6月27日(金)大東文化大学経済研究所セミナーで「『中国経済はどこまで独特か』の枠組みは実際の中国経済にどこまで妥当するか?」というタイトルの報告を行った。
多くのコメントをいただいて勉強になったので備忘録として。
積極的な評価として、変化の激しい中国経済をとらえるにあたって、政府と市場のせめぎ合いという観点は長期的に中国を見るにあたって有効だろう(内藤二郎教授)という意見をいただいた。
一方で、社会主義国、資本主義国の「政府の役割」は同じなのだろうか、という疑問が呈された。
森路未央准教授からは、「せめぎ合い」が対立を示す言葉とすれば、以下のようなケースが考えられるのではないかという提案がなされた。
@せめぎ合わないケース
民が官にアプローチし、政策に合わせていく、あるいは官が民の活動を黙認する
Aせめぎ合いえないケース
官が強いので、厳しくコントロールした場合、民はついていかざるをえない
Bマイナスのせめぎ合い
民工子弟学校などはせめぎ合いの中で生まれたが、その後閉鎖されることがあった
「せめぎ合い」には暗黙の協力/対立を含めて、双方ともにどちらが勝者になるわけではなく争うイメージで用いているが、この指摘は言葉の用い方について非常に示唆に富むものであった。
その他、いろいろ指摘をいただいた。今後の研究に生かしたい。
〇国有企業がある国であれば、中国に限らず混合市場になるので、特段中国が特殊というわけではない(池田剛史教授)。
〇政府の政策に対するコミットメントには費用がかかる。例えば、プロポーズの言葉だけではなく指輪を送るように。共産党の政府の政策に対するコミットメントに対してはどのような費用がかかっているのだろうか(土橋俊寛教授)
2025年06月30日
2025年04月11日
『せめぎ合いで読み解く中国経済と世界秩序』
先日のエントリで,新刊『中国経済はどこまで独特か』を紹介しました。
この本と、三尾さんのご著書『中国が変えた世界』とともに,中国の国内経済と国際経済の両面から,中国経済を語るジョイントトークが実施されます。
国内経済の課題,トランプ大統領の対中関税政策など最新状況も含めてお話する予定です。
タイトル:せめぎ合いで読み解く中国経済と世界秩序
日時:4月27日午後2時より
場所:紀伊国屋新宿本店3階アカデミックラウンジ
入場無料です。
お申し込みはこちらから。

この本と、三尾さんのご著書『中国が変えた世界』とともに,中国の国内経済と国際経済の両面から,中国経済を語るジョイントトークが実施されます。
国内経済の課題,トランプ大統領の対中関税政策など最新状況も含めてお話する予定です。
タイトル:せめぎ合いで読み解く中国経済と世界秩序
日時:4月27日午後2時より
場所:紀伊国屋新宿本店3階アカデミックラウンジ
入場無料です。
お申し込みはこちらから。
2025年04月01日
中国経済はどこまで独特か?
単行本を出版したので、ご紹介。
白桃書房様から、中国経済のユニークな側面に迫る書籍『人々の暮らしぶりから考える 中国経済はどこまで独特か?:官と民のせめぎ合いで読み解く経済学』を出版しました。
本書は、中国経済の複雑なメカニズムを、一般の人々の視点から解き明かしていく、他に類を見ない試みです。
本書のポイントは以下の3つです。
一般の人々の生の声を再現(注):各章の冒頭では、中国で暮らす人々のインタビューを掲載しています。 計画経済時代を生き抜いた高齢者、政府官僚、農村出身の出稼ぎ労働者、国有企業で働く若手社員、など、さまざまな立場の人々の話から、中国経済のダイナミズムを肌で感じることができます。
「政府と民間」のせめぎ合い: 「まえがき」でも書いた都市管理員と露天商のエピソードに見られるように、中国経済は常に政府と民間のせめぎ合いの中で発展してきました。 本書では、この「せめぎ合い」という観点から、中国経済の改革、開放、発展を振り返り、資源、環境、人口、統治などの課題を浮き彫りにします。
経済学用語の解説:各章末には、その章で重要となる経済学用語(市場経済、所有、資本、通貨の国際化、格差、外部性、集積の経済、公共選択)の解説コラムを設けています。 専門知識がない方でも、本書を読み進めるうちに、自然と中国経済の理解に必要な経済学の知識を身につけることができます。
本書は、中国経済の全体像を把握したい方、中国経済の現状と課題を深く理解したい方、中国経済を学ぶ学生など、幅広い読者層にとって役立つ一冊となる自負があります。
本書で取り上げたテーマは、中国経済の根幹に関わるものばかりです。 読者の皆様が本書を通じて中国経済への理解を深め、中国経済の未来を占うヒントが得られることを願っています。
それとともに、本ブログのコメントでも、SNSでも、Amazonのカスタマーレビューでも何か感想や批判など残していただけると嬉しく思います。

あと、本のタイトルに「角書き」というタイトル前の文言を初めて採用しました。
(注)生の声の再現にあたっては,穆尭芋(ムウー ヤオーチェン)准教授(新潟県立大学国際地域学部)の校閲を受けております。
白桃書房様から、中国経済のユニークな側面に迫る書籍『人々の暮らしぶりから考える 中国経済はどこまで独特か?:官と民のせめぎ合いで読み解く経済学』を出版しました。
本書は、中国経済の複雑なメカニズムを、一般の人々の視点から解き明かしていく、他に類を見ない試みです。
本書のポイントは以下の3つです。
