忘れるために書く。記録しノートに預け目の前の仕事に集中。自分固有の経験知を積み上げる。メモ、スケジュール、母艦ノートの三冊を使う。

奥野宣之(2008)『情報は一冊のノートにまとめなさい』Nanaブックス 100円のA6ノートを使う。時系列で何でも書く。一元化することで必ずあることになる。テキストエディタで日付とタグ、概要を残すことで索引として検索可能。

矢嶋美由希(2012)『ふだん使いのマインドマップ 描くだけで毎日がハッピーになる』阪急コミュニケーション 思考そのままを視覚化するマインドマップは記録、伝える、共有の最適ツール。買い物、スピーチ、計画、作文、受験、講義、手帳、トラブル対応、講義メモ、自己分析に活用できる。

佐々木正悟(2011)『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』中経の文庫 脳は作業をパッキングするのでやる時は分解する。目的意識ばかり高いと目の前の作業が手につかない(夢想的グズ)。結果を気にせず数や回数に注目する。フォルダを開かずにブラウザを立ち上げるという選好逆転に注意。

ケリー・マクゴニカル(神崎明子)(2012)『スタンフォードの自分を変える教室』大和書房 衝動と意志力。どちらも脳の発達過程でできたもの。意志力を強くするために,瞑想や運動を。良い行いのあとは悪いことをしたくなる,一度やけになるとさらにやけになる傾向が。行動の癖を科学的に観察を。

雲黒斎(2013)『極楽飯店』小学館 ヤクザの峰岸は子飼いの池上から殺され、あの世へ行く。あの世の閻魔から手ほどきを受けて、人はソースという源とつながっていること、個人の思考や恐れを手放せばソースにつながり願いが具現化することを知る。人間界に戻り池上の守護霊となる。

<社会問題>

塩沢由典(2010)『関西経済論-原理と議題-』晃洋書房 現状の経済学に批判的な著者がジェイコブズの著書との出会いによって都市主体で経済を考えるようになった。関西経済を一日交流圏として、情報の創造、発信、道州制を提案。

メラニー・ミッチェル(高橋洋)(2011)『ガイドツアー 複雑系の世界-サンタフェ研究所講義ノートから』紀伊國屋書店 数多くのコンポーネントで構成されながらも、単純な運用規則を持つのみで中央制御機構を持たない大規模なネットワーク。学習、進化による適応が生じるシステムが複雑系。

ニール・ジョンソン(阪本芳久)(2011)『複雑で単純な世界: 不確実なできごとを複雑系で予測する』インターシフト 道路渋滞や金融市場などの特定の系には予想もしなかった創発現象が起きる。系は規則と不規則の中間領域に存在する。ふるまいを決めるのは個の間にあるフィードバックである。

デイヴィッド・オレル(2010)『明日をどこまで計算できるか?-「予測する科学」の歴史と可能性』早川書房 天気、病気、景気の予測への科学的アプローチは19世紀の天文学と同じ。三分野の系は計算不可能でモデル誤差を招くパラメーターに依存。予測不可能だからこそ生命は進化してきた。

橘玲(2010)『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』幻冬舎 私たちの生活は愛情・友情空間から貨幣空間に変わった。新しくできたフリーの情報空間では評判が貨幣化してきている。情報空間では報酬の多寡ではなく好きなこと得意なことで評判を獲得する方が良い。

<その他>

横山秀夫(2012)『64(ロクヨン)』文藝春秋 県警の広報官三上。警察庁長官が14年前の未解決誘拐事件の被害者を見舞うとという。長官のぶら下がり取材を望むキャリア官僚赤間の意図とは別に、県警内部の利害が衝突、マスコミとの調整に奔走する三上がみた誘拐事件と本庁の意図とは。

東条健一(2013)『リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで』新潮社 3歳で自閉症と診断された娘は言葉を理解せず暴れるばかりだった。全財産をかけて取り組んだ上智大学中野研究室でのロヴァース式応用行動分析。静かに手をつないで散歩すること、娘の言葉を聞くこと、ができた。

奥田健次(2011)『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』大和書房 よい習慣をつけるにはすれば褒める、小さいことで褒める。気になるクセには、面倒なことを付け加える、機会を喪失させる。選択出来ない、禁止のルールを徹底する。子供の将来的なビジョンを持つ、など。ABAの子育て版。

下野新聞編集局取材班(2012)『ルポ・発達障害: あなたの隣に (下野新聞新書)』下野新聞新書 教えたいという教師と集中が続かないADHDの男の子、学校全体で共通の支援を考える、職場実習に参加するアスペルガー の子などのルポと医学的解説、学校現場の試行錯誤、告知の仕方など。
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2013年05月09日

『不平等について』

発展が不平等であることを正面から論じているものは少ないことに気がつきました。今日紹介したいのは以下の本です。



本書は、格差から正面向かって取組みます。

格差は効率と正義の観点から注目されることが多いです。格差が正当化されるのは効率という点でしょう。経済発展から考えると、富裕層の貯蓄が投資に向かうことはいいことですし、あの人のように豊かになりたいというのは発展のインセンティブにもなります。

しかし、格差は正義に反することにもなります。富裕層の地位が維持されること、不平等が再生産されることは正義という観点からも問題ですし、効率からも貧困層にいる潜在的人的資本が活用できないという点で看過することはできません。

本書によれば、格差について理論化に取り組んだのは二人しかいないとします。一人はパレート、もう一人はクズネッツです。

クズネッツは経済発展とともに格差は拡大し、その後縮小すると主張します。

一方でパレートは格差は存在し固定化しているものとみます。2:8の法則で有名なように2割の富裕層が8割の所得を持っていることに着目しています。そしてその富裕層に着目してもその中で2割が本当の富裕層です。そしてその本当の富裕層の2割が本当で本当の富裕層になります(本文ではこの言い方はしていませんが)。顕微鏡で拡大するように格差をみていくとやはり格差が存在するということになります(複雑系でいうフラクタル性)。

