2012年05月10日

『民主主義がアフリカ経済を殺す』

中国では中国モデルという一党独裁による経済運営を正統化する論調がある中,それにもまさる刺激的な本を読みました。

ポール・コリアー『民主主義がアフリカ経済を殺す』です。




有名な経済学者コリアーによる研究成果にもとづいた分析結果を用いてわかりやすく論じています。

早速要旨をまとめてみます。

アフリカの最底辺の10億人はは政治的暴力(銃や戦争,クーデター)にさらされている。一国の規模は,協調するには難しいほどの多様性を抱えており,一方で安全保障を公共財として供給できるほどの規模はもっていない。

選挙がアフリカに導入されているが,政治的暴力は減少していない。むしろ低所得国(一人あたり年間2700ドル以下)では,民主主義が脅迫や不正選挙を招き,政治的暴力の原因となっており,実際の民主化や経済発展を遅らせている。

民族間の権力闘争は,安全保障をもたらしていない。権力闘争が落ち着いて調停したとしても,低所得国で選挙を導入した民主主義の国は紛争に戻るリスクは非常に高い。独裁制の国でも平和維持軍が展開されると紛争に戻るリスクは低減する。また援助が軍事費に流用されている事実があり,これがまた政治的暴力を低減できていない。

これらの研究成果にもとづいて,最底辺の10億人が住む国々には,国際社会が安全保障を提供し,政権のアカウンタビリティ(正当性の説明責任)を保証する必要がある,つまり最低限の国際介入が必要なのである。



実際,タイトルほどの衝撃はないのですが,欧米人にとって(?)あるいは民主主義が一番だと考えている人たちにとってはとっても刺激的であることに間違いはありません。

ただ逆を言えば,独裁体制にある中国が安定した安全保障,そして共産党支配の正統性(アカウンタビリティー)という公共財を供給しているという現状を考えると,これがそのまま中国にあてはまるわけではありません。一人当たりGDPが低いとはいえ,アフリカ最貧国に比べれば十分豊かであることを考えると,中国に民主主義圧力がかかるのはある意味自然の流れともいます。

広東省では烏坎村での選挙が世界的にも注目されましたし,この間の全人代での温家宝首相の政治改革の強調は中国にも民主主義が必要になってきているということかもしれません。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月08日

2012年4月の読書ノート

2012年4月の読書ノートです。

今月の一冊は



です。amazonレビューも100以上ついているので,私が今さらですが,とにかくおもしろい。数字の使い方はやや恣意的だけど,それにしてもよくもこれだけ農林水産省を敵に回すなというぐらい,日本の農業のからくりについて述べようとしています。

農業政策では政府が関与しすぎて首が回らない状態になっているということがよくわかります。新規参入の仕組みがないと日本の農業は本当に将来がなくなるかもしれないと思いました。



<経済学>

松井彰彦(2011)『不自由な経済』日経新聞社 市場は格差の原因というレッテルを貼られてきたが、逆に格差を縮める力を持つ。市場は見知らぬ人をつなぎ馴れ合いや既得権益を打破し、新しい息吹を与える。女性が自由を感じ障害者が自立を得るのは市場への参加が可能になったからである。

根井雅弘(2006)『物語 現代経済学』中公新書 主流派経済学に批判的な代替的アプローチ(シュンペーター、ヴェブレン、マルクスなど)の存在に無知であってはならず、自分の考え方を相対化させること、これが現代の経済学界に最も欠けているものである。

ウォルター・ブロック(橘玲)(2011)『不道徳な経済学──擁護できないものを擁護する (講談社プラスアルファ文庫)』講談社+α文庫 売春やヤクの売人など不道徳とみられる人々は誰一人強制力を伴った悪行を働いているわけではなく、むしろ社会に利益をもたらしている。私たちの好きに行う取引を禁止するのは有害である。

ポール・コリアー(甘糟智子)(2010)『民主主義がアフリカ経済を殺す 最底辺の10億人の国で起きている真実』日経BP社 最底辺の10億人が住むアフリカでは政治的暴力がはびこり安全保障や政府のアカウンタビリティ(正統性)という公共財が供給されない。最底辺の人々の安全を考えると国際社会が安全保障を提供する必要がある。

齊藤誠(2006)『成長信仰の桎梏 消費重視のマクロ経済学』勁草書房 政策を評価する基準はGDPではなく消費である。GDPを政策目標にしたのは、ケインズモデルの影響し、企業や金融機関を守るという政策発想があった。消費と投資が均衡する国内・国際金融システムが必要不可欠である。

青木昌彦(瀧澤谷口)(2001)『比較制度分析に向けて』NTT出版 ゲームが繰り返しプレイされる仕方の際立った特徴に関して共有された予想の自己維持的システムとして制度の性質を理解する。均衡の要約表現かつ共有予想としての制度観に基づき経済主体の集合体(ドメイン)における制度を同定。

アブナー・グライフ(岡崎哲二神取道宏)(2009)『比較歴史制度分析』NTT出版 制度をゲームの均衡とみなし、マグリブ貿易商の代理人契約を分析。マグリブ貿易商とジェノヴァ貿易商が異なった制度になったのは「文化に基づいた予想」の違いである。

中島隆信(2011)『障害者の経済学』東洋経済新報社 福祉の現場にも正しいインセンティブをつけ、障害者とその関係者たちが自分たちの利益のために行動した結果、すべての人々が幸せになれる制度設計が必要だ。もっている良さを引き出させるのがより良い福祉政策。


<中国>

ジョン・フリードマン(谷村光浩)(2008)『中国 都市への変貌-悠久の歴史から読み解く持続可能な社会』鹿島出版会 悪化が進む都市環境、都市内部で失業が目立つ雇用なき成長、農民工や農村と都市内部との所得が格差、これらの解決には都市、農村の協調した介入が持続成長をもたらす。

呉敬l(青木昌彦監訳)(2007)『現代中国の経済改革 (叢書「制度を考える」)』NTT出版 中国の体制改革を柱として、農村、企業、民営経済、銀行・証券、財政税制、対外開放、社会保障、マクロ政策の各論、そして社会的公正と共に豊かになる社会主義市場経済について政府と市場の関係を探る。

アレクサンドラ・ハーニー(漆嶋稔)(2008)『中国貧困絶望工場 「世界の工場」のカラクリ』日経BP社 中国の輸出を支えるチャイナプライス。世界のバイヤーが広州交易会で賑わう背後には、安い賃金労働で働かざるを得ない出稼ぎ工、法令を遵守できない工場長、監査をすり抜けようとする国際的バイヤーなど多くの要因が。

高島俊男(2004)『中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)』講談社現代新書 中国では盗賊によって王朝が代わってきた。毛沢東は最後の盗賊であり、マルクスを経典にし、知識人を巻き込み、武装し、天下統一を夢見た。盗賊の動きを農民革命と呼んだのである。

スーザン・シャーク(徳川家広)『中国危うい超大国』日本放送出版協会 中国の指導者は自分の権力基盤が盤石だとは考えていない。そのため二つの方法で国力を行使する。一つは国内問題を抱えているので、対外紛争を避ける。もう一つは危機の時にはナショナリズムを煽り攻撃的になる。


<社会問題>

橋下徹・堺屋太一(2011)『体制維新-大阪都』文春新書 世界の都市間競争に打ち勝つための広域自治体としての大阪を作り、成長の果実を基礎自治体で分配する。大阪市では都市として小さく行政サービス提供では大きい。幹部公募制や私立高の授業料の無料化により職員間や教育の競争をもたらす。

中村研二・寺崎友芳(2011)『東日本大震災 復興への地域戦略』エネルギーフォーラム新書 建物被害率や資本ストックから被害額を推定。宮城を国際的観光地づくりなど開発戦略の提案。復興財源と地方負担、既存自治体が機能出来ない中での復興まちづくり会社,復興特区の可能性を検討。

橘川武郎(2011)『東京電力 失敗の本質』東洋経済新報社 問題は民営公益事業の複雑さ。国策民営の原子力は責任の所在を明確にするために国営化する。周波数統一により電力融通を可能にし、各電力会社の競争を促進、カルテル状態の地域分割を廃止する。

山岸俊男(2000)『社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)』PHP新書 利己主義であっても協力することが自分の利得になることがわかる場合、協力して社会的ジレンマは解決する。人と協力することで協力しない人たちから搾取されない環境設定がジレンマ解決のカギ。

山岸俊男(2011)『「しがらみ」を科学する-高校生からの社会心理学入門』ちくまプリマー新書 人がある行動を取るとある結果が生まれる。この反応によって人の行動を生み出し社会をつくる。社会はインセンティブ構造。社会はしがらみを作りそれによって望んでいない行動もとる。

浅川芳裕(2010)『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)』講談社+α新書 99年に制定された食料農業農村基本法により自給率向上が国是に。生産額ベースでみると66%であり先進国3位。補助金支給、耕作放棄地を問題にしながら減反政策など農業を疲弊させている。

マイク・ディヴィス(酒井隆史監訳)(2010)『スラムの惑星-都市貧困のグローバル化』明石書店 工業化を欠く都市化は雇用機会を提供できない。グローバル化によって価格の低下、食糧輸入、土地の取り上げ、旱魃や内戦により農民を都市に追いやり、スラム化が進む。

駒崎弘樹(2010)『「社会を変える」お金の使い方――投票としての寄付 投資としての寄付』英治出版 政府ではないNPO法人が、国民が必要で新しい公共を提供する。その仕組みには所得控除ではなく税額控除とする。有益なNPOには寄付という形で「投票」(応援)し、社会を変える「投資」となる社会に。

ラジ・パテル(佐久間智子)(2010)『肥満と飢餓-世界フード・ビジネスの不幸のシステム』作品社 農民と消費者に生産と消費の自由はなく、少数の国際的な食品流通業者(ネスレ、ウォルマートなど)が食品を支配。価格を受け入れ貧困にあえぐ農民、豊富な高カロリー食品を食べる消費者。


<自己啓発>

鷲田小彌太(2009)『人生は四十代からの勉強で決まる』海竜社 勉強力をつけるためには勉強を習慣化する必要がある。強制的に習慣化するには学校に行くのも一つの方法。30代は基礎がため、40代は全力であたる仕事に出会い、50代は体力絶頂期であり、仕事に勉強が追いつく。


<その他>

真山仁(2010)『ベイジン〈上〉』幻冬社文庫 世界最大級の原発建設が日中共同事業で開始。原発に絡む汚職を調査するために中央紀律委員会から派遣された市副書記ケ学耕。中国で安全な原発を作りたい日本側技術者田嶋。二人の男の友情と希望は原発火災を防げるか…

星野欣生(2003)『人間関係づくりトレーニング』金子書房 自分が持っている「枠組み」、持っている価値観、コミュニケーション、感情の表出、葛藤との付き合い方など自分と人間関係を学ぶ体験学習。体験し理論を学び、体験中の自分の変化を見つけるエクササイズ。

藤原武弘編(2007)『人間関係のゲーミング・シミュレーション』北大路書房 囚人のジレンマや売り手と買い手の取引、異文化シミュレーションなどを通じて社会心理学を学び、他者や他集団との協調・共生する道を模索する。

宮部みゆき(2006)『名もなき毒』幻冬社 コンビニのウーロン茶に仕組まれた青酸カリで人が亡くなる。今多コンツェルンの広報誌担当の杉村は、編集アシスタントの原田いづみが辞めたあとの嫌がらせを通じて事件に巻き込まれる。人の抱える毒を解毒するには…

千賀一生(2009)『タオ・コード』徳間書店5時元文庫 老子の解く「道」は性を表している。その暗号から読み解けば性愛だけでなく宇宙とのつながりを意味していた。愛を渇望するために、所有欲、嫉妬心、権力欲などを生む。欲は得られない代償として生まれる。

千賀一生(2010)『ガイアの法則』徳間書店 この宇宙には地球の自転で動く時間(24時間の1/16)と空間移動22.5度の不思議なリズムがある。宇宙は必要なところに必要なだけの配置を行う。思念も心が空白であれば各人に必要なものが与えられるように出来ている。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月10日

2012年3月の読書ノート

2012年3月度の読書ノートです。

いい本が多い月でした。青木(2008)のソルーションフォーカスは以前2011年10月読書ノートでも紹介した『解決のための面接技法』を上回るほどのできでした。

宮尾監修(2010)の『発達障害の治療法がわかる本』は「もしかして」と思う親御さんが日本のどのような療育が受けられるか,わかりやすく説明しています。

その他いろいろあったのですが,今月の一冊はあえてこれ。



ミスター円とかミスター財務省とか言われていた榊原さんがこんな啓発本書いているとは知りませんでした。正直どうかな〜と思ったのですが,はまって読んでしまいました。

この本の良さは,私たちは市場経済に組み込まれていること,市場に面して生きていかないといけない以上,自分の強み(比較優位)を見つけなければならない,という話から始まります。この始まりが実務経済官僚としての彼の強みであり,しかも市場経済の仕組みをわかりやすく説明しています。

英語の勉強の仕方,留学をどう生かすかなど,高校生向けですが,大学生でも読む価値が大きい本です。4月に入学した学生さんにぜひ進めたい一冊です。

<経済学>
長岡貞男・平尾由紀子(1998)『産業組織の経済学-基礎と応用』日本評論社 産業組織の経済学の核心は市場成果(経済厚生)を高めるための市場構造(企業数、垂直統合、参入コストなど)、企業行動(価格設定、研究開発、ブランド確立、協調や競争的行動)そして政策の在り方を探ること。

小田切宏之(2001)『新しい産業組織論-理論・実証・政策』有斐閣 独占、寡占、製品差別化、ブランド、立地、参入障壁などの市場の構造、設備投資、製品戦略、広告、研究開発、合併、垂直的統合などの市場行動、これらが資源配分の効率性を達成するのかという市場成果を議論する。

泉田成美・柳川隆(2008)『プラクティカル産業組織論 (有斐閣アルマ)』有斐閣アロマ ゲーム理論や情報の経済学を用いて産業や市場を実証的に研究するポスト・シカゴ学派へ。参入規制がある独占、国営企業はX非効率性、技術革新を行わない動態的非効率性、ソフトな予算制約などの非効率性を生む。

ヨラム・バウマン(2011)『この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講』ダイヤモンド社 ミクロ経済学とは、個人にとっての最適化の結果が集団全体にとっても良い結果になるのはどんな場合なのか、を考える学問。勝手なことやってても見事な協力が実現するし、共有地の悲劇も起こる。

渡辺隆裕(2004)『ゲーム理論 (図解雑学)』ナツメ社 ナッシュ均衡が2つある弱虫ゲームでは、契約を入れる、コミットメントするなどで解決に。囚人のジレンマでは無限繰返しゲームではトリガー戦略、オウム返し戦略が解決の方法。ナッシュ均衡のないゲームは確率的に戦略を考える混合戦略で解く。

ルイズ・アームストロング、ビル・バッソ(佐和隆光)(2005)『続・レモンをお金にかえる法 インフレ→不況→景気回復の巻』河出書房 人は働きレモネードを買う。レモンの価格が上がって,レモネードが高騰しインフレに。利益が減り,失業が増加。失業保険,新しい仕事,貸し付けして景気回復。

ルイズ・アームストロング、ビル・バッソ(佐和隆光)(2005)『レモンをお金にかえる法 経済学入門の巻』河出書房 レモネード販売から価格,労働,資本,賃金を考え,労働争議で首にしたジョニーが競争相手に。競争の結果,ともに合併し,最終的には資産を流動化させて,経営からリタイア。

ポール・クルーグマン(山形浩生)(2009)『クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)』ちくま学芸文庫 長期的には一人当たりの産出をどうやって増やすかという生産性の成長、貧乏な人と金持ちの格差が拡がっている所得分配、インフレとトレードオフになっている雇用と失業の三つが経済の根本問題。

伊藤宣広(2006)『現代経済学の誕生』中公新書 マーシャル、ピグーを基軸とするケンブリッジ学派の特徴は理論と実践との間のバランス感覚である。ケインズは部品自体は旧知のものを使いながら新たな実践のためにパズルを新しく積み上げた。この意味でケインズはケンブリッジ学派を継承している。