一般の人々の生の声を再現(注):各章の冒頭では、中国で暮らす人々のインタビューを掲載しています。 計画経済時代を生き抜いた高齢者、政府官僚、農村出身の出稼ぎ労働者、国有企業で働く若手社員、など、さまざまな立場の人々の話から、中国経済のダイナミズムを肌で感じることができます。
「政府と民間」のせめぎ合い: 「まえがき」でも書いた都市管理員と露天商のエピソードに見られるように、中国経済は常に政府と民間のせめぎ合いの中で発展してきました。 本書では、この「せめぎ合い」という観点から、中国経済の改革、開放、発展を振り返り、資源、環境、人口、統治などの課題を浮き彫りにします。
経済学用語の解説:各章末には、その章で重要となる経済学用語(市場経済、所有、資本、通貨の国際化、格差、外部性、集積の経済、公共選択)の解説コラムを設けています。 専門知識がない方でも、本書を読み進めるうちに、自然と中国経済の理解に必要な経済学の知識を身につけることができます。
本書は、中国経済の全体像を把握したい方、中国経済の現状と課題を深く理解したい方、中国経済を学ぶ学生など、幅広い読者層にとって役立つ一冊となる自負があります。
本書で取り上げたテーマは、中国経済の根幹に関わるものばかりです。 読者の皆様が本書を通じて中国経済への理解を深め、中国経済の未来を占うヒントが得られることを願っています。
それとともに、本ブログのコメントでも、SNSでも、Amazonのカスタマーレビューでも何か感想や批判など残していただけると嬉しく思います。
あと、本のタイトルに「角書き」というタイトル前の文言を初めて採用しました。
(注)生の声の再現にあたっては,穆尭芋(ムウー ヤオーチェン)准教授(新潟県立大学国際地域学部)の校閲を受けております。
2024年06月11日
中国の景気減速
中国経済経営学会の特別セッションで、「中国の景気減速を評価する」というテーマで、白井さゆり先生、福本智之先生とともにパネリストとして,参加した。
白井先生はデカップリングの観点,福本先生は不動産不況の観点,私は人口問題という観点から,中国の景気減速を評価するというものだった。
議論の詳細は,渡邉真理子会長のFacebook投稿が参考になるが,ここでは私の視点で整理しておく。
・米国の対中デカップリングは,進んでいるものの,企業レベルでみるとメキシコやベトナム経由もあり,実際にはそんなに進んでいない。
海外はインフレに見舞われているものの,中国はデフレ傾向であるので,内需が弱い。
・中国国内GDPの3割を占めると言われる不動産市場では,実需はほぼ飽和している(ただし貧しい層の保証性住宅は足りていない)。もともと豊富な資産運用先がない中,中産階級にとっては不動産市場はいい投資先であった。地方財政にとっても不動産開発は土地収入が得られるので,開発が進んでいた。政府の規制により,当面不動産市場は不況のままであろう。
・中国は人口減少に見舞われ,人口ボーナスはすでに終わっている。教育,技術による発展よりも資本蓄積(と高い貯蓄)が顕著である。とくに人口ボーナスがない中,資本蓄積がずっと進むということは,かなりの過剰資本につながっている。
高齢化という第2の人口ボーナス(高い貯蓄と資本蓄積)がどこまで続くかが,長期的な経済成長を見る上で重要となってくるであろう。
この点については,noteで連載をしている。
白井先生はデカップリングの観点,福本先生は不動産不況の観点,私は人口問題という観点から,中国の景気減速を評価するというものだった。
議論の詳細は,渡邉真理子会長のFacebook投稿が参考になるが,ここでは私の視点で整理しておく。
・米国の対中デカップリングは,進んでいるものの,企業レベルでみるとメキシコやベトナム経由もあり,実際にはそんなに進んでいない。
海外はインフレに見舞われているものの,中国はデフレ傾向であるので,内需が弱い。
・中国国内GDPの3割を占めると言われる不動産市場では,実需はほぼ飽和している(ただし貧しい層の保証性住宅は足りていない)。もともと豊富な資産運用先がない中,中産階級にとっては不動産市場はいい投資先であった。地方財政にとっても不動産開発は土地収入が得られるので,開発が進んでいた。政府の規制により,当面不動産市場は不況のままであろう。
・中国は人口減少に見舞われ,人口ボーナスはすでに終わっている。教育,技術による発展よりも資本蓄積(と高い貯蓄)が顕著である。とくに人口ボーナスがない中,資本蓄積がずっと進むということは,かなりの過剰資本につながっている。
高齢化という第2の人口ボーナス(高い貯蓄と資本蓄積)がどこまで続くかが,長期的な経済成長を見る上で重要となってくるであろう。
この点については,noteで連載をしている。
2024年03月22日
超長期国債の発行
李強首相は,今年、1兆元 (約139億ドル) 規模の「超長期特別国債」を発行するとした。
この国債の発行は今後数年間続く可能性があり、地方政府の累積債務問題を抱える中、中央政府が財政支出を増やす動きとみられる。
発行額は国家の公式な財政赤字には含まれない模様だ。
超長期特別国債とは?
* 満期や販売方法など詳細は未定。資金使途も限定的か一括支出の可能性。
* アナリストは償還期間を30-50年と推測。
過去の発行的事例は?
* 中国は2001年から長期国債を発行しており、15年、20年、30年、50年もの償還期間がある。
* しかし大規模な「超長期特別国債」の発行は過去3回のみ。
* 1998年のアジア金融危機対応の銀行資本増強。
* 2007年の国家ファンド設立時の資金注入。
* 2020年のパンデミック対応財政支援。
発行の理由は?
* 地方政府の債務リスク上昇への対応が主因とみられる。
* 地方政府融資平台 (LGFV) の債務不履行懸念が高まっており、金融システムへの波及リスクが指摘されている。
* 中国は不動産市場の低迷や消費・企業センチメントの低迷が続いており、今後数年間の経済安定化が求められている。
* 経済成長のエンジンが不動産開発からシフトする中、持続的な財政支援が必要と見込まれている。
(Geminiを利用して作成)
Explainer | What makes China’s ‘ultra-long’ bonds special? Here’s what we know about Beijing’s trillion-yuan offering to stabilise economy2024年3月22日
この国債の発行は今後数年間続く可能性があり、地方政府の累積債務問題を抱える中、中央政府が財政支出を増やす動きとみられる。
発行額は国家の公式な財政赤字には含まれない模様だ。
超長期特別国債とは?
* 満期や販売方法など詳細は未定。資金使途も限定的か一括支出の可能性。
* アナリストは償還期間を30-50年と推測。
過去の発行的事例は?
* 中国は2001年から長期国債を発行しており、15年、20年、30年、50年もの償還期間がある。
* しかし大規模な「超長期特別国債」の発行は過去3回のみ。
* 1998年のアジア金融危機対応の銀行資本増強。
* 2007年の国家ファンド設立時の資金注入。
* 2020年のパンデミック対応財政支援。
発行の理由は?
* 地方政府の債務リスク上昇への対応が主因とみられる。
* 地方政府融資平台 (LGFV) の債務不履行懸念が高まっており、金融システムへの波及リスクが指摘されている。
* 中国は不動産市場の低迷や消費・企業センチメントの低迷が続いており、今後数年間の経済安定化が求められている。
* 経済成長のエンジンが不動産開発からシフトする中、持続的な財政支援が必要と見込まれている。
(Geminiを利用して作成)
Explainer | What makes China’s ‘ultra-long’ bonds special? Here’s what we know about Beijing’s trillion-yuan offering to stabilise economy2024年3月22日
2024年02月06日
深圳の位置づけがさらに重要になる?!
この記事の論調は以下のような感じ。
深圳は、中国の経済改革が始まった40年以上前からの都市であり、中国の技術革新と経済成長の最前線に立ってきた。米国主導の技術制約に対抗し、産業チェーンを上位化させる国家の取り組みに呼応して、同セクターの強化に倍増する努力を誓っている。
要約すると,
**ハイテク産業の強化**
* 米国主導の技術制約に対抗し、産業チェーンを上位化させる国家の取り組みに呼応
* 2024年に戦略的新興産業で1.5兆元(209億米ドル)を超える工業生産高を目指
* 新エネルギー、人工知能、通信、スマートデバイスなどの分野に注力
* 深圳は、中国の「シリコンバレー」として知られる最先端産業チェーンを有する
**経済成長目標**
* 2024年の経済成長率5.5%を目指す
* 広州と上海の予想成長率を上回る
**イノベーションの重責**
* 中国の技術的ブレークスルーを戦略的産業で達成
* 中国全体をバリューチェーンの上位に押し上げる
* 債務、デフレ、リスク回避、人口統計などの課題に対処
**大湾区(Great Bay Area)の統合**
* 国際商事紛争解決サービスセンターと国際法律サービスセンターを設立
* 外国投資家との紛争解決を支援
* 香港、マカオ、広州など11都市を一体化
* 中国経済の新たな成長エンジンとなる
**未来への展望**
* 20以上のハイエンド科学研究機関、企業R&Dセンター、ハイレベルの科学研究チームを設立
* 科学技術革新を加速
* 中国の経済成長を牽引
China’s Shenzhen reveals bold tech plans for an economic, industrial resurgence in 20242024年1月31日
深圳は、中国の経済改革が始まった40年以上前からの都市であり、中国の技術革新と経済成長の最前線に立ってきた。米国主導の技術制約に対抗し、産業チェーンを上位化させる国家の取り組みに呼応して、同セクターの強化に倍増する努力を誓っている。
要約すると,
**ハイテク産業の強化**
* 米国主導の技術制約に対抗し、産業チェーンを上位化させる国家の取り組みに呼応
* 2024年に戦略的新興産業で1.5兆元(209億米ドル)を超える工業生産高を目指
* 新エネルギー、人工知能、通信、スマートデバイスなどの分野に注力
* 深圳は、中国の「シリコンバレー」として知られる最先端産業チェーンを有する
**経済成長目標**
* 2024年の経済成長率5.5%を目指す
* 広州と上海の予想成長率を上回る
**イノベーションの重責**
* 中国の技術的ブレークスルーを戦略的産業で達成
* 中国全体をバリューチェーンの上位に押し上げる
* 債務、デフレ、リスク回避、人口統計などの課題に対処
**大湾区(Great Bay Area)の統合**
* 国際商事紛争解決サービスセンターと国際法律サービスセンターを設立
* 外国投資家との紛争解決を支援
* 香港、マカオ、広州など11都市を一体化
* 中国経済の新たな成長エンジンとなる
**未来への展望**
* 20以上のハイエンド科学研究機関、企業R&Dセンター、ハイレベルの科学研究チームを設立
* 科学技術革新を加速
* 中国の経済成長を牽引
China’s Shenzhen reveals bold tech plans for an economic, industrial resurgence in 20242024年1月31日
2023年09月30日
半導体
半導体についてちょっと勉強したので,簡単にまとめておく。
戦後,アメリカで兵器の命中精度を上げるためには,複雑な計算が必要で,そのためにはスイッチのオンオフ,抵抗の有り無しといった装置が必要だった。
最初は物理的な機械計算であったが,汎用性を求めて,真空管,トランジスター,集積回路,そして現在の一般的な半導体という製品になってきた。
アメリカ国防省が計算能力拡大のため,半導体への補助金を出し,企業が成長。その企業がペンタゴンに納入する形で,生産規模が拡大していった。その後家電などの民生品にトランジスタ,集積回路,半導体が使われるようになる。
1980年代,日本はソニーをはじめとして家電にトランジスタを開発,多くの製品を販売した。日本企業はアメリカから技術を学ぶとともに,品質向上に成功し,DRAMと呼ばれるメインフレームの心臓部の半導体で競争力を持った。
その後,日米半導体摩擦が発生,コンピューターがメインフレームからPCに転換。サムソンなどの韓国勢が価格面で有利となり,日本は衰退していった。
1980年代に台湾でアメリカの中華系技術者が台湾政府の後押しを得てTSMCが設立。半導体は小型化していくが,製造に特化することでTSMCが成長した。半導体製造には大きなコストがかかるので,アメリカの半導体企業はインテルを除いて,設計に注力し,出資する形でTSMCに製造を委託するようになった。これでファブレス(設計のみ製造工程を持たない)企業とファウンドリ(製造のみに特化)企業に分離することとなる。
コロナの影響で,半導体サプライチェーンが分断され,自国での半導体調達が必要との認識がアメリカや西側諸国で上がる。
日本では,半導体製造で後れを取っていたが,政府の後押しでラピダスを設立。ただファブレスとしての設計会社がないこと,ファウンドリとしての経験もないことから,将来性には疑問がある。とくに製造工程で必要な露光装置はオランダのASMLが一社独占であり,微細化された5ナノ以下の半導体の製造において,その装置を使いこなせる技術者を大量に持っているのは現在のところTSMCのみ。
「半導体黄金時代 チャットGPTで需要爆発」『週刊エコノミスト』毎日新聞出版
「特集:半導体の歴史学」『ニューズウィーク日本版』2023年8月29日
クリス・ミラー(2023)『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』ダイヤモンド社
戦後,アメリカで兵器の命中精度を上げるためには,複雑な計算が必要で,そのためにはスイッチのオンオフ,抵抗の有り無しといった装置が必要だった。
最初は物理的な機械計算であったが,汎用性を求めて,真空管,トランジスター,集積回路,そして現在の一般的な半導体という製品になってきた。
アメリカ国防省が計算能力拡大のため,半導体への補助金を出し,企業が成長。その企業がペンタゴンに納入する形で,生産規模が拡大していった。その後家電などの民生品にトランジスタ,集積回路,半導体が使われるようになる。
1980年代,日本はソニーをはじめとして家電にトランジスタを開発,多くの製品を販売した。日本企業はアメリカから技術を学ぶとともに,品質向上に成功し,DRAMと呼ばれるメインフレームの心臓部の半導体で競争力を持った。
その後,日米半導体摩擦が発生,コンピューターがメインフレームからPCに転換。サムソンなどの韓国勢が価格面で有利となり,日本は衰退していった。
1980年代に台湾でアメリカの中華系技術者が台湾政府の後押しを得てTSMCが設立。半導体は小型化していくが,製造に特化することでTSMCが成長した。半導体製造には大きなコストがかかるので,アメリカの半導体企業はインテルを除いて,設計に注力し,出資する形でTSMCに製造を委託するようになった。これでファブレス(設計のみ製造工程を持たない)企業とファウンドリ(製造のみに特化)企業に分離することとなる。
コロナの影響で,半導体サプライチェーンが分断され,自国での半導体調達が必要との認識がアメリカや西側諸国で上がる。
日本では,半導体製造で後れを取っていたが,政府の後押しでラピダスを設立。ただファブレスとしての設計会社がないこと,ファウンドリとしての経験もないことから,将来性には疑問がある。とくに製造工程で必要な露光装置はオランダのASMLが一社独占であり,微細化された5ナノ以下の半導体の製造において,その装置を使いこなせる技術者を大量に持っているのは現在のところTSMCのみ。
「半導体黄金時代 チャットGPTで需要爆発」『週刊エコノミスト』毎日新聞出版
「特集:半導体の歴史学」『ニューズウィーク日本版』2023年8月29日
クリス・ミラー(2023)『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』ダイヤモンド社
2023年09月27日
中国投入産出学会
久しぶりに中国出張して,会議に参加してきた。
会議は,中国投入産出学会。今回のテーマは,「中国式現代化」と「新時代産業サプライチェーンの耐性と安全」の二つ。
私は,「中国式現代化」の中で,Explanatory Review on Extended Input-Output Model for Demographyを報告。これはIOを人口問題に拡張するモデルで,その特徴と今後の発展可能性を議論した。
このテーマでは,漸進主義的市場経済化,産業政策と経済成長という報告があった。中国では下流産業では市場経済化が行われ,上流産業は産業政策が当てはめられたが,数量分析の結果,この方法は一番効率が良かったという報告だった。
サプライチェーンは今最もホットな話題で,グローバルな産業ネットワークの中で中国の位置づけや米国の対中政策についてネットワークのリジリエンスを議論するものだった。
感想としては,@中国の政策を批判するものではないものの,A産業連関表のデータと他のモデルとの組み合わせで付加価値ネットワークのリジリエンスを分析する,かなり面白い研究だった。
とくにサプライチェーンは中国が世界のグローバリューチェーンにしっかり組み込まれていることを確認するものであり,逆に言えば,諸外国がデリスキングで中国依存を減らすのは難しいように感じた。ただ産業連関表自体が数年のタイムラグがあるので,今後の分析によって,中国の産業ネットワークの自立性をもたらすことが可能なのかどうか,を長期的に見守る必要はあるが。
会議では,久しぶりの対面開催(同時配信付き)で,多くの人が参加していた。人民大学時代の先輩,後輩,その他研究仲間と旧交を温められて,とてもいい会議だった。
会議は,中国投入産出学会。今回のテーマは,「中国式現代化」と「新時代産業サプライチェーンの耐性と安全」の二つ。
私は,「中国式現代化」の中で,Explanatory Review on Extended Input-Output Model for Demographyを報告。これはIOを人口問題に拡張するモデルで,その特徴と今後の発展可能性を議論した。
このテーマでは,漸進主義的市場経済化,産業政策と経済成長という報告があった。中国では下流産業では市場経済化が行われ,上流産業は産業政策が当てはめられたが,数量分析の結果,この方法は一番効率が良かったという報告だった。
サプライチェーンは今最もホットな話題で,グローバルな産業ネットワークの中で中国の位置づけや米国の対中政策についてネットワークのリジリエンスを議論するものだった。
感想としては,@中国の政策を批判するものではないものの,A産業連関表のデータと他のモデルとの組み合わせで付加価値ネットワークのリジリエンスを分析する,かなり面白い研究だった。
とくにサプライチェーンは中国が世界のグローバリューチェーンにしっかり組み込まれていることを確認するものであり,逆に言えば,諸外国がデリスキングで中国依存を減らすのは難しいように感じた。ただ産業連関表自体が数年のタイムラグがあるので,今後の分析によって,中国の産業ネットワークの自立性をもたらすことが可能なのかどうか,を長期的に見守る必要はあるが。
会議では,久しぶりの対面開催(同時配信付き)で,多くの人が参加していた。人民大学時代の先輩,後輩,その他研究仲間と旧交を温められて,とてもいい会議だった。
2023年07月31日
「債務危機」と「債務持続可能な発展」の境目
地方政府の負債が持続可能かどうか,あらゆるところで議論されている。
6月、河北省保定市の政府系交通会社は、バスを通常の時間帯に運行し続けるための資金が底をつき、一部の路線が運休になったと住民に伝えた。河南省商丘市でも2月に同様の事態が発生し、数百万人の通勤客に影響が出た。
2008年の世界的な金融危機以降、融資プラットフォーム(LGFV)が地方政府の借入制限を回避するために設立された。公共部門と民間部門のある種の第三セクター的なものとして融資プラットフォーム(LGFV)が設立され,これらの上場市場でのデフォルトの可能性に対する懸念が高まり続けている。
LGFVは、過去数十年にわたる中国の発展の要であった。1990年代半ば、中央政府は地方当局が多額の債務を積み上げるのを阻止するため、分税制を施行した。これに対し、地方政府はこの対応としてLGFVを作った。現在では中国国内に数千のLGFVが存在し、橋、道路、住宅、工業団地への投資を促進し、国内総生産(GDP)を押し上げている。
国際通貨基金(IMF)は、中国のLGFVによって集められた負債総額は今年、過去最高の66兆元(9兆2,300億米ドル)に膨れ上がり、総額が30兆7,000億元だった2017年から2倍以上に膨れ上がったと推定している。
しかし,中国の「隠れ債務」に関する公式な数字はなく、多くの場合、LGFVを含む非公式なさまざまな借入経路があることに起因している。中国の地方政府には約30兆元から50兆元相当の隠れ債務があると推定している。こうした借金の利子は債券市場よりもはるかに高く、返済期間は短い。
2015年、負債・債務交換プログラムは、これらの負債をより透明性が高く低金利の債券に置き換えることで、LGFVの債務規模を縮小しようとしたが、効果がないことが判明し、2018年に3年間のプログラムは終了した。その後、地方債務は急速に膨れ上がってきている。
最終的には国に頼るしかないかもしれないが,北京はつれない態度だ。
How China’s hidden debt risk ‘comes from its system’, and why local governments are beholden to Beijing2023年7月30日
6月、河北省保定市の政府系交通会社は、バスを通常の時間帯に運行し続けるための資金が底をつき、一部の路線が運休になったと住民に伝えた。河南省商丘市でも2月に同様の事態が発生し、数百万人の通勤客に影響が出た。
2008年の世界的な金融危機以降、融資プラットフォーム(LGFV)が地方政府の借入制限を回避するために設立された。公共部門と民間部門のある種の第三セクター的なものとして融資プラットフォーム(LGFV)が設立され,これらの上場市場でのデフォルトの可能性に対する懸念が高まり続けている。
LGFVは、過去数十年にわたる中国の発展の要であった。1990年代半ば、中央政府は地方当局が多額の債務を積み上げるのを阻止するため、分税制を施行した。これに対し、地方政府はこの対応としてLGFVを作った。現在では中国国内に数千のLGFVが存在し、橋、道路、住宅、工業団地への投資を促進し、国内総生産(GDP)を押し上げている。
国際通貨基金(IMF)は、中国のLGFVによって集められた負債総額は今年、過去最高の66兆元(9兆2,300億米ドル)に膨れ上がり、総額が30兆7,000億元だった2017年から2倍以上に膨れ上がったと推定している。
しかし,中国の「隠れ債務」に関する公式な数字はなく、多くの場合、LGFVを含む非公式なさまざまな借入経路があることに起因している。中国の地方政府には約30兆元から50兆元相当の隠れ債務があると推定している。こうした借金の利子は債券市場よりもはるかに高く、返済期間は短い。
2015年、負債・債務交換プログラムは、これらの負債をより透明性が高く低金利の債券に置き換えることで、LGFVの債務規模を縮小しようとしたが、効果がないことが判明し、2018年に3年間のプログラムは終了した。その後、地方債務は急速に膨れ上がってきている。
最終的には国に頼るしかないかもしれないが,北京はつれない態度だ。
How China’s hidden debt risk ‘comes from its system’, and why local governments are beholden to Beijing2023年7月30日
2023年07月21日
『チャイナ・エコノミー第2版』出版記念 山形浩生氏×高口康太氏「中国のファクトとロジックを読み解き、世界の未来を占う」オンライントークイベント
件名のトークイベントに参加したので備忘録を。


山形さんの内容説明で,読み逃しで気づいた点は以下のとおり。
●人口が多いので,効率性は二の次になっている。規模は大きいが1人あたりでみると小さくなるため。
●国有企業が効率化の足を引っ張るものの,国有企業が国を利用している側面がある。
あと,貿易自由化と国家統制の綱引き,格差は落ち着いてきた点,権威主義というものの官僚主義であり,トップ交代は平和裏に行われているなどのクローバーの観点は,まさにその通りだなと思っている。
援助現場での中国側のふるまいについて山形さんの話を聞いて思ったこと。
中国の一帯一路は,中国政府保証があるので,国有企業は安心して途上国でインフラ建設できている。ただ負債の返済が滞っているのは事実なので,国有企業も含めて今は小さなプロジェクト(港湾や産業団地設置みたいなものから太陽光発電のソーラーパネル設置)に移行している。
当初は政府「政策」だったけど,後半は市場原理(効率)に移動してきたので,クローバーがいうように一帯一路は政治的に他の途上国を半植民地化しようとしたというよりも,援助に関する能力はなかっただろうと思った。
まぁ,中国の経済って,政府が政策ドーンと打ち出して,民間企業も非効率に付き合ってそれから効率性追求に移るのが中国全体の動きのような気がしている。「権威的な政府と活発な民間経済の「共犯関係」」(梶谷懐2018『中国経済講義』中公新書)だからなのかもしれないが。
また,イノベーションについて,背景の違う人たちが一か所に集まるから都市自体がイノベーティブだと思っている。ただ北京では昨年人口が減少したし,広東省でも人口が減少した。景気の問題で農民工が帰郷したのが一般的な見方だけど,都市のイノベーション機能は保たれるのだろうかと疑問を持った。
山形さんは,都市人口の増加とイノベーションの増加は,人口からイノベーションという因果関係とまでいえず,イノベーションがあるから人口が集まるというのもあるという趣旨の話をされていた。
高口さんのナイスな仕切りで,1時間半があっという間だった。
山形さんの内容説明で,読み逃しで気づいた点は以下のとおり。
●人口が多いので,効率性は二の次になっている。規模は大きいが1人あたりでみると小さくなるため。
●国有企業が効率化の足を引っ張るものの,国有企業が国を利用している側面がある。
あと,貿易自由化と国家統制の綱引き,格差は落ち着いてきた点,権威主義というものの官僚主義であり,トップ交代は平和裏に行われているなどのクローバーの観点は,まさにその通りだなと思っている。
援助現場での中国側のふるまいについて山形さんの話を聞いて思ったこと。
中国の一帯一路は,中国政府保証があるので,国有企業は安心して途上国でインフラ建設できている。ただ負債の返済が滞っているのは事実なので,国有企業も含めて今は小さなプロジェクト(港湾や産業団地設置みたいなものから太陽光発電のソーラーパネル設置)に移行している。
当初は政府「政策」だったけど,後半は市場原理(効率)に移動してきたので,クローバーがいうように一帯一路は政治的に他の途上国を半植民地化しようとしたというよりも,援助に関する能力はなかっただろうと思った。
まぁ,中国の経済って,政府が政策ドーンと打ち出して,民間企業も非効率に付き合ってそれから効率性追求に移るのが中国全体の動きのような気がしている。「権威的な政府と活発な民間経済の「共犯関係」」(梶谷懐2018『中国経済講義』中公新書)だからなのかもしれないが。
また,イノベーションについて,背景の違う人たちが一か所に集まるから都市自体がイノベーティブだと思っている。ただ北京では昨年人口が減少したし,広東省でも人口が減少した。景気の問題で農民工が帰郷したのが一般的な見方だけど,都市のイノベーション機能は保たれるのだろうかと疑問を持った。
山形さんは,都市人口の増加とイノベーションの増加は,人口からイノベーションという因果関係とまでいえず,イノベーションがあるから人口が集まるというのもあるという趣旨の話をされていた。
高口さんのナイスな仕切りで,1時間半があっという間だった。
2023年06月30日
「第3期習近平政権の本格始動の現状と課題」
アジ研のオンライン中国講座で件の講演を聞いたのでその備忘録として。
「第3期習近平政権の本格始動の現状と課題」佐々木智弘(防衛大学校教授)
・3期目に入った習近平政権は,中央政治局の中で19人/24人中が習自身の人脈とみられるので,盤石である。
・習近平は総書記としての指導力を制度として保証するために「総書記直属機構」(中央〇〇委員会)を設定している。
・党大会以降,白紙革命で示されたコロナ政策の転換により,社会に寛容な政権とみられたが,実際は社会の統制強化に動いているようだ。
・その証左として以下が指摘される。
中央国家安全委員会が設置され,弁公室の主任として序列5位の蔡奇が抜擢されている
2022年11月の劉海星(弁公室副主任)が『人民日報』で国家安全を「民族復興の根基」に,社会安定を「国家隆盛の前提」に格上げしている
2023年4月26日には反スパイ法が改正されている
「第3期習近平政権の本格始動の現状と課題」佐々木智弘(防衛大学校教授)
・3期目に入った習近平政権は,中央政治局の中で19人/24人中が習自身の人脈とみられるので,盤石である。
・習近平は総書記としての指導力を制度として保証するために「総書記直属機構」(中央〇〇委員会)を設定している。
・党大会以降,白紙革命で示されたコロナ政策の転換により,社会に寛容な政権とみられたが,実際は社会の統制強化に動いているようだ。
・その証左として以下が指摘される。
中央国家安全委員会が設置され,弁公室の主任として序列5位の蔡奇が抜擢されている
2022年11月の劉海星(弁公室副主任)が『人民日報』で国家安全を「民族復興の根基」に,社会安定を「国家隆盛の前提」に格上げしている
2023年4月26日には反スパイ法が改正されている
2022年03月24日
2022年新型城鎮化と都市農村融合発展重点任務
国家発改委から今年の都市化政策が公表された。
記者会見での中で、市民化の進展について触れている。
常住都市化率は64.72%に達し、戸籍都市化率は46.7%に上昇た。戸籍都市化率は、前年比1.3ポイント上昇し、常住都市化率0.83ポイントを上回った。「第13次5カ年計画(2016年−2020年)」が始まって以来、2つの都市化率の差は初めて縮小したという。
背景として、@戸籍改革が進展(300万人以下の都市は基本的に戸籍取得の制限はなくなったこと)、A居住証制度の進展(居住証に紐つく公共サービスが拡大していること)、B市民化に合わせた政策、「人、土地、資金」をリンクさせた政策が進んでいること(中央が地方の市民化の費用を支援し、農民の土地請負権、住宅地使用権、集団収益の分配権を保護)、をあげている。
国家发展改革委有关负责人就《2022年新型城镇化和城乡融合发展重点任务》答记者问2022年3月17日
記者会見での中で、市民化の進展について触れている。
常住都市化率は64.72%に達し、戸籍都市化率は46.7%に上昇た。戸籍都市化率は、前年比1.3ポイント上昇し、常住都市化率0.83ポイントを上回った。「第13次5カ年計画(2016年−2020年)」が始まって以来、2つの都市化率の差は初めて縮小したという。
背景として、@戸籍改革が進展(300万人以下の都市は基本的に戸籍取得の制限はなくなったこと)、A居住証制度の進展(居住証に紐つく公共サービスが拡大していること)、B市民化に合わせた政策、「人、土地、資金」をリンクさせた政策が進んでいること(中央が地方の市民化の費用を支援し、農民の土地請負権、住宅地使用権、集団収益の分配権を保護)、をあげている。
国家发展改革委有关负责人就《2022年新型城镇化和城乡融合发展重点任务》答记者问2022年3月17日
2022年01月28日
格差がもたらすもの
経済格差が問題になるが、あらためてその経済的意味を整理しておこう。
1)メリット
人々が、自分を磨き、競争し、そして投資をするインセンティブをもたらす。教育への必要性を理解し人的資本の蓄積と経済成長を刺激する。またイノベーションや企業家精神のインセンティブを与える。
2)デメリット
機会の不平等が存在すると、人々の教育的、職業的選択の可能性を狭める。また不平等がレントによって生み出されている場合は、腐敗や汚職などによって資源配分がゆがむことになるので社会的機会費用の損失になる。
所得の格差と経済成長には反比例の関係がある。富裕層(上位20%)の所得シェアが1%増えると、GDP成長率は次の5年間で0.08%低くなり、貧困層(下位20%)の所得シェアが1%増えると、0.38%の成長につながる。
このメカニズムとしては、不平等は低所得の健康や身体を損なう可能性があり、教育の機会がなくなり、人的資本としての成長ができずに労働生産性が低下すること、不平等度が高いと世代間の移動が減り、親の所得で子の所得を決定してしまうこと、である。
Era Dabla-Norris, Kalpana Kochhar, Nujin Suphaphiphat, Franto Ricka, and Evridiki Tsounta, (2015) Causes and Consequences of Income Inequality: A Global Perspective, No.13, International Monetary Fund
DOI: https://doi.org/10.5089/9781513555188.006
1)メリット
人々が、自分を磨き、競争し、そして投資をするインセンティブをもたらす。教育への必要性を理解し人的資本の蓄積と経済成長を刺激する。またイノベーションや企業家精神のインセンティブを与える。
2)デメリット
機会の不平等が存在すると、人々の教育的、職業的選択の可能性を狭める。また不平等がレントによって生み出されている場合は、腐敗や汚職などによって資源配分がゆがむことになるので社会的機会費用の損失になる。
所得の格差と経済成長には反比例の関係がある。富裕層(上位20%)の所得シェアが1%増えると、GDP成長率は次の5年間で0.08%低くなり、貧困層(下位20%)の所得シェアが1%増えると、0.38%の成長につながる。
このメカニズムとしては、不平等は低所得の健康や身体を損なう可能性があり、教育の機会がなくなり、人的資本としての成長ができずに労働生産性が低下すること、不平等度が高いと世代間の移動が減り、親の所得で子の所得を決定してしまうこと、である。
Era Dabla-Norris, Kalpana Kochhar, Nujin Suphaphiphat, Franto Ricka, and Evridiki Tsounta, (2015) Causes and Consequences of Income Inequality: A Global Perspective, No.13, International Monetary Fund
DOI: https://doi.org/10.5089/9781513555188.006
2022年01月27日
米中摩擦と産業政策
JETROの「新時代における中国ビジネス―中国の経済・産業政策をどう見るか―」のウェビナーに参加してきた。
梶谷先生、伊藤先生、丁先生の3人の報告から、新たに理解したことは、中国のハイテク分野における産業政策や政府主導のファンドによる資金援助が公平な競争を妨げる(WTO違反)として米国が反発している、ということだ。
一番大きな転換は2015年
2015年「中国製造2025」「インターネット+」「大衆創業、万衆創新」
2016年 「創新駆動発展戦略」
ITと製造技術を融合する取り組みという産業政策にアメリカが異議を唱えるようになる。
そして、資金面でも政府引導基金の役割が増加している(民間や政府が資金を集め政府プロジェクトや政策に沿った部門へ投資)
現在は、国家創新体型(National Inovation System)として、企業連合体を組織し、スマートシティ、スマート交通などに取り組んでいる。
丁先生は、国家主導の産業政策を「高い調整能力」として評価しているが、長期的に国家の関与がイノベーションを生み続けられるのかどうかが、一つ注目ポイントになるような気がしている。
梶谷先生、伊藤先生、丁先生の3人の報告から、新たに理解したことは、中国のハイテク分野における産業政策や政府主導のファンドによる資金援助が公平な競争を妨げる(WTO違反)として米国が反発している、ということだ。
一番大きな転換は2015年
2015年「中国製造2025」「インターネット+」「大衆創業、万衆創新」
2016年 「創新駆動発展戦略」
ITと製造技術を融合する取り組みという産業政策にアメリカが異議を唱えるようになる。
そして、資金面でも政府引導基金の役割が増加している(民間や政府が資金を集め政府プロジェクトや政策に沿った部門へ投資)
現在は、国家創新体型(National Inovation System)として、企業連合体を組織し、スマートシティ、スマート交通などに取り組んでいる。
丁先生は、国家主導の産業政策を「高い調整能力」として評価しているが、長期的に国家の関与がイノベーションを生み続けられるのかどうかが、一つ注目ポイントになるような気がしている。
2021年03月25日
都市化の産業連関分析を提案
2019年からやっていた研究がようやく形になった。
人口の産業連関分析を応用して、都市化の産業連関モデルを提案し、中国のデータで確認するというもの。今後はこれを発展させて詳細な都市化の分析に役立てたいと考えている。
Nobuhiro Okamoto (2021) 'Extended input–output model for urbanization: an empirical test using Chinese data,' Journal of Economic Structures volume 10, Article number: 3
https://journalofeconomicstructures.springeropen.com/articles/10.1186/s40008-021-00233-9
人口の産業連関分析を応用して、都市化の産業連関モデルを提案し、中国のデータで確認するというもの。今後はこれを発展させて詳細な都市化の分析に役立てたいと考えている。
Nobuhiro Okamoto (2021) 'Extended input–output model for urbanization: an empirical test using Chinese data,' Journal of Economic Structures volume 10, Article number: 3
https://journalofeconomicstructures.springeropen.com/articles/10.1186/s40008-021-00233-9
2020年12月02日
双循環戦略の評価
2020年09月09日
蔡ム『四十不惑:中国改革開放発展経験分享』中国社会科学出版社の翻訳本を出版
2019年08月27日
夏の国際会議
今年の夏は2回の国際会議でOngoingな研究成果を発表してきた。
Nobuhiro Okamoto, Extended Input-Output Model for Demographic Change – Preliminary Application to the Chinese Urbanisation
ペーパーはこちらのNo.95でアブストラクトとともにダウンロード可能。
27th International Input-Output Association Conference
30th June to 5th July 2019, Glasgow, Scotland
また同じ内容で、以下の会議でも発表。
the 62nd ISI World Statistics Congress 2019
18-23 August 2019 in Kuala Lumpur, Malaysia.
Nobuhiro Okamoto, Extended Input-Output Model for Demographic Change – Preliminary Application to the Chinese Urbanisation
ペーパーはこちらのNo.95でアブストラクトとともにダウンロード可能。
27th International Input-Output Association Conference
30th June to 5th July 2019, Glasgow, Scotland
また同じ内容で、以下の会議でも発表。
the 62nd ISI World Statistics Congress 2019
18-23 August 2019 in Kuala Lumpur, Malaysia.
2019年07月13日
「一帯一路」の国内的側面
2019年03月27日
中国共産党の「悪魔との取引」
世界経済評論インパクトに以下のエッセイを寄稿した。
中国共産党の「悪魔との取引」−−都市化政策を考える
これは、本エッセイの参考文献にあげているWallace(2014)の議論に刺激を受けたものである。
本エッセイもさることながら、興味がある人にはぜひ読んでもらいたい本だ。

中国共産党の「悪魔との取引」−−都市化政策を考える
これは、本エッセイの参考文献にあげているWallace(2014)の議論に刺激を受けたものである。
本エッセイもさることながら、興味がある人にはぜひ読んでもらいたい本だ。