グローバル化も格差に影響を与えました。グローバル化では、投資が先進国から後進国へ流れ、成熟技術は後進国に移転し、進んだ制度は模倣されることが期待されました。現実には、資本は先進国に集まり(ルーカス・パラドックス)、技術はライセンスで保護され、資本と労働は先進国に集積する結果になっています。

ちなみに共産主義化は格差を縮小させるそうです。一般に共産主義はジニ係数を6-7ポイント引き下げます。しかし共産主義化の教訓は、経済が均一化し衰退するということです。

格差の問題に取り組もうとする人には最初の1冊としてオススメです。
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2013年05月07日

2013年4月読書ノート

2013年4月読書ノート

今月の1冊は以下の本です。



行動経済学及び実験経済学で行動を明らかにしようとしています。

例えば、マイクロクレジットは女性のエンパワーメントを引き上げているという言説については証拠がないとします。むしろ貯蓄に関しては、女性へお知らせメールを入れるだけで貯蓄率が上がること、貯蓄額の目標を設定しそれまで引き出すことができない誓約書を書く(コミットメントを示す)と貯蓄率が上昇するということが明らかになったそうです。

最近の行動経済学や実験経済学による貧困原因の解明は新しい分野であり、おもしろいです。

追加で紹介すると、バナジー&デュフロの本と一緒に読むことをオススメします。



余談ですが、みすず書房さんはいつもいい翻訳本を出しています。

<経済学>

竹中平蔵(2010)『経済古典は役に立つ』光文社新書 スミスは資本主義の持続的拡張は可能と考えたが、マルサス、マルクスは悲観的であった。ケインズは有効需要の管理で資本主義を擁護したが、ハイエクは政府の拡大を嫌い、フリードマンは自由を主張した。

日本経済新聞社(2012)『経済学の巨人 危機と闘う 達人が読み解く先人の知恵』日経ビジネス人文庫 日経連載の再構成。マーシャルは良い市場は利他的であることを示した(矢野)、リカードとマルサスの物々交換と貨幣経済論争をミルが整理、デフレ下では貨幣供給を増やす(若田部)など。

ケント・グリーンフィールド(高橋洋)(2012)『〈選択〉の神話――自由の国アメリカの不自由』紀伊國屋書店 ジャンクフードの購入、性取引は選択の結果か強制の結果か線引は難しい。ビキニ効果などの行動要因、文化要因、服従の心理が働く。公共政策として選択の余地を制限することも必要。

J・モーダック、S・ラザフォード、D・コリンズ、O・ラトフェン(大川修二訳)(2011)『最底辺のポートフォリオ-1日2ドルで暮らすということ』みすず書房 貧困とは収入が少なく、不定期で金融ツールが不足していること。家計やリスクに対処するために、貧困層に合う金融サービスを主張。

D・カーラン、J・アペル(清川幸美訳)(2013)『善意で貧困はなくせるのか?―― 貧乏人の行動経済学』みすず書房 ランダム化比較試験(RCT)によりわかったこと。貯蓄が女性の地位を上昇させ、お知らせメールと目標まで引き出せない貯蓄が有効。肥料の支払いは収穫時期のお金があるときが有効。

ブランコ・ミラノヴィッチ(村上彩)(2012)『不平等について―― 経済学と統計が語る26の話』みすず書房 階級間での分配から個人間の分配がテーマになってきた。不平等は逆U字(クズネッツ)で変化するのか,社会が変われどエリートは循環するだけなのか(パレート)。不平等を徹底的に論じる。

ロバート・C・アレン(グローバル経済史研究会)(2012)『なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか』NTT出版 所得格差の要因は工業化の差。差を説明する背景は制度、文化、地理。直接的原因は技術変化、グローバル化と経済政策。西洋と埋めるべき格差は教育、資本、生産性である。

ブルーノ・S・フライ(白石小百合)(2012)『幸福度をはかる経済学』NTT出版 個人の所得と幸福度には相関関係があるが、先進国は所得上昇に比べ幸福度は増していないか減少している(幸福のパラドックス)。民主主義制度が充実している国とその住民の幸福度は高い、など。

ゲルト・ギーゲレンツァー(吉田利子)(2010)『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで (ハヤカワ文庫 NF 363 〈数理を愉しむ〉シリーズ) (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)』ハヤカワ・ノンフィクション文庫 死と税金のほかには確実なものは何もないというフランクリンの法則(世の中は不確実)を理解し、母集団を明確にした頻度でリスクを説明する。

ジェフリー・S・ローゼンタール(2010)『運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))』ハヤカワ・ノンフィクション文庫 人生の出来事はランダム(無作為)だ。長期的にはランダム性は帳消しになる(大数の法則)。まぐれで起こる確率が20回に1回以下ならば「統計的に有意」だ。

栗原伸一(2011)『入門統計学-検定から多変量解析・実験計画方まで』オーム社 分散分析の欠点、どの群間と差があるのか、それをするのが多重比較法。分散分析の前に必要な実験計画法。ノンパラ手法をカテゴリデータ、順位データから。多変量解析を重回帰、主成分、因子、クラスターまで。

涌井 良幸, 涌井 貞美(2010)『史上最強 図解 これならわかる!統計学』ナツメ社 基本の度数分布から確率変数へ、サイコロの一様分布、二者択一のベルヌーイ分布、10回中何回かという二項分布、正規分布を説明。点推定と区間推定、分散分析、回帰分析や適合度を図、式、Excelから。

涌井良幸・涌井貞美(2003)『Excelで学ぶ統計解析―統計学理論をExcelでシミュレーションすれば、視覚的に理解できる』ナツメ社 正規分布を表すNORMDIST、NORMINV、t分布のTDIST、TINVなど(CHI、F)の関数を活用し、推定区間の計算、検定に応用。分析ツールを使って、回帰分析や分散分析を。