ロバート・L・ハイルブローナー(八木他訳)(2001)『入門経済思想史 世俗の思想家たち (ちくま学芸文庫)』ちくま学芸文庫 経済学は資本主義社会が出来てからの学問である。経済学は客観性にもとづかせようとする似非科学的なものにするのではなく、資本主義社会をより良く理解するための世俗の思想である。

G.タロック(加藤寛監訳)(1984)『政府は何をすべきか―外部性の政治経済学 (1984年)』春秋社 外部性の解決には、多数の人の交渉が必要になるので、その分政府による解決という手段がある。それでも交渉が困難でないならば私的交渉の方がより好ましい結果になる。

依田高典(2001)『ネットワーク・エコノミクス』日本評論社 ネットワーク産業の特徴は、自然独占性を有するネットワークサービスを提供するのに必要な設備等を独占的に所有すること(ボトルネック独占)であり、解決の方法はアクセスチャージを設けることである。

<中国>
岡田英弘(2001)『この厄介な国、中国』ワック文庫 対日批判の裏には権力闘争があり、戦争は政争の具という指桑罵槐、他人に対して付け込まれやすいところを見せないバルネラビリティ原理が働くため他人を敵としてみる、中国の統治は皇帝システムてある、など。


<社会>
竹内洋(2011)『大学の下流化』NTT出版 読書をする学生文化が大衆圧力にさらされ、一部難関大学のみがかろうじて世間文化との壁を維持されている。下流化を防ぐために大学院授業を学部生に開放する。

岡田英弘(2001)『歴史とは何か』文春新書 歴史とは人間の住む世界に関わるものであり、一個人が直接体験できる範囲を超えた認識である。歴史はそれを書く歴史家の産物でもある。普遍的な個人の立場で一貫した論理で解釈出来る説明が「よりよい歴史」である。

岡田英弘(1992)『世界史の誕生 (ちくまライブラリー)』ちくまライブラリー 歴史はその場所と時間の中で文化を記述するものであり、歴史があったのは中国文明と地中海文明であった。中国文明をや地中海文明を変容させたチンギスハーンによる13世紀のモンゴル帝国からが世界史の始まりである。

脇田成(2010)『ナビゲート!日本経済』ちくま新書 日本の景気循環は輸出伸長がきっかけとなり、企業利潤増大、投資、賃金が盛り上がるというパターンである。不良債権処理により企業利潤の増加にはつながったが、企業の内部留保が高まり、家計の所得増加につながらなかった。

<自己啓発>
森俊夫(2001)『“問題行動の意味”にこだわるより“解決志向”で行こう (ほんの森ブックレット)』ほんの森出版 人は事象に意味付けしたくなる。問題や症状にかわいいニックネームをつけて、それを退治する方法を一緒に考える外在化は、自らが解決する方向へ向く。

青木安輝(2008)『組織の成果に直結する問題解決法 ソリューション・フォーカス』ダイヤモンド社 問題や不具合を深追いするといった落とし穴にはまらない。求められているもの、将来の解決した姿をできる限り明確に。あるものを適切に利用し、そのプラスの影響力によって将来の解決に近づく。

榊原英資(2009)『君たちは何のために学ぶのか』文藝春秋 私たちは市場の中にいる。市場は世界で一つになりつつあり、交換できるものは交換する社会である。換えのきかない人になり社会に貢献するために、自分の得意なものを伸ばしていく必要がある。集団からはみ出すことは悪いことではない。

<その他>
五木寛之(2008)『林住期』幻冬舎文庫 人生の黄金期は50歳から75歳までの林住期にある。それまで学生期、家住期に積み上げたものを一旦捨てて自分自身を見つめる。すべての雑事を削ぎ落としてスリムな生活を心がける。50歳からやることを変えてもいいし、ずっと同じことを続けてもよい。

五木寛之(2008)『人間の覚悟』新潮新書 諦める覚悟が必要。諦めるとは「明らかに究める」ということ。期待や不安に目を曇らせることなく現実を見据える。人生も時代も移りゆく中で人が生きるのは壮大な営みなのである。

石田淳(2011)『行動科学を使ってできる人が育つ! 教える技術』かんき出版 教えるとは相手から望ましい行動を引き出すこと。まず自分から情報開示し、部下の仕事動機などを理解。教えることを技術と知識に分け、具体的な行動に言語化し、行動科学を応用。

コンタロウ・三星雅人(2011)『田舎の家のたたみ方』メディアファクトリー新書 都会で給与所得者をやっている人の多くが地方出身者。都会の相続は現金化できるが田舎では、空き家の農地、山林の管理などにも維持費がかかり、売却賃貸もままならない。実家の家と財産分与の準備が必要。

菊池誠(2010)『科学と神秘のあいだ』筑摩書房 現実に体験したり感じたりしたことは事実だし、それはリアルである。でもその事実だけで客観的になるわけでもなく、多くの証拠が集められ再現をしてみて科学になる。でも自分のリアルで科学を否定するのではなく「折り合い」をつけなきゃいけない。

植木雅俊(2011)『仏教、本当の教え』中公新書 北枕が日本で忌み嫌われるのは、仏教が漢訳され日本に伝わる過程で各国の文化習慣によって受容のされ方が違ったからである。北枕はインドでは最もいい寝方。仏教は平等、行動であり、迷信やドグマを排除。

五木寛之(2010)『親鸞』講談社 人はなぜ苦しんで生きるのか、なぜ争って生きるのか、比叡山に入山し、仏に会いたくて好相行に取り組む。雑念の多く悟れない自分との葛藤。法然に出会い、悪人のままでも浄土へいけるとする念仏の道へ。

大野裕(2011)『はじめての認知療法 (講談社現代新書)』講談社現代新書 同じ出来事でも認知の仕方が違うために現実の受け止め方が違う。そのような認知が浮かぶシステムを自動思考と呼び、その考えや思考、感情を確認、整理するのが認知療法。

伊藤絵美(2005)『認知療法・認知行動療法カウンセリング初級ワークショップ』星和書店 環境に合わせてどのような認知をもち,行動,感情,体に影響を与えているか,相互作用の基本モデルを重視。双方向的なコミュニケーション,セッションの構造化,認知再構成,問題解決へが基本スキル。

清水栄司監修(2010)『認知行動療法のすべてがわかる本』講談社 認知(考え方)を修正し,行動を見直し習慣を変える認知行動療法。認知を感情と区別し,認知が感情と行動にどのような影響を与えているかを理解。話す,書くなどで気づいて行動をチェック。

宮尾益知監修(2010)『発達障害の治療法がよくわかる本 (健康ライブラリー イラスト版)』講談社 正しく診断して発達レベルにあった治療法(TEACCH、認知行動療法、ABAなど)を組み合わせて。家族の協力で効果がアップ。国立成育医療センターの治療的アプローチを図解。

小林芳文監修・著(2010)『発達に遅れがある子どものためのムーブメントプログラム177」学研 動くことで運動身体能力を高め、認知・情緒・社会性などの心理的諸能力を高める。すぐに使える活動プログラム。多動には、はしる、飛ぶ、バランスする活動が有効。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月06日

2012年2月読書ノート

2012年2月の読書ノートです。

今月の紹介は



です。出版年は古いのですが,障害児教育を考える一冊です。(同じ作者による新しい本は『障害児教育を考える』です。)

一部の地域ですが都内で障害児の親へのヒアリング調査(1970年代)を通じて,障害児が学校にいけていないという現状を報告していました。しかし,障害児であっても学校教育によって確実に心身ともに成長すること,そして基礎学習の大切さを紹介しており,非常に勉強になりました。

学校は社会に出る前の小さな社会練習です。誰であれ,成長のチャンスが学校にあることを認識しました。


<経済学>

ロナルド・H・コース(宮沢後藤藤垣)(1992)『企業・市場・法』東洋経済新報社 企業が存在するのは市場取引にはコストがかかるからであり,企業内部に取り込むことによってコストを節約することができるから。正の取引コストの存在が契約や交渉によって外部性の問題を解決し効率性を達成する。

オリバー・E・ウィリアムソン(浅沼岩崎)(1980)『市場と企業組織』日本評論社 限定された合理性、機会主義、不確実性、情報の偏在、雰囲気が存在する時、階層組織の中での交換が市場よりも選好される。しかし組織には内部取引の拡大や官僚主義をうむ。

森脇俊雅(2000)『集団・組織 (社会科学の理論とモデル)』東京大学出版会 個人合理性の追求と集団目的の対立から集団目的(集合財)が達成できないことがある(フリーライダー)。市場でも政府でもない自発的な組織によって供給されることもある。

<中国>

高原明生・大橋英夫・園田茂人・茅原郁生・明日香壽川・柴田明夫監修(2011)『10年後の中国-65のリスクと可能性』講談社 格差があっても富裕層への課税、再分配制度がうまく出来ない、バブル現象は広い中国においては点、一党独裁体制はいつかは終わる、ただ共産党は生き延びる、など。

渡辺利夫・21世紀政策研究所監修朱炎編(2011)『中国経済の成長持続性-促進要因と抑制要因の分析』勁草書房 今後の中国経済のありようを、人口動態、階層化した社会、社会保障、都市化、エネルギー、輸出と内需拡大について,促進ベクトルと抑制ベクトルとの合成ベクトルから見いだす。

佐藤賢(2011)『習近平時代の中国―一党支配体制は続くのか』日経新聞出版社 江沢民が発展と三つの代表論、胡錦濤が和諧と科学的発展観、習近平のキーワードは民であり安定維持(維穏)になるのではないか。官僚腐敗を防ぎ政府サービスの質を高め民衆批判を緩和させる方向に。

宮脇淳子(岡田英弘監修)(2011)『真実の中国史[1840-1949]』李白社 中国の近現代史はアヘン戦争からではなく日清戦争(1894~1895)から始まった。日本を通じて清国に海外の情報が流れ込んだ。中国の歴史は中国という土地における中国人と異民族との争いの歴史である。

譚路美(2010)『中国共産党を作った13人 (新潮新書)』新潮新書 ロシア革命が起きた1917年頃に日本にいた中国人留学生は日本の社会主義運動や思想に影響を受け、李漢俊や李達、周佛海などを生む。1921年上海に集まり第一回共産党代表大会が開かれたが,多くが毛沢東によって蹴落とされる。

安田峰俊(2011)『中国・電脳大国の嘘 「ネット世論」に騙されてはいけない』文藝春秋 ネット世論が中国を変える、アニメを通じて日本理解が進むという論を批判的検証。歴史的に中国は愚かな民を官が支配し,知識人がそれを批判。日本は中国が変わる期待を裏切られるというのが歴史の繰り返し。

石平・福島香織(2011)『中国人がタブーにする中国経済の真実』PHP研究所 インフラ建設の利権に殺到する、中国の経済政策は紙幣増刷のみ、2011六中全会では次の政権の方針が出なかった、ネット統制は成功しているので不満を外に向けている、など、中国は早晩破たんする、と。

ステファン・ハルパー(園田茂人加茂具樹)(2011)『北京コンセンサス-中国流が世界を動かす?』岩波書店 市場指向型民主主義モデルから西洋的リベラリズムを尊重することなく繁栄する資本主義が中国に生まれている。中国的統治モデルが世界的に拡散し、西側を縮みあがらせてきている。

ナオミ・クライン(幾島幸子村上由見子)(2011)『ショック・ドクトリン〈上〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』岩波書店 フリードマンが主張したイデオロギーは呼び名を変えつつ生き延びてきたが、共通点は公共部門の縮小、企業活動の自由化、社会保障支出の削減である。

<自己啓発>

神田昌典(2009)『全脳思考-結果と行動を生み出す一枚のチャート』ダイヤモンド社 未来の顧客と現在の顧客を結ぶ曲線。その曲線の各局面で何が起きているか想像し、最後に最初の一歩を考える。この全脳思考モデルは発想と行動と結果を生む。

<社会>

浜野潔(2011)『歴史人口学で読む江戸日本 (歴史文化ライブラリー)』吉川弘文館 宗門改帳を用いて夫婦家族のライフヒストリーから人口を分析する歴史人口学。幕末に向けて減少していた人口は維新期にかけて増加。結婚年齢が高かったが、再婚マーケットの充実、姉が子育ての一部をまかなう習慣が増加を支えた。

<その他>

姫野友美(2010)『心療内科に行く前に食事を変えなさい』青春出版社 脳の栄養で重要なのはアミノ酸(タンパク質)であり、糖分ではない。心の不調には糖分摂り過ぎの低血糖症が多い。おやつはナッツ、チーズなど。ダイエットにはカロリー制限よりもごはんお菓子を抑える糖質制限が効果的。

五嶋節(2007)『「天才」の育て方』講談社現代新書 2人のプロブァイオリニストを育てた子育て論。子どもを世界一と思い、学ばせてくれた。コミュニケーションを取り続けられたのは、ニューヨークでの倹約生活やブァイオリンがあり、稽古や練習を子どもと一生懸命取り組めたため、など。

奥田健次(2009)『子育てプリンシプル』一ツ橋書店 子育ての目標は社会に差があることを理解し、人にありがとう、ごめんなさいが言えるようになること。ルールを作って、子の欲求を満たし、抑えることを覚えさせる。ルールの設定は親の負担が増えることを覚悟しなければならない。

向山洋一(1991)『学級を組織する法則』明治図書出版 教師が休んでも子どもたちが快適な学校生活が送れるように組織化のイメージを描く。学級組織図を考え、誰が何をすればいいかを明確にする。活動が始まれば、現状を把握し、正確に評価する。評価は行動の原動力である。

向山洋一(1987)『子どもを動かす法則』明治図書出版 子どもを動かすのは「最後の行動まで示す」。子ども集団には@やることを示し、Aやり方を決め、B最後までやり通すこと。集団には目的がありその目的を達成するためのしくみとルールを構想する。

向山洋一(1986)『続・授業の腕をあげる法則』明治図書出版 子どもを理解するということは、子どもが自分自身をどう思っているのかということを理解するということ、子どもの意見はとんでもないが、そういう時こそ発展のあるものとしてとらえる,など。

向山洋一(1985)『授業の腕をあげる法則 (教育新書 1)』明治図書 教師は活動の場所,時間,使うものを準備し,全員に何をするか簡明に伝える。一時に伝えるのは一つのことだけに抑え,活動を細分化。各自の出来具合を明確な基準で評価し,どう修正するかわかりやすく伝える。やる気を維持するのは激励。

茂木俊彦(2007)『障害児教育を考える (岩波新書)』岩波新書 2007年に実施された特別支援教育。対象障害の拡大により量的拡大では前進した。反面、人手、施設、知識、財政の不足に直面。まずすべきは研修と教員の負担軽減。学校間の競争で職業教育に特化した支援学校が増えることに憂慮。

茂木俊彦(1990)『障害児と教育 (岩波新書)』岩波新書 少なくない障害児が就学を半ば強制的な猶予、免除させられ教育が受けられなかった。子どもは教育によって発達する。社会学習、職業訓練だけではなく教科学習を主体とした基礎教育を与えるべきである。

岩永竜一郎(2010)『自閉症スペクトラムの子どもへの感覚・運動アプローチ入門』東京書籍 周りから入る情報を処理しきれない感覚調整障害は注意散漫、イライラ、かんしゃく、多動を引き起こす。前庭覚、固有受容覚、触覚情報の識別が苦手なプラクシスの障害は姿勢不安定、不器用な動きにつながる。

木村順(2010)『発達障害の子の感覚遊び・運動遊び 感覚統合をいかし、適応力を育てよう1 (健康ライブラリースペシャル)』講談社 姿勢が悪く、多動の子は平衡感覚(前庭覚)に問題がある。背中に字を書くタッチングクイズ、ブラシを手に当てるタッチング。遊びで注意力を。椅子などで回るグルグル遊び、ジャンプ遊び、アスレチック遊びで前庭覚を働かす。

木村順(2011)『発達障害の子の読み書き遊び・コミュニケーション遊び 感覚統合をいかし、適応力を育てよう2 (健康ライブラリー)』講談 言葉の理解や文章題の遅れには、なぞなぞ、しりとりを楽しく。声の音量調整には特定のポーズで5秒間ストップ。力加減の調整を身につけられる。効果ばかりを期待せずに楽しく続ける。

キャロル・ストック・クラノウィッツ(土田玲子監訳)(2011)『でこぼこした発達の子どもたち(あんしん子育てすこやか保育ライブラリー special) (発達障害・感覚統合障害を理解し、長所を伸ばすサポートの方法)』すばる舎 感覚を受け取る信号をうまく調整できないために、音や匂いに敏感、姿勢の維持に影響する感覚統合障害。 嫌ではなくしたくてもできないこと、障害を賢く補う能力があること、頑固さは生きていくために必要なことを理解し、愛されること、配慮されることが他の子よりも必要。

井上孝代(2005)『あの人と和解する』集英社新書 人間間のコンフリクト(対立や衝突)を、対立する当事者の価値観にこだわらず、2人が共有できる新しい価値観を発見するトランセンド法(超越法)。話し合いを通じて人と自分の違いを明らかにする、みな固有の存在であることを尊重し受け入れる。

安西祐一郎(2011)『心と脳-認知科学入門』岩波新書 行動主義の研究から認知科学の研究へ。情報概念と情報科学の方法論の発展が心と脳の働きに関する知的営みとしての認知科学を誕生させた。



posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月07日

2012年1月の読書ノート

2012年1月の読書ノートです。



これは20年も前の本ですが,非常によく日本というものを説明していると思います。

世界一豊かであっても余裕と安心がない生活に追われているのは、誰もが選択の余地の少ない規格品で暮らさなければならない世の中、最適工業社会だからである,とします。

牧畜と都市国家の経験を欠いた歴史、文化を体系として考えない実際主義、稲作農業の伝統から生まれた集団主義、初等教育を広めるにために便利な「型の文化」、これらが今日の最適工業社会の形成に重大な影響を与えた,と日本社会の形成をこう説明します。

この結果,官僚中心の官僚業界協調体制ができあがり,危機には対応できないと結論づけています。

これがバブル時期の後半に書かれたとは思えないくらい,今でも通じるところがあると思います。

絶版なのが惜しいです。


<経済学>

アダム・スミス(山岡洋一)(2007)『国富論-国の豊かさの本質と原因についての研究(上・下)』日経新聞社 労働の生産性が上がるのは分業であり、人間のものを交換するという性質が分業を生んだ。分業は市場の大きさに影響され、都市や水上輸送の発達するところで分業が進む。

堂目卓生(2008)『アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)』中公新書 スミスは『道徳感情論』で人間の同感という本性が社会の秩序と繁栄が導かれることを示し、『国富論』で社会の繁栄を促進する二つの一般原理-分業と資本蓄積-を示した。ヨーロッパの歴史が一般原理から逸脱、アメリカを分離することを主張した。

木暮太一(2011)『いまこそアダム・スミスの話をしよう〜目指すべき幸福と道徳と経済学〜』マトマ出版社 モノ不足であった時代に富の増産を説くスミス。ただし必要以上の富は虚栄であり、心穏やかに暮らすことが幸福である。世間の評価ではなく自分の中の裁判官に従う生き方を。

ジョン・スチュアート・ミル(山岡洋一)(2010)『自由論』日経BP社 個人は自分の行動が他人の利益に影響を及ばさない限り社会に対して責任を負わない、ただし社会がその行動を嫌うか是認できない場合、その人に助言や教示することは可能。他人の利益を損なう時のみ社会は制裁可能。

仲正昌樹(2011)『いまこそハイエクに学べ-「戦略」としての思想史』春秋社 伝統や慣習からうまく機能すると実証されたルールによって形成された自生的秩序の中で、必ずしも合理的とはいえない個人が互恵的関係を築き、利益を得る。このルールを計画的に作れるという各種の設計主義に反対。

グレッグ・イップ(貫井佳子)(2011)『ホンネの経済学-教科書ではわからない世の中とお金の仕組み』日経新聞社 成長、景気、雇用、インフレとデフレ、貿易、金融市場とFRB、金融政策、政府財政、債務と金融危機などマクロ経済トピックをアメリカの事例とわかりやすい言葉で。

スイッツェ・ダウマ、ヘイン・スクルーダー(丹沢他訳)(2007)『組織の経済学入門[第3版]』文眞堂 分業が進み,専門化が進むと相互が取引するにあたって調整が必要となる。取引するもの同士が情報を完全にもっている場合には価格メカニズムが市場での取引を行わせる。そうでない場合,組織が有利

菊澤研宗(2006)『組織の経済学入門―新制度派経済学アプローチ』有斐閣 市場が唯一絶対的な効率的資源配分を達成し,企業は完全合理性を持ち利潤最大化を目指すとされたが,実際の状況に基づいて企業の行動や所有と支配,新制度派組織(取引コスト,所有権)の経済学が発展してきた。


<社会>

李御寧(1998)『「縮み」志向の日本人- Small is Better』講談社バイリンガル・ブックス 日本は縮みの文化である。縮みは俳句、扇子、折詰弁当、庭園、花道、茶道などに現れ、団結を示す家紋、はんてん、のれんは集団性を物語る。現代では電卓、車など小型の技術に反映される。

堺屋太一(1991)『日本とは何か』講談社 海で囲まれ稲作農業主体の風土は危機管理やリーダーシップを生まなかった。仏教と神道の共存に見られる学び上手、官と民が融合した情報環境の共通性、が最適工業社会を作り上げた。官僚主導型業界協調体制は外圧、不祥事、暮らしの不満という限界に直面。

堺屋太一(2002)『日本の盛衰-近代100年から知価社会を展望する』PHP新書 近代日本が工業社会で成功したのは明治維新や第二次世界大戦の敗戦により体制、体質、気質が変わる革命がおきたからである。今は仕方、仕掛けと仕組みを変えてるだけ。知価社会に向けて官僚文化の追放を、と。

ケビン・メア(2011)『決断できない日本』文春新書 日米安保の必要性、沖縄の基地返還を元沖縄総領事が語る。日本政府との交渉の過程の中で問題となる決断力。行きすぎたコンセンサス社会は有事の際に恐るべき弱点をさらけ出す。一度失敗すると終わりという恐れが決断を先送りにしている。

山本七平(1977)『「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))』文藝春秋 社会の出来事や原理原則をそこにあるかのような臨在感でもって把握することによって「空気」は発生する。対称性を持たず絶対化することによって「空気」は完成。この空気を壊すのが通常性を持つ「水を指す」である。

鴻上尚史(2009)『「空気」と「世間」 (講談社現代新書)』講談社新書 「空気」とは「世間』が流動化したものである。世間は自分に関係している。贈与・互酬の関係、長幼の序、共通時間、差別・排他的、神秘性というルールを持つ。このルールが崩れた途端に空気が発生する。

片田珠美(2010)『一億総ガキ社会-「成熟拒否」という病』光文社新書 自己愛を傷つけられ万能感を失う恐れから、成熟することを拒否し、打たれ弱く、他責的になり、何かに依存して自分のイメージを保とうとする。大人になるために小さな挫折や断念を経験する必要がある。

高橋洋一(2011)『統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる』光文社新書 統計の平均値と中央値、アンケートの偏りと母集団の意味、変化率よりは絶対値を、シミュレーションは前提をよく理解すること、ベイズ確率は事後的情報によって確率は変化する、東電はバランスシートで理解するなど。

ドナルド・ケトル(稲継裕昭)(2011)『なぜ政府は動けないのか-アメリカの失敗と次世代型政府の構想』勁草書房 社会保障やゴミ収集などの伝統的ルーティン問題は、自動販売機モデルが機能。災害などの非ルーティンには、委託している民間企業などを調整する能力とリーダーシップが必要。

古賀茂明(2011)『官僚の責任』PHP新書 年功序列と縦割り組織が省益主体の行動原理につながり、仕事の評価は権限、予算、天下りポストとなってしまう。身分保証をなくし実力主義によるクリエイティブな集団に変える評価システムを。補助金を出して企業を救い過当競争を強いる,など。

沢田健太(2011)『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 知的現場主義の就職活動 (ソフトバンク新書)』ソフトバンク新書 楽勝科目化する外部委託キャリア教育、就活サイトが中心となり自社宣伝と化す合説、一極集中が起き競争が激化、文章力と受験経験のない学生の就活苦戦、親の希望は一貫させる、など。

橘木俊詔(2011)『いま、働くことということ』ミネルヴァ書房 労働は奴隷がするものから宗教的規律から勤勉が尊ばれるようになった。一方で無職の人の幸福度は高いという結果も。やりたいことを鼓舞する教育ではなくそこそこの働きに満足することを若者に伝えることも必要ではないか。

<その他>

野崎昭弘(2011)『数学で未来を予測する-ギャンブルから経済まで』PHPサイエンス・ワールド新書 自然現象のようにシステムが安定していると、物理的法則に基づいた数学は予測に役立つ。ギャンブルで必勝法はなく、ランダムウォークは市場が安定している時は予測可能でもショックには弱い。

茂木一司編(2010)『共同と表現のワークショップ-学びのための環境デザイン』東信堂 ワークショップでは何について思考するのか、何を伝えたいのかという主題を明確にする。主題に沿った思考と経験の機会を与えるように活動内容、時間配分、空間と道具の用意が必要である。

中野民夫(2001)『ワークショップ』岩波新書 ワークショップとは、リーダー(ファシリテーター)がきっかけをつくり、参加者同士で創り出していく「学びあいの場」であり、参加体験型のグループ学習である。体験したあとのやった過程や感じたことを振り返ることが学びを確実にする。

中原淳(2010)『職場学習論-仕事の学びを科学する』東大出版会 人が職場で業務・調整などの能力を向上させるには、同僚、上司の成功・失敗談を共有し、周りから内省を促す働きかけを行なったり、同僚からの業務支援が有効である。

木村順(2006)『育てにくい子にはわけがある―感覚統合が教えてくれたもの (子育てと健康シリーズ)』大月書店 全身の皮膚にある触覚、筋肉・関節などの固有覚、バランスの平衡感覚。触覚は顔頭などが敏感に、固有覚は不器用、ガサツなモノの扱いに、平衡感覚は姿勢保持に影響。運動などでボディイメージの改善に。感覚統合の入門書。

杉山登志郎(2011)『発達障害のいま (講談社現代新書)』講談社現代新書 発達の凸凹で社会適応が困難になると発達障害となる。発達の過程で虐待によるトラウマを負ったりすると精神疾患を併発することも。凸凹に対して子どもの体験世界を知り、環境整備、愛着形成が療育にとっても重要。

高谷清(2011)『重い障害を生きるということ (岩波新書)』岩波新書 重症心身障害で生まれることは「かわいそう」なのか。苦痛がなく安心できる環境で、「からだ」自体が自分の存在は気持ちいいと感じること。この時本人も周囲も生きている喜びを感じるのである。

久保田競(2010)『もっとバカはなおせる-最新脳科学で頭が良くなる、才能が目覚める、長生き健康になる!』アスキーメディアワークス カロリー制限が寿命を伸ばして若々しさを持続、美しいものを見る、声出し、早足で歩くことで脳容積の増大、学習成績が向上する、など。

松本哉(2008)『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』筑摩書房 格差社会とかなんとかいう窮屈な社会を気にするな。枠に収まらずに勝手気ままに生きろ。法政大学時代の学食闘争、デモ、区議会選挙まで、勝手に騒ぐ方法、など。

坂口恭平(2008)『TOKYO 0円ハウス 0円生活』大和書房 小学校時代に勉強机を利用してテントを作る。これが原体験となり、作らない、金がかからない建築に興味をもち、路上の(ホームレスの)家の調査に。移動可能にし、コンパクトながら生活の機能を詰め込む。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月31日

『ショックドクトリン‐惨事便乗型資本主義の正体を暴く』

いい本というか,議論を生む本を読んだので感想と私の意見を述べてみたいと思います。

ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』です。この本はやや偏った見方からセンセーショナルな書き方で議論を狙っているのかもしれません。



主張を見てみましょう。

ミルトン・フリードマンを中心とする市場経済至上主義は,@公共部門の縮小,A企業活動の自由化,B社会保障支出の縮小の3つを柱としており,災害や戦争,政変などにつけこんで一挙に市場経済改革を行ってきた(これを惨事便乗型資本主義(Disaster Capitalism)と呼ぶ)。

と言います。そしてフリードマンがいたシカゴ大学は多くの留学生を受け入れ,シカゴ学派を形成し,その弟子たちが世界の資本主義の流れを変えてきました。

チリなどの南米諸国でも多くのシカゴ学派が経済顧問として政権に入り,政変などに便乗してショック療法型の市場主義改革を実施してきたこと,東欧やロシアもビッグバンで急進的な市場経済改革が行われたきたことを紹介します。

中国の事例も紹介し,フリードマンの訪中とその講演内容とは共産党政権と利害が一致したといいます。フリードマンの,商取引の自由化が重要であり,政治的な自由化は付随的なものという観点は共産党に力を与えたと。

1989年に起きた天安門事件で,民衆を弾圧し,ケ小平は自らが目指す改革は資本主義であることが明らかになったと主張します(ここは社会主義市場経済化のことを指しています)。中国の市場経済は「国家による介入と暴力の結果」である,と汪暉の言葉を引用します。

このようなフリードマンの市場経済至上主義は,各国が競って惨事に便乗して導入されていきます。その結果はどうだったのでしょうか。

クラインは

富裕層と貧困層の圧倒的な格差



政治権力をもつ政府と巨大企業の癒着によるコーポラティズム


を生んだと結論づけます。その例としてブッシュ政権下でイラク戦争と戦争の民営化,ラムズフェルドとチェイニーの関連する企業の戦争請負会社の話があげられます。中国でも太子党や国有企業と政府の関係をコーポラティズムとして説明しています。

最後にクラインは,災害から復興するのに政府の介入は必要なく,民間の活力で復興は十分可能だとまとめています。

私の感想です。

フリードマンは市場経済改革を推し進めるためには,たしかに一度に行う方がいい,また危機こそチャンスだと捉えていたと思います。ただ,それを惨事便乗型とするのはややセンセーショナルな言い方な気がします。

また市場経済がいいというのは政府の縮小であり,政府と企業の癒着でないのはフリードマンも当然同意すると思います。むしろクラインが最後に指摘するように民間の活力を活かすために政府は退出することを考えていたんではないかと。

つまりIMFの途上国に対する急進的市場経済改革や先進国で行われた市場経済改革はフリードマンの期待していた改革ではないのでは,と思うのです。改革がコーポラティズムを生んだとするならば,それは市場がうまくいかなかったというよりも癒着や縁故資本主義を生み出したという意味では,「政府の失敗」といえる現象ではないでしょうか。

結構,刺激的な本でした。
posted by okmtnbhr at 00:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月19日

『いまこそアダム・スミスの話をしよう』(献本御礼)

木暮太一さんより新刊をいただきました。




です。アダム・スミスといえば経済学の始祖であり,レッセフェールといわれる自由放任を強調した人物とみなされています。

ほんとにスミスはそのような人なんでしょうか。木暮さんはスミスのあまり知られていない側面を紹介していきます。

まず,木暮スミス論は

幸福とは何か,如何に生きるべきかという観点からスミスの著作『道徳感情論』と『国富論』を論ずる

という特徴をもっています。そして彼の結論を簡単にまとめてしまうと

アダム・スミスが考える幸福とは,健康であること,借金がないこと,心にやましいところがないこと,である。人々の健康と富のために『国富論』を表し,心の平静を得るために『道徳感情論』を表した。そして富の増加で貧しい人々の自尊心と豊かさがもたらされるが,人は富のみの追求で幸せになることはできない。必要なことは自分にやましくない,自分の道徳にそった生き方である

です。それでは詳しく見てみましょう。

「通説」では,スミスは,利己主義的な行動をとっても自由な市場ではうまくいく,と主張していることを確認します。でもこれはあくまでも「通説」ですし,実際その側面もあることが認められています。

次に『道徳感情論』の解説に入っていきます。

そこには

人は他人から賛同されたいと願う生き物であり,周囲に賛同してもらいたいと考え,賛同してもらえる行動をとる。

でも,世間には気まぐれの評価をする人がいるので,それに左右されるのは軽薄な人であり,賢人は本質的な評価基準をもつ必要である。

そこで,自分のなかに「裁判官」を創り,社会で一般的な邪悪の判断基準を吸収する。これが「道徳基準」となる。

自分の裁判官の声を聞く,これが義務の感覚。人がこの義務の感覚に従うのは心の平静や人間の幸福を得るためのものである。

とまとめます。

このあとに『国富論』の解説に入っていきます。

国富論では,富は金銀ではなく,必需品と便益品であると捉えているため,金銀を増やすことを考える重商主義を批判している。

富を増やすためには,労働が必要であるとともに,自由取引と資本蓄積による分業促進が必要である。そして自由取引は利己心に基づいていても最適になる,過剰な商品は生産量が減り,不足の商品は生産拡大するメカニズムである。

私利私欲で富を求めること,自由取引を認めること,スミスがこう主張する背景には多くの貧しい人が救われるという確信がある。強欲な競争は国民多数の福祉,生活水準の改善につながる必要悪だといえる。

ただし分業も弊害がある。社会的な分業が進むと自分のことばかり考えるので他人に関心を持たない,人は世間から評価されることがなくなるので,道徳観をもたなくなる。


とまとめています。

そして,スミスの幸福論に話が展開されます。

国民の幸せのために国富論を示したけれども,最低限以上の富は無意味であり,幸福感は増さないこと,幸福を求める行為が不幸になること,地位が高くなれば幸福になれるというのは永遠に満たされない欲求であり,幸福になれないことをスミスは言っている。

といいます。

最後に再度『道徳感情論』から人としてどう生きるが論じられます。

スミスから言えることは,私たちは「他人に優しく,自分に厳しい」生き方を目指すべきではないか。世間からの評価は結果であるが,自分自身は安易な結果に喜ばず自分自身が納得いくプロセスを踏んでいたかどうか,もしそうであれば結果だけにこだわることは必要ではなく,逆に本質的な評価ができている。

といいます。

第二章でイチローのエピソードが紹介されています。イチローはとある試合で,ゴロでアウトになったけど,自分の問題が気づけたので,笑いがこぼれた,と。社会から評価されなくても,自分が納得できることが重要だという例としてあげています。

以上,木暮スミス論の骨組みでした。

簡単なコメントを。木暮スミス論の貢献は,

@道徳感情論を強調しつつ,国富論の位置づけを行うことによってスミスの真意に近づこうとした。
A経済学の始祖の基本的思想が簡単に得られる。
Bスミスという古典が多くの人に読まれ,現代にも役立つことがわかる。というか新たな経済書分野の開拓になるかもしれない。

ということがあげられます。

最後に,木暮スミス論と私のスミス論の違いを少々。それは,市場メカニズムの捉え方です。スミスはやはり自由取引や市場メカニズムはいいと考えているんじゃないかと思っています。私はスミスは自由取引の推進が利己主義をも不道徳をもはじき飛ばしていくんじゃないかと考えていたんじゃないかと想像しています。

つまり,私は

市場システムはいわゆる賢人ではない軽薄な人,利己主義な人を駆逐するシステムでもある

と思っています。本当に理想的な情報完備の市場取引では騙すことや利己主義なことがさらされるような気がしているからです。これを詳細に述べると木暮スミス論ではなくなるので(笑),ここでやめておきます。

ずいぶんと中身を紹介してしまいましたが,楽しい本でしたので,ぜひご購入を(笑)。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月12日

『国富論』−地域経済学の観点から

アダム・スミスの国富論を学生時代以来,久しぶりに手に取りました。研究者ではなく翻訳家の山岡洋一さんによる翻訳なので,読みやすいだろうな〜とずっと気になりながら,後回し後回しになっていました。でも,ようやく読めました。




今日は地域経済・都市経済の観点から読書メモを書いておきたいと思います。

国富論と言えば,分業です。経済学部出身者であれば,必ず聞いたことのあるあの話から始まります。ピンの製造工程を分けて行うことによって大量生産ができるという例のアレです。

でも分業はなぜ起こるのでしょうか。スミスは交換の力,人間の交換したいという性質から来たとされます。

分業は交換の力によって発生します。その交換の力は市場の大きさによって制約を受けます。市場が存在しないと交換は起こりませんので,当然分業が起きません。スミスは例として,荷担ぎ労働者であったとしても,農村では生活が成り立つほどの仕事にはならないが,都市に来ることによって生活が成り立つとします。つまり都市のような集積地には分業が起きやすいことになります。

また水上輸送が起こりやすい港があるところ,輸送可能な河川沿いの町などでは,遠くの地域までを含む大きな市場を持つことになります。したがってどの産業も大きな市場を確保することが可能となり,自然に分化と発達がはじまります。そして産業が先に発展するのは沿岸地域であり,国内の他の内陸部に発展が広がるのははるか後になるといいます。

第三編では経済発展についての考察が行われます。

規模の大きい取引は,農村内部,都市内部で起こるのではなく,都市ー農村間で起こるとされます。都市-農村間では農村が食料と製造業の原材料を供給し,都市は加工した製品の一部を農村に供給します。都市住民の数が多く,住民の収入が多ければ多いほど,農村が利用できる市場が大きくなることを意味します。したがって農村が余剰作物を都市に供給できるようになってはじめて都市が成立,発展します。

また都市内部では,一マイル以内で生産される穀物も、二十マイル離れたところから供給される穀物と同じ価格で取引されます。都市の近くの地主と農民は、農業の通常の利益だけでなく、生産物の販売価格のうちもっと遠くの地域から同じ商品を運ぶのにかかる経費との差額を利益として得られます。つまり都市から近い農村ほど輸送費が節約できるので利潤が大きいことになります。

これは都市近郊の農村が豊かになりやすいことを意味し,周辺地域へのスピルオーバーを指摘しています。

第四編の経済政策でも輸出入の観点から議論が行われた後,このような議論が行われます。

隣国が豊かであれば、戦争と国際政治では確かに危険だが、貿易ではあきらかに有利となる,といいます。それは平和な通商関係にある場合には取引の総額が大きくなり、自国産業の直接の生産物を販売する、あるいはその生産物の販売によって得たお金を使って購入した商品は,市場としての価値が高くなるからです。スミスは周りに貧乏人が寄ってくるよりもお金持ちのそばに行く方が,多くのものを販売することができると指摘します。

つまり,近いところに大きな市場があることは経済発展に有利であるといえます。これは世界銀行(2008)『世界開発報告〈2009〉変わりつつある世界経済地理』に通じるものがあります。

今回,国富論を自分の専門である「地域」という観点からあらためて読み直して,非常に勉強になりました。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月10日

2011年12月の読書ノート

2011年12月の読書メモです。

先月もいい本にめぐり合いました。今回の紹介は



です。自己啓発本はそんなに新しい感動はないのですが,この本は読み終わったあと何か心(マインド)が豊か(リッチ)になりました(笑)

仕事に忙しく,結果をだそうだそうと思っていて悪戦苦闘しているような時に,ちょっと立ち止まって自分を振り返るにはいい本でした。またフォトリーディングやマインドマップのインストラクターでもあることからところどころそれらについても触れられています。

重要なのは,自分は豊かであることを気づくこと,かもしれません(書くとなんか当たり前っぽいww)。

ちなみに,深谷『七次元の感謝』やアービンジャー・インスティチュート『自分の小さな「箱」から脱出する方法』もよかったです。『自分の〜』は家族に対してなぜイライラするのかよくわかります。

<経済学>

林宜嗣(2008)『地方財政 新版 (有斐閣ブックス)』有斐閣 公共部門である地方政府の活動を経済的側面からとらえる。公的支出の拡大、行政の守備範囲、国にコントロールされる地方財政、財政危機と格差、公共支出の最適化、非効率の諸要因など。

中井・齊藤・堀場・戸谷(2010)『新しい地方財政論 (有斐閣アルマ)』有斐閣アロマ 地方財政の課題は国家財政と共に予算制約の中で住民の受益と負担を一致させ、経済学のパレート最適を目指すこと。分権化や費用便益分析の伝統的公共経済学アプローチから地方政府の行動や組織ガバナンスを分析する。

長沼伸一(2011)『テキスト地方財政論-公共経済学的アプローチの可能性』勁草書房 分権化定理、予算決定の投票原理、公共財の最適供給、補助金の均等化、地方税課税効果、地方債とプロジェクト、地方公営企業の経済分析。

土居丈朗(2002)『入門 公共経済学』日本評論社 政府や公共部門が行う経済活動を経済学的に分析する公共経済学。政府はなぜ必要か、税金はどう課税するべきか、公共投資はどう行うべきか、地方分権はどう進めるべきか、理論的説明とともに日本の現実の政策評価も。

加藤寛(2005)『入門公共選択 政治の経済学』勁草書房 非市場的決定のシステムとメカニズムの研究である公共選択。多数決原理や民主主義などの政治システムによる決定メカニズム、官僚制の決定メカニズム、社会利益集団のレントシーキングなどを対象とし、政治の失敗の経済的重大性に注目。

中川雅之(2008)『公共経済学と都市政策』日本評論社 なぜ公共部門が存在し、都市政策に関わるのか。公共財の供給、外部性(環境と混雑)、情報の非対称、公平性を解決するために政府は存在し、都市計画、地方分散、地価規制を経済学的に評価。地方分権と政府の統制も。


<中国>

何清漣(辻康吾編訳小島麗逸解説)(2010)『中国高度成長の構造分析-中国モデルの効用と限界』勉誠出版 「中国政府は経済的奇跡の推進者であり、社会矛盾の製造者である。」党政府の力が強大になり利己的集団になり、民衆との格差は拡大している。腐敗が進み、外資も腐敗制度に適応する。

国分良成編(2011)『中国は、いま (岩波新書)』岩波新書 中国異質論が拡大すれば排除の論理が働き、相互不信の連鎖を増長。異質ではなく個性として認知するには意識的努力と抑制、継続的な対話と交流が必要。政治、軍、貧困層、少数民族、歴史、経済、レアアース、外交から中国との向き合い方を考える。

梁過(2011)『現代中国「解体」新書』講談社現代新書 独二代、?老族(すねかじり)、土亀族(国内エリート)、嫁碗族(公務員に嫁ぐ女性)、金盾など改革開放以降に生まれた世代による新しい中国の社会現象を漢字から紹介。

津上俊哉(2011)『岐路に立つ中国―超大国を待つ7つの壁』日経新聞出版社 人民元,都市農村,国家資本主義,高齢化,政治体制改革,歴史トラウマ,世界に受け入れられる理念と7つの壁について,中国の歴史的な心理からも国際関係心理学として読み解こうとする。日本の将来についても示唆的。

大西義久(2003)『円と人民元-日中共存へ向けて』中公新書ラクレ 中国の金融体制の改革を振り返り、WTO加盟による金融自由化、為替の自由化の見込みを論じる。貿易の拡大とともに金融も為替も自由化が必要となってくる。

小口幸伸(2005)『人民元は世界を変える』集英社新書 アジア金融危機の中で切り下げを免れた人民元。注目される元を通貨制度、通貨の市場化や国際化について、そして人民元の将来的な自由化は20年以内に,そして資本取引、外為取引は完全自由化をと主張。ディーラーの視点からの人民元論。



<自己啓発>

内藤誼人(2010)『継続は、だれも裏切らない』PHP研究所 努力には素晴らしい価値がある、人に抜きんでる努力が本物、一度決めたルールは守る。続けるための個人でやる、赤色の効能、友人を選ぶこと,行動記録,褒美などが効果的。

K.J.深谷(2008)『7次元からの感謝 大富豪が毎日実践する一番シンプルな成功法則』ビジネス社 未来は現在の中にある。なりたい自分になったことを先に感謝しよう。自分に、家族に、食べ物に、自然に、好きなアーティストに、地球に、友人や仲間に、趣味に、空が青いことに感謝。朝晩の感謝も。

アービンジャー・インスティチュート(2006)『自分の小さな「箱」から脱出する方法』大和書房 自分が他人ためにしてげたいという感情を押し殺すと、できなかった自分を正当化し,相手を責める(箱の中に入る)。相手も自分と同じ尊重すべき存在に気づくことによって関係は改善(箱から出る)。

ジョージ・レナード(中田康憲)(1994)『達人のサイエンス-真の自己成長のために』日本教文社 何かを学び、その道の達人になるためには、学習曲線が上昇しない平らな部分(プラトー)を経験する。いい指導に巡り会い、自我を譲り、想像力を働かせ、練習重ね実践を楽しむのが達人へのコツ。

玉川一郎(2011)『マインドリッチ 人生を変える新しい価値観』講談社 手放せば手放すほど気づく自分の豊かさ。自分の豊かさを分け与える。その役割に気づき、その自分を受け入れる。

日本心理パワー研究所(2011)『いいことがたくさん起こる「朝」時間の使い方』日本文芸社 睡眠により活性化した脳で効率が上がり、朝の太陽で心理的にもリフレッシュ。体力づくり、自分の振り返り、節約、記憶など、早起きはツキを呼び幸運が訪れる、と。

佐藤綾子(2008)『願いがかなう8つの習慣-「先取りの感謝」の心理学』ダイヤモンド社 人は探してでも不安になりたがる生き物。生きていること、起きていること、人間関係など先に感謝することによって、自分を肯定し、他者を肯定する。

マーシー・シャイモフ(茂木健一郎)(2008)『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』三笠書房 人の行動の90%は習慣。脳からネガティブを掃除してプラスの回路を作り、愛情表現を示して、瞑想を。目標を持ち、人を選んで脳に刺激を与えると豊かな人生に。



<社会問題>

斎藤貴男(2010)『経済学は人間を幸せにできるのか」平凡社 小泉・竹中路線の構造改革は失敗であり、世界金融危機がそれを証明した。効率ではなく倫理と道徳を考え、成長は手段の一つであり、可能な限り平等で公正で誰もが幸福を感じることのできる社会を築くべきだ,と。

福井健策(2010)『著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 (集英社新書 527A)』集英社新書 非競合性と非排除性という性格を持つ情報(著作物)。情報を占有管理して創作振興を守り、情報の自由流通による文化振興を両立させるための著作権制度を目指す。知の発明、利用、集積、再創造のあり方を現実の動きとともに。

福井健策(2005)『著作権とは何か』集英社新書 著作権は「豊かで多様な文化の創造と人々のそれへのアクセスをどう守るか」であり、守るべき権利と許されるべき利用のバランスをどうとるか、という壮大な社会実験である。著作物はアイデアを創作的に表現したものだが、アイデアは自由に使える。

土井隆義(2004)『「個性」を煽られる子どもたち―親密圏の変容を考える (岩波ブックレット)』岩波ブックレットNo.633 素の自分を公共圏で出し、親密圏で抑制する子どもたち。個性を煽られ、社会的関係や言語によって個性が決まるのではなく、自分の感情を個性と考えてしまうことにより、同調できる親密圏が必要となる。

土井隆義(2008)『友だち地獄-「空気を読む」世代のサバイバル」ちくま新書 自分は特別だという内閉的な自己期待感と現実とのギャップが自己肯定感の渇望を生む。その欠落を補うために身近にいる他人と傷つけ合わない「優しい関係」を結ぶ必要がある。その人間関係に疲れてしまう。

菅野仁(2008)『友だち幻想-人と人のつながりを考える』ちくまプリマー新書 友人が大切と思いながらも友人関係に悩む若者たち。友だちなら気持ちは同じはずという他人の他者性を理解せずに、自分の気持ちを投影する道具として見るために悩む。同調性と共同性の圧力にさらされる。

浅川芳裕(2011)『日本の農業が必ず復活する45の理由』文藝春秋 日本の農業の強みを規模や効率などから。補助金や所得補償ではなく,黒字化する農家に優遇策を供与し,農地を自由化させ、新規参入を促し,農地価格を抑える政策を提言。

小林正宏・中林伸一(2010)『通貨で読み解く世界経済-ドル、ユーロ、人民元、そして円』中公新書 世界の需要を米国が肩代わりしているため、米国は貿易赤字になり、資本が流入する。この過剰性が金融危機を発生させたとするグローバルインバランス論。国際資本取引から世界経済をみる。

安田峰俊(2011)『独裁者の教養』星海社新書 独裁者の若き日を調べ、独裁者になるためにどのような教養を身につけていたのか。共通点として愛国心と歴史的呪縛、抵抗思想などをあげる。日本にはこれらが少ないので独裁は産まないが、空気に支配される土壌がある。



<その他>
ナンシー関(2007)『信仰の現場-すっとこどっこいによろしく』角川文庫 一部の人たちが熱狂的にはまる集いがある。毒蝮三太夫の番組、ドッグショー、NHKの公開番組、ウルトラクイズ、宝くじや福袋に並ぶ人たち。熱狂的集団の不思議さを冷めた目で理解し難い謎としておもしろおかしく。

瀧本哲史(2011)『武器としての決断思考』星海社新書 人生の意思決定においてディベート思考法が役に立つ。最善解を得るための主張、根拠、反論、メリット・デメリットを検討して行く。最終的には客観で検討し主観で決断していく。

香山リカ(2010)『上手に傷つくためのレッスン』メディアファクトリー 傷ついたらまず心と体を休める。傷ついた自分の心と向き合い、受け入れれば、あとは心の方で自然に備わった回復プログラムを開始してくれる。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月13日

土井隆義『個性を煽られる子供たち』『友だち地獄』

最近,人間関係の改善が人のやる気に大きく影響するのではないかという仮説を持っています。

沼上幹(2003)(『組織戦略の考え方-企業経営の健全性のために』ちくま新書)を読んだ時に,マズローの欲求5段階説があまりにも普及して,社会も個人も「自己実現欲求」にはまっているが,若者が企業で働く意欲を引き出すのは,「自己実現欲求」ではなく,「所属・承認欲求」だ,という趣旨のことが書いてありました。

非常に納得しました。

学生さんが大学で議論に参加できる,主体的に何か行事をやるなどアクションを起こす場合,そのアクションについて皆が受け入れる必要があります。つまり主体的行動と受動的行動は人間関係のセットとして存在しており,そのために学生間でお互いがお互いを尊重し認める環境,もっといえば,失敗しても間違えたことをしていても受け入れたり修正を促したりする持ちつ持たれつの人間関係が大前提としてあるように思います。

したがって大学でどのように人間関係を形成するのかは,勉強のモチベーション,大学行事や部活などへの参加モチベーション,就活へのモチベーションに大きく影響します。所属大学への帰属意識が高い学生ほど行動力が高いといえるでしょう。(そのために多くの私立大学で自校教育が導入されるようになっています。)

そんな中,今の学生さんを含めた若い世代の人間関係について,非常に勉強になる本を読みました。






です。

この2冊の内容を土井(2004)をメインに主張をまとめます。

素の自分を公共圏で出し、親密圏で抑制しているのが最近の子どもたちである。近い友達関係の中でお互いを傷つけないように傷つけられないように気を遣っている。周囲の人間と衝突しないように,相手から反感を買わないようにつねに心がけ,学校での日々を生き抜く知恵として強く要求されている。このような親密圏での人間関係を「優しい関係」とする(土井2008)。人間関係の近い親密圏で感情を抑制しながら生活しているために,公共圏ではその反動で素の自分を出し,ときには攻撃的になる。

物質的な豊かさから精神的な豊かさへと人々の関心が移行し,それぞれが自分らしさを内閉的に追求するようになってきた。学校教育では心の教育と言われ,自分らしさや個性を押し付けられてきた。このような個性化教育に伴って個人の価値観や欲求の内実も多様化してきた。個性を煽られるようになったものの、社会的関係や言語によって個性が決まるのではなく、自分の感情を個性と考えてしまうようになった。人間関係の中での個性ではなく,純粋な自分,自分の中の感情に注意が向けられるようになった。これが内閉的な自分らしさの追求である。

内閉的な自分らしさの追求は「純粋な自分」というものを求めるようになる。その結果、他人との関係を築くのも難しい状況に置かれている。彼らが求める純粋な関係は思想や信条のような社会的基盤を共有した関係でもなければ、役割関係のような集団秩序に支えられた関係でもない。直感的な感覚の共有のみに支えられた情緒的で不安定な関係である(土井2008)。

自分の純粋な部分,これを更に純化させると自分は特別だという自己期待感を生む。ところが現実とのギャップにより,自己肯定感への渇望をも同時に生む。その結果,感情を同調できる親密圏からの自己承認を必要とすることになる。親密圏からはじかれると居場所がなくなり、あるいは敵意に変化し,いじめの対象となってしまう。それゆえ,より一層優しい関係の維持を図るために,気を遣うことになる。



最近,「ヤバイ」という言葉がよく使われます。これも感情を表すものの,意味が多義的であるために友達同士で共有しやすいものです。感情を親密な友達から否定されるのを極度に恐れまるため,断定せずに「〜的な」といった用語が使われるようになっています。

このような近い友達同士で傷つけ合わないようにするという気遣いは私たちの世代よりもずっと繊細で,高度な人間関係を結んでいるといえます。この高度な人間関係のゆえ,その集団の中での自己肯定感は満たされることになり,気遣いながらも安定した自己イメージを持つことになります。

問題は公共圏,他の集団との付き合いです。小さな集団で自己肯定感を辛うじて保っていると,就職活動もそうですが,社会に関わっていく意欲や勇気を持ちにくくなります。

どのように解決するのか,土井(2008)においても大人があ〜しろ,こ〜しろと言っても仕方がなく,むしろ子どもたちが自ら向かっていくしかないだろうと暖かく見守っています。私も解決する方法があるというわけではないのですが,何かしらのコミュニケーション機会の提供が必要ではないかと思っています。

この間,ある学生さんが友人と人生や悩みについて突っ込んだ話ができた,と喜んで語っていました。少ない人との深い価値観の部分で共有できるようになると,人の自己肯定感はもっと安定するように思います。感情ではなく価値観を共有できる友達との出会い,これが大学時代に必要な気もしています。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月06日

2011年11月の読書ノート

2011年11月の読書メモ。

今月の一冊は沼上幹の『組織戦略の考え方』です。人が集団になって組織を作るのは,便益が費用を上回るわけですが(ブキャナン・タロック1979),その組織の問題点をわかりやすく説明しています。経済学的というのではなく,組織を考えるヒントを与えてくれました。



組織で起こるのがフリーライダー。つまり自分は働かなくとも組織が結果をだし,その分け前を楽に得ようとする誘因の問題です。以前は,自分はコアだと信じる大量の学卒採用者システムがありました。自分は出世するとみなが思っていたわけですから,フリーライダーが少なかったわけです。しかし,これからは働き方が多様化してきていますので,自分はコアだと信ずる人も,出世しようとする人もいません。この場合,少数のエリートが周りの社員にフリーライドされても平気でいられるくらいの高い給料を支払うことによって解決できます。しかし日本では賃金格差は難しいので賃金と昇進以外のインセンティブを与えないといけないという難しさがあります。

組織が腐っていくのは、ルールが複雑怪奇化し成熟事業が暇になってくるということが原因です。古いルールに新しいルールが付け加えられていくわけで,組織内で発言権を持つのは,ルールが分かっている宦官タイプであり,その分利益を外で稼いでくる武将が減ってきます。宦官が増え組織内政治家が出てきて,企業業績を高める武闘派が弾劾される可能性も出てきます。

主力事業が成熟すると従業員がヒマになり内向きの仕事を増やしてきます。この主力事業部というのはその組織の本流であったりするので人材を減らすことは難しいし、当該事業部もそれを臨みません。結果,主力事業部はプレゼンの資料の完成度が上がったりするだけの内向きパフォーマンスばかりが向上することになります。

組織に所属する人には一読をすすめます。


<経済学>
八代尚宏(2011)『新自由主義の復権』中公新書 賢人思想と共同体重視の思想と対立し市場を活用し効率的資源配分、公平な仕組みを生かす新市場主義。高速道路などの公共財、環境保全、景気対策、所得再分配、福祉という保険には負の所得税、介護や保育にも適正なサービス価格の設定を。

ブキャナン、タロック(宇田川璋仁監訳)(1979)『公共選択の理論-合意の経済論理』東洋経済新報社 個人が共同行為を選択する意思決定を分析する公共選択。集団を組織化、共同決定することを選択するのは,個人に課される費用と同意を得ようとする意思決定の費用が最小化するときである。


<中国>
佐々木智弘編(2011)『中国「調和社会」構築の現段階 (アジ研選書―現代中国分析シリーズ)』アジア経済研究所 多様化した社会の中で民衆に近寄りながら一党独裁の正統性を求める。マクロ経済政策、地方政府、農民、メディアなど変容するアクターに焦点をあてて分析。

梶谷懐(2011)『「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うか』人文書院 「壁と卵」(村上春樹)からシステムと個人に分けて中国の見方を問う。農民工,ルイス転換点,地方政府の振る舞いなど自身の専門から日中関係,民族問題なども論じる意欲的な梶谷中国論。

城山英巳(2009)『中国共産党「天皇工作」秘録 (文春新書)』文春新書 日本国民に多大な求心力を持つ天皇陛下を味方につけ、反中勢力を抑え、日本の対中感情や対日関係の好転を狙う。中国の対日工作の基本方針は多くの親中派を作ることである。共産党指導者の天皇観と92年の天皇訪中秘話。


<自己啓発>

飯間浩明(2008)『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門 (ディスカヴァー携書)』ディスカヴァー携書 考えを伝えるためには、問題・結論・理由の3つを備える「クイズ文」を書くのがよい。問題は読み手が思わず考えてしまうものにする、理由は反論に備え、資料で補充する。

山田ズーニー(2001)『伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)』PHP新書 小論文とは「なぜ」を考え「なぜ」を書くこと。自分の位置、読む相手、読んだあとの望む結果を意識し、なぜから出た問いという論点に対して根拠を示して意見を書く。書くものを大きく変えるには自分の根っこの思想を変える。

山田ズーニー(2006)『あなたの話はなぜ「通じない」のか』ちくま文庫 自分の聞いてもらいたいことが聞いてもらえるというメディア力。説得は意見と根拠、相手の立場に立ち、なぜを共有する共感、時間と社会とのつながりを意識した自己紹介で信頼を得よう。

出口汪(2006)『論理的なコトバの使い方&文章術』フォレスト出版 論理的に書くための6つのルール、主語述語、言葉のつながり、文と文のつながり、因果関係、イコール関係、対立関係を見る、を使って論理的に文を書こう。要約で文章ストックを増やすとさらに良と。



<社会問題>

細川昌彦(2008)『メガ・リージョンの攻防』東洋経済新報社 企業の人材は活動する場所を選んで国境を越えて移動する。国ではなく地域という単位での競争が熾烈になってきている。グレーターナゴヤ、北部九州圏、京阪神、東京のプロモーションや企業人材を呼び込むアイデア豊富。

戸堂康之(2011)『日本経済の底力 - 臥龍が目覚めるとき (中公新書)』中公新書 日本が震災復興から飛躍的成長を成し遂げるために、日本企業のグローバル化、特区による産業集積の創出を主張。輸出により企業の生産性成長率が平均2%、外資の研究開発により同じ産業の日本企業の生産性は4%上昇する,など。

リチャード・フロリダ(井口典夫)(2007)『クリエイティブ・クラスの世紀-新時代の国、都市、人材の条件』ダイヤモンド社 開放性や寛容性や自己表現が経済成長の源泉。アメリカは移民、才能を受け入れてきたが鎖国的になり才能は母国に帰国し人材不足の可能性も。

リチャード・フロリダ(井口典夫)(2008)『クリエイティブ資本論-新たな経済階級の台頭』ダイヤモンド社 何かを創り出すことによって報酬を得るクリエイティブクラスが米国経済の3割を占めるようになった。新しい産業の創造は人間の力、クリエイティブ資本による。

リチャード・フロリダ(井口典夫)(2009)『クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める』ダイヤモンド社 住む場所にも格差がある。世界はスパイキーであり、メガ地域の台頭でクリエイティブな人々は都市に集まる。所得、雇用、心理的要素などの実証結果から居住地の重要性を示す。

リチャード・フロリダ(小長谷一之)(2010)『クリエイティブ都市経済論―地域活性化の条件』日本評論社 創造的部門に従事するクリエイティブクラス。クリエイティブ資本が集まる場所が経済成長する。ゲイとボヘミアンの多い地域は寛容性を示し、多くの才能を引き寄せ、技術と所得を生み出す。

吉見俊哉(2011)『大学とは何か』岩波新書 大学を支えていた国民国家がグローバル化で退潮し始め、インターネットという知的空間が広がっている状況は都市が国家に代わり,知識が印刷技術に代替されていった中世の大学危機と相似。大学は自由な空間であり,知の編集とプラットフォームを創出。

木村誠(2011)『消える大学生き残る大学』朝日新書 理系の研究費用が減った国立大学法人化、統合効果が見えない公立大学、国から軽視される私立大学、医薬学部の低迷、法科大学院の失敗、実態4割と言われる就職内定率。問題を抱える日本の大学教育の現場。

三品和広(2006)『経営戦略を問いなおす』ちくま新書 戦略の目的は長期利益の最大化。戦略には汎用性はなく、客観性と普遍性もない。立地、構えと均整が戦略を構成する。戦略は人に宿るものである。経営はサイエンスではなくアートに近いのである。

吉田耕作(2005)『ジョイ・オブ・ワーク-組織再生のマネジメント』日経BP社 組織の問題を自発的なグルーブによって解決に取り組む。仕事の喜びや働きがいを基本とし、話し合いと数値管理によって到達感を明確にする。相互に学び合う組織が競争力向上に。大学でも問題解決型教育を。

沼上幹(2003)『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書)-企業経営の健全性のために』ちくま新書 企業経営の基本は官僚制。自己実現欲求を満たす組織ではなく承認尊厳欲求を満たし、フリーライダー、トラの威を借りるキツネの権力、スキャンダルが起きる組織、組織の腐敗を防ぐための考え方。

清水勝彦(2007)『戦略の原点』日経BP社 戦略とは強みを生かすこと。事業の目的とは顧客を創造すること。何が同じで、何が違うか、何を変えずに何を変えるか。意思決定においてもリーダーは自分の強み弱みを知った上で意思決定する。


<その他>

古川敦(1997)『創価教育学体系概論』レグルス文庫 明確な目的に沿って最小費用で最大の効果を求める牧口教育論。自分自身で価値が創造できるよう、教師は学習方法を側面から指導。教育方法に長けた教師の教育技師論も提唱するとともに、人材確保のために年功序列を廃し、評価導入も主張する。

田中康雄(2009)『支援から共生への道-発達障害の臨床から日常の連携へ』慶應義塾大学出版会 「発達とは予見不可能ななかで、次に続くという果て無き矛盾を宿命として持っている。だからこそ僕たちは希望を持って明日を信じることができる。」診断の後ろにある患者さんの生き様に共感する。

ジョージ・デュポール、ゲーリー・ストーナー(田中康雄森田由美)(2005)『学校のなかのADHD-アセスメント・介入方法の理論と実践』明石書店 不注意、衝動、過活動の特徴を持つADHD。授業参加、学習習慣、課題のやり遂げ、宿題の実行に困難。学校関係者、地域関係者との連携も。

クリストファー・ギルバーグ(田中康雄森田由美)(2003)『アスペルガー症候群がわかる本-理解と対応のためのガイドブック』明石書店 人と関わる能力や意欲に欠け、無目的で固定的な固執、表情が乏しいなどのアスペルガー症候群。早期診断、社会生活技能訓練、相談の場所が必要。

キーナン、カー、ディレンバーガー(2005)『自閉症児の親を療育者にする教育-応用行動分析学による英国の実践と成果』二瓶社 子に学習させたい内容を特定し、行動の頻度と持続時間、ABC分析を行い、介入と強化子付与を行う。嫌悪的な罰手続きはなるべく避ける。行動原理を療育に活用へ。

内山登紀夫(2006)『本当のTEACCH-自分が自分であるために』学研 自閉症の特性を理解し評価して、(構造化された指導法、行動療法、認知理論を活用した)個別化した支援を専門家、保護者、地域のリソースも考慮して全体的な観点から行うのがTEACHHである。

山口薫(2010)『発達の気がかりな子どもの上手なほめ方しかり方-応用行動分析学で学ぶ子育てのコツ』学研 罰の効果は一時的でありほめることが望ましい行為をもたらす。正の強化子(ものによるほうびから社会的承認へ)を用いて、子どもと接する事例集。消去には無視とタイムアウトが有効。

吉田友子(2011)『自閉症・アスペルガー症候群「自分のこと」のおしえ方 (ヒューマンケアブックス)』学研 肯定的自己理解を進め、自己否定の技術向上を避けるために、脳のタイプを説明し、長所と短所を確認し、自分の成功体験を具体的に認知できるようにする。良書。

末吉景子(2009)『えっくんと自閉症-ABAアメリカ早期療育の記録』グラフ社 アメリカ人とのハーフで生まれたえっくんは3歳前に自閉症と診断。絶対によくするとの思いで出会ったABAとつみきの会。日本で馴染みがない中自分で試行錯誤,渡米し、ABA療育を受ける。えっくんの療育史。

posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月24日

『体制移行の政治経済学』


体制移行について中兼先生が本を出版されました。移行経済論における一つの到達点でもいうべき内容豊富な本でした。



簡単に概要をまとめます。

社会主義は現実として経済成長が実現できず、理論として体制の持続可能性(情報処理と誘因や能動性)がないために移行せざるを得ない。また社会主義は革命でもたらされるが移行は平和時に起こるため,体制移行の蓋然性は高い。

社会主義の様相は以下の特徴があるとします。
@モノ不足-需給バランスは価格ではなく行列で示されます。
A特権と不平等-社会主義は平等がテーゼですが,党員が特権階級になります。
B抑圧-社会主義を賛美しなければならないという政治的抑圧があるので,人間不信を生みます。一般労働者が主人公のはずが,形式的な選挙により推薦した候補者が100%の票を獲得し議会は拍手と挙手の機関になっていきます。
C刺激の低下-モチベーションがないので,技術革新がおこらず体制が改善されません。

このような問題点をかかえる社会主義国では経済体制が続けられないと主張します。持続可能な経済体制の条件として以下が指摘されています。

@情報量と情報処理能力の対応-限られた人間ですべての財の需給を対応させる計画を作ることは不可能です。
A情報の対称性と刺激(誘因)両立性-経済に対する情報(価格)がない中,誘因(インセンティブ)がわきません。
B体制自体が発展していくダイナミズム

社会主義にはこれらの問題を理論的に内包しており,したがって体制として持続することができないことを論じています。

中国に限って言うと,中国の社会主義は毛沢東が指導する毛沢東モデルでした。毛沢東は法律、規則、制度を毛嫌いしており,矛盾こそが社会を発展させる原動力と考える矛盾動力説を採用していたといいます。すなわち皮肉なことに 計画経済は機能しないことになります。

体制移行の過程として,中兼先生は「市場化」と「民営化」の二つを体制移行の中身として整理しており、中国は市場化から始めたためにうまくいったとし,民営化から進めるよりもいいことを示しています。つまり,市場を作って市場から私有制を生み出す方が私有制が市場を生み出すことよりも有利であることが示唆されています。したがって,ロシアなどのショック的移行より中国型漸進主義の方が有効であるとしています。

ところで中国の体制移行の特徴は増分主義であるということを論じています。古い制度を新しい制度に置き換えてきたのではなく、新しい制度を古い制度に付け加えてきたとしています。

このほか,本書では民営化と腐敗の問題を論じています。

最後に,現在の中国経済について中兼先生はこう評価されています。

「中国は公有性が核であり、国有大型企業が独占的寡占的産業組織によって巨額の利潤をあげている。国有企業が効率的であるわけではなく、この体制下で国有企業が最も成長力があること、格差をさはあるが多くの人に実利を与え、政治的安定に寄与した。」(p.290)

「中国は社会主義を看板にしながら堂々と資本主義を推進してきた」(p.291)

大変,勉強になりました。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月08日

2011年10月の読書ノート

2011年10月読書ノート

先月の一冊です。



職業柄,学生さんなどから相談を受けることが多いです。その時,どうすればいいのか,試行錯誤していました。できるのは聞くことしかできないので,できるだけ寄り添って聞くということに集中し,アドバイスは基本的にしないように心がけていました。

この本は,人の相談を受けるときに,あるいは人が悩んでいるときにどうしてあげればいいのか,学術的に,そして事例豊富に説明しています。

私が参考になったのはミラクルクエスチョンというものです。

「もし,寝てる間に奇跡が起きて悩みがすべて解決しているとしたら,翌日は何が変わっているか」という質問がミラクルクエスチョンです(オハンロン・ビードル(1999)では魔法の杖質問としていましたが同じです)。この質問により,問題を解決したときのイメージを自分自身が描くことができます。ゴールがイメージとして想像できるとそのゴールに向かって自分が何をすればいいか明確になってきます。この意味で自分が悩んだときにも使える手法だと思いました。

この本は結構分厚いので,もし手軽に読みたいというのであれば,以下にある橋本文隆(2008)がオススメでしょう。

<経済学>

真壁昭夫(2009)『実践!行動ファイナンス入門』アスキー新書 人間の心理を考えることによって金融市場の動きを分析しようとする行動ファイナンス理論。市場は合理的ではなく、また投資家も他者の行動に左右される。自分の投資スタイルをよく考えて、癖を客観的に掴むことは、投資の成功はの道。

ジェフリー・ハインズ(阿曽村邦昭、智子)(2010)『宗教と開発-対立か協力か?』麗澤大学出版会 宗教関連団体が開発に対立することもあるが、目標が人間開発、基本的ニーズ(保健や教育)であれば、世俗的な開発が失敗すると宗教関連団体が開発の代替的役割をもつこともありうる。

ベンジャミン・M・フリードマン(地主重富佐々木)(2011)『経済成長とモラル』東洋経済新報社 国民生活の向上をもたらす経済成長と道徳的社会(機会の開放性、寛容性、経済社会的な流動性、公平性、デモクラシーなど)の進歩には正の相関関係がある。経済成長は外部性がある。


<中国>

城山英巳(2011)『中国人一億人電脳調査-共産党より日本が好き?』文春新書 ジャニーズ、蒼井そら、アニメが好きである一方、対日には強硬な中国ネット民衆。ネットは自由な発言も可能であるが、民衆の対日強硬態度は共産党の統治にも利用されうる。

富坂聰(2008)『ルポ中国「欲望大国」』小学館101新書 格差が生んだ欲望の向かう先。愛人稼業、ネットにのめり込む若者、受験の替え玉ビジネス、病院の予約も金次第など。民の嫉妬が富者に向かい社会への怒りとなる。

渡辺賢一(2011)『中国 新たなる火種』アスキー新書 世界二位の経済大国となった中国。格差、食糧や不動産インフレ、大学生の就職難、ジャスミン革命、高齢者の増加、CO2排出問題など最近の出来事を網羅。習近平の背景、中国との付き合い方などもさらりと。

郭四志(2011)『中国エネルギー事情』岩波新書 2010年に設立された国家 エネルギー委員会。輸入に頼る石油、展開される石油外交と三大中国石油メジャーの進出。豊富にもかかわらず輸入する石炭、不合理な価格体系、原発や再生エネルギー動向など。

久保亨(2011)『社会主義への挑戦 1945-1971〈シリーズ 中国近現代史 4〉 (岩波新書)』岩波新書 社会主義への批判勢力を抱えながらの共産党による建国、指導部内での社会主義に対する認識の違いが、大躍進、調整期、文革など振幅の幅が大きい歴史を形成した。

梶谷懐(2011)『現代中国の財政金融システム −グローバル化と中央-地方関係の経済学−』名古屋大学出版会 中国の財政金融システムを、中央-地方間の綱引きから明らかにするとともに、世界経済とのリンケージや人民元改革も中央地方関係から影響を受けていることを示す。

中兼和津次(2010)『体制移行の政治経済学 -なぜ社会主義国は資本主義に向かって脱走するのか-』名古屋大学出版会 社会主義は現実として経済成長が実現できず、理論として体制の持続可能性(情報処理と誘因や能動性)がないために移行せざるを得ない。移行の方法、民営化、腐敗についても。


<社会問題>

大泉啓一郎(2011)『消費するアジア - 新興国市場の可能性と不安 (中公新書)』中公新書 台頭するアジアの富裕層と中間層がアジアの消費を支える。彼らはバンコクなどのメガ都市と長江デルタに代表されるメガリージョンに住む。農村や都市貧困層の社会的課題の解決が急務である。

山内直人(1999)『NPO入門』日経文庫 政府に代わって準公共財を供給するNPO。医療、教育、社会サービスが一般的分野で、会費や利用料と補助金が主な資金源。税制優遇は民間による公共財の自発的な供給につながる。外部評価導入や自己革新に努めないと自滅する可能性も。

今一生(2008)『社会起業家に学べ!』アスキー新書 従来通りの仕組みでは救えない人々を救うための仕組みを新たに開発するのが社会起業家である。社会貢献のために問題解決できる仕組みをビジネスモデルに落とし込む。様々な事例集。

<その他>

佐々木常夫(2009)『【新版】ビッグツリー~自閉症の子、うつ病の妻を守り抜いて~』WAVE出版 「家族に障害と病気のメンバーを抱えていたことが、健康であったら感じなかったかもしれない家族愛を深めたのかもしれない。」

小川仁志(2011)『人生をやり直すための哲学』PHP新書 人生の悩みに対して哲学者の思想を借りて回答。「人間は彼が自らつくるところのものより以外の何者でもない」(サルトル)「豊かな人間とは、自身が富であるような人間のことであって、富を持つ人間のことではない。」(マルクス)

佐藤文隆(2011)『職業としての科学』岩波新書 研究者が増加した日本にあって人材を活用するのは、論文生産だけでない教育、行政を含む多様な創造的仕事ができるような科学技術エンタープライズを造っていくことである。

宮内康二(2010)『成年後見制度が支える老後の安心-超高齢社会のセーフティーネット』小学館101新書 障害や高齢などの理由でひとりでは法律行為がうまくできない人の意思表示、意思決定をサポートする後見人制度。後見人の仕事内容、問題点など。

島田裕巳(2011)『冠婚葬祭でモメる100の理由』文春新書 多くの人が関わり、しきたりとお金がからむ冠婚葬祭。100の事例集のうち55が葬に関係する。葬儀のやり方から墓の問題へと時間と関係者の数の範囲が広がるだけに、生者と死者の利益調整が複雑。

陰山英男(2003)『学力は家庭で伸びる-今すぐ親ができること41』小学館 読み書き計算の基礎力と家庭習慣が生きる力につながる。音読し、辞書を手元に、本に触れ、散歩して、など子どもと触れ合う家庭アドバイス。

井上雅彦編著(2008)『家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46―自閉症の子どものためのABA基本プログラム (学研のヒューマンケアブックス)』学研 ABAの基本を押さえてトイレ、着替えなどの生活スキル、模倣、書き置きメモなどのコミュニケーションスキル、キャッチボールなどの運動スキルなどの教え方が具体的に紹介。

井上 雅彦・藤坂龍司(2010)『自閉症の子どものためのABA基本プログラム2家庭でできるコミュニケーション課題30』学研 プロンプトと好子で受容から表出言語の習得へ。マッチング、模倣、指示理解から肯定否定、質問の自発、過去の想起へと。

シーラ・リッチマン(井上雅彦・奥田健次・テーラー幸恵)『自閉症へのABA入門-親と教師のためのガイド』東京書籍 自閉症の解説、ABAの基本、自由時間の遊び、生活スキル、コミュニケーションなど、普段の生活に取り込めるやり方の紹介。

平澤紀子(2010)『応用行動分析学から学ぶ子ども観察力&支援力ガイド』学研 子どもに合わせるといいながら、問題を場当たり的に解決し、本人がどうすればいいか学んでいない場合がある。思い込み支援ではなく、子どもの環境と行動を見て支援を考える。

榊原洋一・上原芳枝(2011)『発達障害サポートマニュアル』PHP研究所 入学前から3年生までは環境を配慮する「地雷除去作業」的支援、高学年になり自分の不得意に向かい合うようになれば支援者とともにどうすればいいかをともに考える作戦会議が有効。実例豊富。

ピーター・ディヤング、インスー・キム・バーグ(2008)『解決のための面接技法―ソリューション・フォーカスト・アプローチの手引き』金剛出版 問題に焦点を当てるのではなく、解決に向けた言葉を増幅させて、自ら解決に向かうソリューション・トーク。褒めや別の見方などを提供。

モーシィ・タルモン(青木安輝)(2001)『シングル・セッション・セラピー』金剛出版 セラピーは複数回することなく、一回で解決できることが多い。患者は能動的立場であることを確認し、患者の話から転換点や力強さを見つけ、解決策を練習する。

B・オハンロン、S・ビードル(宮田敬一白井幸子)(1999)『可能性療法―効果的なブリーフ・セラピーのための51の方法』誠信書房 クライエントを認めて受容する、そして変化を選ぶことも可能であることをつけ加える。変化のための充分な承認と可能性を開く言葉の使い方の提案。

橋本文隆(2008)『問題解決力を高めるソリューション・フォーカス入門―解決志向のコミュニケーション心理学』PHPエディターズグループ うまくいっているところ、例外を探し、その原因を考える。うまくいっているところをくり返す。うまくいっている状態を明らかにして小さなゴールを設定、状況を数値化する。

冲方丁(2009)『天地明察』角川書店 時と方角を定め,時間と空間と宗教的権威を支配する「暦」。幕府と朝廷間にあって江戸時代の数学者が改暦に望む。授時暦導入で一旦は大きな失敗はするものの,10年かけて大和暦の完成と導入へ。爽やかな読後感。

柏木惠子(2011)『親と子の愛情と戦略』講談社新書 親と子は自分の資源を使ってケア(養育・介護)の授受を行う。ケア性を女性に求めすぎたために男性の自立が遅れ、女性の自立が進む。親子関係で一人前に育て自立さが必要になる時に親が自立を妨げる戦略が存在する。

鴨志田穣(2010)『酔いがさめたら、うちにかえろう。」講談社文庫 アルコール依存症で入院、そして入院生活の日々の出来事を楽しく。お酒をやめて元妻と子どものところに戻りたいが。。不安を増幅し自信を失うアルコールの恐ろしさと依存症を家族に持つ辛さなども。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月03日

『「壁と卵」の現代中国論』(献本御礼)

梶谷先生(神戸大)からの献本第二弾です。ありがとうございます。



経済学専門の彼が普段からブログなどで表明している中国の見方に関して,ある意味専門を超えて世間に問う意欲作です。

はっきりいって梶谷さんらしい作品です。彼自身の中国論を整理しているという意味で,他意はなく(笑)専門よりも面白かったです。

さて,タイトルの「壁と卵」は村上春樹から来ています。壁はシステムであり,卵は個人を示唆しています。私たちは中国という存在をシステムとしてみなして批判し擁護しているのではないか,システムの中の個人に焦点があてられていないのではないかというところから中国論を考えようとします。

実際,食の安全でも中国の輸入野菜の安全基準に違反する確率は他の国よりも低いにもかかわらず,私たちはシステムとして中国をみて,「危険」だとして,「何となく嫌」になっているんではなかろうかとしています。

面白いのは専門外の人権や日中関係と民族問題に踏み込んでいるところでしょう。

私としては日中関係が面白かったです。

彼は日本人の中国観を以下の3つに分けています。

@脱亜的中国批判
A実利的日中友好論
B新中国との連携論

@では,中国は必ず行き詰まる、アメリカのような信頼されるパートナーとの関係を強化した上で付き合うべき,という考えです。

Aは,中国の発展や相互の経済関係の深化は日本の利益になる、歓迎すべきであるという考えです。

Bは,中国は将来的に行き詰まることは確実だが,政府に抵抗する勢力があり、そこと連携していくべきであろうという考えです。

この見方の中で対中国観は動いているように思います。ちなみに筆者の中国観はAが5割,Bが4割,@が1割だとしています。

終章でも村上春樹から中国論を展開しています。

オウムの事例から「あちら側」と「こちら側」という考え,そして「いやな感じ」がするというのは,翻って見れば,自分にもそれが当てはまるからではないか,つまり「合わせ鏡的な関係」にあるのではないかということを村上春樹から論じます。

そして

反日デモ、民族対立、尖閣諸島の対応などの私たちが中国に対して抱く「いやな感じ」というのは

「それらの出来事が、私たちにとって「いやな感じ」、言い換えれば「目を背けたくなる一方で、気になって仕方がない」感覚を呼び起こした理由をあえて単純にまとめるなら、それらが「集団になって異質なものを排除する」姿であり、しかもその行為が私たちにとってまさに「他人事」ではないから、なのではないだろうか。」(pp.230-231)

と主張しています。

この見方には非常に共感しました。

献本ありがとうございました。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月18日

都市は一国の経済成長を支える柱

一国経済の地理的範囲を一つの空間として見た場合に,経済成長の大部分は都市が支えています。国境を取り除き,国民国家という枠組みを取り外せば,経済的繁栄は都市にあるといえます。

ということで,今日は大泉先生の『消費するアジア』を紹介します。大泉先生といえば『老いてゆくアジア』で発展途上国研究奨励賞をとられています(ここ)。



本書を要約すると,

急速に成長するアジアの消費市場を着目し,国を超えて都市や地域という観点からその市場の可能性と不安を分析。そしてバンコクなどのメガ都市と長江デルタに代表されるメガリージョンに住んでいるアジアの富裕層と中間層がアジアの消費を支える。ただし農村や都市貧困層の社会的課題の解決が急務である。

となります。

キーワードはメガ都市とメガリージョンです。

メガ都市は,北京,上海,東京,バンコクなどの国際大都市を指し,メガリージョンは大都市近辺を含む(上海であれば周辺の南京や寧波などを含む長江デルタ)地域を指します。メガ都市は一人あたりGDPが1万ドルを超えており,富裕層が集まっています。この富裕層がアジアの消費を支えます。

過剰都市であったバンコクも工場が都市郊外に移転し,都市として成熟するにしたがってメガ都市になりました。

環渤海,長江デルタ,珠江デルタといった三大経済圏はメガリージョンとして,外資と製品を呑み込んできました。

これらがアジアの多種多様なそして大量の消費を支えているというわけです。

ただし,メガ都市やメガリージョンにも問題があります。それは繁栄している地域であるがゆえに,中間層から貧困層まで多くの人を引きつけ,その住民の中で格差が拡大しているということです。都市内部での貧困層の問題,そして地域間格差の拡大が一国の経済に暗い影を落とします。都市内部や地域間での社会的基盤(教育,衛生,水道,社会保障など)への公平的なアクセスが必要であろうとしています。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月11日

2011年9月の読書ノート

2011年9月の読書ノートです。

先月は,心理学と経済学を中心に読みました。行動経済学は心理学を基礎として考えられていますが,行動経済学を理解する上で意外にこの本が役に立ちました。



心理学を人の経済行動に応用しても,どのように政策に反映するんだという問題があります。人を操るというのは大げさにせよ,心理的な錯覚を考慮して制度や政策を考えることが必要だろうと思います。この意味では,チャブリス&シモンズ(2011),セイラー&キャスティーン(2009)(書評はここ)もオススメです。


<経済学>

吉本佳生・NHK制作班編(2009)『出社が楽しい経済学』NHK出版 サンクコスト,機会費用,比較優位,インセンティブ,モラルハザード,逆選択,価格差別,裁定,囚人のジレンマ,共有地の悲劇,割引現在価値,ネットワーク外部性など人の行動と経済の関係を中心にわかりやすい事例で解説。

蓼沼宏一(2011)『幸せのための経済学-効率と衡平の考え方』岩波ジュニア新書 経済は人々の福祉を高めるためにある。どのような資源配分が望ましいか。機能に着目した福祉評価が適切であり、全員の福祉が改善する場合を第一の基準配分にし、利害対立がある場合は衡平性の基準を採用する。

真壁昭夫(2010)『基礎から応用までまるわかり応用行動経済学入門』ダイヤモンド社 非合理な意思決定が行われるのは,プロスペクト理論と価値関数,認知的不協和,ヒューリスティック,初頭効果や代表性バイアスがあるからである。デフレ脱却政策は人の心理を考えると限定的となる可能性もある。

リチャード・セイラー、キャス・サスティーン(遠藤真美)(2009)『実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』日経BP社 人は合理的ではなく、間違いを犯すヒューマンである。選択の自由を守りながら、犯しやすい間違いを避けて選択できるような制度設計を提案。

マッテオ・モッテルリーニ(泉典子)(2008)『経済は感情で動く―― はじめての行動経済学』紀伊國屋書店 私たちの日頃の意思決定は、無意識のプロセス(情緒や感情)、熟慮的プロセス(認知や理性)の間の駆け引きで行われる。時には感情が意思決定のプロセスで力を発揮する。

川西諭(2010)『図解 よくわかる行動経済学―「不合理行動」とのつきあい方』秀和システム 人は無意識的意識的に行動を学び習慣化させていく。無意識行動は不合理のまま継続してしまうし、意識的に行動を選択するとしても,時間を違えていることがある。

ウイリアム・パウンドストーン(松浦俊輔小野木明恵)『プライスレス-必ず得する行動経済学の法則』青土社 金銭価値の評価にはアンカリング、対比を利用した錯覚、暗示に簡単に引っかかる、真ん中の価格のものを選ぶ、セット販売は価格を比較しにくくするなどの有益な行動経済学の知見を紹介。

徳田賢二(2006)『おまけよりも割引してほしい-値ごろ感の経済心理学』ちくま新書 値ごろ感は購入するものの価値を費用で割ったもので示される。おまけという価値がつけられるよりも割引という費用を下げられる方が値ごろ感はアップする。また価値に対する心理的操作で価値は変わる。


<自己啓発>

ピエール・フランク(2007)『宇宙に上手にお願いする法』サンマーク出版 願いを肯定形で書き、今を感謝し、固定観念や疑いから解放されよう。浮かぶ観念を受け入れて、評価しないようにする。上手に願う事で人生に対し意識的に取り組むことができ、自分を信頼することができる。

ジョー・ビタリー(2008)『ザ・キー-ついに解錠される成功の黄金法則』イースト・プレス うまく引き寄せができないのは自分の無意識の思い込み。思い込みを消すために、今を感謝し、思い込みを書き出し分解整理し、愛を唱え、感情を感じ手放す。自分自身を許し、人生のシナリオを書く。

カレン・ケリー(早野依子)(2008)『ザ・シークレットの真実-偉人たちが富を築いた「本当の秘密」』PHP研究所 社会現象になった引き寄せの法則。秘密は意図され演出され歪められたものであった。成功するためにプラスに思考することは大事であるが、もっと重要なことは行動することである。

ドナ・ファーリ(佐藤素子)(1998)『自分の呼吸をつかまえる-自然呼吸法の実践』河出書房新社 心で呼吸するとは、内に生じる思考や感情や感覚に心を向け、不快なものでもありのままに受け入れること。自分は空で感情や思考は雲のように形を変え流れていく。

齋藤孝(2007)『100%人に好かれる聞く力』大和書房 人の魅力は聞く力にあり、人間関係の根本である。自分の側にスペースをあけ、自分の価値観を脇におき、相手の存在を認めて価値観を共有しながら聞く。聞く力のアップには小説や読み聞かせなどによる想像力アップも有効。

山ア拓巳(2010)『やる気のスイッチ!実践セミナー』サンクチュアリ出版 セルフイメージを変えると、それに合わせようとするホメオスタシスが働き、スコトーマ(盲点)が外れて、必要なものが見えてくる。実践ワーク付き。

萩原京二・近藤哲生(2009)『マインドマップ資格試験勉強法』ディスカヴァー21 動機、戦略、戦術、セルフコントロールにより資格試験の合格を目指す。なぜ試験を受けるのか、動機やセルフコントロールにマインドマップが役に立つ。


<社会問題>

堀井憲一郎(2006)『若者殺しの時代』講談社現代新書 大戦後、日本社会は豊かになり頂点に達したが、その後に来た世界はつまらないものだった。ベビーブーマーの世代を先頭に若者がよかった時代から、若者が決定的に損な時代になって来ている。

白川一郎(2005)『日本のニート・世界のフリーター 欧米の経験に学ぶ』中公新書ラクレ 若者が就職難になっているのは、人件費を抑えて非正規雇用を増やしたい企業と正規雇用を望む若者の構造的失業である。最低賃金や終身雇用制度が若者の就職を難しくする。大学の職業教育の充実も提案。

長山靖生(2003)『若者はなぜ「決められないのか」』ちくま新書 安定した現代社会では既得権が尊重され新規参入者にはハードルが高い。持っている可能性だけを過大評価し、親の勤労を見て来た若者は他の働き方としてフリーターを選ぶ。

速水敏彦(2006)『他人を見下す若者たち (講談社現代新書)』講談社現代新書 他者軽視することによって得られる仮想的有能感、経験から規定される自尊感情。怒りを感じる若者は仮想的有能感と関係あるのではないか。他者軽視することで、社会的弊害を生むこともある。

玄田有史・曲沼美恵(2004)『ニート-フリーターでも失業者でもなく』幻冬舎 働こうともしておらず、学校にも行っていないニート。どんな人も働きたいと思いながら動く一歩が踏み出せない。誰もがニートになる可能性はあり、社会に踏み出すキッカケが欲しい。

藤森克彦(2010)『単身急増社会の衝撃』日経新聞出版社 未婚化と離別により、男性の単身世帯が増えている。非正規雇用である場合が多く、貧困問題にもなる。社会保障の充実、高齢化による介護など社会的支援が必要になってくる。

香山リカ(2004)『就職がこわい』講談社 私なんかと自己評価を下げ、私はその他大勢だからと就職を避けながら、私にしかできないことがあるはずという仮想の辞令を待つ矛盾した心理をもつ学生。自分の人生の準主役にはなれるし、人生のエキストラではないことを伝えたい、と。



<その他>

堀田力(2007)『「人間力」の育て方』集英社新書 自分で目標を立て実行する自助、人を大切にする共助を兼ね備える人間力。平等とエリート教育に反対し、子どもたちが自分たちで学ぶ総合学習を主張。高齢者との交流や遊びの場を提供し、ボランティアなどコミュニティで、子どもは学び成長する。

ロベール=ヴァンサン・ジュール,ジャン=レオン・ボーヴォワ(薛善子)(2006)『これで相手は思いのまま -悪用厳禁の心理操作術-』阪急コミュニケーションズ 人は自分が起こしたことのある行動に固執する性質がある(コミットメント)ので,条件を整えればこちらの期待する行動が得られる。

リチャード・ボルスタッド(橋本敦生浅田仁子)『自分を変える最新心理テクニック-神経言語プログラミングの新たな展開』春秋社 優れた心理療法士のワークを分析する為に生まれた神経言語プログラミング(NLP)。NLPは人間の内的・外的コミュニケーションとそれが脳に与える影響を分析する。

ディビッド・C・マクレランド(梅津など訳)(2005)『モチベーション-「達成・パワー・親和・回避」動機の理論と実際』生産性出版社 動機とは感情的に高揚した誘引に基づいて形成される。動機の計測手法、達成動機、パワー動機、親和動機、回避動機の研究成果。

クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ(木村博江)(2011)『錯覚の科学』文藝春秋 人は一つに集中していると他を見落とす、記憶は変化していく、ただの相関を因果関係として見てしまう、などの日常の錯覚は、自分の能力を過大にプラス評価していることが原因。

山崎隆(2007)『東京のどこに住むのが幸せか』講談社 講談社 不動産を買う前に立地を買い、立地を買う前に街を買うことを提唱。かつては武家屋敷で戦前から開発され、80年以上の歴史があり、多様性と歴史的厚みがあり、高額所得者が住む街が資産価値高い。

斉藤ヒジリ(2010)『マンションは間取りで買いなさい』PHP研究所 マンションが住む側の視点で造られているか、造る側の論理で造られているか、間取りでわかる。リビング、主寝室は広く、収納と廊下も広めで程よい長方形がいい。

ドロシー・バトラー(百々佑利子)(1984)『クシュラの奇跡-140冊の絵本の日々』のら書店 多くの障害をもって生まれたクシュラの成長記録。生後4ヶ月から約4歳まで。社会とのつながりを持たせようと始めた絵本の読み聞かせがクシュラの認知発達に好影響をもたらしたのか。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月20日

『実践行動経済学』byセイラー&サスティーン

今日の読書感想は,セイラー&サンスティーンの『実践行動経済学』です。



行動経済学の本を読むと,なるほどなぁ,人ってそういう意志決定するもんなぁ,おもしろいなぁ,で終わってました。どちらかといえば心理学の本を読むようで,読めばためになるのですが,これが経済学になる意味があまりわかりませんでした。つまり,人の意志決定の不合理性を理解することによって,経済学的にどんな含意が得られるか,わかっていませんでした。この本は,経済学としてわかった人の行動の不合理性を政策に生かそうとする試みです。私はこの本で行動経済学の意味を理解したといえるかもしれません。

主張をまとめてみます。

人の行動は不合理であるので,その不合理に配慮しながら自由に選択できる機会を政府が提供する,あるいは注意を向ける(ナッジする)ことによって,社会保障や薬剤の給付などの社会システムをよりよく設計できる。

筆者らはリバタリアン・パターナリズムという立場を標榜しています。リバタリアン・パターナリズムとは,自由主義的温情主義とでも訳すことができます。自由主義は政府の関与を排除し,国民各人の選択は自由に行えることを基本とします。温情主義はそれに反して政府は国民は何も知らないわからない愚民であることを考慮して,政府がすべてを面倒みるという考えです。相反する二つの概念が一緒になっていますが,リバタリアン・パターナリズムとは,政府が何かしらの仕掛け(ナッジ)を用いながら,人に選択する機会を与えるということといえるでしょう。

ところで,ナッジ(nudge)とは,「注意や合図のために人の横腹をやさしく押したり軽くつついたりすること」で,強制ではなく誘導するような政策介入のことを指します。この本の重要キーワードです。政府が強制するのではなく,人の選択がよりよいものになるように背中を軽く押すというイメージです。


人の意思決定の不合理性については,別途(ここ)整理しますが,簡単にいうと,人は大して考えて物事を決めているように見えて,実はそうではないということです。具体的には,直感的感覚的に判断するので,過去のことや最近出会った代表的事例に左右されたり,損失を回避したい,このままでいいと思うところから,過去の経験にそって惰性的に判断,意思決定しています。

年金制度の民営化を考えてみましょう。スウェーデンの事例が挙げられていましたが,自分の積立た年金をどのように運用してもらうか,選択できるようになるとします。公営の時よりも選択の幅が広がったので自由主義者としては民営化はいいことだということになります。

でも人は不合理なので,選択の幅が広がりすぎると選べなくなってしまいますし,最近の運用パフォーマンス結果に左右されて愚かな選択をしてしまうということが起きてしまいます。あるいは連絡がつかない,国外にいる,障害をもつなどさまざまな理由で選択できない人々もいます。政治的にもこれらの人々を放っておくのはよくないことですので,政府が何かしらを彼らに提供する必要があります。つまり温情主義です。

筆者らは,「デフォルト」(選択できなくても最低限の初期的設定)を用意することが望ましいとします。デフォルトとして安全だけど利回りが低いファンドに入ってしまう形をとって救済します。ただそれだけでなく,人々が選択しやすくなるように,広告する,ファンドの特徴の説明をわかりやすくする,などの「ナッジ」を働かせることを提案しています。

このように人の不合理性を理解することによって,政策が提言できるというのは私にとって一つの発見でした。

行動経済学,今後も注目していこうと思います。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月15日

『現代中国の財政金融システム』(献本の紹介)

梶谷先生(神戸大)より献本していただきました。(ちなみに彼のブログはこちら。)



概要は

現代中国の財政金融システムを理解するためには,国内要因である中央と地方の綱引き関係と世界経済とのリンケージとそれに伴う制度変化の2つの要因から注目する必要がある。地方政府は中央政府と関係ないところで自らの利益最大化のために,中央と独立したレントシーキングを目的として財政金融政策が実施されてきたこと,とくに近年では不動産にまつわるレントシーキングが横行している。また1990年代以降は対外開放政策の深化とともに,人民元改革や金融危機を差し置いて中国の財政金融システムを語ることはできない。

というものです。

また

中国の財政金融システムを語る上で清末から民国期にかけての地方軍閥が中央と関係なく独自の財政金融政策を実行していたことがあったことを考えると,歴史的制度の視点も欠かせない。

としています。

現在執筆している単著の原稿にも,示唆に富む論点が提示されているので,非常に勉強になりました。

中国経済をやっている人にはぜひ読んでもらいたい本です。彼の今までの研究が集大成されています。

献本ありがとうございました。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月06日

2011年8月読書ノート

2011年8月の読書ノートです。

今回のオススメは,岡本『中国「反日」の源流』です。



歴史はあまりよくわからないことが多いのですが,これは中国と日本の関係を考える上で基本となる書物かもしれません。

単純に要約すると,

中国の統治や社会形態は複雑であり,日本人は理解しづらいものであった。日本はずっと中国の周辺国の一つであったのに,近代化の過程で中国を侵略するようになり,中国は戸惑い,反日意識が形成されてきたのである。

というところです。日中関係がこじれるとこの本に戻るとさらに理解が進むかもしれません。いい本でした。

<中国>
岡本隆司(2011)『中国「反日」の源流 (講談社選書メチエ)』講談社選書メチエ 社会構造の違いが統治形態と対外姿勢の違いを生む。相互の理解不足が誤解と対立を生み出した。朝貢国日本の倭寇、日清戦争が中国を戸惑わせ反日に向かわさせる。

加藤弘之・上原一慶(2011)『現代中国経済論 (シリーズ・現代の世界経済)』ミネルヴァ書房 広大な面積と多様な民族を抱えるユニークな中国。中国を多面的に把握するため、歴史、都市農村間、地域の集合体、成長を制約する要因、グローバル化の中での位置づけから中国経済を理解する。

関志雄(2009)『チャイナ・アズ・ナンバーワン』東洋経済新報社 中国は成長率、輸出などにおいて世界最大の国である。現在の中国は社会主義初級段階にあるのではなく、原始資本主義の段階にあり、だからこそ成熟した資本主義を目指すことになるとともに一党独裁の放棄が視野に入るだろうと。

関志雄・朱建栄編(2009)『中国経済 成長の壁』勁草書房 中国の粗放型成長は資源浪費と環境問題をもたらした。政府の資源・エネルギー対策、水問題の特殊性と取り組み、2008年に成立した循環経済促進法とリサイクル、日中環境協力の成果など。

関志雄・朱建栄編(2008)『中国は先進国か』勁草書房 中国が直面する課題、バブル化する資産市場、単調な産業技術、固定化する貿易黒字、進まない民主化、変わる外交戦略、孔子学院に代表されるソフトパワーの拡大。この中で中国は新たな4つの近代化(工業化、都市化、国際化、情報化)を図る。

関志雄・朱建栄編(2008)『中国の経済大論争』勁草書房 改革によってもたらされる様々な経済問題。政府は調和社会の実現を目指すが、具体的にどうするのか。国有企業の資産流出、非流通株の放出、高い教育費や医療費、外資の役割、地方財政の立て直しなど、論点と方策に関する議論。

関志雄(2007)『中国を動かす経済学者たち―改革開放の水先案内人』東洋経済新報社 効率と公平の軸で新左派と新自由主義者に分かれる中国の経済学者たち。経済改革の市場経済化と国有企業改革において議論を展開し、市場経済化へ貢献してきた呉敬l、所有制改革に貢献した董輔ジョウ(しめすへんに乃)、肢ネ寧など。



<自己啓発>
ブライアン・トレーシー(門田美鈴)(2005)『夢のリストで思いどおりの未来を作る!』ダイヤモンド社 自分の望みを人に語り、将来ビジョン、夢、目標を書き出そう。断定的に書き、成功に近づいていると断言する。成人の97%は自分の目標を書き出していない。

萩本欽一(2011)『ダメなときほど運はたまる-だれでも運のいい人になれる50のヒント』廣済堂新書 かわいそうな境遇の人、嫌なことじっと我慢する人、努力している人に運がやって来る。嫌なことが起きた時こそ恨み言ではなく、いい言葉を見つける最高のチャンス。いい言葉は運を招く。

内藤忍(2009)『60歳までに1億円つくる術-25歳ゼロ30歳100万40歳600万から始める』幻冬舎新書 投資は長期分散低コストインデックス積み立てで。欲望と恐怖を克服するために、どこまで下がっても大丈夫かを考えておき、一年に4回ほど資産をチェックできる仕組み作りを。

本田直之(2009)『なまけもののあなたがうまくいく57の法則』大和書房 自分はなまけものであることを自覚し、努力や気合いに頼らず、工夫をして習慣化する。予定に組み込んだり、今の習慣の悪影響を書き出したり、してまずは最初の10日間やってみよう。

森博嗣(2010)『自由をつくる 自在に生きる』集英社新書 自由とは自分の思い通りになること。人生の目的は自由になることであり、自分で決めた目標を達成するために、支配から抜け出そうともがき、目標に近づくのが自由を感じる方法である。

森博嗣(2010)『創るセンス 工作の思考』集英社新書 「予期せぬ問題は必ず起こるものだ」という工作の第一法則。その場で解決する経験を重ねて行くうちに、問題に対する対処の仕方が感覚的にわかってくる。これは具体的な解決策ではなく、問題に向き合う姿勢であり、これが工作のセンス。

森博嗣(2011)『自分探しと楽しさについて (集英社新書)』集英社新書 他者からみた自分と本来の自分のギャップが悩みの種。他者を意識するから自分があるので、自分のことを忘れる行為に没頭することが効果的、そのために能動的に楽しみを見つける。他者を認めることで自分を確立する。

吉山勇樹(2011)『ダメなパターンから抜け出すための小さな工夫』サンクチュアリ出版 夢ポスターを作ってモチベーションを維持、一日の中にやることリストを作る時間をとる、やる気のない時ほどあえて考えずに行動してみる、人のうわさは一つの見方として受け流す、など。

アレクサンドラ・ストッダード(匝瑳玲子)(2009)『賢い選択 愚かな選択-人生が変わる考え方』海竜社 あなたはという人はこの世に1人しか存在しない。だから他の誰もできないことをして自分の欲求を満たす義務がある。より良い選択を行い、人生をより良く生きる。

エスター・ヒックス、ジェリー・ヒックス(2007)『引き寄せの法則-エイブラハムとの対話』ソフトバンククリエイティブ 引き寄せ、意図的創造、許容し可能にするの三つの法則。本当に欲しているものは何か,感情のナビゲーションが利用できる。心地よい感情のものに自分を向けよう。

ジュヌビエーブ・ベーレン(林陽)(2011)『願望物質化の『超』法則-引き寄せの法則のマスターたちが隠す本物の虎の巻』ヒカルランド 朝と夜の瞑想で願望を実現していることを視覚化する。思いの所有を確認し現実だと感じるまで何度も心中に絵を描く。人は思うものの通りになる。

<社会問題>
読売新聞大阪本社編(2002)『潰れる大学、潰れない大学』中公新書ラクレ 学力低下に対応して学びの技法を導入し、実学資格コースを用意する。教授力を上げるために授業評価や教員の評価システムを考える。国公立の再編や早慶、APUなど私立の取り組みなど。

杉山幸丸(2004)『崖っぷち弱小大学物語』中公新書ラクレ 必ずしも勉強したくて大学に入ったわけではない学生、就職に役立つ近視眼的勉強を求める学生。そんな学生たちに人生を豊かにするための勉強をしようと動機付けさせることは難しいが、学生の地平に立ち、教育のあるべき姿を思い実行する。

早田幸政、諸星裕、青野透編(2010)『高等教育入門-大学教育のこれから-』ミネルヴァ書房 高等教育の歴史、や制度を他国と比較しながら紹介。大学の改革方向として初年次教育、学生参画型教育、FD、学生支援を検討し、大学の経営、大学院などマネジメント、質と評価を考える。

森博嗣(2005)『大学の話をしましょうか-最高学府のデバイスとポテンシャル』集英社新書 教育者としての役割とは学生に学びたいと思わせること、面白い講義とはその先生がそのテーマに真剣に取り組んでいて、それが伝わってくる授業。学びたい人にとって、力のある研究者が身近にいること、そういった人に接することこそが大学の最終的かつ唯一の存在理由である。

苅谷剛彦(1995)『大衆教育社会のゆくえ―学歴主義と平等神話の戦後史 (中公新書)』中公新書 よい教育により成功が期待されると人々は教育機会の拡大と平等を求める。日本に実現した大衆教育社会では、経済成長に貢献したが、学歴社会を過度に意識し、学校を通じて形成される不平等を受け入れるようになった。

苅谷剛彦(2003)『なぜ教育論争は不毛なのか-学力論争を超えて』中公新書 旧来の学力(学業成績)にも自ら学び自ら考える力(新しい学力)にもそれには差が存在するものなのに、その違いを無視して誰にでも身につくものと考えるのが、平等化と大衆化の圧力である。

戸田忠雄(2007)『学校は誰のものか-学習者主権をめざして』講談社新書 教育の主導権は教師にあるという思い込みとそれを守る教育権益の集団。学校の格差や教員の質、教育レベルの向上のためには、学習者が学校を選択できるようにするバウチャー制度こそが供給者論理を需要者側に取り戻せる。

嶋崎政雄(2008)『学校崩壊と理不尽クレーム』集英社新書 家庭はしつけと癒やしの場であるが、近年癒やしの場としてとらえる傾向がある。学校は公の場であるが、保護者の「私」を何でも押し付ける傾向が助長されるとクレームに。学校と家庭がお互いの役割を尊重することが重要。

マット・リドレー(大田直子鍛原多惠子柴田裕之)(2010)『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(上)(下)』早川書房 繁栄とは交換と専門化である。生物学的進化は生殖によってもたらされる。社会的進化もアイデアがつがい始め生殖した結果繁栄がもたらされた。物の交換が文化を累積し始め、分業が進み人は専門化した。専門化はイノベーションを起こし社会は豊かになったのである。不景気、人口爆発、気候変動、テロ、貧困など悲観的な出来事に不満を述べたくなるが、平均的な人間にとって世界はこれまでにないほど住み良い場所であり,これからも続く。

斎藤環(2005)『「負けた」教の信者たち-ニート・ひきこもり社会論』中公新書 負けたと思う自意識がなぜ固定化するのか。自分の現状を否定しより高い理念の側にプライドを保つ「自傷的自己愛」が社会に蔓延している。ひきこもり報道や最近の若者論はそれを助長していないか。



<その他>
架神恭介・辰巳一世(2009)『完全教祖マニュアル』ちくま新書 キリスト教、イスラム教、仏教や一部具体的宗教団体の教義、歴史を踏まえながら、教義を作り、教えを簡略化し、信者をまとめ、布教し、困難に打ち克ち、国教化を目指すまでの教祖マニュアル。平易でパロディ化した宗教解説書。

マット・リドレー(中村桂子)(2004)『やわらかな遺伝子』紀伊國屋書店 生まれか育ちか、という遺伝子対環境の議論。最近の科学の成果は遺伝子が行為の原因であると同時に、遺伝子は経験や環境から学び適応するものである。「生まれは育ちを通して」変化するのである。

伊坂幸太郎(2004)『重力ピエロ』新潮文庫 家族の暗部である弟・春の出生の秘密。過去の出来事を忘れぬまま大きくなった兄弟は,連続放火事件と遺伝子コードがきっかけで,暗部に向き合うことになる。暗部を消し去ろうとした弟,弟を守ろうとする兄。運命(重力)にさからうピエロのように・・・
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月30日

交換の素晴らしさ

今日の読書感想はマット・リドレーの『繁栄』です。彼は科学の啓蒙家として一般書を書く人ですが、遺伝などの生物学の知識を中心に社会進歩、繁栄について考察しています。




この本の主張をまとめてみます。

繁栄とは交換と専門化によってもたらされる。生物学的進化はオスとメスによる生殖によってもたらされてきた。社会的進化もアイデアがつがい始め生殖した結果,新たな技術が開発され,社会は進歩し,繁栄がもたらされたのである。物の交換が文化を累積し始め、分業が進み人は専門化した。専門化はイノベーションを起こし社会は豊かになったのである。不景気、人口爆発、気候変動、テロ、貧困など悲観的な出来事に不満を述べたくなるが、平均的な人間にとって世界はこれまでにないほど住み良い場所に変わってきたのであり、社会のイノベーションを生み出す力は,これからもさらにより良い社会を作り続けられるであろう。

この本の良さは,経済学の重要原理である「自発的交換」と「比較優位」の素晴らしさを改めて再確認できるということです。

例えば,二人で中華料理屋に入って、一人が餃子定食、一人が酢豚定食頼んで、おかずを半分ずつ交換したとします。そうすると,お得感(効用)が増加します。これが「自発的な交換」は素晴らしいさです。もちろん強制的な交換にお得感はありません。双方ともに納得して交換すればいいので,はたからみて不公平じゃないかなと思っても当人同士は満足しているわけです。

むかしアメリカ版わらしべ長者の話がありましたが(ここ),まさに交換の素晴らしさを示していると思います。

そして交換が進むと,人々は自分の得意なものに特化(専門化)していきます。自分にとって苦手なことに取り組むには時間がかかります。得意なことは時間がかからないでしょう。つまり苦手なことにかかる時間を得意なことに振り替えれば時間を有効に活用することができます。そして得意なことを続ければ続けるほど,費用は逓減していきます。そしてさらに得意になるため,あるいはもっと楽にやろうとするため新しい生産方法を発明することにつながります。

新たな生産方式で生産できるようになるとそのモノは交換としても魅力が増して来ます。そうすると交換がさらに爆発的に進展します。これがさらなる専門化と発明を生み出し,社会は進歩すると考えられるわけです。

また都市についても勉強になりました。

「都市は交易のために存在する。そこは人々が自分の労働を分配し、専門化と交換を行うためにやってくる場所だ。都市は交易が盛んになると成長し、交易が干上がると縮小する。」

そして都市に人が集まることについても

「地球に関する限りこれは(都市生活者は50億人に達すること)朗報だ。なぜなら、都市住民の方が田舎の住人よりも取るスペースは狭く、使うエネルギーは少なく、自然の生態系に与える影響が小さいからだ。」

と外部不経済よりも外部経済が大きいことを指摘しています。

そして,地球上のさまざまな問題について,人々は悲観主義に陥ります。もう地球は破滅するんじゃないかとか,資源や環境問題はもう深刻な状態になってきたんじゃないかと悲観にくれるわけです。マット・リドレーは環境と貧困についてさまざまなデータを示しながら合理的楽観主義になるように説得します。また人の常として悲観主義に陥りやすいことを以下のように言っています。

「悲観主義はつねに興行収入の多い演目であった。それはグレッグ・イースターブルックが「人生が良くなっていると信じまいとする集団心理」と呼ぶ人の性癖につけ込む。興味深いことに人びとはこの心理を自分個人には当てはめない。」

つまり,人は自分個人に関しては楽観的である反面、社会全体に関しては悲観的になりやすいようです。確かに人は自分の将来はなんとかなると考えがちですが,ニュースなどを見て悲観的になっているように思います。

読み終わった後に,将来への希望も持てるいい本でした。
posted by okmtnbhr at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする