2016年06月28日

イギリスのEU国民投票

6月23日にEU加盟の是非を問う国民投票が行われました。結果はみなさんご存知のように、国民の意思はEUからの離脱です。

争点

大きな争点は、経済的利益VS主権であったと言えます。

キャメロン首相(保守党)をはじめ、労働党党首のジェレミー・コービン、イングランド銀行、そして国内エコノミスト、海外ではOECD, IMFなどがEU離脱はイギリスの経済に暗雲をもたらすと主張しました。

一方で、元ロンドン市長のボリス・ジョンソンが国民投票キャンペーンに離脱派として4月ごろから旗幟を鮮明にします。離脱派の主張は、増えすぎるEUからの移民の管理、その他EUからの規制の独立を訴えます。

離脱派の勝因

6月23日の投票の結果、離脱派が勝利します。

離脱派あるいは離脱に投票した人たちでさえ、離脱派が勝つことはあまり想像していなかったようです。各種インタビューをBBCで見ていると、ある意味、保守党のエスタブリッシュメントに対する反感、ワーキングクラスの代表であるはずの労働党が一般庶民の不満を汲み取っていない、という点にも離脱に投票したことがうかがえます。

とくにイングランドの労働者階級、そして高齢者が今回の離脱の原動力になりました。「Take Back Control」という耳に響きやすいフレーズで、イギリスの主権回復!といった気持ちに火をつけたようにも思えます。

移民の増加、NHS(国民保険制度)の破綻危機、失業率、物価の上昇、これらへの庶民の不満を現在の政治が汲取っていないというやりきれない思いが離脱という結果を導いたといえるでしょう。


今後の流れ

離脱とはいえ、すぐに離脱できるわけではありません。これからイギリスは約2年かけてブリュッセル(EU)と離脱交渉を始めていきます。

また残留派が多数を占めたスコットランドは2回目の独立国民投票をやる方向に向かいます。連合王国が離脱を決定したとはいえ、スコットランドの国民は残留を求めているので、その意思を尊重する、という形です。

EU自体も求心力を失うでしょう。EU加盟国でもドイツ、フランス、イギリスが拠出金についても重要な柱でしたが、イギリスが抜けることは政治的にも経済的にもダメージです。フランスでもFrexit(フランス離脱)という言葉も出始めているので、EUという壮大な政治経済統合という取り組みは失敗に終わるかもしれません。


中国への示唆

中国について考えてみると、北京上海の大都市が農民移住をコントロールする問題は、まさにイギリスがEUからの移民をコントロールする問題と同じです。イギリスでは教育、医療が無料のため、そして英語であること、給与が高いことから、EU内、とくに東欧の発展の遅れている国からの移民が増加しつづけました。これがイギリス国内の教室不足、医療不足を招くとともに、財政負担になっているとされます。

また民主化についても中国には衝撃が大きいでしょう。国民投票によって、国の意見が分裂するのをみると、香港、内モンゴル、チベット、新疆などを抱える中国には脅威に映っていると思います。共産党にとってますます国民による投票という行為は受け入れがたいでしょう。
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2016年06月14日

「ジェイン・ジェイコブズの世界」藤原書店

藤原書店の別冊『環』企画、「ジェイン・ジェイコブズの世界」に寄稿しました。

「ジェイン・ジェイコブズの世界」では多彩な顔触れで、都市思想家であるジェイコブズを語っているので、都市や地域を考えるのにオススメ特集です。(藤原書店のウェブサイトで目次が見られます。)

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私は、ジェイン・ジェイコブズの思想から中国の都市化にアプローチしてみました。ジェイン・ジェイコブズの考えを自分なりに咀嚼して、ジェイン・ジェイコブズから中国の都市をみたらどうなるかという感じで書いたので、私にとっても楽しい仕事でした。

アダム・スミスが経済に関する偉大な思想家であるとともに、ジェイコブズは都市に関するアマチュア思想家です。彼女が与えた影響は非常に大きく、経済学でもJacobs外部性としてモデルにも取り込まれています。もちろん思想ですので、スミスと同じく、読み返すと「?」という部分もありますが、読むたびに新たな刺激を受け、都市を考える上で示唆的です。

ジェイコブズの貢献は二つあると思います。

一つは都市の盛衰メカニズムを明らかにしようとしたこと、もう一つは政府と個人の関係を明らかにしようとしたことです。「ジェイン・ジェイコブズの世界」の寄稿では、前者を「都市動態メカニズム仮説」として整理し、中国の都市化を診断してみました。

後者については、私は都市を「政府の管理と個人の自由がせめぎ合う場所」として定義し、中国の新型都市化について一考してみました。これについては、政府がどのように都市化を推進し、個人や企業が市場でどのような反応を起こすのかという観察・作業がまだまだ必要です。

中国の都市化はこれからも続きます。中国の都市化が何を生み出すのか、分析を続けて、将来的に都市に関する見方や思想面でも貢献したいものです。
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2016年06月07日

地方税はどうあるべきか?―カウンシルタックスから考える

先月、居住地の区役所からカウンシルタックス(Council Tax)の請求書が届きました。

カウンシルタックスとは自分が住む区に納める税金で、ほんの一部はロンドン市にも納められる日本で言う市町村税(地方税)です。

この税金は、住居と住人(大人)にかかる地方税の位置づけであり、所得とは関係ありません。賃貸、持ち家に関わらず基本は住まいの広さとそこに住む住人の数によって決定されます。私の場合、60平米程度の2ベットルームの住居、大人2人で1333ポンド(1年)になりました。日本円にして、大人1人1カ月1万円程度になります。

公共サービスは所得に関係なく多くの人が受けるものなので地方税は一律に、国税は所得再分配機能を持たせて所得に比例させるというのが税の理想です。これは、応益性と応分性という概念に集約されます。

応益性とは、住んでいる人が受けるサービスの費用をみんなで平等に負担するという考えです。上下水道、道路工事や維持、公園の清掃管理、ごみ収集、教育などなど住んでいる地域の政府が行う公共サービスの範囲は広いです。この公共サービスは住んでいる住民全員に行き渡ります。したがって、これに関わる費用をみんなで均等に分けて、負担しようじゃないかと考えるのが応益性です。

一方、応分性とは、住んでいる人の所得が高い人はその分多く費用を負担しようじゃないかと考えるのが応分性です。この根拠は、その人の機会コストです。所得が高い人が仕事を休んで、公共サービスを提供する側に回った場合、彼に支払うべき機会費用は、所得が低い人に比べて高くなります。つまり生産性の高い人は生産性の高い公共サービスを提供するはずにもかかわらず、それが実際にはかなわないので、その分費用を負担してもらうという考え方です。

日本の地方税は所得で決まるので応分性が強く、イギリスの地方税はその存在にかかるので応益性によって決まっているといえるでしょう。

どちらがいいか、というのは税制として考えるのか、経済政策として考えるかによって変わってくると思います。公共性という点では、おそらく応益性で地方税を徴収する方がいいと思いますが、所得再分配を行うという点については応分性を考慮した税制の方がいいでしょう。

私も、イギリスの公共サービスを受けているので、カウンシルタックスは喜んで支払いました(笑)

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2016年05月28日

EU加入の是非に関する国民投票(イギリス)

6月、イギリスでは国の将来を大きく決める国民投票が行われます。それは、EUにこのまま加入すべきか、それとも離脱するべきかです。

世論の状況ではどちらも5分5分で、どうなるか予断を許しません。

EUはヨーロッパ各国が加盟する経済統合体です。加盟の程度によって、かなり主権が制限されます。イギリスはポンドを使っていますが、他の国ではユーロを使っています。ユーロを使う国は通貨発行権という国家の主権をEUに引き渡していることを意味します。EUには議会もありますし、政府のような委員会も、そして最高裁判所のようなものまで作られ、かなり政治的にも統合が進んでいます。

イギリスのEU離脱派は、この主権の喪失がイギリスを苦しめているとします。EU第3位の資金拠出国であるにも関わらずEU改革への影響が与えられない、EUからの移民がイギリスの社会保障制度を圧迫している、などがその例です。

一方、EU残留派は、経済統合によるメリットを主張します。経済統合によって、イギリスは経済成長を可能にしている、EUから離れれば失業が増え、輸出入にも影響を与え、私たちの経済生活が脅かされると、中央銀行、IMF高官の発言、経済学者のシミュレーション結果を用いて、主張しています。

これらの議論は、アジアの経済統合を考える上で参考になります。また移民コントロールの話は中国の戸籍制度改革(農民を都市に移住させない)を考える際にも、参考になります。

6月はこの国民投票でイギリス中の報道が過熱しそうなので、私も注視しつつ、中国経済の参考にしてみたいと思っています。
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2016年04月24日

在外研究

ずっと楽しみにしていた在外研究に出ることができましたが、まだ研究スタイルが確立できずにちょっとモヤモヤしています。

私の研究スタイルは、毎日規則正しい生活で毎日少しづつ続けるというものです。ロンドンに移ってから、生活は安定しつつも、まだ数点解決しなければいけないことがあり、生活リズムに影響を受けています。

また語学面での壁も厄介です。母国語と違いどうしても戸惑う場面が多く、情報の受け取り、咀嚼にストレスを感じています。

できるだけ、ロンドンで得られたものをブログでも発信していきたいのですが、もう少し時間かかりそうです。

いつも訪問してくださりありがとうございます。もう少し落ち着いてから、定期的な発信を再開します。よろしくお願いします。
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2016年04月15日

在外研究に出ています。

4月1日よりイギリスのSOAS(東洋アフリカ学院,ロンドン大学)で研究することになりました。任期は来年の3月末までです。

Department of Economics
Faculty of Law and Social Sciences
SOAS, University of London

大学の海外研究員制度を利用して,一年間在外研究に取り組みます。研究テーマは日本で続けてきた中国の都市化です。SOASの各種セミナーに出席しつつ,また中国からくる専門家とも交流しながら,イギリスを中心とした英語圏における中国研究の状況を理解したいと思っています。
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2016年04月05日

2015年度の研究成果

2015年度の研究成果

<翻訳>

高尚全主編(岡本信広監訳・岡本恵子訳)(2015)『転換を模索する中国―改革こそが生き残る道』科学出版社東京

<論文(査読あり)>

岡本信広(2015)「中国産業連関表を地域化するのにFLQは有効か?」『地域学研究』第44巻第4号,pp.423-436

冈本信广(2015)「城乡一体化的艰难前行」『浙江工商大学学报』(2015 年9 月)第4 期(总第134 期),pp.112-117(招待論文)DOI:10.14134/j.cnki.cn33-1337/c.2015.05.014

岡本信広(2015)「中国の地域間分業と地域の「位置」」『中国経済研究』第12巻第2号、pp.1-17

<論文(査読なし)>

岡本信広(2015)「一帯一路は内陸部を発展させられるか?-重慶を事例に」『ERINA REPORT』環日本海経済研究所,No.127, pp.46-52 (リンク先からPDFでみられます。)

岡本信広(2015)「中国の都市化とビジネスチャンス」『ジェトロ中国経済』No.595(8月号),pp.48-67



<その他>
岡本信広(2015)「都市化の推進には行政・財政改革が必要である」『東亜』No.580,pp.4-5
岡本信広(2015)「ゴーストタウン(鬼城)と都市の衰退」『東亜』No.577,pp.4-5
岡本信広(2015)「土地の国有化が難しいのはなぜか?−深圳を事例に」『東亜』No.574,pp.4-5

<Web>
岡本信広(2016)「多くの農民工が劣悪な環境で生活する中国ー7億人以上が都市に集中」The Platnews 2016年1月6日
岡本信広(2015)「地方が消滅することは悪くない」アゴラ2015年12月22日
岡本信広(2015)「地方を創生するためにやるべきことは何か?」アゴラ2015年12月15日

<報告>
岡本信広「貴州省の都市化」神戸大学大学院経済学研究科六甲フォーラム、2016年2月15日
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2016年03月29日

中大経済研究所の研究合宿

3月19日〜20日と湯河原で中大経済研究所の研究合宿が開かれました。温泉を味わいつつ,集中的に研究会のテーマ(アジア経済圏)について議論するというものです。

今回もいろいろTPPについていろいろ勉強になりました。とくに石川幸一先生のTPPの解説と中国への影響が面白かったので備忘録として。

今回合意されたTPPの概要は以下の通り。

1)高い自由化率ー関税撤廃が100%、日本は95%(聖域5品目があるため)

2)新しいルールとして、@国有企業(非商業的援助の禁止)、A電子商取引(データセンターの設置、ソースの開示などの条件を設けない)、B知的財産(著作権保護期間70年)、C労働環境の保護(タイが不利)、D原産地規準(完全累積、ヤーンフォーワード)などがもうけられた。

TPPに加盟していない中国への影響としては,以下の通り。

1)完全累積基準により中国の輸出が減少する可能性。TPP域内国で生産された財の付加価値が50%以上になるように生産した方がTPPの恩恵を受けることができるため。

2)対中投資が減少する可能性。とくにヤーンフォーワードによって繊維製品の糸から製品までの生産チェーンは域内で行なわれることが前提になるので,繊維製品の生産拠点は中国からTPP域内国へ移転する可能性があるという。

3)もし,中国がTPPに加盟を求めるようになったとしても,国有企業改革など中国にとってはハードルの高いルールになった。

現在TPPは合意各国の批准手続きを待って発行されます。不安材料は,アメリカ大統領選の行方によって,アメリカ議会がTPPを批准しない可能性もあるという点でしょうか。

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2016年03月22日

中国の都市化の現状と課題

3月16日から19日まで、国家信息中心経済予測部と貴安新区発展研究中心の専門家が日本に来ました。3月16日にはERINA(環日本海経済研究所)でアジ研と一緒にワークショップを開催,また3月18日にはアジ研で日本の都市化について議論しました。

中国は工業化に比べて都市化が遅れてきました。実際、中国の都市は開発区に見られるように「生産拠点」であり「消費拠点」ではありませんでした。途上国の平均都市化率は約60%、中国の都市化率は14年で56%、戸籍人口では40%しかありません。16%の農民工(2億前後)が都市で生産活動に勤しむ形になっています。

現在行われている新型都市化は、まさに都市に住む人口の16%の農民を都市住民にしてて消費主体へと育てる政策です。社会保障を与えて定住させ、貯蓄から消費へ向かわせようとしています。

ただ問題はお金と制度改革の困難さです。

彼らの推計によると,1人の農民が都市に入ると10万元のインフラ投資が必要になるけども,彼らが消費住民になっても1万元の消費しか伸びない,といいます。この意味で都市化の財政的負担は大きいものとなります。

また都市,農村の二元化構造が改革を難しくしています。戸籍制度,土地制度の分断は労働と土地取引が分断されているということを示し,そのため政府のコストを引き上げています。

そして都市規模によって改革の程度が違います。北京,上海は相変わらず厳しく戸籍制度を実施していますが,中小都市では自由化が進んでいます。でも人は大都市に移動したがるため,都市管理の問題が発生してしまいます。

この制度改革が他の国にない都市化の難しさです。

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2016年03月15日

中国経済研究

中国経済経営学会の学術誌『中国経済研究』に論文を発表しました。

岡本信広(2015)「中国の地域間分業と地域の「位置」」『中国経済研究』第12巻第2号、pp.1-17

「おわりに」より

 「本稿では,地域間産業連関モデルを用い,基本的な産業連関分析と平均波及世代数(APL)を利用して,地域間分業を明らかにし,二つの作業仮説,「内陸地域は沿海地域の原材料供給 地域である」「都市化・サービス化が進む地域は地域間分業の上流に位置する」を検証した。
 最初の仮説,「内陸地域は沿海地域の原材料 供給地域である」という点については,ほぼ支持されうるであろう。逆の言い方をすると,沿 海地域の発展は原材料等の需要を生み出し内陸の発展をけん引する。ただし西部大開発で工業化の進む内陸地域,例えば重慶,四川や甘粛な どは下流に位置し,沿海と同じく成長の極として周りの地域をけん引する存在である。
 二つ目の仮説,「都市化・サービス化が進む 地域は地域間分業の上流に位置する」という点については,支持されそうにない。都市化が進 む省市は地域間分業,サプライ・チェーンの下流に位置するのが一般的であり,もっとも都市化率の高い上海や北京も下流である。これは国 際分業の分析結果(Inomata and Fathi, 203) と相違する。想像されうる解釈としては,中国 の都市化は新しいビジネスサービスを生み出したり,研究開発などが進んで新しい付加価値を生み出したりはせず,むしろ,現状では都市化 は中国特有の「都市建設」(都市インフラ建設などのハード整備)であることを示唆している。 インフラ建設のために必要なセメントや鉄筋など原材料を内陸などから必要とする形になって いる。 もう一つの解釈は,都市化が進む地域は北京, 上海,広東,江蘇,浙江などの沿海地域であり, 国際サプライ・チェーンの中で輸出を通して付加価値を海外に提供している可能性もある。国 内サプライ・チェーンの中では下流に位置しつつも,このような地域は国際サプライ・チェー ンでみると上流に位置する可能性もあろう。これに関する検証は今後の課題である。」

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