<中国>

茅原郁生・美根慶樹(2012)『21世紀の中国 軍事外交篇 軍事大国化する中国の現状と戦略』朝日新聞出版 自国の体制が対米、対台湾関係にも影響、海洋権益の主張、宇宙開発の実情。体制維持のための武装警察、人民解放軍の現状と問題。機械化か情報化迫られる国防。内政干渉とPKOの派遣。

毛里和子・加藤千洋・美根慶樹(2012)『21世紀の中国 政治・社会篇: 共産党独裁を揺るがす格差と矛盾の構造 (朝日選書)』朝日新聞出版 党国家軍の三位一体システムで統治は安定。チベットなどの少数民族問題、エリート化する党と格差が広がる庶民、世論誘導の限界、一党独裁の鬼子である腐敗について。

加藤弘之・渡邉真理子・大橋英夫(2013)『21世紀の中国 経済篇 国家資本主義の光と影 (朝日選書)』朝日新聞出版 「中国の経済システムに独自性があるとすれば、それは、時に矛盾するように見える個別の特徴を巧みに統合し、大きな矛盾なくそれを運営して高度成長を持続させている点にある。」p33

塩沢英一(2012)『中国人民解放軍の実力 (ちくま新書)』ちくま新書 ウクライナから購入された空母ワリャーグは改修されて「遼寧」として就役、広元のプルトニウム製造施設821工場、蘭州の濃縮ウラン工場などの核開発、宇宙支配権の制天権を目指す、実際の軍事予算は1.5倍、対米を意識した軍建設、など。

富坂聰(2012)『中国人民解放軍の内幕』文春新書 党軍事委員会が解放軍を指揮、それ以外の党中央は接触できないが、党中央弁公庁は機密にアクセス。米国を意識し、ミサイルと核兵器を扱う第二砲兵、 弱者が強者に優位に立てるのがサイバー武装(総参二部)と宇宙開発(二砲)。軍内腐敗も深刻。

安田峰俊(2012)『和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人 (角川書店単行本)』角川書店 金銭を求めて中国で風俗嬢になるヒカルさん、上海の日本人社会のもめ事を解決する義龍老人、雲南の農村に住むヒロアキさん、中国に渡る日本人たち。中国は日本人の自己認識を刺激し、より「日本人」となる。

福島香織(2011)『潜入ルポ 中国の女』文藝春秋 売血でエイズが蔓延した村、それでも子供をつくる。売春をしないと暮らして行けない貧困、経済活動、人権活動、民族活動に力をいれる強い女性。女性へのインタビューから中国に迫る。

福島香織(2012)『中国「反日デモ」の深層』扶桑社新書 江沢民、胡錦濤、薄熙来などによる政治暗闘や、温家宝、周永康などのスキャンダルが海外メディアにも漏れ伝わるようになっている。一つは中央が一枚岩ではなくなったこと、もう一つはそのために汚職や疑惑が表に出てくる。


<社会>

アレクシス・ド・トクヴィル(小山勉)(1998)『旧体制と改革』ちくま学芸文庫 貴族階級が特権化し、著述家の思想が民衆に影響を与え、民衆の平等と自由を求める強い感情がフランス革命を自発的に発生させた。民衆は労苦に順応し不幸を耐え忍ぶという質実剛健な性質が民衆を危険な支配者にした。

アーニー・ガンダーセン(岡崎玲子)(2012)『福島第一原発 ―真相と展望 (集英社新書)』集英社新書 健康被害リスクや長期の放射性廃棄物の管理というコストを考えると、原発は安価なエネルギーではない。四号機は今でもギリギリの状態。核燃料を取り出す技術がない以上廃炉に数十年はかかる。

石川幸一・馬田啓一・木村福成・渡邊頼純編(2013)『TPPと日本の決断-「決められない政治からの脱却』文眞堂 日本のFTA交渉目標は農産物を例外に(馬田)、TPPは成長をもたらす(戸堂)、自由貿易から排除される選択はない(山下)、TPPは日本農業の改革のきっかけ(本間)など。

リチャード・ブラント(井口耕二)(2012)『ワン・クリック』日経BP社 Amazon創業者ベゾスは、顧客が使いやすいウェブを作ることを心がけ、ワンクリックを開発。苦情対応はメールで。より良いサービスのために物流センターを作り、他の商品を扱い、電子書籍、Kindleを展開。

クリス・アンダーソン(関美和)(2012)『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』NHK出版 モノ作りがデジタルに移行。アイデアやデザインはデジタルのファイルにされ、製造サービスサイトで制作し、ウェブで世界に販売できる。製造業が個人に開放されつつある。

入山章栄(2012)『世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア』英治出版 世界の経営学者はドラッカーを読まない。科学的であろうとし、仮説を統計的に検証し経営理論を組み立てる。企業間競争の激化、組織の経験学習、イノベーションの中身など知見の蓄積が進む。ただし検証されていない理論も多い。


<その他>

百田直樹(2010)『輝く夜』講談社文庫 ガンでなくなるはずだった杉本真理子は好きになった担当医とは一緒になれなかったが幸せな人生を歩む、沖縄で出会った人にスチュワーデスと偽った和美、両親、恋人を亡くし恋人の子を身ごもった和子もクリスマスイブは…

岩田靖夫(2003)『ヨーロッパ思想入門』岩波ジュニア新書 ヨーロッパ哲学の源流はギリシア思想とヘブライ信仰。ギリシア思想の本質は、人間の自由と平等、物事の法則や秩序に迫る理性主義。ヘブライ信仰は神が天地万物の創造主、神は弱者の味方であり、他者を愛せ、である。
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2013年04月09日

