北京中央ビジネス区で入札 商業用不動産への投資熱高まる
2011/07/08(金) 19:03
<中国証券報>北京市中央ビジネス区(CBD)中心部の土地9区画の競売が6日スタートし、中投公司、中信集団、安邦人寿、蘇寧置業など20社が入札に参加した。最高入札額は計246億5500万元で、床面積1平方メートルあたり2万2619元となる。住宅市場への引き締め政策の影響で、商業不動産への投資熱が急速に高まりつつあることを示した。7日付中国証券報が伝えた。
今回は土地問題について考えてみたいと思います。住宅市場でもそうですが,住宅価格を左右する大きな要因は土地価格です。中国は社会主義国ですので土地は国有になります。現在は使用権が売買されています。
1.中国の土地制度
1986年に「土地管理法」が整備され,公有制を前提とした土地管理法体系ができます。1987年に深センで初めて都市国有地使用権の有償譲渡が行われ,国の土地を民間に売りその資金を使って地方政府が都市建設に使うという不動産開発が始まりました。
1992年の南巡講話以降,第一次不動産開発ブームが発生します。また1994年と1998年の都市住宅制度改革に関する国務院の決定や通達(前回参照)をきっかけとして,都市住民は配給としての住宅ではなく,商品としての住宅として見ることになります。広いところにいいところに住みたいという都市住民の住宅需要を刺激し,それに伴って都市の土地需要が高まります。
農地は集団所有地であり,農地以外への転用はできないのですが,一旦政府が収容し国有化したあと払い下げるというように変化しました(1998年の改訂土地管理法)。
土地の乱開発や国有資産の流出を防ぐために,中国では「土地備蓄制度」ができます。1996年に深センと上海で土地投資会社が国有で設立されました。この土地備蓄センターが地方政府から委嘱される形で開発用地を収用,整地,管理を行うという仕組みが土地備蓄制度です。
また2001年の「国有地資産管理の強化に関する通達」では協議方式で行われていた土地使用権の有償譲渡の方式が入札方式へと転換していきます。これは密室での協議方式では価格の決定とどの業者に譲渡するかといった過程が不透明になっていたからです。
制度が整うにつれ,第2次不動産開発ブームが発生します。とくに2004年の『土地管理を深化、改革、厳格化するための決定』によって,都市拡大に伴う周辺農村の土地が一旦国有地として収用され,開発されるようになりました。これにより土地を失う,いわゆる「失地農民」問題を発生させました。(農民の土地強制収用問題<岡本式中国経済論13>)
2.単一都市モデル
フォン・チューネンやアロンゾは中心部から離れるに従って地代の付け値が下がるモデルを想定しています。
これは感覚的にもわかりやすいモデルです。
例えば、天安門を中心とする北京の事例はまさにそれがあてはまりやすいかもしれません。
地図を見てもわかるように中心部から離れて行くにしたがって(二環路から三環路、三環路から四環路、四環路から五環路)地価は下がってきます。住宅にせよ,企業にせよ需要者の土地に対する付け値は,中心地M(北京の場合だと二環路以内)から遠くになるに従って下がっていきます。これは需要者の土地に対する評価ですから需要曲線です。
土地供給は土地備蓄センターが独占的に中心地から周辺農村へ開発を進めていきますので,垂直的な供給曲線が右に移動していきます。土地開発にあたって住宅地に使うのか商業地に使うのか,土地備蓄センターが決定します。独占的市場なので,限界収入曲線と供給曲線が交わるところで需給が均衡します。
これから二つのことが指摘できます。
一つ目は独占市場であるため,土地開発が中心地から遠くなればなるほど,独占利益は高くなるということです。つまり土地の収用がどんどん安く収用できてくるからです。
二つ目のポイントは,都市化にともなって宅地需要の方が工業用地需要よりも大きいと思われます。つまり需要曲線の傾きはよりなだらかになり,中心地から遠くなっても価格があまり下がりません。一方で開発が都市の周辺に広がれば広がるほど独占力が強くなるので,限界収入曲線の傾きが大きくなり需要曲線との乖離が大きくなり,独占利益が大きくなると考えられます。
こうなると地方政府にとっても工業用地よりも住宅用地開発にインセンティブがわくように思います。
土地価格が高ければ高いほど地方政府にとっての「旨み」は大きいということがいえそうです。
3.中国の問題
中国独特の問題は,土地取引市場が三層になっているため以上のような標準的な経済学から離れていること,土地用途の決定が地方政府によってコントロールされた独占状態であるため,独占レントが発生しているということ,です(梶谷2009)。
土地取引市場の三層性について確認してみましょう。まず地方政府が農地や旧市街地の土地を収用して開発業者に有償で譲渡する市場が存在します。これが一次市場です。次に開発業者が不動産(マンションなど)を建設して、不動産の所有権と土地の使用権をセットにして一般に販売するのが二次市場になります。三次市場は二次市場で売買された物件の中古市場および賃貸契約を指します。
二次市場や三次市場は利子などの金融資産との裁定がはたらくので
不動産価格=賃貸収入/取得コスト
の関係が長期的に成立するように思われます。ただし政府から開発業者に払い下げられるときに独占的価格であるため、不動産価格は一次市場の土地譲渡価格に左右されるのが特徴となります。
次の問題は土地用途の決定が地方政府によってコントロールされていることです。土地は工業用地と住宅用地に大別されますが、土地使用目的によって譲渡の方式を変えることによって、工業用地と住宅用地の価格差を生み出していることです。工業用地は企業誘致のために低コストにしたいと考えますので、協議方式で低価格で譲渡されます。住宅用地は需要が大きいと期待できますので、入札によって価格がつり上げられます。とくに地方政府にとって財政収入が土地譲渡に頼っている場合、この傾向が強くなると考えられます。
最後に,土地販売と地方の財政問題を示唆するニュースを紹介しておきます。
地価が下落の兆し 地方政府が財政難のピンチ=中国
【大紀元日本6月7日】ここ数年にわたって高騰し続けてきた中国の土地価格は下落する兆しを呈している。急速な下落で土地譲渡の収入で支えられている地方財政がピンチに立たせられていると専門家は懸念している。
クレディ・スイスが発表した統計によると、中国全土の土地売却の平均取引価格は、4月に前月比32%下落し、年初から51%下落している。中国国内の中原不動産研究センターの統計によると、4月に15都市の住宅用地供給量が435ヘクタールと、前年同期比と前月比より大幅に減少した。同月に中心都市の地価も前月比と比べて18%下落した。
また、中国国土資源部の統計によると、今年第一半期から住宅用地は商業用地より価格が下がり始めた。
地価の下落について、ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究所の教授で、中国経済問題の専門家ピーター・ボタリア氏は、それには二つの理由があると見ている。一つは昨年4月から、高騰した不動産価格を下げようと様々な引き締め政策を実施したため。もう一つは中央政府が低所得者向けの格安住宅に土地を提供するよう命じたから。
英フィナンシャルタイムズによると、10数年前から、中国は住宅の配給を廃止し、住宅市場の急速な拡大を受け、地方政府は土地売買から巨額な収入を得るようになった。
情報調査会社のCEICによると、昨年は土地譲渡による収入が2009年から2倍近く増え、約3兆元(約37兆円)に達し、地方政府の財政収入の70%を占める。
政府の不動産市場の引き締め政策で、CEICは2011年の土地譲渡収入は2兆元(約25兆円)まで下落すると見ている。「急激な下落で、多くの地方政府は大きな影響を受けるだろう」とボタリア教授は指摘する。英フィナンシャルタイムズは「最も影響を受けるのは経済が多様化しておらず、土地収入に頼っている貧困都市」だと分析する。
(翻訳編集・高遠)
<参考文献リスト>
梶谷懐(2008)「中国の土地市場をめぐる諸問題と地方政府−「地方主導型経済発展」の変容−」『現代中国研究』第23号,中国現代史研究会
梶谷懐(2009)「中国の予算外財政資金と地域間経済格差」『中国21』Vol.30,愛知大学現代中国学会






