2016年08月09日

新しい都市アジェンダ‐World Cities Report 2016

昨年、国連で「持続可能な開発目標(SDGs)2030アジェンダ」が採用されました。2001年に策定されたミレニアム開発目標の後継です。

都市人口が世界の54%を占めるようになった現在、そのSDGsを到達するために重要な役割を持っているのが都市です。都市開発においては、1996年イスタンブールでHabitat IIが開催され、今年はその20年目という節目になりました。今年10月にエクアドル・キトでHabitat IIIが開催され、新しい都市アジェンダ(A New Urban Agenda)が採択される予定です。

その下準備ともいえる資料が、World Cities Report 2016です。都市計画・政策の重要性が主張されています。

参考資料(要約)

World Cities Report 2016
(Quick FactとPolicy Pointsを整理。)

第1章 HABITAT IIからHABITAT IIIへ:都市発展の20年
現状
世界の都市地域は20年前の時よりもさらに巨大な課題と挑戦に直面している。

都市は経済、社会、文化、生態という面で運営されており、それらは20世紀の都市モデルとは大きく異なってきている。

過去20年間の恒久的な都市問題は、都市の成長、家族構成の変化、スラム人口の増加、非正式な定住、そして都市サービスの提供である。

それに関連して、都市統治と金融の中で新たなトレンドになっている問題がある。それらは気候変動、疎外と所得格差、治安の不安定、国際移民の増加などである。

政策
きちんと運営されると、都市化は社会と経済の進歩そして生活の質の改善につながる。

現在の都市化モデルは多くの点で持続不可能である。

世界の多くの都市が都市化にともなう挑戦に準備できていない。

新しいアジェンダはこれらの挑戦に効果的に対応でき、都市化が持ち込む機会を最大限利用できるものでなければならない。

新しいアジェンダは都市と人の定住を促すべきで、それらは環境持続的で、回復力を持ち、社会包摂的で、安全で暴力がなく、経済的には生産的なものでなければならない。

第2章 変化を起こす力としての都市化
現状
この20年間、都市は生産、イノベーション、貿易の経済プラットフォームとして台頭してきた。

都市地域は、フォーマルであれインフォーマルであれ就業機会を提供し、新たな民間部門での仕事を生み出してきた。

都市化は生産性の向上、就業機会、改善された生活の質、そしてインフラやサービスへの大規模投資によって何千万もの人々を貧困から救い出してきた。

都市化の変化を起こす力は、一部情報通信技術の発展に負っている。

政策
都市は、持続的な経済成長、発展、繁栄をもたらし、またイノベーションを生み出す積極的かつ潜在的な力を持つようになっている。

都市化のメリットを実現するには、都市の成長をどのように計画し、運営するか、そして都市化の便益をどのように平等に分配するかという点にかかっている。

部門介入から戦略的都市計画へ、そしてより包括的な都市政策プラットフォームが、都市を変えるのに重要である。

情報通信技術が偏って利用される時、デジタルデバイドが発生する。それは不平等を生み出し、情報につながっている裕福な人々と、情報サービスが受けられていない貧困層が共存する形となる。

第3章 住宅の運命
現状
この20年間、住宅事情は一国でも国際でも開発アジェンダの中心ではなかった。

実行可能なアプローチとして採用されてきた住宅政策は、適切かつ手の届く範囲での住宅建設を促すことはなかった。

政府がもっとも関わってきたのは、購入が可能な中産階級層のフォーマルセクターにおける住宅購入だった。

スラム問題は、発展途上国における都市の貧困問題の中心であり続け、全途上国のスラム居住者の割合は1990年から減少しているが、絶対数は増加している。

政策
都市の未来が持続可能なものとするためには、住宅を都市政策の中心におく新たなアプローチが必要である。

UN-Habitatは、持続可能な都市化を達成するために住宅に焦点をあて、新たな都市アジェンダの中心に住宅を置くことを提案している。

国家レベルでの目標は、住宅を国家都市政策に、そしてUN-Habitatが考える計画された都市化の戦略思考に組み入れることである。

地方レベルでは、住宅は、適切な日常のフレームワーク、都市計画とファイナンスの中で、人と都市の発展の一部として扱われ、強化されるべきである。

第4章 広がる都市格差
現状
今日の世界は20年前よりも不公平になっている。世界の75%の都市が20年前よりも所得格差が広がった。

歴史的に都市のダイナミズムとしてとらえられていた、多様な個人の能力、文化背景の機会は多くの地域で停滞している。

今日の多くの都市が、持続的な空間を物理的にも提供できておらず、市民社会、社会経済そして文化的領域のすべてにおいてそれが提供できていない。

隔離された形で低所得の非熟練労働者が空間的に集中しているという事実は、雇用の制限、ジェンダー不均衡、悪化する生活条件、社会的な疎外や限界、高犯罪率という貧困の罠として機能している。

政策
都市はイノベーションの場所である。新しい経済的なアイデアが結晶し、異質な集団が近隣として共存するスペースである。

都市の異質性、高密度、多様性は経済イノベーション、民主的な進展につながり、そのため計画され、管理されるべきであろう。

都市の市民空間から疎外されているという課題には、「都市での権利」や権利志向型アプローチで向き合う必要がある。

Habitat IIIはまさに包摂的な都市への国際的なコミットメントを新しくする時となっている。

第5章 「正しい」環境持続性
事実
2030年までに、世界のエネルギーと水需要はそれぞれ40%、50%増加すると予想されている。

固体廃棄物の処理では、低中所得国の地元政府の年間予算の30%から50%を占める。

都市では、熱波、深刻な降雨や干ばつにみられる気候変動がそれぞれの現象を混ぜ合わせ、災害危機管理をより複雑なものにしている。

極端な出来事に直面して、都市はより公平な環境に貢献できるよう、回復力をもった斬新な方法が必要であることをますます理解するようになってきている。

先進国は途上国に対して気候変動を和らげる金融支援を行っているけれども、この全地球気温が上昇し続けるならば、それは及ばなかったことになる。

政策
都市環境に対する人権志向型アプローチは、完全で豊富な資源に普遍的に依存していることを強調している。

「正しい持続可能性」という定義を都市計画や政策の主流にするには、現在優勢で、時代遅れの先入観に挑戦し、具体的な地域の生態学的制約を考慮していく。

新しい計画アプローチは環境活動への幅広い金融支援を提供し、ただの経済評価を超えた価値ある貢献を認識できるようになっている。

各レベルのガバナンスアプローチを強化することは、低炭素都市になること、将来の都市回復力をを上げることの必要条件である。

第6章 ゲームのルール:都市ガバナンスと立法
事実
多くの国で地方分権化を進めているが、一般的にHabitat IIで目指したものには到達しなかった。

非効率と実行不可能な立法改革は、「普遍性」へのこだわりの反映であり、海外の「ベストプラクティス」の導入は現場の状況を無視したものであった。

発展途上国や移行国の計画規則はしばしば詳細過ぎて、柔軟性がなく遵守するのが難しいので、人々はそれらをすり抜けてしまおうとしてしまう。

地元の詳細な情報に基づいた公共政策を行う行政能力と説明責任が、地方分権には必要であり、それが経済発展に貢献する。

政策
良質の都市法律は、投資、強い経済パフォーマンス、富の創出に貢献する。それは予測可能性と都市開発の秩序を指し示すからである。

効果的な地方政府のガバナンスは、参加型サービスの提供計画、予算、管理とモニタリングの上に成り立つ。一旦、適切な法律的な権力、適切な予算措置、人の能力が与えられると、変わるべき課題を動かすことができる。

成功した法改正のための重要な要素は、信頼性である。法律は文化的に共鳴し、強制力のあるとき信頼性が向上する。

基本的かつ本質的な法律、そして強制力のある派生的な立法への焦点が、持続可能な都市開発に最も効果的なサポートを提供する。

第7章 計画する都市:都市計画の再発明

事実
今日、世界の多くの都市は依然時代遅れの計画モデルに依存している。計画を中心におくこと、それが持続可能な都市開発を達成させることができる。

世界中の都市は、拡大しつつあり、そのため密度が大幅に減少してきている。発展途上国では、2000年から2050年の間に、年間密度が1パーセントずつ減少し、結果、都市部の土地面積は4倍になる見込みである。

ほとんどの都市の計画の枠組みは、ジェンダーに配慮されていない。その結果、女性は、多くの場合、計画プロセスと意思決定の外にある。

計画能力は、発展途上国の多くで不十分だ。ナイジェリア、インドでの都市計画プランナー人口10万人あたりそれぞれ1.44と0.23であるが、英国では、38人いる。

政策
統合された他部門の計画アプローチは、強力な成功体験がある。したがって、より多くの都市で採用されるべきであろう。

地方の状況、ニーズと要求は都市計画の最優先事項であるととともに、多様化する人口への対応としてジェンダーへの配慮と参画が必要である。

計画は、様々な地理的スケールで用意され、持続可能かつ協調的な道路、乗り換え、住宅、経済発展、をサポートするために統合されるべきであり、土地利用は地形的政治的境界を超えて実施されるべきである。

途上国では、教育とプロのプランナーの訓練を増加させ、計画教育の能力を向上させなければならない。

第8章 変化する都市経済のダイナミクス
事実
メガシティと大都市圏は、二次都市よりもグローバル化からより多くの恩恵を受けている。

不十分な都市インフラとサービスが最適な資源配分を可能にする経済成長や活動を妨げている。

集積のメリットは、欠点を補う傾向にあり、不経済を適切に管理するための資源を提供する。

フォーマルな雇用は、急速な都市化と並行して成長しておらず、そのため都市の社会的、経済的不平等を悪化させている。

政策
都市の計画と経済発展政策との間に関連をもたせ、政府のあらゆるレベルにわたって統合されなければならない。

官民パートナーシップ、土地税及び使用料を通じて都市の財政を強化すること、国と都市政府間のより公平な財政協定を発展させることは、持続可能な発展のために不可欠である。

責任の所在がわかるように地方分権化のための法的枠組みを提供することは、都市のガバナンス構造を改善するために不可欠である。

経済発展に都市政策をリンクすることは、競争力と地域経済のパフォーマンスを向上させるために重要である。

第9章 新しい都市アジェンダへの原則
事実
人口増加を予期して新たな都市部の出現と都市部の拡張は、それ自体で、前世期に世界が輩出したものよりも、多くの排出を引き起こしている。

この20年間の都市部での密度の減少は、人口統計と空間的拡大がともに協調していくことを示している。密度の低い都市は、より高いインフラストラクチャのコストをもたらし、モビリティを悪化させ、かつ農地を破壊する。

都市の新たな未来へのダイナミクスは、新しい都市の形、人々の新しい幸福な行動、行動や資源利用の新しいパターン、新しい機会とリスクの結果である。

豊かな国と貧しい国のどちらにおいても、経済と人口統計の重要性が増加しているにもかかわらず、都市の役割は広く理解されておらず、グローバルに政府や公式な場できちんと認識されていない。

政策
公共の利益が基本原則として考慮されなければならず、それによって都市部に影響を与える政策や行動が判断されるべきである。

新しい都市アジェンダが1国の政策で重視されないと、都市の将来は、生産性の低い、より不平等で、より気候変動の影響を受けやすく、貧困層の生活水準は低いままになりかねない。

ハビタットIIIは、持続可能な開発目標の下で包括的で上りゆく未来を示す地図となる。

戦略的・政策的思考で大きな変化を導く一連の原則は、その人権、法の支配を確かなものにするために提示され、公平な開発と民主的な参加こそが新たな都市アジェンダの要諦でもある。

新しい都市アジェンダは、部門ベースのアプローチを越えた一連の実行可能戦略に基づいてなければならない。地域の特異性は、信頼できる新しい都市アジェンダの策定のために考慮されなければならず、問題指向型であり、プログラムされたもので、そして実用的でなければならない。
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2016年08月02日

The State of Asian and Pacific Cities 2015 (簡単な要約)

昨年UNHABITATから発表された

The State of Asian and Pacific Cities 2015(無料PDF)

を簡単に紹介。来週紹介する予定のWorld Cities Report 2016のアジア版です。これらの報告書は10月にリオで開催されるUNHABITAT3のための報告書という位置づけです。UNHABITAT2が20年前に開催されたので、20年ぶりに新しい都市開発に関するアジェンダが発表されることとなります。

さて、大まかに内容を紹介しますが、主に各章の要約部分を訳出しています。(わかりにくいところ、間違いがあればお許しを)

第1章 人口と都市

1980年から2010年までの間に、この地域の都市は10億人増加し、2040年までにはさらに10億人が増える。地域の人口の半分が2018年までに都市に住み、農村地域は人口減少の時代に入る。

2050年までに中国とインドの都市だけで6億96百万人増加する(インド4.04億人、中国2.92億人)

地域はすでに、東京、デリー、上海の三大世界大都市を含む17のメガシティを擁し、2030年までに22メガシティになる見込みである。

メガシティは、都市、町、村や農村などを取り囲む、大きなメガ都市地域へ道を譲りつつある。そしてそれらの幾つかは計画、非計画的な都市回廊の形でもって国境をも超えている。

メガ都市地域は行政的に分割されていることがあり、その問題は行政的境界を超越している。この衝撃を管理するには新しく、多層的かつ強力的なガバナンスモーダリティーが必要である。

メガシティは地域の都市住民の10%をちょっと超える程度しか収容しておらず、それは全人口の7%に過ぎない。大部分の都市住民は中小都市に住み、地域の都市化移行の大部分がそこで行われている。しかし重要性が増しているにも関わらず、多くの賞都市は人的、資金的、組織的資源が足らない未来に直面している。

多くの都市が成長している中で、成長が停滞あるいは人口が減少している都市もある。理由は、高齢化から就業機会の喪失、脱工業化までさまざまである。

地域には正確なデータがなく、効果的な空間的、経済的、環境的、貧困減少政策が打ち出せない。「都市データ革命」が急務である。

第2章 都市経済

ここ数十年の間、多くのアジア太平洋諸国の政府は都市化を国の開発戦略とリンクしてきた。都市の経済的成功は、国家や地域のそれと完全に一緒になっている。

多くの都市は経済成長、富創出の重要なノードになっている。幾つかの都市経済はすでにアジア太平洋のいくつかの国のGDPを超えている。

多くの都市が「ワールドクラス」「地球的競争」になりたいと熱望しているが、小さな都市や町では、人的、金銭的、組織的資源が不足するという不利さを抱えており、世界的貿易につながる、あるいは利用することができていない。

国家の都市政策や都市計画は小都市・街の経済的機会を創出できるように考えられている。

競争的、低コスト生産は数百万人の人々を貧困から救い、多くの都市中産階級を生み出したが、多くの場合この移行は高い環境的社会的コストを支払っている。

生産の継続と低賃金労働は効果的な長期的発展戦略ではありえず、内包的でも持続的な都市発展にもなりえない。

地域の都市が「中所得国の罠」を乗り越えるには、新しいビジョンとパートナーシップが必要であり、他にも膨大な教育職業投資が必要である。質的成長に着目すべきだ。

都市の貧困と脆弱性は過小評価されたままだ。地域都市住民の三分の一は適切な避難場所、エネルギー、安全な飲み水と衛星にアクセスできていない。

女性と若者は就業と独立した生活障害に直面し続けている。それは正式な教育にアクセスできず、あるいは伝統的家族規範の結果による。

都市貧困が経済的競争への貢献にも関わらず、貧困対策の経済的社会的政策への反映は十分ではないままである。

第3章 移行期にある都市社会

都市社会はより多様に、複雑になってきており、政策担当者の新しい挑戦となってきている。

中産階級の成長は、消費形態、自宅所有、移動、サービスそして都市環境で変更をもたらしている。

しかし中産階級の成長は内包的なものではない。都市貧困層は近年の成長の縁に追いやられ、若者の失業率は高く、移民者はその権利において不利になっている。

都市居住コストの上昇により、貧困層は適切な住宅とサービスを受けることが難しくなってきている。拡大する格差は社会のまとまり、コンセンサスを脅かし、許容範囲はすでに多くの大都市で危機的ポイントに来ている。

よりバランスのとれた成長モデルが必要であり、貧困層、老人、障害を持って暮らす人々に恩恵をもたらすようにしなければならない。

繁栄と内包的な都市の未来へ向けた、競合する需要と格差への対応というバランスには、刷新された都市社会アジェンダ、そして社会政策に十分投資されたものが必要である。

地域の都市の大部分が安全な場所になりつつも、性別による暴力はいまだに大きな挑戦であり、女性の都市生活への完全な参加への障害となっている。

多様性を利用し、公共への関わりや参加への空間を作ること、そして生活の質への投資を行うことができる都市は将来への競争力、居住性という点でいい位置を占めることが可能となろう。

第4章 都市の環境と気候問題

この地域の都市経済は環境搾取的なモデルで成長してきた。その結果多くの都市で巨大な環境問題に直面し、ますます多くの都市が居住性の複数の危機に直面している。

幾つかの環境問題は新しく発生したものであるが(気候変動など)、その他は固定的なもの(大気汚染、衛生問題など)である。多くの都市が存在する新たな環境的なプレッシャーに同時に対応すべく戦っている。

地球温暖化の主要源として、アジア太平洋の都市は低炭素の経済、インフラ、交通を確立していくことが急務である。

新しい経済、都市発展のモデルは都市生態環境への投資、環境サービスが広く提供されるものでなければならない。

伝統的な都市廃棄物管理は耐えられるものではない。廃棄物から資源へというアプローチ、3Rの推進、循環経済という概念を通じて、都市はより効率的な資源利用と廃棄物処理を達成しなければならない。

地域の都市は災害や気候変動のインパクトに対して脆弱である。とくに貧困層と不利な共同体にとってはなおさらである。都市と住民がストレスやショックに対して生き残り、対応し、挑戦していく能力を強化していくことによって、都市の脆弱性を減らすことが可能である。

第5章 都市統治(ガバナンス)

アジア太平洋の都市は、急速な成長、経済転換、社会の複雑性、分裂性の増加、環境インパクトに対してどのように管理するか取り組んでいる。

都市移行を管理するにあたって、各レベルの政府は統治を提供しているという基本的な責任感を取り戻さなければならない。しかし複雑性、都市地域の成長から考えて、政府はすべてのことをしようとするべきではない。むしろ他のステークホルダーとのパートナーシップを結ぶことについて戦略的な役割を果たすべきである。

多くの大都市が都市スプロールと分裂という様相を呈している。都市成長はますます公共と私人、公式と非公式、国家と市民社会という垣根を超える、あるいは曖昧になってきている。都市発展の必要性に対処するためには、国の都市政策に支えられた新しい協力的なcollaborativeガバナンスが必要である。

中央集権的あるいは完全な分権、どちらも効果的な都市ガバナンスの万能薬にはなりえない。具体的な都市、国のコンテキストの中で機能する制度的な配置について注目されるべきである。

公共の政策決定過程を透明にすること、制度的なアカウンタビリティーを確保することは重要な目的となりうる。より責任をもち効率的な地方の制度は効率的なパートナーシップの創出や都市住民の支援と参加を促す上で重要である。

このような挑戦に向かう上で、国家と地方の政府は変化を生み出し管理する重要な責任を有する。これらは統一のとれた国家のガイダンスや政策に支えられて初めて可能である。多くのアジア太平洋の都市は法的、規範的なフレームワーク、制度的な配置を通じて運営されているが、それらは遅れている。

地方と中央政府の権力シェアのギャップに対応する必要がある。地方政府の予算と投資に関する金融的なギャップ、戦略的未来志向の都市計画を推進する上での地方政府の能力のギャップなどである。

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2016年07月26日

都市経済における土地の重要性

中国でこんなニュースが。。。

中国、「新都市」開発34億人分 人口の2.5倍、野放図に計画
(西日本新聞2016年7月24日)

==以下引用==
【北京・相本康一】中国全土で計画中の「新城(新都市)」は5月現在で計3500カ所以上あり、定住を見込む人口を合計すると34億人に達する。中国政府は「新型都市化」を重点政策に掲げているが、中国の総人口(13億7千万人)の2・5倍に相当する計画に対し、専門家から「現実離れしている」との批判が出ている。

(略)

 国営通信、新華社によると、省や市、その下部の県レベルも含めた開発構想では住宅開発が優先され、産業育成が間に合っていない。地方政府が開発業者に土地を売却して収入を確保する「土地財政」の構造を背景に、過大な人口増を見込む傾向にあるという。

 開発実績が地方の共産党幹部の「評価」につながる事情もあり、各地に誰も住まない「鬼城(ゴーストタウン)」を生んでいる。

 専門家は「新型都市化は行政主導ではなく、市場メカニズムに任せるべきだ」と指摘している。

==以上引用==

まぁ多くの人が感じていたことが、数字として公表されると、結構無駄な投資がされているなぁと感じます。

ところで、伝統的経済学では、労働と資本が重要な生産要素です。市場が存在すれば、労働と資本は空間的にも産業的にも必要なところに配分されることになっています。労働と資本は「移動」しやすいからです。

もちろん移動のしやすさでいうと、資本>労働です。労働は住んでいるところのしがらみとか、新しく行くところへの不安とかがあるので、仕事があるからと言って、すぐに移動できるわけではありません。一方、お金は、必要なところはもうかる機会があるということですので、銀行がそれを察知すればすぐに投資がされます。

さて、ここで都市とか地域とか「場所」が導入されると、生産要素としての土地が無視できなくなります。

モノやサービスの生産場所、住む場所(住居)として土地が必要になります。土地がないと人は住めませんし、経済活動を行うことができません。

土地需要が高まり、希少性がでてくると、都市で土地取引が発生します。

どこを住宅にするのか、どこに公共施設を建てるのか、道路や鉄道(地下鉄を含む)をどのように配置するか、市場にまかせて取り引きさせるよりも、景観等を含めて政府が都市計画によって配分を行います。

ただし住宅市場については市場取引にまかせてもいいのですが、低家賃、安定した品質を考えて日本も(昔の)住宅公団などのように政府が介入しています。

その意味で、記事にもあるように単純に市場経済に任せればいいといっても、取り引きに騙される人が出てきたり、スラム改造で住んでいた人を追い出したりとさまざまな問題が発生するのため、政府が介入することが多いです。(もっとも典型的な介入は、土地利用の制限)

なぜ、土地取引には政府介入が正当化されるのでしょう。それは住宅、公共用地、交通幹線、鉄道(地下鉄)などは建物建てたら元に戻しにくいという土地の非可逆性があるためです。取引を中止ということが簡単ではないため、計画的な利用が必要ということになります。そのため、都市計画(Urban Planning)がどの国でも行われています。

また土地は都市公共サービスを提供する上での財源ともなりえます。どれだけ占有しているかによって課税することにより、占拠分に相応した負担とサービスをバランスさせられます。これについてはイギリスのCouncil Taxがそれに近いと言えますし、日本の固定資産税がそれにあたるといえるでしょう。

ただ途上国は中国を含めて土地、建物の課税制度が不十分なので都市経営の財源が不足することとなります。そのため、国有地ということを利用して、政府が土地ころがしで財源を確保しようとすることが多くなります。

上記の記事はまさにその結果です。地方政府が財源獲得のために土地ころがしをやり、多くの開発を行った結果、大量の空き家予備軍を作り出しています。

都市の土地経営には政府介入が必要といっても、「政府の失敗」が起こる典型的なケースとなっているといえるでしょう。

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2016年07月19日

中国の都市化の特徴

中国の都市化について、滞在先のSOASのセミナーで報告しました。そこでの議論を通じていろいろ感じることがあったので、ここで今の考えをちょっとまとめておきたいと思います。

中国の都市化とは何か?という根源的な問いに対して、私はこう答えておきたい(仮説)と思います。

他の諸国とは違い、中国の都市化は経済政策であり経済体制改革である。

この考えは、現在アジ研で行っている研究会の基本的テーマでもあります。(ここ


まず他国の都市化について考えてみましょう。

他国の都市化とは、自然発生的な人の経済活動の結果であり過程でした。日本でも戦後多くの人が職や教育のために東京をはじめとする三大都市圏に集まってきました。そこで発生するのが、住宅と医療、教育機関の不足、道路、地下鉄などの交通インフラの不足です。そのため政府は「対策として」都市インフラの整備を行い、住宅を供給し、医療や教育などの公共サービスを増強させてきました。それに伴って、いい都市づくりを目指して、都市計画が作られ、都市行政が発展してきました。

他国の都市化に関する政策とは、空間的に集中する人口や企業に関する「対策」であった側面が強いです。

一方、中国は都市化が不自然に抑えられてきたために、一挙に政策として都市化を押し出すことになります。

空間的な人口や企業の一部地域への集中を都市化を「空間的都市化」と定義すれば、中国の都市化は改革開放とともに始まり、多くの農民工が沿海都市部に流入してきました。そのためハード面で都市インフラの拡張は行われてきました。農民の土地を取り上げ、住宅を建築し、道路を拡張し、地下鉄は延伸されてきました。しかしソフト面、とくに公共サービスについては、都市住民には提供されても、流入した農民工には提供されませんでした。彼らはあくまで一時的居住者として扱われていたからです。一時的居住者であって都市住民でない、この取り扱いこそが中国の都市化が遅れてきた原因です。

そこで、現政権から都市化を推進するようになりました。問題はまさに都市化を妨げていた制度を取り除く「制度的都市化」を行わなければなりません。「制度的都市化」とは、一時的居住者として扱われていた農民工たちを都市の制度の中に取り込むこと、そして農村と都市の制度を共通化することによって、都市化をスムーズにすするめることを意味します。

以上のように、他の国では空間的都市化、そしてその対策が一般的に行われてきました。中国は空間的都市化に加えて制度的都市化を行わなければならない、これが中国の都市化の最大の特徴だと思います。

こう考えると、中国の都市化は、空間的都市化については他国との比較研究が有益でしょうし、制度的都市化については、これまでの経済改革の流れの一環として研究することが有益だろうと思っています。
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2016年07月12日

一帯一路戦略

中国の一帯一路戦略は、日本の見方、中国研究者の見方から分析されることが多かったのですが、今回SOASのワークショップに参加して、イギリスや中央アジアからの視点でどうとらえているかがわかって面白かったです。

話を聞いて興味深かったのは「アジアパラドックス」。これはアジアとくに東・東南アジアが中国の市場や貿易という経済的側面の付き合いを深める一方で、安全保障についてはアメリカに頼らざるを得ないことを指します。経済取引と安全保障が一体化する方がすべてにおいて安定するにもかかわらず、また割き状態になることです。

また中央アジアからみると、ロシアが安全保障を提供し、中国が経済的取引を提供しています。しかし中国的には金を出しつつ安全保障も同時に提供したいという意図があるといいます。

中国の一帯一路戦略は、アメリカ等西側諸国のように貿易交渉、自由貿易地域(FTA)の推進というよりは、もう少し緩やかな「関係」を築くことに主眼が置かれており、これが中国式の世界秩序への挑戦だという指摘もありました。

すでに、土地が豊富な中央アジア、ロシアは、労働力と農業技術が豊富な中国に土地を貸し出す契約も進んでおり、人と土地の交換が進んでいるといいます。意外に中国人労働者が順調に受け入れられているようです。

最後に、地域研究はやはり研究者のバックグラウンドが反映してしまうということを認識しました。イギリスや中央アジアの研究者の見方は新鮮でしたが、裏を返せばやはり彼らも自分たちのバックグラウンドが地域研究に反映されているといえます。地域研究の客観性というのは難しく、学問としての客観性を担保するためにはさまざまな背景をもつ研究者との交流が必要だと強く感じた次第です。

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2016年07月05日

主権

イギリスのEU国民投票は、主権の範囲というか、国家による支配権という意味の国家主権というものについて考えさせられました。

究極的な理想だけでいえば、人類は一つ、みんな協力して世界政府(議会、裁判所)をつくる、というのが世界の国家間の争いをなくす一つの方法のような気がします。

EUは、各国が憎しみ、いがみ合い、殺し合いした歴史を乗り越えて、各国が統合していく、経済的統合はもちろんのこと、政治的にも統合していく壮大な実験でした。モノや人の移動が自由になり、どこに住んでも経済的活動をしてもEUの一員であり、政治的にもブリュッセルの欧州委員会(議会や裁判所)に統合していく流れでした。

イギリスのEU国民投票によってイギリス国民はEU統合へ反旗を翻しました。大きな理由は、EUのコントロール(法律的)が強い、移民が多く流れ込んできており国内の社会資源(医療、教育)の負担になっているといった点です。イギリスはEUと交渉しながらEUからかなりの優遇を引き出しながらも、国民はそれに満足しない、EUからの支配から抜けるべきだと主張したわけです。

イギリス国内でも割れています。北アイルランドやスコットランドではEU残留を望む声が大きかったので、とくにスコットランドはEUと独立して交渉したい、同時にイギリス(連合王国)から独立する(独立を問う国民投票を行う)準備まで始まっています。

経済的には、主権をもつ政府がその地域の租税と公共サービスを提供します。その地域の住民はその地域内で自由な経済取引が行われます。政治的には、その地域の住民がその地域の政治的代表者を決定し、その代表者たちが政治を行います。

主権の範囲、とくに空間的範囲(人口規模)はどれくらいがいいのでしょう。おそらくそれは公共サービス(負担と支出)の制約のもとで、規模の経済、住民厚生の最大化が図られるところで決まるべきでしょう。

でも政治的な空間的範囲を決めるのは難しいです。基本は民族自決なので一民族一国家なのでしょうが、イギリスのように4つの国が一つの国を構成しているケース、中国のように多くの少数民族を抱える地域もあります。どのように範囲が決められてきたかといえば、それは政治力(軍事力)で決まってきたわけです。

イギリスを例にすると、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの各主権が抑えられ、連合王国に主権が委譲されてきたために、連合王国内の経済と政治的安定がもたらされてきました。

EUもそれと同じで政治経済の主権を各国がEUに譲り渡すことによって、EU内の経済統合と政治的安定、とくに平和が維持されてきたと言えます。

イギリスのEU離脱交渉はまだ先ですが、本当にイギリスがEUから離脱することになれば、EUの求心力は下がらざるを得ず、おなじように他国が主権回復を望む可能性もあるでしょう。そのとき、どのように国家主権を超えた地域主権を維持するのか、そして各主権間のバランスはどうするべきか、が問われるように思います。


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2016年06月28日

イギリスのEU国民投票

6月23日にEU加盟の是非を問う国民投票が行われました。結果はみなさんご存知のように、国民の意思はEUからの離脱です。

争点

大きな争点は、経済的利益VS主権であったと言えます。

キャメロン首相(保守党)をはじめ、労働党党首のジェレミー・コービン、イングランド銀行、そして国内エコノミスト、海外ではOECD, IMFなどがEU離脱はイギリスの経済に暗雲をもたらすと主張しました。

一方で、元ロンドン市長のボリス・ジョンソンが国民投票キャンペーンに離脱派として4月ごろから旗幟を鮮明にします。離脱派の主張は、増えすぎるEUからの移民の管理、その他EUからの規制の独立を訴えます。

離脱派の勝因

6月23日の投票の結果、離脱派が勝利します。

離脱派あるいは離脱に投票した人たちでさえ、離脱派が勝つことはあまり想像していなかったようです。各種インタビューをBBCで見ていると、ある意味、保守党のエスタブリッシュメントに対する反感、ワーキングクラスの代表であるはずの労働党が一般庶民の不満を汲み取っていない、という点にも離脱に投票したことがうかがえます。

とくにイングランドの労働者階級、そして高齢者が今回の離脱の原動力になりました。「Take Back Control」という耳に響きやすいフレーズで、イギリスの主権回復!といった気持ちに火をつけたようにも思えます。

移民の増加、NHS(国民保険制度)の破綻危機、失業率、物価の上昇、これらへの庶民の不満を現在の政治が汲取っていないというやりきれない思いが離脱という結果を導いたといえるでしょう。


今後の流れ

離脱とはいえ、すぐに離脱できるわけではありません。これからイギリスは約2年かけてブリュッセル(EU)と離脱交渉を始めていきます。

また残留派が多数を占めたスコットランドは2回目の独立国民投票をやる方向に向かいます。連合王国が離脱を決定したとはいえ、スコットランドの国民は残留を求めているので、その意思を尊重する、という形です。

EU自体も求心力を失うでしょう。EU加盟国でもドイツ、フランス、イギリスが拠出金についても重要な柱でしたが、イギリスが抜けることは政治的にも経済的にもダメージです。フランスでもFrexit(フランス離脱)という言葉も出始めているので、EUという壮大な政治経済統合という取り組みは失敗に終わるかもしれません。


中国への示唆

中国について考えてみると、北京上海の大都市が農民移住をコントロールする問題は、まさにイギリスがEUからの移民をコントロールする問題と同じです。イギリスでは教育、医療が無料のため、そして英語であること、給与が高いことから、EU内、とくに東欧の発展の遅れている国からの移民が増加しつづけました。これがイギリス国内の教室不足、医療不足を招くとともに、財政負担になっているとされます。

また民主化についても中国には衝撃が大きいでしょう。国民投票によって、国の意見が分裂するのをみると、香港、内モンゴル、チベット、新疆などを抱える中国には脅威に映っていると思います。共産党にとってますます国民による投票という行為は受け入れがたいでしょう。
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2016年06月14日

「ジェイン・ジェイコブズの世界」藤原書店

藤原書店の別冊『環』企画、「ジェイン・ジェイコブズの世界」に寄稿しました。

「ジェイン・ジェイコブズの世界」では多彩な顔触れで、都市思想家であるジェイコブズを語っているので、都市や地域を考えるのにオススメ特集です。(藤原書店のウェブサイトで目次が見られます。)

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私は、ジェイン・ジェイコブズの思想から中国の都市化にアプローチしてみました。ジェイン・ジェイコブズの考えを自分なりに咀嚼して、ジェイン・ジェイコブズから中国の都市をみたらどうなるかという感じで書いたので、私にとっても楽しい仕事でした。

アダム・スミスが経済に関する偉大な思想家であるとともに、ジェイコブズは都市に関するアマチュア思想家です。彼女が与えた影響は非常に大きく、経済学でもJacobs外部性としてモデルにも取り込まれています。もちろん思想ですので、スミスと同じく、読み返すと「?」という部分もありますが、読むたびに新たな刺激を受け、都市を考える上で示唆的です。

ジェイコブズの貢献は二つあると思います。

一つは都市の盛衰メカニズムを明らかにしようとしたこと、もう一つは政府と個人の関係を明らかにしようとしたことです。「ジェイン・ジェイコブズの世界」の寄稿では、前者を「都市動態メカニズム仮説」として整理し、中国の都市化を診断してみました。

後者については、私は都市を「政府の管理と個人の自由がせめぎ合う場所」として定義し、中国の新型都市化について一考してみました。これについては、政府がどのように都市化を推進し、個人や企業が市場でどのような反応を起こすのかという観察・作業がまだまだ必要です。

中国の都市化はこれからも続きます。中国の都市化が何を生み出すのか、分析を続けて、将来的に都市に関する見方や思想面でも貢献したいものです。
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2016年06月07日

地方税はどうあるべきか?―カウンシルタックスから考える

先月、居住地の区役所からカウンシルタックス(Council Tax)の請求書が届きました。

カウンシルタックスとは自分が住む区に納める税金で、ほんの一部はロンドン市にも納められる日本で言う市町村税(地方税)です。

この税金は、住居と住人(大人)にかかる地方税の位置づけであり、所得とは関係ありません。賃貸、持ち家に関わらず基本は住まいの広さとそこに住む住人の数によって決定されます。私の場合、60平米程度の2ベットルームの住居、大人2人で1333ポンド(1年)になりました。日本円にして、大人1人1カ月1万円程度になります。

公共サービスは所得に関係なく多くの人が受けるものなので地方税は一律に、国税は所得再分配機能を持たせて所得に比例させるというのが税の理想です。これは、応益性と応分性という概念に集約されます。

応益性とは、住んでいる人が受けるサービスの費用をみんなで平等に負担するという考えです。上下水道、道路工事や維持、公園の清掃管理、ごみ収集、教育などなど住んでいる地域の政府が行う公共サービスの範囲は広いです。この公共サービスは住んでいる住民全員に行き渡ります。したがって、これに関わる費用をみんなで均等に分けて、負担しようじゃないかと考えるのが応益性です。

一方、応分性とは、住んでいる人の所得が高い人はその分多く費用を負担しようじゃないかと考えるのが応分性です。この根拠は、その人の機会コストです。所得が高い人が仕事を休んで、公共サービスを提供する側に回った場合、彼に支払うべき機会費用は、所得が低い人に比べて高くなります。つまり生産性の高い人は生産性の高い公共サービスを提供するはずにもかかわらず、それが実際にはかなわないので、その分費用を負担してもらうという考え方です。

日本の地方税は所得で決まるので応分性が強く、イギリスの地方税はその存在にかかるので応益性によって決まっているといえるでしょう。

どちらがいいか、というのは税制として考えるのか、経済政策として考えるかによって変わってくると思います。公共性という点では、おそらく応益性で地方税を徴収する方がいいと思いますが、所得再分配を行うという点については応分性を考慮した税制の方がいいでしょう。

私も、イギリスの公共サービスを受けているので、カウンシルタックスは喜んで支払いました(笑)

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2016年05月28日

EU加入の是非に関する国民投票(イギリス)

6月、イギリスでは国の将来を大きく決める国民投票が行われます。それは、EUにこのまま加入すべきか、それとも離脱するべきかです。

世論の状況ではどちらも5分5分で、どうなるか予断を許しません。

EUはヨーロッパ各国が加盟する経済統合体です。加盟の程度によって、かなり主権が制限されます。イギリスはポンドを使っていますが、他の国ではユーロを使っています。ユーロを使う国は通貨発行権という国家の主権をEUに引き渡していることを意味します。EUには議会もありますし、政府のような委員会も、そして最高裁判所のようなものまで作られ、かなり政治的にも統合が進んでいます。

イギリスのEU離脱派は、この主権の喪失がイギリスを苦しめているとします。EU第3位の資金拠出国であるにも関わらずEU改革への影響が与えられない、EUからの移民がイギリスの社会保障制度を圧迫している、などがその例です。

一方、EU残留派は、経済統合によるメリットを主張します。経済統合によって、イギリスは経済成長を可能にしている、EUから離れれば失業が増え、輸出入にも影響を与え、私たちの経済生活が脅かされると、中央銀行、IMF高官の発言、経済学者のシミュレーション結果を用いて、主張しています。

これらの議論は、アジアの経済統合を考える上で参考になります。また移民コントロールの話は中国の戸籍制度改革(農民を都市に移住させない)を考える際にも、参考になります。

6月はこの国民投票でイギリス中の報道が過熱しそうなので、私も注視しつつ、中国経済の参考にしてみたいと思っています。
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