2013年3月読書ノート

2013年3月の読書ノートです。




西原さんのお金の話、最高でした。

ポイントは、生きていくならお金を稼ぎましょう、ということです。これだけ取り上げると誤解を生みますが、以下の言葉が心に残ったので紹介。

「くる仕事は断らなかった。場数を踏んでいるうちに慣れてくるし、自分の得意不得意なものがわかってくる。」

「今がツライとサイアクと思うが、最初から嬉しいことばかりだってすぐに退屈になる。嬉しいことの中に不満ばかり探すようになる。どこに行き着くかというと、これじゃなきゃダメだ、っていう考え。」

「やりたいことがわからない、その問いに向き合うためにはカネという視点を持つのが、いちばん、シンプルに見えてくるものがあるんじゃないか。」

自分がこの世の中で何をするのか、わからない時はカネという観点を持ちましょう、やっていきながらもらえるお金と自分の我慢出来るものできないものとのバランスがわかり、やりたいことがわかってくるという話です。人は生きているとだんだん「これじゃなきゃダメ」と凝り固まった偏見になってきますが、オープンマインドで、いろんな仕事を受けながら自分のやりたいことを探していくだろうな、と考えさせられました。

薄い本ですし、読んで絶対損はしない本です。


<中国>

馬立誠(杉山祐之)(2011)『反日-中国は民族主義を越えられるか』中公文庫 中国は憲法で民族主義を否定的にとらえているにもかかわらず、民族主義が台頭している。民族主義は自大であり排外に繋がり、少数民族に影響を与える。中国は大国としての風格をもち、日本に対して寛容に。

金熙徳・林治(2003)『日中「新思考」とは何か』隣人新書日本僑報社 大国の品位を説く馬論文、中日接近を説く時論文。しかし中国の日本研究者は、中国側に問題があるという捉え方は事実に背く、政策提言は非現実的、である。「新思考」とは双方共通の前向き姿勢ではじめて意味を持つ。

上村幸治(1999)『中国路地裏物語』岩波新書 国有企業改革で仕事を失う人、居民委員会の様子、単位から離れることによってフリーになった作家、四合院の土地買い上げとマンションブーム、など急激に市場経済化が進んだ90年代の変化を普通の人々へのインタビューから。

柴田聡・長谷川貴弘(2012)『中国共産党の経済政策 (講談社現代新書)』講談社現代新書 国家が経済運営にコミットする中国独自の政経一体システム。共産党の人事と経済政策の明るさ、発展改革委の権限、4兆元の経済政策、日本と結んだ人民元の国際協力の中身など。日中関係は多方面で進む、と。

<自己啓発>

樋口健夫(2003)『図解 仕事ができる人のノート術 - ノートを使って深く考え、発想する122の方法!!』東洋経済新報社 日付をつけて時間順に発想、メモ、日記などの記録、家計簿、スケッチ、計画など、何でも記入する。空白があればあとで追記入する。発想を書き残し、仕事や生活の情報ノートになり、自分の人生が豊かになる。

西原理恵子(2008)『この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)』理論社 トップになることが目標じゃない、東京で絵を描いていくことが目標なんだ。ならば自分の得意なものと自分の限界点を知ること。やりたいこと、やれることの着地点を探すこと。貧困はループし暴力を生む。

トニー・ブザン、バリー・ブザン(近田美季子)(2013)『新版 ザ・マインドマップ(R)』ダイヤモンド社 脳と思考の仕組み、マインドマップの基本、使い方として創造的思考、意思決定、自己分析、スケジュール、学習とノートの取り方、会議、プレゼンなど応用編。iMindMapの使い方と将来性。

雲黒斎(2010)『あの世に聞いた、この世の仕組み』サンマーク出版 状況と幸せには関係がない。幸せは新たに手に入れるものではなく、すでに手にしているもの、自分自身である。幸せを認めようとすると、幸せではない理由を探し始め、不幸を継続させる。そして「思考が現実化」してしまう。

築山節(2006)『脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力を高める (生活人新書)』生活人新書 生活リズムを守り、朝の運動や声だしは脳の起動によい、時間の制約で作業を行うことで脳が活発化。睡眠は情報が整理される、雑用や一日の計画、机の整理は解決力、整理力がアップ。定期的な脳の検査も必要。

築山節(2008)『脳と気持ちの整理術』生活人新書 意欲を出すには、出来ると好きになる性質を利用し、五歩先に解決のある問題の1歩目を見つけ、短時間の集中×多数で脳に興奮を。前日に明日の予定を、何をするか脳に入れておく。気になることを書き出し、重要でないもの、人に任すものに分ける。

竹中平蔵(2011)『竹中式マトリクス勉強法』幻冬舎文庫 勉強には到達目標のある「天井のある」勉強とない勉強がある。また武器として身につけるものと人と人を結ぶ人間力をつける勉強がある。直前の目標と将来の夢を、逆算して計画を、基本を大切に、メモを常にとる、時間はつくる、など。

<社会>

伊藤亜紀(2010)『電子マネー革命-キャッシュレス社会の現実と希望』講談社現代新書 電子マネーとポイントは通貨との兌換可能性で保証された民間発行通貨。資金決済法により民間発行主体も供託金を国に出し、利用者を保護。送金コストが減少し、電子マネー口座や世界共通通貨の可能性も。

玉野和志(2008)『創価学会の研究 (講談社現代新書)』講談社現代新書 牧口の利を前面に押し出した価値観は現世利益を求める庶民の生活向上欲を刺激、貧困層から中流階級への階層上昇をもたらした。上昇した階層は自民党支持者層と重なり合い、自公連立を可能に。上昇した階層とそうでない階層との関係構築が課題。

工藤啓(2012)『大卒だって無職になる-"はたらく"につまづく若者たち』エンターブレイン 引きこもった有名国立大卒のH君、就活がうまくいかなかったRさん、働きたくても働けない若者に、まずやって見る、できたという体験を積み上げるプログラムを提供。NPO法人育て上げネットの事例。

苫野一徳(2011)『どのような教育が「よい」教育か (講談社選書メチエ)』講談社 「私は教育の本質を各人の自由および社会における自由の相互承認の教養=力能を通した実質化」と確信する。ヘーゲル社会原理論から教育原理論への援用を試みる。

宇沢弘文(1992)『「成田」とは何か-戦後日本の悲劇』岩波新書 成田闘争の問題点は、66年の閣議決定。国家権力は国民の本来の基本的権利を享受し、尊厳されるべきであるにも関わらず、新東京国際空港を三里塚に建設するという閣議決定がなされるに際してこのような配慮が少しもなかった。

山下祐介(2012)『限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書)』ちくま新書 高齢化が進む限界集落問題は現実に発生しているというよりも、昭和の変動期に家族の広域拡大化によって生じてきている問題。問題は戦前世代が退出していく2010年代にある。身近な市街地には帰還可能な集落出身者もいる。

砂原庸介(2012)『大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)』中公新書 橋下徹という政治的企業家の大阪都構想は、大阪が抱える中心部からの人口流出、権限と財源の分散という問題を解決する以前からのアイデアと同じ。大都市の領域を拡大し、権限と財源を集中し中心部に投資するというもの。

新雅史(2012)『商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)』光文社新書 戦後の貧困層の小売参入を支え、近い商圏で横の百貨店となった商店街。バブル崩壊により地方は郊外化し、ショッピングモールが増加。日本の商店街はコンビニに転換していった。商店街の復活には給付でない規制が必要。

大沼保昭(2007)『「慰安婦」問題とは何だったのか―メディア・NGO・政府の功罪 (中公新書)』中公新書 日本政府の法的責任が問えない中で道義的責任を果たそうとしたアジア女性基金。国家補償を求める左派、慰安婦強制はないとする右派のどちらからも失敗とみなされるが、それでも元慰安婦の方々の尊厳は守れたのではないか。

浅羽祐樹・木村幹・佐藤大介(2012)『徹底検証 韓国論の通説・俗説』中公新書ラクレ 法と倫理が不可分の韓国(佐藤)。日本が韓国にとって相対的に重要でなくなり領土・歴史問題が重要に(木村)。自由と民主主義を共有できるのは韓国だが、情緒への対応をどうする(浅羽)。

山田吉彦(2005)『日本の国境』新潮新書 国連海洋法条約により海上権益は重要に。サンフランシスコ条約に北方領土、尖閣諸島、竹島の放棄は書かれていない。日本の国境論争には江戸期の林子平の著書に影響されている。小笠原諸島は有利だが尖閣には不利な記述がある。

田久保忠衛(2007)『早わかり・日本の領土問題-諸外国と何をモメているのか?』PHP研究所 領土問題は戦後処理の不手際(北方領土、竹島)、先占の実効性に関わるもの(尖閣、竹島)かある。国境意識をもち国のかたちを普通の民主主義に是正していくことが領土問題を解決する。

山本皓一(2007)『日本人が行けない「日本領土」』小学館 日本人の墓が風化しつつある北方領土、アシカ、アワビ漁が行われていた竹島、中国人漂流者を保護した魚釣島民、島か岩か議論になる沖ノ鳥島。日本国民の訪問と情報公開が必要。

孫崎亨(2011)『日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)』ちくま新書 外交・国際関係からの領土問題。北方領土はサンフランシスコ条約の千島列島に含まれていた、竹島は棚上げしていた、尖閣は台湾と沖縄の帰属問題。現状米国はこの問題に安保を発動することはない=日本の領土として見ていない。

<その他>

ヤン・マーテル(唐沢則幸)(2004)『パイの物語』竹書房 小さい頃から神に興味をもったインド人パイ。イスラム、キリスト、ヒンディーと様々な宗教に。動物園経営をしている父親の決断で動物たちとカナダへ。途中貨物船が沈没し、パイはトラと220日漂流する。漂流中のパイの心理が見どころ。

高野和明(2011)『ジェノサイド』角川書店 難病の子を抱える傭兵イエーガーは特殊任務を背負ってコンゴに。人類学者と進化した人類の救出へ。進化した人類に怯えるアメリカ合衆国政府、新薬と新たな人類と関わりをもった研人の父。世界を舞台に人の残虐性をあぶり出す。

三浦しをん(2011)『舟を編む』光文社 新しい辞書を編纂することにした玄武書房、荒木。荒木のあとを引き継いだ真締(まじめ)は13年間辞書編纂に取組む。非常識な大学教授、真締の結婚、校正での間違い発見など、辞書編纂ドラマ。

大村大次郎(2011)『あらゆる領収書は経費で落とせる (中公新書ラクレ)』中公新書ラクレ 領収書が認められるルートは事業に関連すること、福利厚生費。会議費、接待交際費は事業に関連することであり1人あたり5千円まで、研修、研鑽は事業に、慰安旅行は福利厚生費。領収書を忘れた場合は記録を残す、など。

奥田健次(2012)『メリットの法則――行動分析学・実践編 (集英社新書)』集英社新書 奇声をあげるアキラくんへの行動の処方箋は奇声をあげると母親から離す、静かに遊ぶと母親から抱きしめられること。阻止の随伴性に注目し、強迫障害、不登校にも行動分析が有効。トークンエコノミー、FTスケジュールなど。

平岩幹男(2012)『自閉症スペクトラム障害――療育と対応を考える (岩波新書)』岩波新書 ASD(自閉症スペクトラム障害)は社会性、コミュニケーション、想像力の障害。学業、社会、身体的スキルを身につける。療育基本は、指示→実行→ほめる、こと。就園、就学、思春期、就業に関する一般的注意事項等。
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2013年04月04日

『21世紀の中国 経済篇』

著者のお一人である渡邉さんからご恵投いただきました。



本書は、

中国経済を、競争、混合経済、中央地方関係、官の利益集団化という特徴を持つ国家資本主義経済であると規定し、国進民退は進んでいるのか、それをどう評価するのか、対国際社会への影響、この発展モデルの普遍性に検討を加える

というものです。

その結果、

国進民退は数字的には出てこないが、財政、産業、地域の各政策によって国有企業の存在は強まっている

国有企業は公的権力や資本アクセスに有利で、私的利益を追求する存在であり

民間に対して不平等な競争環境であるとともに、ルールが恣意的に運用されている

ことが指摘されます。

また、

グローバル500企業の中に電力、石油、銀行、通信などの中央国有企業がランクインされているが、インフラ系であるため私たちには馴染みがありませんが

石油企業をみると、国家利益を追求しながらも商業利益を求める存在でもある

ことが言われます。

そしてこの中国の発展モデルは、

格差、環境破壊、腐敗というコストを生み出す、「開発独裁+漸進主義+大国」という本質をもつモデルであり,低賃金労働がなくなると成長が止まる「中所得国の罠」、権益が固定化する「体制移行の罠」に直面しているために,今後、経済重心が官から民へ移動する必要があろう

と結論づけています。

「国家資本主義」「国進民退」「国有企業の走出去(海外投資)」を考える上で非常に有益な本となっています。とくに渡邉さんが担当された国進民退については資料価値も高い情報が多く詰まっているので、非常に勉強になりました。

ありがとうございました。
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2013年03月28日

『都市の原理』

やっぱりジェイコブズです。都市を考える上で、彼女の本は欠かせません。

『都市の原理』が新装されて入手しやすくなりました。



以前紹介した『都市の経済学』(エントリはここ)と重なる部分がありますが、『都市の経済学』が発展している地域と発展していない地域との関係に重点が置かれていましたが,本書は都市の形成に焦点をあてているのが特徴です。

本書の主張は,

都市は新しい仕事が追加される場所である。分業が増加し仕事が多様化する。輸入していたものを都市内部で置換し輸出していくことで都市は成長する。

というものです。

ジェイコブズは,ニュー・オブシディアンという黒曜石(オブシディアン)がとれる場所を設定します。農耕が発達するまで,狩猟民たちが黒曜石を求め,また黒曜石が売れることを知った狩猟民は交易品としてニュー・オブシディアンに定着します。

定着した狩猟民はニュー・オブシディアンを集落として形成していきます。食糧を他地域から輸入するとともに食糧を管理する仕事が増えます。穀物や家畜を管理,屠殺する仕事が増えます。生活の間に偶然あるいは意図的に育てやすい穀物や植物の種や苗を発明し,あるいは新鮮な肉を供給するために集落内で家畜を飼うようになります。輸入食料から自給食料に変化していきます。

集落の人口が増加していくと,集落の周辺に放牧地や穀物や植物の栽培が行われるようになります。農耕文化の発達と定着です。

ニュー・オブシディアンは交易都市として発展していきます。黒曜石を運搬する入れ物や普段の食糧を管理する入れ物などを輸入していましたが,交易の増加とともに入れ物の管理をする人々が入れ物を自分たちで作るようになります。大量に作り始めると,質が向上し,これがまたニュー・オブシディアンの重要な輸出品に変わっていきます。

このように,都市の発展とは,輸入置換の過程です。輸入したものを都市で蓄積しておき,地元の産業がそれらを製造することが可能になり,そして輸出していく,この一連の過程が都市の発展となります。

ところで,ジェイコブズは,都市が農村をつくったのであり,農村から都市がつくられたのではないと主張します。例えばアダム・スミスもマルクスも農業がさきにあっってそれから工業や商業が起こったと考えているが,これは間違いだと強く批判します。工業や商業が栄えている地域は農業地域の農業よりも発展している,都市が農業を創造する,と。


都市・地域経済学をやる人の必読文献です。


ところで『都市の経済学』はタイトルを変え、出版社も移って新しく文庫になって提供されています。






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2013年03月05日

2013年2月読書ノート

2013年2月読書ノート

今月の紹介は『文明』です。



発売当初からあまり評判がよくなかったのですが、それでも面白い1冊でした。

似たような本で、バーンスタインの『豊かさの誕生』があります。



この2つの本から西洋が発展した原因を比べてみます。

ファーガソン    @競争 A科学革命 B私的所有を守る法の支配と代議制 C医学の発達 D消費社会 E労働倫理
バーンスタイン  @私有財産権 A科学的合理主義 B効果的な資本市場 C効率的な輸送・通信手段

ファーガソンのDとEは議論を呼ぶところでしょう。実際、キリスト教的労働倫理の良さを挙げるのは過去いろいろありましたが、それを証明するのは難しいように思います。

それでもファーガソンの面白かったところとして、中国が台頭するかどうか、を述べているところがあります。

彼は中国の台頭を否定的に見ます。彼によると、日本と同じように失速するであろうと。社会不安(所得格差と男性が多い)があり、発言を求める中産階級の動きがどうなるか、周辺諸国の間でかなり反中国の気運が高まること、があげられるとしています。


<経済学>

マリル・ハート・マッカーティ(田中浩子)(2002)『ノーベル賞経済学者に学ぶ現代経済思想』日経BP社 データによる科学的手法が発展し、帰納法を使うようになった。利己的な個人のインセンティブシステムと社会の中の取り決め、制度に注目されている。一番ホットな分野は情報の経済学。

ロバート・J・バロー(仁平和夫)(1997)『経済学の正しい使用法―政府は経済に手を出すな』日経新聞社 貧しい国には民主主義よりも、経済体制(財産の保護と自由市場の原理)を整備することが先。経済の自由を根付かせることができれば経済成長は加速し、民主化が進む。

ロバート・J・バロー(中村康治)(2003)『バロー教授の経済学でここまでできる!』東洋経済新報社 身体的魅力も知性と同じく賃金に影響を与える。中絶の合法化は犯罪を減少させる、薬の高価格は開発インセンティブを支えている、反トラスト法は弱い企業を守るだけ、など。

ゲーリー・S・ベッカー、ギディ・N・ベッカー(鞍谷雅敏岡田滋行)(1998)『ベッカー教授の経済学ではこう考える―教育・結婚から税金・通貨問題まで』東洋経済新報社 インセンティブに歪みをもたらす政府規制、移住資格の競売化、差別撤廃ブログラムは有効ではない、厳罰化が犯罪を減少、独占には参入の奨励を、など。

ディビッド・フリードマン(上原一男)(1999)『日常生活を経済学する』日経新聞社 人は各選択肢の中で最も得(費用よりも便益が大きい)なものを選択する合理性を仮定する。個人の行動が合理的であっても集団になった時に悪い結果になる。合理性に潜む陰鬱な世界である。

ディビッド・オレル(松浦俊輔)(2011)『なぜ経済予測は間違えるのか?-科学で問い直す経済学』河出書房新社 経済学は人間の行動についての数理モデル。しかし、経済は独立した個人が経済法則に従って動く、合理的で効率的、経済成長は永遠に続く、といった前提は誤解である。

ディヴィッド・R・ヘンダーソン、チャールズ・L・フーバー(高橋由紀子)(2006)『転ばぬ先の経済学』オープンナレッジ 経済学は人生の意思決定に役立つ。増加分を考えるとものを明確に考えられる、価値を判断するには機会コストを考える、誰でももの見方にはバイアスがある、など。

ディヴィッド・オレル(望月衛)(2012)『経済学とおともだちになろう』東洋経済新報社 ピタゴラス、アリストテレスの思想から、近年の金融工学、スウェーデン国立銀行賞まで。ケネーの重農主義、スミス国富論、マルクスへ。ワルラス、パレートなどが新古典派経済学を。ケインズ、フリードマンへ

ジョン・マクミラン(伊藤秀史林田修)(1995)『経営戦略のゲーム理論-交渉・契約・入札の戦略分析』有斐閣 ゲーム理論は、人の行うことが他人の行うことに依存し、誰も結果を1人でコントロールすることはできないような相互作用を考えるための道具。プレイヤーの選択の余地、利得を考える。

中村宗悦(2005)『経済失政はなぜ繰り返すのか―メディアが伝えた昭和恐慌』東洋経済新報社新書 昭和恐慌期の金解禁論争では新平価解禁論者の議論が結果として正しかった。しかし浜口・井上の主張する旧平価解禁こそが昭和恐慌を乗り切る政策と報道した大新聞の責任は大きい。

山崎昭(2010)『ケーススタディ ミクロ経済学入門』日本評論社 主婦の月給から消費者行動を、落語の千両みかんから企業行動を、牛丼の価格下げから企業間競争を、福袋から情報の経済学を、ゴルフのかけから不確実性の意思決定を考え、解答例から筆者が解説。

ジョン・クイギン(山形浩生)(2012)『ゾンビ経済学-死に損ないの5つの経済思想』筑摩書房 ビジネスサイクルは安定したという大中庸時代仮説、株価は全ての情報を含む効率的市場仮説、ミクロ的基礎をもつDSGE、恩恵は周辺に伝わるトリクルダウン仮説、民営化はいい、はすべて破綻。

太田聰一(2010)『若年者就業の経済学』日経新聞出版社 若年失業の特徴は他世代より高く、自発的離職が多くて、失業と就業の行き来が活発。自社内育成を重視する日本企業は企業業績とスキル継承のため若年採用に。中高年が過剰ぎみだと若年採用は抑制される。近年の若年雇用施策は豊富。

エドワード・グレイザー(山形浩生)(2012)『都市は人類最高の発明である』NTT出版 都市は人と企業の距離がない場所であり、人類が持っているお互いから学ぶという能力を活かす。アイデアの交換が都市を成長させ、一国の成長を支え、幸福感をもたらし、環境に優しくなる。

ジェイン・ジェイコブズ(中江利忠加賀谷洋一)(2011)『都市の原理 (SD選書)(新装版)』鹿島出版会 鹿島出版会 都市は新しい仕事が追加される場所。輸出という仕事に対して輸出を助ける仕事が追加される。輸出に必要な輸入財を自分の地域で置き換える輸入置換が都市の成長過程である。

ニコラス・ワプショット(久保恵美子)(2012)『ケインズかハイエクか: 資本主義を動かした世紀の対決』新潮社 ケインズの雇用には政府が介入すべきという主張に真っ向から反対したハイエク。ケインズ主義は私たちの生活に浸透したが1970年代半ばよりハイエクが再評価されるようになった。


<中国>

ニューズウィーク日本版編集部(2012)『中国超入門-これだけは知っておきたい中国社会の基礎知識』阪急コミュニケーション 地理・民族、経済、政治、社会・歴史を簡単に。10都市を紹介し、言論で注目を浴びる中国国内のキーパーソンを詳しく。

毛里和子・園田茂人編(2012)『中国問題: キ−ワードで読み解く』東大出版会 統治の安定を分析する共産党、社会安定、農民工、土地と戸籍、人民解放軍、日中関係、海洋権益、対外援助、経済全球化、中国モデル、歴史観から中国を読み解く。

真家陽一編(2012)『中国経済の実像とゆくえ』日本貿易振興機構 4兆元の負の遺産、内需への転換、人民元、エネルギー環境が中国経済展望の視点。自動車、流通、水、金型、産業ロボット、介護産業の動向。日系企業の課題とリスク。

波多野淳彦(2012)『中国経済の基礎知識(改訂新版)-世界第二位の経済大国を支える制度と政策』日本貿易振興機構 第11次五カ年計画は規劃になり、第12次五カ年規劃(ビジョン)は環境と公共サービスを拘束性の目標とし、他は予期性目標に。行政制度と企業管理の法律を解説。

久保亨編(2012)『中国経済史入門』東大出版会 近年の中国経急成長を可能にした歴史的背景、近現代の経済発展が立ち遅れた理由、中国経済の構造的特質に関する見方を検討すること、の3つが経済史を学ぶ課題。19世紀末から現在までのアウトラインと先行研究の案内。

柴田聡(2010)『チャイナ・インパクト』中央公論新社 2008年9月のリーマン・ショックにより中国は歴史的危機に。国務院主体で内需拡大、増値税の還付率引き上げ、利下げなど政策を総動員。09年後半にはV字回復。規模拡大路線の副作用として土地依存、農民工賃金の上昇、国進民退など。


<社会>

ニーアル・ファーガソン(仙名紀)(2012)『文明-西洋が覇権をとれた6つの要因』勁草書房 西洋が覇権をとれたのは、競争、科学革命、私的所有を守る法の支配と代議制、医学の発達、消費社会、労働倫理である。アジアはこれらのキーアプリを導入することにより発展してきた。

ニーアル・ファーガソン(仙名紀)(2009)『マネーの進化史』早川書房 銀行、債券、株式、保険や不動産というマネーの制度的イノベーションは、資源を有効に活用できるが、熱狂と暴落を繰り返してきた。理由は未来は不確実、人の認知バイアス、突然変異と自然淘汰の繰り返し、である。


<その他>

ウィリアム・パウンドストーン(松浦俊輔)(2004)『パラドックス大全-世にも不思議な逆説パズル』青土社 我々が物事を理解するとは何か。「スペイン国王は牛である」は間違えているようだが、可能性として正しい。「すべての牛は紫である」がつながると逆説がありそうなので正しさが揺らぐ。

百田尚樹(2010)『モンスター (幻冬舎文庫)』幻冬舎 人から容姿をけなされ続けていた和子は、働いていた工場での出来事をきっかけに整形美容に力を入れる。容姿が変わることによって得たもの失ったものは何か。高校時代の憧れの人との恋は本物だったのか。

辻井正次、NPO法人アスペ・エルデの会編(2012)『楽しい毎日を送るためのスキル-発達障害ある子のステップアップ・トレーニング』日本評論社 アスペ・エルデの会が実施してきた療育方法。自分の感情に気がつくためのワーク、人とコミュニケーションをとる練習など、行われてきた合宿などの紹介。

清水一行(1994)『虚構大学 (光文社文庫)』集英社文庫 神官養成で実績をあげる伊勢大学の教務課長、学生課長の理想的な大学論から、元公認会計士、高校開設に実績のある千田孝志に大学設立の依頼がくる。文科省、銀行とのやりとり、財界政界を巻き込んでの大学開設に突き進む。さまざまな人間模様。
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2013年02月19日

『都市は人類最高の発明である』

都市経済学者が書いた都市の本です。きちんとした研究成果とジェイコブズと同じように具体的な事例で都市を論じています。



先進国では、都市は混雑するもの、リタイヤ後は田舎で暮らす、などのイメージがあり、どうしても都市は嫌われているところがあります。本書は、原著題名『都市の勝利(Triumph of the City)』となっており、都市の良さを主張しています。

主張をまとめると

都市は人類のお互いが学び合うという能力を発揮する場所であり、その人類の強みが拡大してきた場所である。

です。都市はなぜ成長するのか、その原因は、人的資本が互いに触発しあうことであるとしています。アイデアの交換こそが都市を発展させる原動力なのです。

内容をピックアップしてみましょう。

都市は、人と企業の間に距離を持たない場所です。ニューヨークが没落の危機から再興した事例をあげ、輸送費が下がったために人と企業間の近接性が高まり、アイデアが交換され、都市成長のダイナミクスが働いたとしています。

ただ輸送費が下がると、近接性は重要でないように思われます。遠くからでもアクセスが可能になるわけですが、グレイザーは逆に近接性が重要にになるといいます。

ジュボンズの相補性原理(*)を指摘しながら、人的資本にとって対面コンタクトは情報技術の発展に不可欠になったといいます。

また、研究によると、特許は地理的に近い特許を引用しながら登録されるそうです。もし輸送費が低下して遠くの情報にもアクセス可能になっているならば,特許という情報は地理的に関係のない発明になるはずです。しかし実際には特許も、地理的距離に影響を受けています。

そのため都市の近接性は、都市の発展に重要となってきたのです。

都市は生産性も上昇させます。都市人口比率が1割増加すれば大卒の生産性や1人当たりのGDPは3割上昇するという研究もあります。

都市は環境にも優しいです。公共交通機関を使うことによって車の排気ガスやCO2の排出が減らすことができます。

また都市は災害にも強いといいます。都市部での災害における被害率は田舎より低いそうです。

グレイザーは、ジェイコブズが批判した高層ビルを擁護します。ビルは少量の土地に大量の人を収用できる都市において合理的な存在だと主張します。

都市はどうなると衰退するのでしょうか。

デトロイトの例を上げながら、インフラが経済の強さを上回る、すなわち過剰なインフラ建設が都市を衰退させるといいます。そこから導かれる都市政策は、税金や規制に対しては穏健であること、学校や安全、アメニティなどの公共サービスを充実させることだ、と。

都市政府の仕事はインフラ建設ではなく、都市住民の面倒を見ること、人的資本としての教育サービスを提供すること、になります。

大変おもしろい本でした。

*相補性原理:蒸気機関の発明により、エネルギー効率があがるために石炭消費が減ると期待されるが、実際には石炭消費は増加すること。
posted by okmtnbhr at 07:44| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする